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発情中のヤンキーオメガ
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過ぎた快楽は毒になる。
オメガの発情期は肉欲と淫蕩のためのものと蔑まれることは多いが、それは目的を果たすための手段に過ぎない。
目的───アルファの精を身の奥に受け、子を為す。
それが叶わないとわかった瞬間に、オメガの体は牙をむく。
「ぐ、ぅ……あ゛ぁっ……」
断続的に激しく痛む腹を抱え、薄い布団の上に蹲る。
撫でてもさすっても手を当てても、痛みの末に殴っても、収縮し続ける臓腑が緩むことはない。
万力で直接腹を締め付けられているような苦痛をただ受け止めるしかない。
体中から脂汗が浮き、噛み締めすぎた歯がぎりぎりと立てる音を、不快に思う暇すらない。
シーツに爪を立てて拳を握り、達真は耐え続ける。
オメガの体が求めているのはただ一つ。
アルファの庇護を、精を受けろということだけ。一刻も早くそのための行動をしなければ、この苦痛はいつまでも続くと脅迫している。
一般に、オメガは抑制剤という薬を服用して発情期をやり過ごす。
しかしヒート時は通常よりフェロモンが分泌されるし、薬を飲んでも影響をゼロにできる者は少ないため、どちらにしろ数日間の休養は必須だ。
普通なら、体の内に籠もる熱を自分で適当に発散して、もしくは適当なアルファに助けを求めればすぐに落ち着く。
しかし番のアルファがいる場合は別だ。
番を求めて泣き叫ぶ体を持て余し、かといって他のアルファに縋り付くこともできない。
項に噛み痕のあるオメガは番以外のアルファを嫌悪、忌避する傾向が強まるからだ。体に触れさせることすらほぼない。
アルファの方も、オメガの発情期は確実に妊娠させる好機だ。番のオメガを放置することは殆どなく、いそいそと巣穴へ帰る。
オメガのフェロモンを浴びればアルファも発情状態に入り、互いの熱を鎮めるために共に過ごす。それが自然な形だ。
番のアルファの寵愛を得られず、発情期に妊娠できず、他のアルファを誘うこともできない。
出来損ないのオメガに訪れる孤独なヒートは、悲惨───その一言だ。
「……ッ」
過ぎた痛みに数瞬気絶していた。
そうしてまた痛みによって意識を取り戻させられる。
無意識に彷徨う視線が嫌で、きつく両目を閉じた。古ぼけたワンルームの部屋に番のアルファが来ることはない。
「くり、す」
震える唇が勝手に紡いだ名に、心より先に体が疼く。
たった数日だけの触れ合いで達真の閉ざされていた心をほどき、達真の体を陥落させたアルファ。
番でもないのに、拒否反応を起こさなかった不思議な男。
ごく短い突発的なヒートに付き合わせたことはある。
しかし数日続く周期的な発情期は彼と出会ってから初めてのことで。周期が迫っていることを、達真はクリスに告げなかった。
彼は達真のフェロモンを感じ取れない。
オメガのフェロモンがなければアルファは興奮状態にならず、何日もアルファを求めて痴態を晒すオメガに付き合うことはできない。
アルファを疲弊させるだけの行為に、あのお人好しを巻き込むことはない。
今までも達真はこうして一人でヒートをやり過ごしてきた。
今回も大丈夫なはずだ。
先程始まったヒートは、今まで通り5日はかかるだろう。震える指先で、あらかじめ準備してある定型文の休暇願いを各職場に送信することはできた。
枕元に水と、少量口にできる食料も置いた。
あとは市販の痛み止めで誤魔化しながら、ひたすら眠れるよう祈りつつ時間を消費すればいい。
「クリス、くりす……ぅ、くっ……」
何度目かに激しい痛みが全身を駆け巡り、目の奥がちかちかと明滅した。
痛みがもはや痛く感じられない。大きなものが全身を叩いているような衝撃だけがある。
骨までばらばらになりそうだと思うほどの波が襲ってきて、それでもいいかと思った。一生こんなに苦しいくらいなら、もう目覚めなくていい。
傷みを知らない金色のきらめきが一瞬過ぎる。
最後に思い出すのがあの男というのは、なんだか癪だが、悪い気分ではなかった。
ゆっくりと瞼が持ち上がり、穏やかな寝覚めに驚いて飛び起きる。
途端、くらりと視界が廻った。
