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本編
07.先輩のご機嫌取り
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遅れて帰ってきた創造神は、ものすご~く機嫌が悪かった。
玄関扉を蹴り開けてどかどかと大きな足音を立てて入ってきた時点でヤバいと思ったが、その後ダンボールの中身を片付けている俺の見えないところに行って壁かなにかを殴っている音が聞こえたことで、予感が確信に変わった。
やはり事務員さんのところに創造神を一人で残したのは間違いだったか……。
創造神が事務員さんを嫌っていることは分かっていたが、俺はとにかくあの気まずい場所から一秒でも早く逃げ出したくて、創造神を置いてきてしまった。
俺の判断ミスで創造神が荒れていると言われても仕方がない。
やつの機嫌を損ねると、どんな影響が出るか俺も完璧には把握できていない。俺が赴任してきたときのような、天変地異という言葉すら生ぬるい大惨事がまた起きないとも限らないわけだ。
その辺の事情を踏まえて、事務員さんにもなんとか忖度してもらいたいものだが、一応俺は事務員さんにとっては後輩にあたるのであまり強く言うのも憚られる。
今取れる最善手は、これから創造神のご機嫌を取って影響を最小限にする……だ。
「創造神、入るぞ」
片付けを途中で放り出して、返事も聞かず創造神の私室を開ける。
創造神はベッドに座って項垂れていたようで、俺が入ってきたことに驚いて顔を上げた。
とても頼りなさそうな表情をしている。
「どうしたどうした。男前が台無しだぞ」
「カイくん……」
「事務員さんになにかイヤなこと言われたのか?」
「……」
創造神の隣に腰掛けると、無言で抱きしめられた。そのままベッドに引き倒される。
うーん、これはかなりキてるっぽいな。
ここまで凹んでいる創造神を見るのは初めてだ。
彼はこの世界の創造が初仕事で、つまり比較的キャリアのない年若い神らしい。
俺が来る前は何度も癇癪を起こして、前任までの破壊神はみんな彼に追い出されたか、彼を見限って自ら辞表を出したかしていなくなっていったそうだ。
創造神の荒れっぷりに比例するように世界は混沌としていって、あわや星の運行にまで影響が出るかと言われた。
そこにちょうど前の仕事場から異動になった俺が配属されて、なんとか世界消滅の危機が去った───ということになる。
最近は多少落ち着いていたものの、彼は本来荒ぶる神なのだ。
世界を破壊する創造神、なんて不名誉なアダ名が彼につけられないよう気を配るのも俺の仕事だ。
「ほら、そんなに締め付けなくても俺はどこにも行かないから。何言われたんだ? 俺には言いたくないか?」
「……」
ベッドに倒れた俺の上にのしかかっている創造神は、顔を俺の胸に押し付けているので表情はわからない。
微かに左右に振られた頭から、俺に話せないわけではないがここで泣きつくのも嫌だというビミョウな男心が透けて見える。
事務員さん結構ズバズバ物言うところあるからなぁ。こいつとは相性が悪いんだろう。
「仕事のこと言われたか?」
「……」
「創造神はいつもよくがんばってるよ、俺がのびのび破壊に勤しめるのもお前のおかげだ。お前あっての世界だからな。もっと自信持っていいんだぞ」
言われた嫌味の内容がわからないなりに慰めを口にする。
創造神と破壊神が対として世界に配置されるとき、その間には単純な等級によるパワーバランス以外にも、相性があると言われている。
等級が同じでも、相性が悪ければどちらかに力の比重が傾きやすく、酷い場合は共倒れしてしまうこともあるらしい。
その点俺と創造神は、等級は月とスッポン並に釣り合いが取れていないが、相性はいい。
なにより等級が上の創造神がこっちに合わせてくれようとしていることで、俺もなんとか均衡を保てる。
「俺とお前って相性いいらしいじゃん。だからお前が悲しそうにしてると、俺の方も調子狂っちゃって」
「……」
「いつもみたいに笑ってる顔が見たいなぁ、なんて……」
ゆるい癖のあるふわふわの創造神の髪をゆっくり撫でてやりながら、お世辞半分の言葉を掛ける。
自然と、そうしてやることが正解なような気がして、とにかく俺は言葉を尽くした。
職務上の同僚にする慰めではないが、職場消滅の危機とあっては俺も出し惜しみしていられない。切り札を出すしかないようだ。
「ほら、そ……ソウ……」
「!」
ずっと呼ぶように言われていた名を口にした瞬間の創造神の変化は劇的だった。
無言で伏せられていた顔がすごい勢いで上げられて、至近距離から凝視される。
近い!
