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一 支配者と花 邂逅
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プロローグ
ダリオ・ロータスはイーストシティの経済学部に通う大学生である。
更に言えば、苦学生だ。
両親は幼少時に離婚し、母親の蒸発を経て、里親の元を転々とする羽目になった。そのせいか、割とドライな性格に彼は育った。あまり、他人に期待しないということである。
企業型の奨学金をもらい、彼は学生寮に入居した上で、アルバイトしながら生計を立てていた。
クソがつくほど堅実な性格、と彼を知る人は口をそろえて言う。ダリオとしてはそのつもりもなく、生きようとして生きていると、こうなるだろ、とあまり気負う風でもない。他人の期待も失望も気にしない、という処世術のなせるわざでもあった。
そんな彼にも、悩みがある。
「別れて」
つき合い始めて一か月の彼女にまず別れ話を切り出された。
「ダリオくんって、思ったよりつまらないっていうか……」
最後だから言わせてもらうけど、と元彼女から、
「デリカシーがない」
「行動範囲が狭い」
「バイトか勉強ばっかり、構ってくれない」
「苦学生なのは知ってるけど、デート代も満足に出せないのは、男としてちょっとね……」
「バイトも、あたし職種差別はないんだけれど、さすがに信じられない、彼女として恥ずかしい」
散々にいただいてしまい、「……わかった」と別れることに同意した。ハイスクール時代からの知人でもあったため、交友関係が重なっている。地味に、彼女の女友達たちからの視線が痛いなと思っていたら、そういうわけか。ダリオは納得した。色々話を共有されていたらしい。
なお、彼女から責められたアルバイトというのは、サービス業だ。ダリオは、時給が2000リングと単価が高いという理由だけで、紳士のメイドクラブなるもので働いていた。ダリオの仕事はそのメイドである。彼女と別れようが、生活のため、ダリオは今日も勤労に勤しんでいた。
一 支配者と花 邂逅
イーストシティのオールド・セントラル・ストリートに位置するオールド・セントラル・ショップ。その上がった二階。重厚なオーク材の扉に、黒御影石のプレートで、金色のカリグラフィーでこうつづられている。クラブ・ラビットホール。
一歩足を踏み入れると、飴色の落ち着いた空間が広がっている。
「ダリオくん、ご指名なので、三番テーブル行ってくれるかな」
「はい」
長身のメイドがオーダーに応じた。短髪に、鋭利な顔つき、ムチムチとした均整の取れた青年の筋肉を、メイド服が包んでいる。ダリオだ。胸元ははち切れそうなくらいで、サイズ明らかにあってないです、店長、とダリオは何回か提言しているのだが、「いやいや、需要があるからそれはそれでオーケーです」と却下され、このままである。
『僕ひとりで、この店をいかがわしいものにしているような気がするのですが……』
過去にそう言ってはみたものの、謎需要により、ダリオは現時点もムチムチ筋肉をミニのメイド服に包んで給仕している。
表情筋を動かすこともなく、ダリオは「まあ、いいか……時給2000リングだし」といかがわしさを懸念する自分を、あっさり亡き者としていた。メイド服を着るだけで、普通に給仕をするより二倍の給金がもらえるなら、ダリオは気にしない。もし時給1000リングなら、倍の時間働かねばならないのだ。それでは勉強ができない。大学生としては本末転倒だった。
ただ、他のアルバイトメンバーより、ダリオだけメイド服の仕様が違うのはなんなのか。クラシカルスタイルの服を要望しても却下される。
その上、ウサギの耳だの、猫の耳だの、狸の耳だの、日によってオプションパーツの異なるカチューシャをつけさせられている。ダリオはむしろ、動物に例えられる時は、ドーベルマンや狼に似ていると言われる青年だ。いや、それはともかく、本当にどうなんだ? とはダリオも熟考することもあるが、まあやはり時給2000リングの前には些末だな、と結論するのであった。
このあたりが、彼の知人たちに「ダリオ、ドライ過ぎる」といわれるゆえんだった。交際していたエヴァに言わせると、男同士のかばいあい気持ち悪い、単に自分に無頓着なだけとなる。ダリオ自身は、エヴァの言うことの方が当たっているような気はしているが、深く考えたことがない。稼げればいいのだ。
「ダ、ダ、ダリオきゅんっ」
三番テーブルに着くと、イーストシティの金融街エリート、カーター氏が息を荒げながら待ち構えていた。彼は、メイドクラブ『ラビット・ホール』に、ダリオ目当てで通い詰めている常連客だ。ストーカー気質は多少匂わせるものの、さすがに最低限の社会性は備え、キャストに目に余るような無茶な要求はしてこない。たまに相場を超えるチップをねじ込んでくるので反応に困るが。
カーター氏は挙動不審にダリオを見上げ、メニューを指さした。
「ダリオきゅん……今日も、可憐だね……よ、よ、よかったら、この特別メニューの萌え萌えお疲れ様スペシャル笑顔オプションをお願いできるかなっ」
「もちろんです、カーターさん。いつもありがとうございます」
「はわわ」
カーター氏は両方の拳を口元に当てて、彼の方が小動物的ポーズを取っている。ダリオも2000リングの営業スマイルを心から浮かべ、発達した胸筋を、これまた発達した両腕の筋肉で挟み込んだ。前かがみにポーズして、お疲れ様です、をする。一緒に撮影もした。いかがわしい。営業法的にギリギリじゃないんでしょうか、店長……そうダリオは今日も思うのだった。
すると、ダリオの耳に、囁くような小さな声が聞こえてきた。
『カーターが、いやらしい目つきでダリオを見ているわ』
『ダリオをものにしたいのよ』
『身の程知らずね! ダリオはアタシたちのものなのに』
くすくすと、鈴の音を鳴らすような、それでいて蠱惑的な笑い声だ。よくよく目を凝らすと、カーター氏の頭上に、花びらのような頭部をした小人たちが乗っている。毛髪の代わりに花弁を頭に生やし、体の透けて見えるドレスを着た小さな女たちだ。彼女たちは勝手に腰を下ろし、ああでもない、こうでもないと『椅子』の品定めをしているではないか。
ダリオは完全に素知らぬ顔で給仕した。
なにしろ。よくあることなのだった。
しまいには、カーター氏は頬をつねられ、まつげを引っ張られるなど蹂躙の限りを尽くされていたが、ダリオはそれでもスルーした。
まったくなにしろ、よくあることなのである。