頭を押さえて崩折れた達真の体を、誰かが受け止めた。
僅かな記憶に引っかかる硬い筋肉のある腕ではない。
比較的細くてしなやかな、しかし男の長い腕だ。白い肌と几帳面に切りそろえられた爪を持つ手の甲が達真の顔の近くにある。
「……?」
「大丈夫? 急に起き上がったら危ないよ」
「……クリス」
達真の顔を覗き込んで微笑むのは、いるはずのない男だった。
番のいる達真を厭うことなく纏わりつく、風変わりなアルファ。
クリスの腕に促されて再び布団に横たわる。
見上げた顔は曇っていて、快晴の空を思わせるブルーの瞳は濁って見えた。
「発情期、だよね。ごめんね、勝手に上がらせてもらったよ」
「それはいいけど……なんで来たんだ」
「たぶん、誤送信だね。『タナカ』に送ろうとしたメッセージ、僕のところに来たよ」
端末の画面を見せられて舌打ちする。
メッセージは定型文で用意しているが、送信先を選ぶのは手動だ。その時に間違えてしまったのだろう。
ろくに返事もせず既読スルーの達真相手に、この男はなにが楽しいのか一日一回はメッセージを送ってくる。誤送信は、一番上にクリスのアカウントが来てしまっていたせいだ。
改めて「ペットショップ タナカ」の店長にメッセージを送り、緩慢に布団の横にいる男を見上げる。
「ヒートがマシになってる。なんかしたのか」
「ご期待に沿えず申し訳ないけど、まだなにもしてないよ」
「期待はしてねぇ」
「残念。これ、知ってる? オメガのヒート用鎮痛剤。準備しておいた甲斐があった」
クリスが見せたのは、馴染みのない薬の箱だった。しかし内容は聞き覚えがある。
番と離れ、発情期が痛みに変わった頃、薬で症状を抑えるべく方々調べ回ったことがあった。ヒート時に特化した鎮痛剤の存在もその時知った。
オメガの発情期用薬剤の研究は意外と進んでいて、諸外国程ではないが国内でも広く流通している。
しかし、高価なのだ。
バイトを掛け持ちして生きるのに精一杯で、抑制剤も安くて弱いものしか買えない達真には手が届かない価格だった。
そうしてひとつひとつ生きる手段を諦めていくうち、達真はゆっくりと死に向かう流れに身を任せていった。
ヒートの熱で体を炙られるたび、痛みに意識が遠のくたび、いつか苦しみのない場所に行ける日をぼんやりと望みながら自らを慰めた。
それなのに、このアルファのせいで達真の人生は台無しだ。
もっと生きなくてはならなくなった。
もっと生きていたいと思ってしまった。
「余計なことすんな」
「うん、悪態をつけるのなら上等だ。痛いところはない?」
「こんくらい平気だ」
内臓がねじ切れそうな痛みがおさまっても、それまでに苛まれた全身へのダメージは残っている。手足は痺れているし、倦怠感がひどい。ヒート由来の発熱もある。
しかし、発情期真っ只中であるというのに苦しくない状態は久しぶりだった。
「薬は……助かった。もういいだろ、あんたは帰れ」
視線が情けなく揺れてしまわないよう、目に力を込めて睨み付ける。
周囲に人を寄せ付けないことに役立ってきた達真の眼光は、しかしクリスには効いたためしがなかった。
「なに言ってるの、このまま放っておくわけないでしょ。さぁ行くよ」
「は?」
「掴まっててね」
「ぅわっ!?」
毛布ごと敷布団から引き剥がされ、横抱きに抱えられる。
いわゆるお姫様抱っこの姿勢に達真は暴れたが、すぐに力が尽きて動けなくなった。
思った以上にヒートによって気力ごと体力を削り取られていたらしい。
抵抗をやめてぐったりとした体をクリスが意気揚々と運んでいく。
決して軽くはないはずの達真を落としそうになることもないまま、アパート前に止められていた車に乗せられた。クリスが運転席に乗り、滑らかに発進する。
嫌がる暇もないほどあっという間に、達真はクリスのマンションへ連れ込まれてしまった。
何度か訪れたクリスの部屋はいつ来ても整頓されている。
しかしよくよく見れば、フローリングやカーペットはキズだらけで、壁紙やソファカバーには補修の跡がある。
それらの傷の元凶である、スタンダードプードルのマロンが元気よく二人を出迎えた。
抱えられている達真を心配するように後ろ足でぴょんぴょん跳び、帰宅した主人へと嬉しそうにすり寄る。
「邪魔するよ、マロン、ミケ」
達真は腕を伸ばしてマロンのもこもこした頭を撫でてやった。