「い、きなり起き上がるな!」
「カイくんっもう一回言って! 俺の名前!」
「名前じゃなくてただのアダ名だろ! ほら、元気になったんなら退けって」
「アダ名じゃないよ。俺の名前」
覆いかぶさったまま俺の頬を優しく撫でる創造神は、とても穏やかな顔で微笑んでいて、なぜかドキリと心臓が跳ねる。
笑顔だけど、目はとても真剣だ。
「俺の名前、呼んで。カイくん……」
「ぅ……ソウ……」
「嬉しい、カイくん」
いくつも口付けを落とされて、顔を背けることも許してもらえない。
創造神はとても嬉しそうで、幸せそうな表情で、自分から機嫌を取りに来た手前払いのけることもできなかった。
ソウと、そう呼ぶだけでこれほど喜ぶのなら、意地を張らずにもっと早く呼んでやればよかったと思ってしまうのは、俺が彼に絆され始めてしまっているからなのだろうか。
俺の態度に一喜一憂して、事あるごとにくっついてきて、惜しみなくキスの雨を降らせる彼の行動は、本当に、久しぶりに気の合う同僚が配属されたから、というだけなのだろうか……?
俺が混乱の極みに陥っていると、創造神の頭が妙に下の方に移動しているのに気づいた。
いつのまにかシャツのボタンがいくつか外されていて、創造神の髪がふわふわと俺の首筋をくすぐっている。
「ちょ、ちょ、なにやってんだお前?」
「お前じゃなくて、名前で呼んでよ」
「いやそれどころじゃ、っ、なんか噛み付いてないか!?」
「そんなことしてないよ。ちょっとカイくんの肌を堪能してただけ」
鎖骨のあたりにちりっと痛みがあって、噛み付かれたのかと思った俺は一瞬ほっとしたが、事態はまったく安心できない状態だ。
ボタンを外すだけでは飽き足らないのか、創造神の手が俺のシャツの裾から入ってきている。
脇腹を撫で上げられてぞわぞわした感覚が広がった。
「ホントになにしてんの!? 腹なんて触ってもなんにもなんないだろ!」
「そんなことないよ。薄いけどしっかり筋肉がついてて、肌はすごくなめらかだし、白くていくらでも痕つけられそうで」
「痕ってなに……っ!」
創造神の指が俺のぺったんこな胸を掠めたとき、身体が大げさにびくりと震えた。
なにこれ!?
自分でも過剰反応で恥ずかしさに死にたくなったが、創造神のほうも驚いているようで、まじまじと顔を見つめられる。いっそ殺せ……!
「カイくん、敏感だね?」
「やめろ、やめろやめろー! 悪ふざけにしては度が過ぎてるぞ!」
「悪ふざけじゃなかったらいいの?」
「そうじゃなかったらなんだっていうんだよ!」
覆いかぶさる創造神の下から這い出ようと藻掻く俺を片手で押さえつけて、奴は見たこともないほど堂々とした笑みを湛えた。
「本気」
「っひ、んん……!」
いつも押し付けられるだけの唇が、角度を変えて俺の口唇を抉じ開けた。熱い何かが押し入ってくる。
これ、そ、創造神のし、舌……!?
