中堅地味破壊神は世界を平和にしたいだけ

キザキ ケイ

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番外 - 破壊神狂想曲

01.ことの起こり

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※番外編「神の子作り」既読をおすすめ
※男性妊娠を匂わせる描写あり
※メイン以外のカップリング要素あり

_____


 
 二人だけの場所でぎゅっと抱き合うと、ひとつになってしまいそうな気がする。
 汗だくの髪をかきあげられ、額の生え際にキスされる。
 どこもかしこも触られ舐められているから、触り忘れを見つけたみたいなその触れ方が少し可笑しい。

「何? カイくん」
「なんでもない」
「ふぅん? 余裕だね、休憩はもういいのかな」

 ぐり、と奥を突き上げられ、情けない声が押し出された。
 年若い恋人の求めに応じた休み前の日の夜。先にバテてしまった俺が小休止を申し出て、年下の彼に我慢させていた。
 こうして触れ合うだけの時間も俺は気に入っているのだが、向こうはもっと直接的に求め合いたいお年頃らしい。
 俺の恋人、総司郎ソウシロウ
 俺のせいで一度離ればなれになって、紆余曲折を経て、今度は創世の神同士として再会した相手。
 神に年齢なんて関係ないが、俺はやっぱりこいつのことを年下だと思ってしまうし、向こうもやっぱり俺に甘えることが多いので、そういうものだと思っている。

「ソウ、総、もちょっと、きゅうけ……っ」
「だぁめ。海くんすぐ別のこと考えちゃうから。休みの日くらいお仕事休もうねぇ」
「ちが、仕事のことじゃ……ぁ、あっ……!」

 ぐりぐりと弱いところばかり責められ、おまけに体のあらゆるところに吸い付かれ、両手は恋人繋ぎで拘束されてるし、もうどうしようもない。
 声を抑えることもできないまま、涙目で見上げた総司郎の顔は快楽に火照り、歪んでいて……見た瞬間に腹の奥がきゅうっと窄まったのが自分でもわかった。

「く……っ」
「あ、出て……、あ、ぅ、うーっ」

 中で出される感覚がリアルにわかるほど男を食い締めて、俺も達した。
 前を触られていなくても極めることができるようになってどれくらい経っただろう。中だけでイくと後がつらいからできれば前も触りたいのに、こいつが手を離してくれないから。
 おまけに毎回毎回ノルマでもあるのかってくらい、中で出される。

「おまえ、もう外で出す気ないよな……」

 とりあえずの欲求が治って、気怠い空気に寝そべったまま問いかける。
 未だに俺の体を撫で回していた手をはたき落とすと、総は少しシュンとしながらも答えた。

「逆になんで中で出しちゃダメなの? 神の体はお腹壊すことないし」

 シュンとなんてしてなかった。開き直りだ。

「そりゃそうだけどさぁ、マナーだろマナー」
「でも、ゴムしようにもここじゃ事務所経由じゃないと手に入らないんだよ?」
「事務員さんに頼むは絶対にナシ。そんなの遠回しなセクハラだ」
「俺の創造能力で作ろうにも、作り方を知らない繊細な物は作れないし」
「そうなんだよなー……コンドームの製造方法、死ぬ前に一回くらい調べとくんだった」
「何より、海くんのナカが良すぎて抜くの間に合わな、いたっ」
「……」

 最悪すぎる責任転嫁をしてきた男の肩を強めに殴り、俺は寝返りを打った。そっぽを向いてもう寝てしまおう。
 総司郎が猫撫で声でご機嫌取りをしながら背中を抱き込んできたけど、絶対顔は見せない。
 ふざけんな早漏野郎。俺のせいにすんじゃねぇ。
 ただしこういう悪口を言うと「本当に俺が早漏か試してみる?」なんてことになって睡眠時間が蒸発しかねないので、俺は黙って不貞寝と決め込んだ。
 総司郎がまだなにか言っていたが、取り合わずにいると諦めたのか、俺の背中にぴったりくっついてきた。
 そして聞こえてくる寝息。
 俺より先に寝るのかよ。なんだよかわいいじゃないか。
 回されている腕を退けないように反転し、眠る恋人の顔を見つめる。
 破壊神の仕事は大変だし責任は重い。本部の支援は十分とは言えない。地上には神すら脅かす火種がまだ残っている。なんとも嫌な職場だ。
 でもこいつとまた出会えて、こうして過ごせるのは、これ以上ない幸運だ。
 それだけは感謝したい。




 ……なーんて殊勝なこと考えてた俺の無垢な気持ち、今すぐ返してほしい。

 トラブル発生だ。それも特段にヤバいやつ。
 発端は、地上に「テレビ電話」をかけたことだ。
 テレビ電話というのはもちろん通称で、電力利用という概念がないこの星にはテレビも電話も本来ない。
 要は、電気の代わりに存在する魔道の力で離れたところ同士を結び、映像と音声をやりとりしているのだ。
 地上の技術的には全然不可能じゃないんだが、常識的に絶対不可能な状態になっているのが我が家のテレビ電話である。なにせ雲海という上位次元と、人間たちが住む下位次元がタイムロスもなく繋がっているのだから。
 それを可能にするのが、俺の力を注いだ俺の分身、地上の保守管理をお願いしている「魔王」の存在だ。

「突然現れたんです。本当に予兆も何もなくて。今は魔王が抑えていますが、それも時間の問題だと思います。お力をお貸しくださいカイ様」
「うぅん……ときに、その魔王は今は?」
「そいつのところに行ってます。抑えておくのもギリギリみたいです」