それから遅れて出迎えにやってきた、シャイで気位の高い三毛猫にも挨拶をする。
主人に似ず可愛らしい二匹を存分に愛でたいところだったが、クリスによってすぐに寝室へ連れて行かれてしまったためそれは叶わなかった。
「痛いところや苦しいところはない? 少し服を緩めるよ」
「あぁ……お前よく俺のこと抱えてここまで来れたな」
「惚れ直した?」
「……」
こういうふざけたところがなければ、悪くない男なのに。
達真は思いっきり顔を背けてベッドに寝そべった。
安堵したせいか、大きな欠伸が出る。広く清潔で、ほんのりと良い香りのするベッドは余計に達真の眠気を誘った。
「眠れそう?」
「……あぁ……」
「良かった。おやすみ」
セットしていない傷んだ髪をさらりと撫でられ、額にやわらかいものが触れる。肩が隠れる程度に上掛けを引き上げて、クリスは部屋を出て行った。
もう目を開けていられない。
達真は抗わず、心地良い睡魔に身を委ねた。
なぜ、寝具に染み付いた男の匂いにこれほどまで安堵できるのか。嫌な人間も恐ろしい他人も入ってこない自宅より、番ですらないアルファのベッドで眠るほうが安心できるなんて、絶対におかしい。
その理由を、達真はいよいよ無視できなくなっている。
「…………よく寝た」
次に目が覚めたら、室内はすっかり暗くなっていた。
部屋には達真ひとり。ベッド横のテーブルに達真のスマホや財布、水のペットボトルが置かれていた。遠慮なく水を飲む。
ぬるいボトルを持つ手には熱っぽさがあった。
クリスが飲ませたというヒート鎮痛剤はよく効いたが、当然一時的なものだ。恐らく日に何錠も飲んではいけないだろうし、高価な薬を使うことにも抵抗がある。
しかし番でもないアルファの家で発情状態のまま寝ているのもどうなのか。
多少無理をしてでも家に帰るべきか……考え込んだところで、寝室のドアが開いた。
「あ、起きたんだね。気分はどう?」
「ん。別に……」
暗がりの中でクリスの顔を見た瞬間、心臓が大きく脈打った。
思わず胸を押さえる。
なんだ、これは。
「良かった。起きられるならご飯にする?」
クリスは達真の変調に気づかず、ベッドの端に腰掛けた。達真の寝乱れた髪を指で梳き、のん気な笑みを浮かべている。
達真は荒れ狂う感情と、体の奥から湧き上がる熱を制御するのに必死だった。
────俺のアルファ。なぜ離れていた。どうして自分を置いていった。
今すぐ欲しい。ずっと求めていた。俺の熱を鎮めてくれ。空洞を埋めてくれ────
伸ばしかけた手を理性で留める。
馬鹿なことを。こいつは達真のアルファなんかじゃない。
達真はもう誰のものにもなれない。項には噛み跡が今もあり消えることはない。
たとえ達真がどんなに望んでも、誰のものになることもできない。
「苦しいんだね」
クリスの手のひらが達真の頬を包み込んだ。
苦痛に歪む口元を撫で、堪えきれず流れた涙を拭う。
「おまえは……ひどいやつだ……」
せっかく諦めることができていたのに、彼のせいで達真はまた、叶わぬ望みを持つことになってしまった。
決して自分のものにできないのに、欲しがる気持ちを思い出させられた。
今だって、この優しい手に縋り付きたくてたまらない。
「悪いが、出てってくれ……もうあまり、もちそうにない」
「薬が切れてきた? それなら好都合だね」
「……は?」
肩を押されてシーツに倒れる。
ぽかんと見上げる達真を、クリスは笑顔のまま押し倒していた。
「僕はひどい男だよ。だからヒートで苦しむ君につけこんで、我が物にしようとしている」
「い、いや待て。番でもないアルファにヒートのオメガの相手は無理だ」
「無理じゃないよ。これ、わかる?」
馬乗りになったクリスが不意に下肢を押し付けてきた。
布越しだが明らかに固い感触があって、達真は今度こそ硬直する。
「好きな子が発情してたら誰でもこうなるよ。番とか関係なくね」
「いや……でも」
「達真くんは嫌? 前に発情期を一緒に過ごしたとき、嫌だった?」
そんなことを聞くな。
唇を噛み締めて顔を反らすことが答えになるなんて、わかっていてもどうしようもなかった。
そしてクリスはあろうことか、無防備に晒された達真の首筋に鼻先を寄せ、思いっきり匂いを吸い込んだ。
「はぁ……いい匂い。達真くんの匂いだ……」
「適当言うな。俺のフェロモンは、」