子供のころから、ダリオにはこうした怪異が可視のものであった。やかましいが、無視していれば大体問題はない。相手をすると、かえってダリオの弱みにつけ込んでくる。願いを叶えてくれるようなことを言い、幼いダリオが「じゃあ」と頼んだら、思いもよらぬ形で、「さあ、叶えてあげたわよ」と、とんでもない目に合わされたこともあった。その上、ダリオに対価を要求してくるのだから、彼らがどんなに甘言を囁こうと、耳を貸してはいけないのだ。そう、幼心に恐怖心を覚えて悟ったものである。彼らに悪意があるとも限らず、本気で頼みごとを聞いてやったと思っている節もうかがえるから、たちが悪い。価値観があまりにも違い過ぎるのだろう。とにかく、気まぐれで残酷な連中だ。
頭にわさわさと妖精もどきを乗せたカーター氏が、思い切ったように、
「ダ、ダリオきゅん、よかったら、今度一緒に食事に……」
と誘ってきたが、ダリオは「いや、僕はそういう店外営業は一切していませんので」とばっさり断った。
カーター氏はうつむき、
「業務外塩対応なところも……イイ……ですッ」
と小声で悶えているので、なんかこの人打たれ強いな……とダリオは思った。
「はあ、ありがとうございます」
ダリオは無の顔でとりあえず礼を言った。ダリオにはこういうところがある。
「ダリオきゅん、せめて……これを受け取ってほしいです……」
うつむいたカーター氏は、ハイブランドな鞄をごそごそと探って、ベルベットの小箱を取り出した。献上するように捧げ持ち、ぱかりと手のひらで蓋を開ける。中から出て来たのは、青を基調に不思議な色をした宝石の指輪であった。
重ッ……とダリオが思ったか定かではない。ダリオは感情を顔に乗せなかった。無言で見つめている。
「ええと……こういうものは受け取れませんので……」
「あ、違うッ、違うんだよッ、これはね、重い指輪じゃありませんのでっ」
いや、どう違うんだよ、とダリオは更に無言となった。再度断ろうとしたダリオを止めたのは、突如背後から音もなく現れたカイゼル髭の店長である。
「ん~、ダリオくん、いいよいいよ、受け取らせていただきなさい」
「はあ」
店長は後ろ手に白い手袋をした両手を組み、ニコニコと得体の知れない笑みを浮かべる。
「カーター様は、貴重品を盾に、何か見返りを要求なさるような方ではないですから」
秒で釘を刺して来た。そのまま店長はカーター氏に微笑みかけ、さらなるダメ押しをする。
「紳士でいらっしゃいますので、ただダリオくんに似合うアクセサリーをプレゼントされたいだけですよ」
「そ、そうっ、そうなの、そうなんです」
はっと夢から覚めたように、カーター氏はぶんぶんと頷いた。
「海外出張先の骨とう品店で目についてね、見た瞬間、ダリオきゅんに絶対似合うって思っちゃったんだよ。ただ身に着けてほしいってか、差し上げたいだけなので、いらなかったら、受け取った後捨ててくれて構わないから!」
店長からOKをもらったこともあり、ダリオは一考して、まあ本人も了承しているし、質屋に入れればいいかとありがたく受け取ることにした。
まかないをもらって、アルバイトを上がり、ダリオは帰路についていた。
そのダリオの頭の上に、妖精のような――もう多分妖精なんじゃないかと投げやりに思っているのだが――女たちが、キャッキャと髪を引っ張ってついてきている。
妖精とも言い切れないというのが、どちらかというと彼女たちがもっとグロテスクな存在であることをダリオは知っているから、暫定妖精といった感じだ。
『ダリオ、受け取ってしまったのねえ』
『ふふふ』
『異界の門』
思わせぶりな口調も、いつもの手だ。なんとかダリオの隙に付け込んで来ようとしてくる。ダリオは知らん顔をしてさっさと学生寮に帰って来た。
明日も早い。勤労に学業とダリオは忙しいのだ。課題を終わらせたら、シャワーを浴びて、さっさと寝るか、とダリオは算段をつけていた。
目覚めは最悪だった。
想像してほしい。
寝て起きたら、知らない人間が自分を覗き込んでいて、至近距離に目が合ってしまう瞬間を。
ベッドと一体化したように、ダリオは固まった。下手に相手を刺激せぬよう、咄嗟の防御的反応である。
相手は、ぞっとするような人間離れした美貌の青年だった。
髪は射干玉のように濡れ、艶を帯びている。
冷たく見下ろす目は切れ長で、ロイヤルブルーの貴石をはめこんだように深い色合いだ。わずかにシラーめいて揺らぐ紫は、宝石の中に燃える炎のようでもあった。一方、美しい唇は笑みをはくこともなく、ただ無感動な顔でこちらを見ているだけで、愛想といったものが一切ない。
ただもう、存在が暴力的に『美』であるのだけは確かだった。
そのあまりに人外の美しさに、一瞬相手が不法侵入者であることも頭から飛んでしまう。呆けるダリオに、青年は身を引くと、あいさつまでかましてきた。
「おはようございます」
ぞくりとするような美声である。思わず陶然と聞き入ってしまいかけて、ダリオはすぐに我に返った。相手はどう考えても「堅気」ではない。
(しっかりしろ)
自分に言い聞かせて、頬を張ったつもりで気を引き締める。
起床時に、怪異に眼球を覗き込まれていた、などという経験がそこそこあるダリオである。あいつら、マジでパーソナルスペースという概念がない。少なくとも、ダリオのそれが尊重された試しはない。なので、ありがたくもないことに、こうした事態には嫌でも慣れてしまっていた。相手を刺激しない。それに限る。ただの不審者でも、寝起きの不利な体勢で逆上されたら、ふつうに危険だ。その上、ここは学生寮である。悲鳴を上げれば、駆けつけた他人を巻き込むかもしれない。相手の出方も読めない以上、ダリオは一貫していつもの対処の通り、ゆっくりと身を起こした。
「ああ……おはよう」
と静かに応じたわけである。下手に拒否すると、逆上フルコースも経験済みだ。もはやこれらの人外は、変態痴漢通り魔殺人鬼のようなものだ。おや、というように相手は青い目を見開き、感想を述べた。
「あまり動じていらっしゃらないようですね」
十分動揺している。しかし、表にあらわさないだけだった。少なくとも、そのようにダリオは努力している。
ダリオのようすに、彼が暴れたり逃げたりしないことを理解したのか、青年は執着もなく適正距離に身を引く。
「存在を受け入れていただけないのではと懸念していたので、安堵いたしました」
まったく話の通じない逆上タイプではないようである。意思疎通可能とみて、ダリオは淡々と否定しておいた。
「別に受け入れているわけじゃないんだが」
「よかったです。ああ、少しお待ちを」