「んっ、ふ、そ、ぅあっ……ん、ソウ、やめ、なにしてんだ……」
なんとか顔を振って口付けを解き、目の前の野郎を渾身の力で睨みつける。
さっきから破壊の力はずっと放出しているのに、こいつの身体はぴくりとも跳ね除けることができなかった。
力の差を思い知らされる。
「カイくん知らないの? これがホントのキスだよ」
「ホントの、キス……?」
「そう。唇を触れ合わせるだけのキスは誰にでもできるけど、深いキスは誰にでもできるわけじゃない」
「……」
「本気の相手にだけ、だよ。少なくとも俺はね」
正直、知らなかった。
人間たちの営みを覗き見したときも、なぜか心臓がばくばくとうるさく鳴ってしまって、じっと見ていることができなくて、どんなことをしているのか詳しく見る余裕がなかった。
当然実践したこともないし、俺は業務以外のことはほとんど何も知らないに等しい。
なんとか日常生活を送りながら仕事をすることだけは出来ているが、創造神の創造物への理解はまだ全然及んでいなくて、勉強中だった。
人間の恋人同士や伴侶同士というのは、こんな行為を毎日のようにしているというのか?
苦しくて熱い、体を芯から暴かれてしまいそうな、こんなことを。
「わ、わかった。本気のキスは、勉強になった。すごく。ただそれを俺に実践するのはどうかと思わないか?」
「思わないけど?」
「そこ疑問持てよ!? いいか、俺達は恋人でも伴侶でも、そもそも友達でもないんだぞ! そんな相手に大切なキスをするのはおかしいだろ?」
「えっ」
「えっ?」
「……俺とカイくんって友達未満だったの……」
どうやら俺の言葉に引っかかりを覚えてくれたようで、創造神は呆然として身を起こした。
やっと出来た隙間からにゅるんと這い出して、急いでベッドから離れる。
まだシーツに両手をついて打ちひしがれている創造神に、友達ですらないというのは言いすぎたかとちょっと思わなくもなかったが……同僚との距離感を誤れば今後禍根が残ること間違いなしだ。
健全な職場環境の構築には適切な距離感というものが大事だ。
「と、とにかく! 今後こういうことは……控えろ! いいな!」
絶対やめろと言ってまた拗ねられても困るので、捨て台詞にしては易しい内容になってしまったそれを置いて、俺は急いで部屋を出た。
創造神の荒れ狂う気性を抑える、というミッションだけは完了させられることができたので良しとしよう。
玄関扉を蹴り開けてどかどかと大きな足音を立てて入ってきた時点でヤバいと思ったが、その後ダンボールの中身を片付けている俺の見えないところに行って壁かなにかを殴っている音が聞こえたことで、予感が確信に変わった。
やはり事務員さんのところに創造神を一人で残したのは間違いだったか……。
創造神が事務員さんを嫌っていることは分かっていたが、俺はとにかくあの気まずい場所から一秒でも早く逃げ出したくて、創造神を置いてきてしまった。
俺の判断ミスで創造神が荒れていると言われても仕方がない。
やつの機嫌を損ねると、どんな影響が出るか俺も完璧には把握できていない。俺が赴任してきたときのような、天変地異という言葉すら生ぬるい大惨事がまた起きないとも限らないわけだ。
その辺の事情を踏まえて、事務員さんにもなんとか忖度してもらいたいものだが、一応俺は事務員さんにとっては後輩にあたるのであまり強く言うのも憚られる。
今取れる最善手は、これから創造神のご機嫌を取って影響を最小限にする……だ。
「創造神、入るぞ」
片付けを途中で放り出して、返事も聞かず創造神の私室を開ける。
創造神はベッドに座って項垂れていたようで、俺が入ってきたことに驚いて顔を上げた。
とても頼りなさそうな表情をしている。
「どうしたどうした。男前が台無しだぞ」
「カイくん……」
「事務員さんになにかイヤなこと言われたのか?」
「……」
創造神の隣に腰掛けると、無言で抱きしめられた。そのままベッドに引き倒される。