「嘘じゃないよ。ほらここから、達真くんの匂いがする」
それこそ嘘だと言おうとしたのに、首筋を舐め上げられて情けない声しか出せなかった。
達真は再び口唇を噛み締め、さざ波を立て始めた快楽に抗う。
クリスと肌を合わせる心地よさを知ってしまっている。
薬の効果が完全に切れれば、きっと自分は身も世もなく彼に縋り付いて情けを請うだろう。そんなことはしたくない。なのに。
「僕のせいだよ、達真くんは悪くない。がんばって耐えていた達真くんを、僕が攫って閉じ込めたんだ。だから、仕方ないんだよ」
「んなのは……詭弁だ……」
「ふふ。こんなときでも賢くて気高い達真くん、大好きだよ。今楽にしてあげるからね」
男の浮かべる微笑みには慈愛すら感じられた。
服を脱がせていくクリスの長い指を、達真は力を振り絞って握る。
「てめぇ……ふざけんなよ……」
「えっ」
熱に浮かされ、意識も朦朧としているであろうオメガに突然恫喝され、クリスは目を丸くした。
「なに、強姦魔みてぇなこと言ってんだ……てめぇは俺の、なんだ?」
「こ、恋人です……」
「それならもっと堂々としろ。お情けなんていらねンだよ……アルファのおまえが、俺に尽くせ」
息も絶え絶えに言って、達真は今度こそ倒れ込んだ。
またあの痛みがやってくる。手が震えて、目の前の男を睨みつける気力すらなくなっていく。
全身を強張らせる達真とは対照的に、クリスは微笑んでいた。しかしそれは先程の慈悲に満ちたものではなく、獰猛な感情を抑え込むためのものだ。
強者に支配され、屈服させられる予感に達真の背筋が粟立つ。
「本当に君は最高だよ、達真くん。お望み通り、ご奉仕させていただきます」
「っ……早く、しろ」
「うん、つらいよね。すぐ楽にするから」
自由の効かなくなってきた手足を動かして、自ら服を脱ぎ捨てる。
考えてみれば、達真がクリスの心配をする必要などこれっぽっちもないのだ。
この異常性癖アルファは、番うこともできないオメガに欲情し、自ら奉仕したがるド変態だ。達真は嫌がりこそすれ、クリスの負担を思って遠慮する義理など微塵もない。
向こうが望んで仕えたがっているのだから、達真は鷹揚に受け入れてやればいい。初めからそうすべきだった。
そうと決まれば達真が望むことは一つ。
一糸まとわぬ火照った体を仰向けにし、足を広げ秘部を見せつける屈辱的な格好で、達真はクリスを睨みつけた。
「今すぐソレをここにぶち込んで、中で出せ」
自分で広げて見せた後孔は、すでにとろけて緩み切っている。指でほぐす必要すらない。
見上げたクリスの瞳に加虐の火が灯る。
しかし達真はアルファに主導権を握らせるつもりは更々なかった。
「すぐに楽にすると言ったよな。十秒以内に出せ」
「えっ! 十秒!?」
「できねぇのかよ、ド変態のくせに。俺は体がつらいからマグロする。てめぇは適当に腰振って十秒で出せ」
とんでもない俺様な発言に、クリスは慌てて挿入の準備に取り掛かった。
もっともスキンはさせないし、発情期のオメガは潤滑剤がなくとも濡れるためそれほど手間はない。
すぐに昂ぶったアルファの雄が侵入してきて、達真は苦しげに喘ぎながらも笑った。
「は、はぁ……っ、ふ、はは」
「大丈夫? 急いで入れちゃったけど、痛くない?」
「痛くねぇ……それより、あと、三秒しかないぞ」
「いや無理だって! お願いだから意地悪しないで、ゆっくりしよ? ね?」
焦りと快感とで汗をかいている極上のアルファが、オメガの機嫌を伺って許しを請うなんて。
達真は高笑いをなんとか堪え、可哀想な恋人に慈悲を与えた。
「仕方ねぇな。好きなようにやれ、許す」
「ありがとう……あぁもう、達真くんって本当にひどい人なんだから」
「お互い様だろ」
「お似合いってことだよね」
まったくこの男は口が減らない。
直後に始まった抽挿は達真の体に負担をかけず、それでいて互いの快楽を追求する絶妙なものだった。
待ちに待ったアルファの精を受け入れ、体は歓喜に震える。
「あっ、あぁ……っ、クリス、くりす……ッ」
「達真、愛してる……一緒に……」
「んっ……あ、ぁ────」
求め合って高め合う発情期のなんと甘美なことか。
ヒートの熱が少しだけ落ち着き、甲斐甲斐しく世話を焼くクリスをぼんやり眺めながら、達真はとろとろと眠りに落ちていった。
出会う順番が違っていたら。
