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番外 三十 マルチバース異世界編 猟師のダリオとバグ有テオドール
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マルチバースで、異世界で生まれた猟師ダリオと水饅頭テオドールの本編スピンアウトです。
ダリオをつがい認定する王子の横恋慕にピンチとなるふたりの話になります。
途中横恋慕王子のダリオに性的暴行したいムーブ(顔や腰などお触りまで)や残酷な暴力描写がありますが、いつものハピエン予定です!
本編ダリオより環境に恵まれなくて、異世界ダリオはやや尖り気味。
節のナンバリングの関係でちょっと細切れ更新です。
大丈夫そうな方はお付き合い下さいませ\(^o^)/
□□□
1
面倒なことになったなとダリオはため息を吐きたくなった。
東の果ての村の猟師、ダリオは村の爪弾き者だ。
ダリオがいると、怪異めいた妙な事が起こるというので、村人たちから避けられていた。
ただ、獲物を持ち込む時だけは多少愛想よくしてもらえる。
ダリオも独りでは生きていけないので、物々交換で生計を立てていた。
以前は、一匹の猟犬を飼っていたのだが、村人たちとトラブルがあって、不幸にも犬は死んでしまった。
それからダリオは村から外れた森の中で独り暮らしをしており、猟犬のテオドールがもういないのが寂しくてたまらない日々を送っていた。
そんなある日、ちいさなスライムがダリオの家に迷い込んできて、仔猫のようなちっちゃな口とと、くりくりした目をして、ダリオに懐いてきたものだから、寂しいダリオはこれも怪異の類だがと思いつつも、懐に入れてしまったのだった。
ダリオはあまり裕福ではなかったけれども、自分の食事よりも、水饅頭のようなちいさなスライムに大きい方を分け与えるようにした。
死んだ犬の名前をつけるのもどうかなぁと思いつつ、他に思いつかなくて、水饅頭のような彼にもテオドールと名付けてしまう。
テオ、と呼ぶと、「ムキュ」とか、「キュウ」とか、鳴き声めいたものを上げるので、意思疎通はできているっぽいなとダリオは嬉しくなる。
しかも、言葉を根気よく教えてやると、
「だ、い……お、っ、……しゃっ、……」
と、ダリオの名前を呼べるようになってきた。
ダリオさん、とは言えないようだが、世界一賢い。
天才スライムだ。
ダリオは誰とも喋らずに一日過ごすのもざらだったので、嬉しくてたまらず、たくさん水饅頭のようなテオドールに話しかけた。
話しかけるほどに、テオドールは言葉を理解し、習得して、喋れずともダリオの言いたいことはよほど伝わっているようだった。
「大好きだ、テオドール」
ダリオはそっと彼を撫でて、毎日毎晩話しかけた。
「お前が来てくれて本当に嬉しい。ずっと側にいてくれるか」
「ムキュ、キュイッ」
「そうか、何言ってんのかわかんねぇが、元気な返事だな」
「だいお……しゃっ」
テオドールは、ダリオの名前だけは割ときちんと発音してくる。それも嬉しくて、ダリオは何度も彼を撫でた。
2
またある日、鹿を一頭仕留めたダリオは、冬支度のために村に出て、必要な物資の交換をしてもらうこととした。
「これじゃあ、このくらいかねぇ」
足元を見られ、必要な塩もほとんど手に入れることができなかった。
噛みついても仕方ない。ダリオは諦めて、もらえる分だけ袋に入れてもらうと、また仕留めてくるとだけ言った。
黙って帰ろうとすると、
「尊いお方がおいでになるから、もう一頭急ぎで頼むぞ」
と、言われる。よほど不可思議な顔をしていたのだろう。ことの重大さを飲み込めていないと思われたのか、この国の王子が、視察で村まで巡っているのだという。
「王子様は、つがい様をお探しなんだとよ」
「はぁ」
ダリオは関心がなかったので、ぼやっとした相槌を打ち、村人に舌打ちされた。
「王族方ってのは、つがい様をお持ちで、それは身分も性別も問わねぇそうだ。まあ、お前には関係ねぇだろうが、御一行がおいでの際は、村に顔を出すんじゃねぇぞ」
「ああ」
頼まれても出さない、わかった、とダリオは心中にとどめて、頷いた。
不吉な人間だと思われているので、ハレの場で貴人の前に顔を出すなと言われているのだ。
この時、ダリオは完全に他人事だと思っていたのである。
ダリオをつがい認定する王子の横恋慕にピンチとなるふたりの話になります。
途中横恋慕王子のダリオに性的暴行したいムーブ(顔や腰などお触りまで)や残酷な暴力描写がありますが、いつものハピエン予定です!