ダリオの言は無視された。そして、青年の言葉に、不意に部屋が暗くなったように感じ、ダリオは嫌な予感に窓の方へ視線を巡らす。
「は? なんだ、夜?」
先ほどまでは朝だったはずだ。それなのに、アルミサッシで囲まれた窓の外は、恐ろしいほど漆黒に塗りこめられて真っ暗だった。べったりとした油絵具のような赤い三日月だけが浮かんでいる。現実感はない。ダリオは呆然とした。窓枠は額縁で、外の景色だけが、頭のおかしい画家にめちゃくちゃな遠近法で描かせたようにでたらめの夜の絵となっている。
まるでこの部屋だけ、学生寮から切り出されて、異空間に放り出されたような光景だった。
「僕がこの次元に顕現した影響でしょう。まだうまく馴染まないようでして」
「は?」
「少しばかり、空間と時間が狂っているようです。しばらくしたら戻りますので、ご安心を」
当たり前のように言われて、ダリオは口を閉ざした。異様なけはいは、もはや部屋中に、ダリオの足元まで生じていた。薄暗さが部屋の中まで及び、天井、壁、家具にいたり、目や口や鼻が無数に浮き上がっては、瞬きしたり、ぱくぱく開いたりして、順次消えていくのを目にする。ダリオは咄嗟に口元を抑えた。
「う……おえっ」
強烈な違和感だった。胃の腑から、気持ち悪さがせり上がってくる。必死に飲み込んでいる時間は永遠にも感じられた。しかし、それも部屋が明るさを取り戻すに従い、ゆっくりと緩和していく。窓の外も、普通に青空となり、鳥の鳴き声が聞こえ始めた。明るい。元に戻ったのだ。
「落ち着いたようです。失礼いたしました」
「君……お前のせいなのか?」
ダリオは言いなおした。不法侵入者の上に、一帯を異次元景色にされ、体調までめちゃくちゃにされて、尊重する気が失せに失せた。
「はい、ご賢察です」
改めて、ダリオは相手が人間ではないと再認識させられた。並外れた美貌が人外のそれであるだけではなく、実際に異常現象を起こされては、否定しようもない。
カーター氏やダリオの髪を好き勝手引っ張っていた妖精もどきたちと同じだ。怪異である。しかし、妖精たちよりも、ずっと密度が重い。彼女たちが薄絹のベール越しの存在だとしたら、この妖艶なほどに美しい青年は、あまりにも現実に根を下ろして存在感がある。例えるなら、彫刻や絵画と人間を並べれば、どれほどそれらが素晴らしくても、区別がつかないということはない。しかし、彼は区別がつかないほど、精巧な芸術品といったら近いだろうか。
青年は、白魚のような美しい指で、ダリオのそれを指さした。ダリオは自分の人差し指を見下ろし、ぎょっとする。
「……指輪?」
昨晩外して、もらった箱に戻しておいた指輪が、いつの間にか指にはまっている。一度身に着けてはみたが、確かに外して就寝したはずだ。
青い不思議な色合いをした宝石は、一片の花びらのようだ。その内部に昨晩はなかった傷が出来ている。まるで、内側から何かこじ開けたような断裂だ。
ダリオは、はっとし、尻から後ずさるように警戒した。眉根を寄せて尋ねる。
「お前……この指輪由来の何かか」
青年は特段感銘を受けたわけでもない様子で、慇懃無礼に肯定した。
「気づいていただき、光栄です。さて、それでは認知していただけますか」
「あ? 何を認知しろだ?」
ダリオも段々語調が荒くなる。怪異の対処法として、拒絶しても逆上されるが、下手に出過ぎても、いいようにされるだけだ。
「●×■▽……人間の言葉で申し上げると、運命、が近い概念でしょう」
ダリオは無言になった。青年との間に運命など感じない。感じるのは、不信である。
青年は顎先に、すらりとした長い指先を当て、考え込む風に装う。
「少し説明が足りませんでした」
少しどころではないが、ダリオは傾聴することにした。情報がなければどうしようもない。
「僕たちは、異次元に住まう種族で、稀に邂逅する異種族たちからは、『支配者』とも呼ばれております」
「穏やかじゃねえな」
他者から、支配、を冠されるなど、あまりいい意味に受け止め難い。
「中々、的を射た呼称とは思っておりますが」
青年としては納得の呼称らしい。
「また、我々支配者には、自身の存在のコア……この世界で似た概念は、魂でしょうか。それと対となる半身が、必ず存在します」
急に話が飛んだ。
「生まれる場所も時も不明ですが、半身とも呼ぶべき存在。その存在のことを、『花』とも呼びます」
はあ、とダリオはよくわからない相槌を打った。ずいぶん情緒的な呼称だ。そして、何の前振りをされているのか不明過ぎた。
「あなたのことですよ」
「……は?」
「僕の『花』はあなたと申し上げた」
青年はきっぱりと断言した。ダリオにしてみれば、耳が言っていることを拒否する。意味がわからない。
「僕は、あなたの『花』の香りを辿り、あなたは香りで僕を呼んだ。それゆえ、正確な座標軸観測と固定、跳躍が叶い、こちらに来訪したのです。この指輪は、異次元の門と申せましょう」
何を言ってるのか、ひとつも分からん、とダリオは思った。何より、
「ぜんぜんわからんが、俺はお前を呼んでない」
「そうはおっしゃいましても、あなたの『花』の香りは、多重次元の彼方まで僕に届いたのです。それゆえ、僕はここで生まれることを選びましたので」
「はあ? 生まれることを選んだ?」
「ええ」
青年はさらりと答えた。
「ついさきほど、あなたを『花』と感知すると同時に、この次元で出生することに決めました。つまり、僕はいわば生まれたての雛というわけです」
ダリオは、とりあえず今のところ、相手の言い分が意味不明なことと、大事なのは危害を加えられそうにないというのだけ理解した。
「もういい。わかった。0歳児ってことだな。生まれたてで、そこまでふてぶてしいのは才能ってわけか」
「そう誉めていただくと、いささか照れが生じます」
無感情過ぎて、照れているという顔ではない。ただの謙遜であろう。しかも慇懃無礼のたぐいである。
「わかった。『花』かどうかは知らんが保留させてくれ。俺のあずかり知るところではない。『花』にせよ違うにせよ、あんた、礼儀上、ひとまず部屋から出て行ってくれ」
「そう冷たいことをおっしゃらず」
うるせえ、と言いたかった。そこをこらえて、これまでの怪異からの被害を思い出して、ぐっと奥歯を噛んだ。
「あんたに限った話じゃない。俺は、あんたらのような押し売り連中とは関係を持たないと前世から誓っているんだ。ひとつも例外はない。その辺、尊重してもらえないか」
「前世から記憶をお持ちとは、さすがです、ダリオさん」
すでに名前まで知られている。聞く耳も持たない。このクソ人外。皮肉って知っているかとダリオは言いたいのを飲み込んだ。