そんなどうしようもない、何度も望んだ、自分らしくない後悔に胸を痛めながら。
オメガの発情期は肉欲と淫蕩のためのものと蔑まれることは多いが、それは目的を果たすための手段に過ぎない。
目的───アルファの精を身の奥に受け、子を為す。
それが叶わないとわかった瞬間に、オメガの体は牙をむく。
「ぐ、ぅ……あ゛ぁっ……」
断続的に激しく痛む腹を抱え、薄い布団の上に蹲る。
撫でてもさすっても手を当てても、痛みの末に殴っても、収縮し続ける臓腑が緩むことはない。
万力で直接腹を締め付けられているような苦痛をただ受け止めるしかない。
体中から脂汗が浮き、噛み締めすぎた歯がぎりぎりと立てる音を、不快に思う暇すらない。
シーツに爪を立てて拳を握り、達真は耐え続ける。
オメガの体が求めているのはただ一つ。
アルファの庇護を、精を受けろということだけ。一刻も早くそのための行動をしなければ、この苦痛はいつまでも続くと脅迫している。
一般に、オメガは抑制剤という薬を服用して発情期をやり過ごす。
しかしヒート時は通常よりフェロモンが分泌されるし、薬を飲んでも影響をゼロにできる者は少ないため、どちらにしろ数日間の休養は必須だ。
普通なら、体の内に籠もる熱を自分で適当に発散して、もしくは適当なアルファに助けを求めればすぐに落ち着く。
しかし番のアルファがいる場合は別だ。
番を求めて泣き叫ぶ体を持て余し、かといって他のアルファに縋り付くこともできない。
項に噛み痕のあるオメガは番以外のアルファを嫌悪、忌避する傾向が強まるからだ。体に触れさせることすらほぼない。
アルファの方も、オメガの発情期は確実に妊娠させる好機だ。番のオメガを放置することは殆どなく、いそいそと巣穴へ帰る。
オメガのフェロモンを浴びればアルファも発情状態に入り、互いの熱を鎮めるために共に過ごす。それが自然な形だ。
番のアルファの寵愛を得られず、発情期に妊娠できず、他のアルファを誘うこともできない。
出来損ないのオメガに訪れる孤独なヒートは、悲惨───その一言だ。
「……ッ」
過ぎた痛みに数瞬気絶していた。
そうしてまた痛みによって意識を取り戻させられる。
無意識に彷徨う視線が嫌で、きつく両目を閉じた。古ぼけたワンルームの部屋に番のアルファが来ることはない。
「くり、す」
震える唇が勝手に紡いだ名に、心より先に体が疼く。
たった数日だけの触れ合いで達真の閉ざされていた心をほどき、達真の体を陥落させたアルファ。
番でもないのに、拒否反応を起こさなかった不思議な男。
ごく短い突発的なヒートに付き合わせたことはある。
しかし数日続く周期的な発情期は彼と出会ってから初めてのことで。周期が迫っていることを、達真はクリスに告げなかった。
彼は達真のフェロモンを感じ取れない。
オメガのフェロモンがなければアルファは興奮状態にならず、何日もアルファを求めて痴態を晒すオメガに付き合うことはできない。
アルファを疲弊させるだけの行為に、あのお人好しを巻き込むことはない。
今までも達真はこうして一人でヒートをやり過ごしてきた。
今回も大丈夫なはずだ。
先程始まったヒートは、今まで通り5日はかかるだろう。震える指先で、あらかじめ準備してある定型文の休暇願いを各職場に送信することはできた。
枕元に水と、少量口にできる食料も置いた。
あとは市販の痛み止めで誤魔化しながら、ひたすら眠れるよう祈りつつ時間を消費すればいい。
「クリス、くりす……ぅ、くっ……」
何度目かに激しい痛みが全身を駆け巡り、目の奥がちかちかと明滅した。
痛みがもはや痛く感じられない。大きなものが全身を叩いているような衝撃だけがある。
骨までばらばらになりそうだと思うほどの波が襲ってきて、それでもいいかと思った。一生こんなに苦しいくらいなら、もう目覚めなくていい。
傷みを知らない金色のきらめきが一瞬過ぎる。
最後に思い出すのがあの男というのは、なんだか癪だが、悪い気分ではなかった。
ゆっくりと瞼が持ち上がり、穏やかな寝覚めに驚いて飛び起きる。
途端、くらりと視界が廻った。
頭を押さえて崩折れた達真の体を、誰かが受け止めた。
僅かな記憶に引っかかる硬い筋肉のある腕ではない。
比較的細くてしなやかな、しかし男の長い腕だ。白い肌と几帳面に切りそろえられた爪を持つ手の甲が達真の顔の近くにある。