うーん、これはかなりキてるっぽいな。
ここまで凹んでいる創造神を見るのは初めてだ。
彼はこの世界の創造が初仕事で、つまり比較的キャリアのない年若い神らしい。
俺が来る前は何度も癇癪を起こして、前任までの破壊神はみんな彼に追い出されたか、彼を見限って自ら辞表を出したかしていなくなっていったそうだ。
創造神の荒れっぷりに比例するように世界は混沌としていって、あわや星の運行にまで影響が出るかと言われた。
そこにちょうど前の仕事場から異動になった俺が配属されて、なんとか世界消滅の危機が去った───ということになる。
最近は多少落ち着いていたものの、彼は本来荒ぶる神なのだ。
世界を破壊する創造神、なんて不名誉なアダ名が彼につけられないよう気を配るのも俺の仕事だ。
「ほら、そんなに締め付けなくても俺はどこにも行かないから。何言われたんだ? 俺には言いたくないか?」
「……」
ベッドに倒れた俺の上にのしかかっている創造神は、顔を俺の胸に押し付けているので表情はわからない。
微かに左右に振られた頭から、俺に話せないわけではないがここで泣きつくのも嫌だというビミョウな男心が透けて見える。
事務員さん結構ズバズバ物言うところあるからなぁ。こいつとは相性が悪いんだろう。
「仕事のこと言われたか?」
「……」
「創造神はいつもよくがんばってるよ、俺がのびのび破壊に勤しめるのもお前のおかげだ。お前あっての世界だからな。もっと自信持っていいんだぞ」
言われた嫌味の内容がわからないなりに慰めを口にする。
創造神と破壊神が対として世界に配置されるとき、その間には単純な等級によるパワーバランス以外にも、相性があると言われている。
等級が同じでも、相性が悪ければどちらかに力の比重が傾きやすく、酷い場合は共倒れしてしまうこともあるらしい。
その点俺と創造神は、等級は月とスッポン並に釣り合いが取れていないが、相性はいい。
なにより等級が上の創造神がこっちに合わせてくれようとしていることで、俺もなんとか均衡を保てる。
「俺とお前って相性いいらしいじゃん。だからお前が悲しそうにしてると、俺の方も調子狂っちゃって」
「……」
「いつもみたいに笑ってる顔が見たいなぁ、なんて……」
ゆるい癖のあるふわふわの創造神の髪をゆっくり撫でてやりながら、お世辞半分の言葉を掛ける。
自然と、そうしてやることが正解なような気がして、とにかく俺は言葉を尽くした。
職務上の同僚にする慰めではないが、職場消滅の危機とあっては俺も出し惜しみしていられない。切り札を出すしかないようだ。
「ほら、そ……ソウ……」
「!」
ずっと呼ぶように言われていた名を口にした瞬間の創造神の変化は劇的だった。
無言で伏せられていた顔がすごい勢いで上げられて、至近距離から凝視される。
近い!
「い、きなり起き上がるな!」
「カイくんっもう一回言って! 俺の名前!」
「名前じゃなくてただのアダ名だろ! ほら、元気になったんなら退けって」
「アダ名じゃないよ。俺の名前」
覆いかぶさったまま俺の頬を優しく撫でる創造神は、とても穏やかな顔で微笑んでいて、なぜかドキリと心臓が跳ねる。
笑顔だけど、目はとても真剣だ。
「俺の名前、呼んで。カイくん……」
「ぅ……ソウ……」
「嬉しい、カイくん」
いくつも口付けを落とされて、顔を背けることも許してもらえない。
創造神はとても嬉しそうで、幸せそうな表情で、自分から機嫌を取りに来た手前払いのけることもできなかった。
ソウと、そう呼ぶだけでこれほど喜ぶのなら、意地を張らずにもっと早く呼んでやればよかったと思ってしまうのは、俺が彼に絆され始めてしまっているからなのだろうか。
俺の態度に一喜一憂して、事あるごとにくっついてきて、惜しみなくキスの雨を降らせる彼の行動は、本当に、久しぶりに気の合う同僚が配属されたから、というだけなのだろうか……?