「なんでもいいが、こっちは運命とやらを感じないんだが。よければ、別の人と結び直してほしい」
「ご冗談を」
青年は冷淡にぴしゃりと言った。
「おそらく僕は同族でもかなり穏やかな個体かと思いますが、それでもあなたと僕が無関係とおっしゃるのは、承服しかねる」
「いや、お前の都合は知らんが……大体半身だの魂だの運命だのと、そういうのは好かん」
話は理解できないが、会話は通じるたぐいの人外ということで、ダリオは段々投げやりになってきた。
「ふむ……運命と申し上げたのは、いささか不正確であったかもしれません。宿命や試練、という方が近いでしょう」
「試練?」
「僕の『本体』の脱皮を促す試練のようなものです」
本体の脱皮って、お前今目の前にある体は別ものなのか? いや、知りたくない、とダリオは追求をしないことにした。
「『花』との関係性こそが、我々『支配者』にとり、運命であり、宿命であり、試練となりうる。試練にあたって、『花』と殺し合うこともありますし、友好関係を築いてパートナーとなることもあります。それ自体が、我々にとって大いに変化をもたらす試練なのです」
青年は無表情にも、どこか愁いを帯びたようにダリオをひたりと見つめた。
「文化価値観が違い過ぎるため、お互いの主張が平行線を辿り決裂することも多く、少なくない同胞が試練にある意味失敗しているようですが」
「そりゃそうだろうな」
「その際は、十中八九殺し合いに発展するのが心苦しいところです」
「待て待て待て。殺し合い……それ、『花』の方に勝ち目はあるのか?」
「そうですね……残念ながら、支配者側が『花』を一方的に蹂躙するケースが圧倒的多数のようです」
それこそ一の数字の次は二とでも言うように淡々と告げられる。ダリオは、相手の言葉に誇張も虚偽もないのを感じて、手のひらを反すことにした。
「よし、異文化交流万歳。適度に仲よくするとしよう」
「そうおっしゃっていただけると思っておりました」
しれっと言われ、ほぼ脅迫じゃねえか、とダリオは心中苦い顔をする。大体、ダリオの方に選択権など初めからなかった話ではないか。
青年は満足したと思ったのだが、逆に彼は釘を刺すように告げた。
「支配者は必ず『花』を持ちます」
「改めてなんだ」
雰囲気が変わったのを感じ、ダリオは警戒して少し距離を取ろうとしたが、途中で身動きが止まる。
「支配者と『花』は、どれだけ時空間を隔てられようと、存在としてのコアを共有している」
青年は顔を寄せた。
「あなたは僕の『花』だ」
林檎を手から離すと落下します、レベルの当たり前の前提のように青年は言う。
「存在が確立する前から、あなたの香りを感じていました。それはあなたにも否定できないことです。僕が感じていたことですから」
「そうか。おめでとう。もういいか? 帰ってくれ」
「そう無下になさらず。これから僕を必要とされるのはダリオさんの方かと」
するわけない、と言いたかったが、ダリオの経験からいって、それは第六感に引っかかる物言いだった。
「俺がお前を必要とするってどういうことだ?」
「僕とダリオさんの間に、縁がつながりましたので、色々と事が起きるかと」
「……は? 厄介事が引き寄せられるってことか?」
「物は言いようです」
ですが、と青年は真顔でまた更にずい、とダリオに顔を寄せてきた。適正距離というものを知らないらしい。
「ご安心ください。そうですね、この次元の該当で言えば、生き別れの兄弟のよしみで、ダリオさんのことは、僕がお守りします」
「お守りしますじゃねえんだよ」
お前の兄になった覚えはねえ。思わず、素が出たダリオである。元々ダリオは口調が荒いところがある。普段の彼のドライさは、ある種の処世術であった。厄介事を引き寄せようという怪異相手に、取り繕う愛想を放棄したため、こういう口調が出ている。
「お前、俺から離れようという気はないのか」
「ダリオさんが困るだけかと」
「……はあ」
もはや呪いか、という心境だった。呪いの指輪だ。
「身の安全のためにも、指輪は肌身離さず身につけてください」
すでに怪異の青年とは遭遇している。今さら、きっかけとなった指輪を捨てても、邂逅そのものをなかったことにはできない。青年と関わったことで引き寄せられる災いは、指輪を破棄したところで降りかかるのを止めようがないということだろう。青年と縁付いた指輪を身に着けていた方が安全というのも、相手の言うことに嘘はなさそうだ。これまでの経験からダリオはそう判断する。
そして、青年の言う通り、厄介事が引き寄せられ、学生寮が炎上した。
「……意味がわからない」
数日後、ダリオは呆然としていた。学生寮が原因不明の出火で、とうてい住めなくなってしまったのだ。経済的余裕のないダリオは途方に暮れたが、怪異の青年がどういうわけか住まいをご用意できますと言う。
「大丈夫なのか?」
もうダリオは青年の前で、愛想や社会性というものを取り繕う気にもならなくなっていた。友人たちからはドライと言われるダリオも、青年に対しては、どちらかというと『不愛想』という意味で表情豊かではある。
むしろ青年の方が、人間らしい表情というものがなく、常に真顔仕様だ。
ダリオはあえて青年の名を聞くようなことは避けていたが、
「名無しでは据わりがよくありません。僕に名前をつけていただけませんか」
と請われ、「あー、そのうちな」と適当にはぐらかした。
「やはり、それ相応の働きをしないと、認めていただけませんか……」
青年は武士か何かのようにものものしく受け止めたようだった。ダリオにしてみれば認めるも何もない。
青年に案内されたのは、シティのビルとビルとの間、少し坂を上ると、めまいがし、気づけば洋館の中にいた。
しまった、と内心舌打ちしたのは、子供のころの忌まわしい記憶を思い出したからである。妖精たちに『お願いごと』を叶えてあげたから、あれを寄越せこれを寄越せと殺されかけた一件だ。寄越せと言われたのは、目玉だったり耳だったり、口にするのもおぞましいような部分だったりした。取られたら普通に死ぬ。キャッキャと楽しげに要求され、応えられないと泣いて逃げ回った。どうして助かったもんだか、思い出したくもない。
なんとかうまく逃れられないものかとダリオは考えたが、
「ダリオさんから何かを奪おうという気は一切ないので、そう警戒なさらず、安心していただきたいのですが」
「お前、俺の心を読むの止めてくれない?」
「ああ、心を読むのはマナー違反でしたか。以後気をつけます」
「本当に読めるのかよ。止めろ止めろ。今度読んだら、兄弟の縁とやらを切るからな」
「認知していただけたようで何よりです」