「……?」
「大丈夫? 急に起き上がったら危ないよ」
「……クリス」
達真の顔を覗き込んで微笑むのは、いるはずのない男だった。
番のいる達真を厭うことなく纏わりつく、風変わりなアルファ。
クリスの腕に促されて再び布団に横たわる。
見上げた顔は曇っていて、快晴の空を思わせるブルーの瞳は濁って見えた。
「発情期、だよね。ごめんね、勝手に上がらせてもらったよ」
「それはいいけど……なんで来たんだ」
「たぶん、誤送信だね。『タナカ』に送ろうとしたメッセージ、僕のところに来たよ」
端末の画面を見せられて舌打ちする。
メッセージは定型文で用意しているが、送信先を選ぶのは手動だ。その時に間違えてしまったのだろう。
ろくに返事もせず既読スルーの達真相手に、この男はなにが楽しいのか一日一回はメッセージを送ってくる。誤送信は、一番上にクリスのアカウントが来てしまっていたせいだ。
改めて「ペットショップ タナカ」の店長にメッセージを送り、緩慢に布団の横にいる男を見上げる。
「ヒートがマシになってる。なんかしたのか」
「ご期待に沿えず申し訳ないけど、まだなにもしてないよ」
「期待はしてねぇ」
「残念。これ、知ってる? オメガのヒート用鎮痛剤。準備しておいた甲斐があった」
クリスが見せたのは、馴染みのない薬の箱だった。しかし内容は聞き覚えがある。
番と離れ、発情期が痛みに変わった頃、薬で症状を抑えるべく方々調べ回ったことがあった。ヒート時に特化した鎮痛剤の存在もその時知った。
オメガの発情期用薬剤の研究は意外と進んでいて、諸外国程ではないが国内でも広く流通している。
しかし、高価なのだ。
バイトを掛け持ちして生きるのに精一杯で、抑制剤も安くて弱いものしか買えない達真には手が届かない価格だった。
そうしてひとつひとつ生きる手段を諦めていくうち、達真はゆっくりと死に向かう流れに身を任せていった。
ヒートの熱で体を炙られるたび、痛みに意識が遠のくたび、いつか苦しみのない場所に行ける日をぼんやりと望みながら自らを慰めた。
それなのに、このアルファのせいで達真の人生は台無しだ。
もっと生きなくてはならなくなった。
もっと生きていたいと思ってしまった。
「余計なことすんな」
「うん、悪態をつけるのなら上等だ。痛いところはない?」
「こんくらい平気だ」
内臓がねじ切れそうな痛みがおさまっても、それまでに苛まれた全身へのダメージは残っている。手足は痺れているし、倦怠感がひどい。ヒート由来の発熱もある。
しかし、発情期真っ只中であるというのに苦しくない状態は久しぶりだった。
「薬は……助かった。もういいだろ、あんたは帰れ」
視線が情けなく揺れてしまわないよう、目に力を込めて睨み付ける。
周囲に人を寄せ付けないことに役立ってきた達真の眼光は、しかしクリスには効いたためしがなかった。
「なに言ってるの、このまま放っておくわけないでしょ。さぁ行くよ」
「は?」
「掴まっててね」
「ぅわっ!?」
毛布ごと敷布団から引き剥がされ、横抱きに抱えられる。
いわゆるお姫様抱っこの姿勢に達真は暴れたが、すぐに力が尽きて動けなくなった。
思った以上にヒートによって気力ごと体力を削り取られていたらしい。
抵抗をやめてぐったりとした体をクリスが意気揚々と運んでいく。
決して軽くはないはずの達真を落としそうになることもないまま、アパート前に止められていた車に乗せられた。クリスが運転席に乗り、滑らかに発進する。
嫌がる暇もないほどあっという間に、達真はクリスのマンションへ連れ込まれてしまった。
何度か訪れたクリスの部屋はいつ来ても整頓されている。
しかしよくよく見れば、フローリングやカーペットはキズだらけで、壁紙やソファカバーには補修の跡がある。
それらの傷の元凶である、スタンダードプードルのマロンが元気よく二人を出迎えた。
抱えられている達真を心配するように後ろ足でぴょんぴょん跳び、帰宅した主人へと嬉しそうにすり寄る。
「邪魔するよ、マロン、ミケ」
達真は腕を伸ばしてマロンのもこもこした頭を撫でてやった。
それから遅れて出迎えにやってきた、シャイで気位の高い三毛猫にも挨拶をする。
主人に似ず可愛らしい二匹を存分に愛でたいところだったが、クリスによってすぐに寝室へ連れて行かれてしまったためそれは叶わなかった。