俺が混乱の極みに陥っていると、創造神の頭が妙に下の方に移動しているのに気づいた。
いつのまにかシャツのボタンがいくつか外されていて、創造神の髪がふわふわと俺の首筋をくすぐっている。
「ちょ、ちょ、なにやってんだお前?」
「お前じゃなくて、名前で呼んでよ」
「いやそれどころじゃ、っ、なんか噛み付いてないか!?」
「そんなことしてないよ。ちょっとカイくんの肌を堪能してただけ」
鎖骨のあたりにちりっと痛みがあって、噛み付かれたのかと思った俺は一瞬ほっとしたが、事態はまったく安心できない状態だ。
ボタンを外すだけでは飽き足らないのか、創造神の手が俺のシャツの裾から入ってきている。
脇腹を撫で上げられてぞわぞわした感覚が広がった。
「ホントになにしてんの!? 腹なんて触ってもなんにもなんないだろ!」
「そんなことないよ。薄いけどしっかり筋肉がついてて、肌はすごくなめらかだし、白くていくらでも痕つけられそうで」
「痕ってなに……っ!」
創造神の指が俺のぺったんこな胸を掠めたとき、身体が大げさにびくりと震えた。
なにこれ!?
自分でも過剰反応で恥ずかしさに死にたくなったが、創造神のほうも驚いているようで、まじまじと顔を見つめられる。いっそ殺せ……!
「カイくん、敏感だね?」
「やめろ、やめろやめろー! 悪ふざけにしては度が過ぎてるぞ!」
「悪ふざけじゃなかったらいいの?」
「そうじゃなかったらなんだっていうんだよ!」
覆いかぶさる創造神の下から這い出ようと藻掻く俺を片手で押さえつけて、奴は見たこともないほど堂々とした笑みを湛えた。
「本気」
「っひ、んん……!」
いつも押し付けられるだけの唇が、角度を変えて俺の口唇を抉じ開けた。熱い何かが押し入ってくる。
これ、そ、創造神のし、舌……!?
「んっ、ふ、そ、ぅあっ……ん、ソウ、やめ、なにしてんだ……」
なんとか顔を振って口付けを解き、目の前の野郎を渾身の力で睨みつける。
さっきから破壊の力はずっと放出しているのに、こいつの身体はぴくりとも跳ね除けることができなかった。
力の差を思い知らされる。
「カイくん知らないの? これがホントのキスだよ」
「ホントの、キス……?」
「そう。唇を触れ合わせるだけのキスは誰にでもできるけど、深いキスは誰にでもできるわけじゃない」
「……」
「本気の相手にだけ、だよ。少なくとも俺はね」
正直、知らなかった。
人間たちの営みを覗き見したときも、なぜか心臓がばくばくとうるさく鳴ってしまって、じっと見ていることができなくて、どんなことをしているのか詳しく見る余裕がなかった。
当然実践したこともないし、俺は業務以外のことはほとんど何も知らないに等しい。
なんとか日常生活を送りながら仕事をすることだけは出来ているが、創造神の創造物への理解はまだ全然及んでいなくて、勉強中だった。
人間の恋人同士や伴侶同士というのは、こんな行為を毎日のようにしているというのか?
苦しくて熱い、体を芯から暴かれてしまいそうな、こんなことを。
「わ、わかった。本気のキスは、勉強になった。すごく。ただそれを俺に実践するのはどうかと思わないか?」
「思わないけど?」
「そこ疑問持てよ!? いいか、俺達は恋人でも伴侶でも、そもそも友達でもないんだぞ! そんな相手に大切なキスをするのはおかしいだろ?」
「えっ」
「えっ?」
「……俺とカイくんって友達未満だったの……」
どうやら俺の言葉に引っかかりを覚えてくれたようで、創造神は呆然として身を起こした。
やっと出来た隙間からにゅるんと這い出して、急いでベッドから離れる。
まだシーツに両手をついて打ちひしがれている創造神に、友達ですらないというのは言いすぎたかとちょっと思わなくもなかったが……同僚との距離感を誤れば今後禍根が残ること間違いなしだ。
健全な職場環境の構築には適切な距離感というものが大事だ。
「と、とにかく! 今後こういうことは……控えろ! いいな!」
絶対やめろと言ってまた拗ねられても困るので、捨て台詞にしては易しい内容になってしまったそれを置いて、俺は急いで部屋を出た。
創造神の荒れ狂う気性を抑える、というミッションだけは完了させられることができたので良しとしよう。
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