心を読まれるよりマシである。
ダリオは、どさり、とソファに腰を下ろした。大変座り心地が良過ぎて、どういう代物なのか考えないことにする。背後の壁にかかった無数の絵画たちも、中の人物が動いているように見えるが、見なかったことに決めた。
「ダリオさん」
青年は毎回何故か距離をつめてくる。ソファに座るダリオの上にまたがるようにして、両頬に触れ、額を合わせる形に顔をぐっと近づけてきた。
ダリオはそのまま押し返した。
「ダリオさんはあまり僕と接触するのはお好きではないようですね」
「一般的に、赤の他人と距離近づけるのを好ましく思うやつは少ないと思うぞ」
「僕とダリオさんは浅からぬ関係ですが……承服しかねます」
「もうどこから突っ込んだらいいのかわからないな……とりあえず四六時中他人と一緒にいると息がつまる。呼ぶまで出てこないとかお前できないのか?」
「残念ですが、僕の勉強不足のようです。学習してまいりますので、次にお会いする時は、ダリオさんに喜んでいただけるよう精進いたします」
それまでに、僕の名前について考えておいてください。
青年はそう言って、真顔のまま姿を消した。
ふうー、とダリオは息を吐く。
怪異である。
あと名づけろと来た。冗談じゃあねえ、とダリオは思った。縁が強固になってしまう。もう手遅れかもしれなかったが。
ダリオ・ロータスはイーストシティの経済学部に通う大学生である。
更に言えば、苦学生だ。
両親は幼少時に離婚し、母親の蒸発を経て、里親の元を転々とする羽目になった。そのせいか、割とドライな性格に彼は育った。あまり、他人に期待しないということである。
企業型の奨学金をもらい、彼は学生寮に入居した上で、アルバイトしながら生計を立てていた。
クソがつくほど堅実な性格、と彼を知る人は口をそろえて言う。ダリオとしてはそのつもりもなく、生きようとして生きていると、こうなるだろ、とあまり気負う風でもない。他人の期待も失望も気にしない、という処世術のなせるわざでもあった。
そんな彼にも、悩みがある。
「別れて」
つき合い始めて一か月の彼女にまず別れ話を切り出された。
「ダリオくんって、思ったよりつまらないっていうか……」
最後だから言わせてもらうけど、と元彼女から、
「デリカシーがない」
「行動範囲が狭い」
「バイトか勉強ばっかり、構ってくれない」
「苦学生なのは知ってるけど、デート代も満足に出せないのは、男としてちょっとね……」
「バイトも、あたし職種差別はないんだけれど、さすがに信じられない、彼女として恥ずかしい」
散々にいただいてしまい、「……わかった」と別れることに同意した。ハイスクール時代からの知人でもあったため、交友関係が重なっている。地味に、彼女の女友達たちからの視線が痛いなと思っていたら、そういうわけか。ダリオは納得した。色々話を共有されていたらしい。
なお、彼女から責められたアルバイトというのは、サービス業だ。ダリオは、時給が2000リングと単価が高いという理由だけで、紳士のメイドクラブなるもので働いていた。ダリオの仕事はそのメイドである。彼女と別れようが、生活のため、ダリオは今日も勤労に勤しんでいた。
一 支配者と花 邂逅
イーストシティのオールド・セントラル・ストリートに位置するオールド・セントラル・ショップ。その上がった二階。重厚なオーク材の扉に、黒御影石のプレートで、金色のカリグラフィーでこうつづられている。クラブ・ラビットホール。
一歩足を踏み入れると、飴色の落ち着いた空間が広がっている。
「ダリオくん、ご指名なので、三番テーブル行ってくれるかな」
「はい」
長身のメイドがオーダーに応じた。短髪に、鋭利な顔つき、ムチムチとした均整の取れた青年の筋肉を、メイド服が包んでいる。ダリオだ。胸元ははち切れそうなくらいで、サイズ明らかにあってないです、店長、とダリオは何回か提言しているのだが、「いやいや、需要があるからそれはそれでオーケーです」と却下され、このままである。
『僕ひとりで、この店をいかがわしいものにしているような気がするのですが……』
過去にそう言ってはみたものの、謎需要により、ダリオは現時点もムチムチ筋肉をミニのメイド服に包んで給仕している。
表情筋を動かすこともなく、ダリオは「まあ、いいか……時給2000リングだし」といかがわしさを懸念する自分を、あっさり亡き者としていた。メイド服を着るだけで、普通に給仕をするより二倍の給金がもらえるなら、ダリオは気にしない。もし時給1000リングなら、倍の時間働かねばならないのだ。それでは勉強ができない。大学生としては本末転倒だった。
ただ、他のアルバイトメンバーより、ダリオだけメイド服の仕様が違うのはなんなのか。クラシカルスタイルの服を要望しても却下される。
その上、ウサギの耳だの、猫の耳だの、狸の耳だの、日によってオプションパーツの異なるカチューシャをつけさせられている。ダリオはむしろ、動物に例えられる時は、ドーベルマンや狼に似ていると言われる青年だ。いや、それはともかく、本当にどうなんだ? とはダリオも熟考することもあるが、まあやはり時給2000リングの前には些末だな、と結論するのであった。
このあたりが、彼の知人たちに「ダリオ、ドライ過ぎる」といわれるゆえんだった。交際していたエヴァに言わせると、男同士のかばいあい気持ち悪い、単に自分に無頓着なだけとなる。ダリオ自身は、エヴァの言うことの方が当たっているような気はしているが、深く考えたことがない。稼げればいいのだ。
「ダ、ダ、ダリオきゅんっ」
三番テーブルに着くと、イーストシティの金融街エリート、カーター氏が息を荒げながら待ち構えていた。彼は、メイドクラブ『ラビット・ホール』に、ダリオ目当てで通い詰めている常連客だ。ストーカー気質は多少匂わせるものの、さすがに最低限の社会性は備え、キャストに目に余るような無茶な要求はしてこない。たまに相場を超えるチップをねじ込んでくるので反応に困るが。
カーター氏は挙動不審にダリオを見上げ、メニューを指さした。
「ダリオきゅん……今日も、可憐だね……よ、よ、よかったら、この特別メニューの萌え萌えお疲れ様スペシャル笑顔オプションをお願いできるかなっ」
「もちろんです、カーターさん。いつもありがとうございます」
「はわわ」
カーター氏は両方の拳を口元に当てて、彼の方が小動物的ポーズを取っている。ダリオも2000リングの営業スマイルを心から浮かべ、発達した胸筋を、これまた発達した両腕の筋肉で挟み込んだ。前かがみにポーズして、お疲れ様です、をする。一緒に撮影もした。いかがわしい。営業法的にギリギリじゃないんでしょうか、店長……そうダリオは今日も思うのだった。