「痛いところや苦しいところはない? 少し服を緩めるよ」
「あぁ……お前よく俺のこと抱えてここまで来れたな」
「惚れ直した?」
「……」
こういうふざけたところがなければ、悪くない男なのに。
達真は思いっきり顔を背けてベッドに寝そべった。
安堵したせいか、大きな欠伸が出る。広く清潔で、ほんのりと良い香りのするベッドは余計に達真の眠気を誘った。
「眠れそう?」
「……あぁ……」
「良かった。おやすみ」
セットしていない傷んだ髪をさらりと撫でられ、額にやわらかいものが触れる。肩が隠れる程度に上掛けを引き上げて、クリスは部屋を出て行った。
もう目を開けていられない。
達真は抗わず、心地良い睡魔に身を委ねた。
なぜ、寝具に染み付いた男の匂いにこれほどまで安堵できるのか。嫌な人間も恐ろしい他人も入ってこない自宅より、番ですらないアルファのベッドで眠るほうが安心できるなんて、絶対におかしい。
その理由を、達真はいよいよ無視できなくなっている。
「…………よく寝た」
次に目が覚めたら、室内はすっかり暗くなっていた。
部屋には達真ひとり。ベッド横のテーブルに達真のスマホや財布、水のペットボトルが置かれていた。遠慮なく水を飲む。
ぬるいボトルを持つ手には熱っぽさがあった。
クリスが飲ませたというヒート鎮痛剤はよく効いたが、当然一時的なものだ。恐らく日に何錠も飲んではいけないだろうし、高価な薬を使うことにも抵抗がある。
しかし番でもないアルファの家で発情状態のまま寝ているのもどうなのか。
多少無理をしてでも家に帰るべきか……考え込んだところで、寝室のドアが開いた。
「あ、起きたんだね。気分はどう?」
「ん。別に……」
暗がりの中でクリスの顔を見た瞬間、心臓が大きく脈打った。
思わず胸を押さえる。
なんだ、これは。
「良かった。起きられるならご飯にする?」
クリスは達真の変調に気づかず、ベッドの端に腰掛けた。達真の寝乱れた髪を指で梳き、のん気な笑みを浮かべている。
達真は荒れ狂う感情と、体の奥から湧き上がる熱を制御するのに必死だった。
────俺のアルファ。なぜ離れていた。どうして自分を置いていった。
今すぐ欲しい。ずっと求めていた。俺の熱を鎮めてくれ。空洞を埋めてくれ────
伸ばしかけた手を理性で留める。
馬鹿なことを。こいつは達真のアルファなんかじゃない。
達真はもう誰のものにもなれない。項には噛み跡が今もあり消えることはない。
たとえ達真がどんなに望んでも、誰のものになることもできない。
「苦しいんだね」
クリスの手のひらが達真の頬を包み込んだ。
苦痛に歪む口元を撫で、堪えきれず流れた涙を拭う。
「おまえは……ひどいやつだ……」
せっかく諦めることができていたのに、彼のせいで達真はまた、叶わぬ望みを持つことになってしまった。
決して自分のものにできないのに、欲しがる気持ちを思い出させられた。
今だって、この優しい手に縋り付きたくてたまらない。
「悪いが、出てってくれ……もうあまり、もちそうにない」
「薬が切れてきた? それなら好都合だね」
「……は?」
肩を押されてシーツに倒れる。
ぽかんと見上げる達真を、クリスは笑顔のまま押し倒していた。
「僕はひどい男だよ。だからヒートで苦しむ君につけこんで、我が物にしようとしている」
「い、いや待て。番でもないアルファにヒートのオメガの相手は無理だ」
「無理じゃないよ。これ、わかる?」
馬乗りになったクリスが不意に下肢を押し付けてきた。
布越しだが明らかに固い感触があって、達真は今度こそ硬直する。
「好きな子が発情してたら誰でもこうなるよ。番とか関係なくね」
「いや……でも」
「達真くんは嫌? 前に発情期を一緒に過ごしたとき、嫌だった?」
そんなことを聞くな。
唇を噛み締めて顔を反らすことが答えになるなんて、わかっていてもどうしようもなかった。
そしてクリスはあろうことか、無防備に晒された達真の首筋に鼻先を寄せ、思いっきり匂いを吸い込んだ。
「はぁ……いい匂い。達真くんの匂いだ……」
「適当言うな。俺のフェロモンは、」
「嘘じゃないよ。ほらここから、達真くんの匂いがする」
それこそ嘘だと言おうとしたのに、首筋を舐め上げられて情けない声しか出せなかった。
達真は再び口唇を噛み締め、さざ波を立て始めた快楽に抗う。