本編ダリオより環境に恵まれなくて、異世界ダリオはやや尖り気味。
節のナンバリングの関係でちょっと細切れ更新です。
大丈夫そうな方はお付き合い下さいませ\(^o^)/
□□□
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面倒なことになったなとダリオはため息を吐きたくなった。
東の果ての村の猟師、ダリオは村の爪弾き者だ。
ダリオがいると、怪異めいた妙な事が起こるというので、村人たちから避けられていた。
ただ、獲物を持ち込む時だけは多少愛想よくしてもらえる。
ダリオも独りでは生きていけないので、物々交換で生計を立てていた。
以前は、一匹の猟犬を飼っていたのだが、村人たちとトラブルがあって、不幸にも犬は死んでしまった。
それからダリオは村から外れた森の中で独り暮らしをしており、猟犬のテオドールがもういないのが寂しくてたまらない日々を送っていた。
そんなある日、ちいさなスライムがダリオの家に迷い込んできて、仔猫のようなちっちゃな口とと、くりくりした目をして、ダリオに懐いてきたものだから、寂しいダリオはこれも怪異の類だがと思いつつも、懐に入れてしまったのだった。
ダリオはあまり裕福ではなかったけれども、自分の食事よりも、水饅頭のようなちいさなスライムに大きい方を分け与えるようにした。
死んだ犬の名前をつけるのもどうかなぁと思いつつ、他に思いつかなくて、水饅頭のような彼にもテオドールと名付けてしまう。
テオ、と呼ぶと、「ムキュ」とか、「キュウ」とか、鳴き声めいたものを上げるので、意思疎通はできているっぽいなとダリオは嬉しくなる。
しかも、言葉を根気よく教えてやると、
「だ、い……お、っ、……しゃっ、……」
と、ダリオの名前を呼べるようになってきた。
ダリオさん、とは言えないようだが、世界一賢い。
天才スライムだ。
ダリオは誰とも喋らずに一日過ごすのもざらだったので、嬉しくてたまらず、たくさん水饅頭のようなテオドールに話しかけた。
話しかけるほどに、テオドールは言葉を理解し、習得して、喋れずともダリオの言いたいことはよほど伝わっているようだった。
「大好きだ、テオドール」
ダリオはそっと彼を撫でて、毎日毎晩話しかけた。
「お前が来てくれて本当に嬉しい。ずっと側にいてくれるか」
「ムキュ、キュイッ」
「そうか、何言ってんのかわかんねぇが、元気な返事だな」
「だいお……しゃっ」
テオドールは、ダリオの名前だけは割ときちんと発音してくる。それも嬉しくて、ダリオは何度も彼を撫でた。
2
またある日、鹿を一頭仕留めたダリオは、冬支度のために村に出て、必要な物資の交換をしてもらうこととした。
「これじゃあ、このくらいかねぇ」
足元を見られ、必要な塩もほとんど手に入れることができなかった。
噛みついても仕方ない。ダリオは諦めて、もらえる分だけ袋に入れてもらうと、また仕留めてくるとだけ言った。
黙って帰ろうとすると、
「尊いお方がおいでになるから、もう一頭急ぎで頼むぞ」
と、言われる。よほど不可思議な顔をしていたのだろう。ことの重大さを飲み込めていないと思われたのか、この国の王子が、視察で村まで巡っているのだという。
「王子様は、つがい様をお探しなんだとよ」
「はぁ」
ダリオは関心がなかったので、ぼやっとした相槌を打ち、村人に舌打ちされた。
「王族方ってのは、つがい様をお持ちで、それは身分も性別も問わねぇそうだ。まあ、お前には関係ねぇだろうが、御一行がおいでの際は、村に顔を出すんじゃねぇぞ」
「ああ」
頼まれても出さない、わかった、とダリオは心中にとどめて、頷いた。
不吉な人間だと思われているので、ハレの場で貴人の前に顔を出すなと言われているのだ。
この時、ダリオは完全に他人事だと思っていたのである。
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