すると、ダリオの耳に、囁くような小さな声が聞こえてきた。
『カーターが、いやらしい目つきでダリオを見ているわ』
『ダリオをものにしたいのよ』
『身の程知らずね! ダリオはアタシたちのものなのに』
くすくすと、鈴の音を鳴らすような、それでいて蠱惑的な笑い声だ。よくよく目を凝らすと、カーター氏の頭上に、花びらのような頭部をした小人たちが乗っている。毛髪の代わりに花弁を頭に生やし、体の透けて見えるドレスを着た小さな女たちだ。彼女たちは勝手に腰を下ろし、ああでもない、こうでもないと『椅子』の品定めをしているではないか。
ダリオは完全に素知らぬ顔で給仕した。
なにしろ。よくあることなのだった。
しまいには、カーター氏は頬をつねられ、まつげを引っ張られるなど蹂躙の限りを尽くされていたが、ダリオはそれでもスルーした。
まったくなにしろ、よくあることなのである。
子供のころから、ダリオにはこうした怪異が可視のものであった。やかましいが、無視していれば大体問題はない。相手をすると、かえってダリオの弱みにつけ込んでくる。願いを叶えてくれるようなことを言い、幼いダリオが「じゃあ」と頼んだら、思いもよらぬ形で、「さあ、叶えてあげたわよ」と、とんでもない目に合わされたこともあった。その上、ダリオに対価を要求してくるのだから、彼らがどんなに甘言を囁こうと、耳を貸してはいけないのだ。そう、幼心に恐怖心を覚えて悟ったものである。彼らに悪意があるとも限らず、本気で頼みごとを聞いてやったと思っている節もうかがえるから、たちが悪い。価値観があまりにも違い過ぎるのだろう。とにかく、気まぐれで残酷な連中だ。
頭にわさわさと妖精もどきを乗せたカーター氏が、思い切ったように、
「ダ、ダリオきゅん、よかったら、今度一緒に食事に……」
と誘ってきたが、ダリオは「いや、僕はそういう店外営業は一切していませんので」とばっさり断った。
カーター氏はうつむき、
「業務外塩対応なところも……イイ……ですッ」
と小声で悶えているので、なんかこの人打たれ強いな……とダリオは思った。
「はあ、ありがとうございます」
ダリオは無の顔でとりあえず礼を言った。ダリオにはこういうところがある。
「ダリオきゅん、せめて……これを受け取ってほしいです……」
うつむいたカーター氏は、ハイブランドな鞄をごそごそと探って、ベルベットの小箱を取り出した。献上するように捧げ持ち、ぱかりと手のひらで蓋を開ける。中から出て来たのは、青を基調に不思議な色をした宝石の指輪であった。
重ッ……とダリオが思ったか定かではない。ダリオは感情を顔に乗せなかった。無言で見つめている。
「ええと……こういうものは受け取れませんので……」
「あ、違うッ、違うんだよッ、これはね、重い指輪じゃありませんのでっ」
いや、どう違うんだよ、とダリオは更に無言となった。再度断ろうとしたダリオを止めたのは、突如背後から音もなく現れたカイゼル髭の店長である。
「ん~、ダリオくん、いいよいいよ、受け取らせていただきなさい」
「はあ」
店長は後ろ手に白い手袋をした両手を組み、ニコニコと得体の知れない笑みを浮かべる。
「カーター様は、貴重品を盾に、何か見返りを要求なさるような方ではないですから」
秒で釘を刺して来た。そのまま店長はカーター氏に微笑みかけ、さらなるダメ押しをする。
「紳士でいらっしゃいますので、ただダリオくんに似合うアクセサリーをプレゼントされたいだけですよ」
「そ、そうっ、そうなの、そうなんです」
はっと夢から覚めたように、カーター氏はぶんぶんと頷いた。
「海外出張先の骨とう品店で目についてね、見た瞬間、ダリオきゅんに絶対似合うって思っちゃったんだよ。ただ身に着けてほしいってか、差し上げたいだけなので、いらなかったら、受け取った後捨ててくれて構わないから!」
店長からOKをもらったこともあり、ダリオは一考して、まあ本人も了承しているし、質屋に入れればいいかとありがたく受け取ることにした。
まかないをもらって、アルバイトを上がり、ダリオは帰路についていた。
そのダリオの頭の上に、妖精のような――もう多分妖精なんじゃないかと投げやりに思っているのだが――女たちが、キャッキャと髪を引っ張ってついてきている。
妖精とも言い切れないというのが、どちらかというと彼女たちがもっとグロテスクな存在であることをダリオは知っているから、暫定妖精といった感じだ。
『ダリオ、受け取ってしまったのねえ』
『ふふふ』
『異界の門』
思わせぶりな口調も、いつもの手だ。なんとかダリオの隙に付け込んで来ようとしてくる。ダリオは知らん顔をしてさっさと学生寮に帰って来た。
明日も早い。勤労に学業とダリオは忙しいのだ。課題を終わらせたら、シャワーを浴びて、さっさと寝るか、とダリオは算段をつけていた。
目覚めは最悪だった。
想像してほしい。
寝て起きたら、知らない人間が自分を覗き込んでいて、至近距離に目が合ってしまう瞬間を。
ベッドと一体化したように、ダリオは固まった。下手に相手を刺激せぬよう、咄嗟の防御的反応である。
相手は、ぞっとするような人間離れした美貌の青年だった。
髪は射干玉のように濡れ、艶を帯びている。
冷たく見下ろす目は切れ長で、ロイヤルブルーの貴石をはめこんだように深い色合いだ。わずかにシラーめいて揺らぐ紫は、宝石の中に燃える炎のようでもあった。一方、美しい唇は笑みをはくこともなく、ただ無感動な顔でこちらを見ているだけで、愛想といったものが一切ない。
ただもう、存在が暴力的に『美』であるのだけは確かだった。
そのあまりに人外の美しさに、一瞬相手が不法侵入者であることも頭から飛んでしまう。呆けるダリオに、青年は身を引くと、あいさつまでかましてきた。
「おはようございます」
ぞくりとするような美声である。思わず陶然と聞き入ってしまいかけて、ダリオはすぐに我に返った。相手はどう考えても「堅気」ではない。
(しっかりしろ)
自分に言い聞かせて、頬を張ったつもりで気を引き締める。
起床時に、怪異に眼球を覗き込まれていた、などという経験がそこそこあるダリオである。あいつら、マジでパーソナルスペースという概念がない。少なくとも、ダリオのそれが尊重された試しはない。なので、ありがたくもないことに、こうした事態には嫌でも慣れてしまっていた。相手を刺激しない。それに限る。ただの不審者でも、寝起きの不利な体勢で逆上されたら、ふつうに危険だ。その上、ここは学生寮である。悲鳴を上げれば、駆けつけた他人を巻き込むかもしれない。相手の出方も読めない以上、ダリオは一貫していつもの対処の通り、ゆっくりと身を起こした。