クリスと肌を合わせる心地よさを知ってしまっている。
薬の効果が完全に切れれば、きっと自分は身も世もなく彼に縋り付いて情けを請うだろう。そんなことはしたくない。なのに。
「僕のせいだよ、達真くんは悪くない。がんばって耐えていた達真くんを、僕が攫って閉じ込めたんだ。だから、仕方ないんだよ」
「んなのは……詭弁だ……」
「ふふ。こんなときでも賢くて気高い達真くん、大好きだよ。今楽にしてあげるからね」
男の浮かべる微笑みには慈愛すら感じられた。
服を脱がせていくクリスの長い指を、達真は力を振り絞って握る。
「てめぇ……ふざけんなよ……」
「えっ」
熱に浮かされ、意識も朦朧としているであろうオメガに突然恫喝され、クリスは目を丸くした。
「なに、強姦魔みてぇなこと言ってんだ……てめぇは俺の、なんだ?」
「こ、恋人です……」
「それならもっと堂々としろ。お情けなんていらねンだよ……アルファのおまえが、俺に尽くせ」
息も絶え絶えに言って、達真は今度こそ倒れ込んだ。
またあの痛みがやってくる。手が震えて、目の前の男を睨みつける気力すらなくなっていく。
全身を強張らせる達真とは対照的に、クリスは微笑んでいた。しかしそれは先程の慈悲に満ちたものではなく、獰猛な感情を抑え込むためのものだ。
強者に支配され、屈服させられる予感に達真の背筋が粟立つ。
「本当に君は最高だよ、達真くん。お望み通り、ご奉仕させていただきます」
「っ……早く、しろ」
「うん、つらいよね。すぐ楽にするから」
自由の効かなくなってきた手足を動かして、自ら服を脱ぎ捨てる。
考えてみれば、達真がクリスの心配をする必要などこれっぽっちもないのだ。
この異常性癖アルファは、番うこともできないオメガに欲情し、自ら奉仕したがるド変態だ。達真は嫌がりこそすれ、クリスの負担を思って遠慮する義理など微塵もない。
向こうが望んで仕えたがっているのだから、達真は鷹揚に受け入れてやればいい。初めからそうすべきだった。
そうと決まれば達真が望むことは一つ。
一糸まとわぬ火照った体を仰向けにし、足を広げ秘部を見せつける屈辱的な格好で、達真はクリスを睨みつけた。
「今すぐソレをここにぶち込んで、中で出せ」
自分で広げて見せた後孔は、すでにとろけて緩み切っている。指でほぐす必要すらない。
見上げたクリスの瞳に加虐の火が灯る。
しかし達真はアルファに主導権を握らせるつもりは更々なかった。
「すぐに楽にすると言ったよな。十秒以内に出せ」
「えっ! 十秒!?」
「できねぇのかよ、ド変態のくせに。俺は体がつらいからマグロする。てめぇは適当に腰振って十秒で出せ」
とんでもない俺様な発言に、クリスは慌てて挿入の準備に取り掛かった。
もっともスキンはさせないし、発情期のオメガは潤滑剤がなくとも濡れるためそれほど手間はない。
すぐに昂ぶったアルファの雄が侵入してきて、達真は苦しげに喘ぎながらも笑った。
「は、はぁ……っ、ふ、はは」
「大丈夫? 急いで入れちゃったけど、痛くない?」
「痛くねぇ……それより、あと、三秒しかないぞ」
「いや無理だって! お願いだから意地悪しないで、ゆっくりしよ? ね?」
焦りと快感とで汗をかいている極上のアルファが、オメガの機嫌を伺って許しを請うなんて。
達真は高笑いをなんとか堪え、可哀想な恋人に慈悲を与えた。
「仕方ねぇな。好きなようにやれ、許す」
「ありがとう……あぁもう、達真くんって本当にひどい人なんだから」
「お互い様だろ」
「お似合いってことだよね」
まったくこの男は口が減らない。
直後に始まった抽挿は達真の体に負担をかけず、それでいて互いの快楽を追求する絶妙なものだった。
待ちに待ったアルファの精を受け入れ、体は歓喜に震える。
「あっ、あぁ……っ、クリス、くりす……ッ」
「達真、愛してる……一緒に……」
「んっ……あ、ぁ────」
求め合って高め合う発情期のなんと甘美なことか。
ヒートの熱が少しだけ落ち着き、甲斐甲斐しく世話を焼くクリスをぼんやり眺めながら、達真はとろとろと眠りに落ちていった。
出会う順番が違っていたら。
そんなどうしようもない、何度も望んだ、自分らしくない後悔に胸を痛めながら。
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