 便宜上テレビ画面に映している映像には今、一人の人間が映っている。
 ニル。俺の弟子兼子分。地上では大魔道士と呼ばれている、いまやいっぱしの大人だ。
 後ろにはセドリックも控えているのが見える。
 彼はニルの恋人で、俺とも面識がある。
 以前問い詰めたら、俺が地上に落ちて、帰るためになんやかんや苦労していたあの時すでにニルと恋人関係になっていたというのだから驚きだ。一通り説教して、仕方なく仲を認めてやった。

「魔力は厳しいか?」
「量は大丈夫だと思うのですが、出力が圧倒的に足りません。同じ力を持つはずなのに……」

 歳を重ね、落ち着きを備えてきていた俺の弟子が、額に汗を浮かべて焦燥している。
 いつものように自分の子分と分身の様子を見るためにテレビ電話を繋いで、飛び込んできた一報がこれだった。
 未知の生物が地上で暴れ回っている。
 振るう力が、破壊神のそれにそっくりである、と。

「これホントにカイにいの仕業じゃないわけ?」

 声とともに、少年がニルを押し退けフレームインしてきた。

「力の感じがそっくりなんだけど。黒い霧も出してるし」
「違う。ついでに言えばおまえの弟とかでもない」
「それはそうでしょ。あんな大暴れする弟いらないし」

 いかにも若者っぽい雑な話し方をする彼は、リク。
 創造神が生命核から創り出し、破壊神たる俺が枕元に置いて力を注いだ分身のようなものだ。
 茶がかった黒髪にこげ茶の瞳、黄色っぽい肌を持つ彼は地上ではやや珍しい部類の外見的特徴を備えているが、俺の子と見ればそっくりの色味だ。性格は俺じゃない気がするが、はて誰似なのか。

 地上には時折、人間にはどうすることもできない危険な場所や現象が発生する。それらを破壊神の力で消し去り、下位次元の平和と安定に努めるために送り出した破壊の力を使うもの────それがリクだ。
 便宜上「魔王」と呼称しているが、特に魔王っぽいことはしていないし、俺たち以外にそう呼んでいる者も今のところいない。素行のいい魔王だ。
 リクは名実ともに神の子だが、子どもと呼ぶには出自が特殊なので親らしく振る舞わなかったところ、いつの間にか俺は「兄」と呼ばれるようになっていた。

「リク、悪いがもうちょっと辛抱してくれ」
「頼むよカイ兄」
「ニルはリクのサポートを頼む。ただし無理はするな」
「わかりました」
「こっちでもできそうなこと探してみる。何かわかったら連絡入れるから」
「はい。なる早でお願いしますね」

 通話が切れ、一瞬「ファンタジー世界でも『なるはや』とか言うんだ」という感慨に脳が支配されそうになったが、それどころじゃないと頭を切り替えた。
 会話には参加しなかったが、横で聞いていた創造神をふり仰ぐ。

「総、聞いてたろ。地上に破壊神らしき怪物が出ているらしい。心当たりは?」
「昨日の夜だったかな……何か大きなものが地上に顕現したのは感じたよ」
「おま、そういうことは共有しろよ!」
「そんなのキリがないよ。人間たちは魔術だか召喚術だかで日常的に何か呼び出してるし、昨日は俺も忙しかったし」

 目を離すとすぐサボるこの男の何が忙しかったというのか、と考え、昨夜は二人で仲良く長時間寝室にこもっていたことを思い出した。
 半分くらい俺のせいかもしれない。

「と、とにかく。破壊神の力で暴れ回ってるなんて、魔王以外に止められそうにない。こっちからもなにか支援できないか」
「うーん……とりあえず今いるところの大地割って閉じ込めとこうか」
「待て早まるな、ニルに言って人間たちを退避させてからだ!」

 俺は慌てて切れたばかりのテレビ電話に飛びついた。
 幸い、問題の化け物が暴れていたのは人里離れた場所で、近隣の村から人を移動させるのにそれほど時間はかからなかった。
 大魔道士が直々に赴いて、渋る住民たちを避難所に投げ込んだ(文字通り)という。
 俺はなるべく穏便に、かつ現地の生態系になるべく影響が出ないようにと何度も言い聞かせ、満を持して創造神が自ら大地に亀裂を走らせ、対象を谷底へ落としたことを確認した。
 すぐさま地割れを塞ぎ、怪物を閉じ込める。

「大人しくなった。なんとかなったみたいだね」
「はぁ……これでいくらか時間稼げるな」

 創造神に地上をモニターしてもらい、一安心と嘆息する。
 いや、気を抜いている場合じゃない。
 根本的な事態収束を目指すべく、俺たちは事務所へ向かった。
 広大な雲海の白い世界にぽつんと建つプレハブ小屋には、頼りになる事務員さんが勤務している。
 事務員さんに助力を仰ぐにしろ、本部に救援を求めるにしろ、事務所へ行かなければならない。普段は渋る総司郎も、さすがに今日は何も言わずついてきた。

「事務員さんっ、今……」

 ノックもそこそこに扉を開けると、待っていたかのように目当ての人物に出迎えられた。
 今日も髪型から服装、靴の先まできちんと整えられている事務員さんだったが、その表情はいつもと違って少し崩れていた。

「お待ちしてました、破壊神さん、創造神さん」

 デキる事務員さんは地上の異変にもとっくに気づいていたらしい。
 説明する手間が省けていそうだな、と思いながら口を開いた俺に、事務員さんの言葉が被さる。

「うちのがご迷惑をおかけしてます」
「……え?」
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