「ああ……おはよう」
と静かに応じたわけである。下手に拒否すると、逆上フルコースも経験済みだ。もはやこれらの人外は、変態痴漢通り魔殺人鬼のようなものだ。おや、というように相手は青い目を見開き、感想を述べた。
「あまり動じていらっしゃらないようですね」
十分動揺している。しかし、表にあらわさないだけだった。少なくとも、そのようにダリオは努力している。
ダリオのようすに、彼が暴れたり逃げたりしないことを理解したのか、青年は執着もなく適正距離に身を引く。
「存在を受け入れていただけないのではと懸念していたので、安堵いたしました」
まったく話の通じない逆上タイプではないようである。意思疎通可能とみて、ダリオは淡々と否定しておいた。
「別に受け入れているわけじゃないんだが」
「よかったです。ああ、少しお待ちを」
ダリオの言は無視された。そして、青年の言葉に、不意に部屋が暗くなったように感じ、ダリオは嫌な予感に窓の方へ視線を巡らす。
「は? なんだ、夜?」
先ほどまでは朝だったはずだ。それなのに、アルミサッシで囲まれた窓の外は、恐ろしいほど漆黒に塗りこめられて真っ暗だった。べったりとした油絵具のような赤い三日月だけが浮かんでいる。現実感はない。ダリオは呆然とした。窓枠は額縁で、外の景色だけが、頭のおかしい画家にめちゃくちゃな遠近法で描かせたようにでたらめの夜の絵となっている。
まるでこの部屋だけ、学生寮から切り出されて、異空間に放り出されたような光景だった。
「僕がこの次元に顕現した影響でしょう。まだうまく馴染まないようでして」
「は?」
「少しばかり、空間と時間が狂っているようです。しばらくしたら戻りますので、ご安心を」
当たり前のように言われて、ダリオは口を閉ざした。異様なけはいは、もはや部屋中に、ダリオの足元まで生じていた。薄暗さが部屋の中まで及び、天井、壁、家具にいたり、目や口や鼻が無数に浮き上がっては、瞬きしたり、ぱくぱく開いたりして、順次消えていくのを目にする。ダリオは咄嗟に口元を抑えた。
「う……おえっ」
強烈な違和感だった。胃の腑から、気持ち悪さがせり上がってくる。必死に飲み込んでいる時間は永遠にも感じられた。しかし、それも部屋が明るさを取り戻すに従い、ゆっくりと緩和していく。窓の外も、普通に青空となり、鳥の鳴き声が聞こえ始めた。明るい。元に戻ったのだ。
「落ち着いたようです。失礼いたしました」
「君……お前のせいなのか?」
ダリオは言いなおした。不法侵入者の上に、一帯を異次元景色にされ、体調までめちゃくちゃにされて、尊重する気が失せに失せた。
「はい、ご賢察です」
改めて、ダリオは相手が人間ではないと再認識させられた。並外れた美貌が人外のそれであるだけではなく、実際に異常現象を起こされては、否定しようもない。
カーター氏やダリオの髪を好き勝手引っ張っていた妖精もどきたちと同じだ。怪異である。しかし、妖精たちよりも、ずっと密度が重い。彼女たちが薄絹のベール越しの存在だとしたら、この妖艶なほどに美しい青年は、あまりにも現実に根を下ろして存在感がある。例えるなら、彫刻や絵画と人間を並べれば、どれほどそれらが素晴らしくても、区別がつかないということはない。しかし、彼は区別がつかないほど、精巧な芸術品といったら近いだろうか。
青年は、白魚のような美しい指で、ダリオのそれを指さした。ダリオは自分の人差し指を見下ろし、ぎょっとする。
「……指輪?」
昨晩外して、もらった箱に戻しておいた指輪が、いつの間にか指にはまっている。一度身に着けてはみたが、確かに外して就寝したはずだ。
青い不思議な色合いをした宝石は、一片の花びらのようだ。その内部に昨晩はなかった傷が出来ている。まるで、内側から何かこじ開けたような断裂だ。
ダリオは、はっとし、尻から後ずさるように警戒した。眉根を寄せて尋ねる。
「お前……この指輪由来の何かか」
青年は特段感銘を受けたわけでもない様子で、慇懃無礼に肯定した。
「気づいていただき、光栄です。さて、それでは認知していただけますか」
「あ? 何を認知しろだ?」
ダリオも段々語調が荒くなる。怪異の対処法として、拒絶しても逆上されるが、下手に出過ぎても、いいようにされるだけだ。
「●×■▽……人間の言葉で申し上げると、運命、が近い概念でしょう」
ダリオは無言になった。青年との間に運命など感じない。感じるのは、不信である。
青年は顎先に、すらりとした長い指先を当て、考え込む風に装う。
「少し説明が足りませんでした」
少しどころではないが、ダリオは傾聴することにした。情報がなければどうしようもない。
「僕たちは、異次元に住まう種族で、稀に邂逅する異種族たちからは、『支配者』とも呼ばれております」
「穏やかじゃねえな」
他者から、支配、を冠されるなど、あまりいい意味に受け止め難い。
「中々、的を射た呼称とは思っておりますが」
青年としては納得の呼称らしい。
「また、我々支配者には、自身の存在のコア……この世界で似た概念は、魂でしょうか。それと対となる半身が、必ず存在します」
急に話が飛んだ。
「生まれる場所も時も不明ですが、半身とも呼ぶべき存在。その存在のことを、『花』とも呼びます」
はあ、とダリオはよくわからない相槌を打った。ずいぶん情緒的な呼称だ。そして、何の前振りをされているのか不明過ぎた。
「あなたのことですよ」
「……は?」
「僕の『花』はあなたと申し上げた」
青年はきっぱりと断言した。ダリオにしてみれば、耳が言っていることを拒否する。意味がわからない。
「僕は、あなたの『花』の香りを辿り、あなたは香りで僕を呼んだ。それゆえ、正確な座標軸観測と固定、跳躍が叶い、こちらに来訪したのです。この指輪は、異次元の門と申せましょう」
何を言ってるのか、ひとつも分からん、とダリオは思った。何より、
「ぜんぜんわからんが、俺はお前を呼んでない」
「そうはおっしゃいましても、あなたの『花』の香りは、多重次元の彼方まで僕に届いたのです。それゆえ、僕はここで生まれることを選びましたので」
「はあ? 生まれることを選んだ?」
「ええ」
青年はさらりと答えた。
「ついさきほど、あなたを『花』と感知すると同時に、この次元で出生することに決めました。つまり、僕はいわば生まれたての雛というわけです」
ダリオは、とりあえず今のところ、相手の言い分が意味不明なことと、大事なのは危害を加えられそうにないというのだけ理解した。
「もういい。わかった。0歳児ってことだな。生まれたてで、そこまでふてぶてしいのは才能ってわけか」
「そう誉めていただくと、いささか照れが生じます」
無感情過ぎて、照れているという顔ではない。ただの謙遜であろう。しかも慇懃無礼のたぐいである。
「わかった。『花』かどうかは知らんが保留させてくれ。俺のあずかり知るところではない。『花』にせよ違うにせよ、あんた、礼儀上、ひとまず部屋から出て行ってくれ」
「そう冷たいことをおっしゃらず」
うるせえ、と言いたかった。そこをこらえて、これまでの怪異からの被害を思い出して、ぐっと奥歯を噛んだ。
「あんたに限った話じゃない。俺は、あんたらのような押し売り連中とは関係を持たないと前世から誓っているんだ。ひとつも例外はない。その辺、尊重してもらえないか」
「前世から記憶をお持ちとは、さすがです、ダリオさん」
すでに名前まで知られている。聞く耳も持たない。このクソ人外。皮肉って知っているかとダリオは言いたいのを飲み込んだ。
「なんでもいいが、こっちは運命とやらを感じないんだが。よければ、別の人と結び直してほしい」
「ご冗談を」
青年は冷淡にぴしゃりと言った。
「おそらく僕は同族でもかなり穏やかな個体かと思いますが、それでもあなたと僕が無関係とおっしゃるのは、承服しかねる」
「いや、お前の都合は知らんが……大体半身だの魂だの運命だのと、そういうのは好かん」
話は理解できないが、会話は通じるたぐいの人外ということで、ダリオは段々投げやりになってきた。
「ふむ……運命と申し上げたのは、いささか不正確であったかもしれません。宿命や試練、という方が近いでしょう」
「試練?」
「僕の『本体』の脱皮を促す試練のようなものです」
本体の脱皮って、お前今目の前にある体は別ものなのか? いや、知りたくない、とダリオは追求をしないことにした。
「『花』との関係性こそが、我々『支配者』にとり、運命であり、宿命であり、試練となりうる。試練にあたって、『花』と殺し合うこともありますし、友好関係を築いてパートナーとなることもあります。それ自体が、我々にとって大いに変化をもたらす試練なのです」
青年は無表情にも、どこか愁いを帯びたようにダリオをひたりと見つめた。
「文化価値観が違い過ぎるため、お互いの主張が平行線を辿り決裂することも多く、少なくない同胞が試練にある意味失敗しているようですが」
「そりゃそうだろうな」
「その際は、十中八九殺し合いに発展するのが心苦しいところです」
「待て待て待て。殺し合い……それ、『花』の方に勝ち目はあるのか?」
「そうですね……残念ながら、支配者側が『花』を一方的に蹂躙するケースが圧倒的多数のようです」
それこそ一の数字の次は二とでも言うように淡々と告げられる。ダリオは、相手の言葉に誇張も虚偽もないのを感じて、手のひらを反すことにした。
「よし、異文化交流万歳。適度に仲よくするとしよう」
「そうおっしゃっていただけると思っておりました」
しれっと言われ、ほぼ脅迫じゃねえか、とダリオは心中苦い顔をする。大体、ダリオの方に選択権など初めからなかった話ではないか。
青年は満足したと思ったのだが、逆に彼は釘を刺すように告げた。
「支配者は必ず『花』を持ちます」
「改めてなんだ」
雰囲気が変わったのを感じ、ダリオは警戒して少し距離を取ろうとしたが、途中で身動きが止まる。
「支配者と『花』は、どれだけ時空間を隔てられようと、存在としてのコアを共有している」
青年は顔を寄せた。
「あなたは僕の『花』だ」
林檎を手から離すと落下します、レベルの当たり前の前提のように青年は言う。
「存在が確立する前から、あなたの香りを感じていました。それはあなたにも否定できないことです。僕が感じていたことですから」
「そうか。おめでとう。もういいか? 帰ってくれ」
「そう無下になさらず。これから僕を必要とされるのはダリオさんの方かと」
するわけない、と言いたかったが、ダリオの経験からいって、それは第六感に引っかかる物言いだった。
「俺がお前を必要とするってどういうことだ?」
「僕とダリオさんの間に、縁がつながりましたので、色々と事が起きるかと」
「……は? 厄介事が引き寄せられるってことか?」
「物は言いようです」
ですが、と青年は真顔でまた更にずい、とダリオに顔を寄せてきた。適正距離というものを知らないらしい。
「ご安心ください。そうですね、この次元の該当で言えば、生き別れの兄弟のよしみで、ダリオさんのことは、僕がお守りします」
「お守りしますじゃねえんだよ」
お前の兄になった覚えはねえ。思わず、素が出たダリオである。元々ダリオは口調が荒いところがある。普段の彼のドライさは、ある種の処世術であった。厄介事を引き寄せようという怪異相手に、取り繕う愛想を放棄したため、こういう口調が出ている。
「お前、俺から離れようという気はないのか」
「ダリオさんが困るだけかと」
「……はあ」
もはや呪いか、という心境だった。呪いの指輪だ。
「身の安全のためにも、指輪は肌身離さず身につけてください」
すでに怪異の青年とは遭遇している。今さら、きっかけとなった指輪を捨てても、邂逅そのものをなかったことにはできない。青年と関わったことで引き寄せられる災いは、指輪を破棄したところで降りかかるのを止めようがないということだろう。青年と縁付いた指輪を身に着けていた方が安全というのも、相手の言うことに嘘はなさそうだ。これまでの経験からダリオはそう判断する。
そして、青年の言う通り、厄介事が引き寄せられ、学生寮が炎上した。
「……意味がわからない」
数日後、ダリオは呆然としていた。学生寮が原因不明の出火で、とうてい住めなくなってしまったのだ。経済的余裕のないダリオは途方に暮れたが、怪異の青年がどういうわけか住まいをご用意できますと言う。
「大丈夫なのか?」
もうダリオは青年の前で、愛想や社会性というものを取り繕う気にもならなくなっていた。友人たちからはドライと言われるダリオも、青年に対しては、どちらかというと『不愛想』という意味で表情豊かではある。
むしろ青年の方が、人間らしい表情というものがなく、常に真顔仕様だ。
ダリオはあえて青年の名を聞くようなことは避けていたが、
「名無しでは据わりがよくありません。僕に名前をつけていただけませんか」
と請われ、「あー、そのうちな」と適当にはぐらかした。
「やはり、それ相応の働きをしないと、認めていただけませんか……」
青年は武士か何かのようにものものしく受け止めたようだった。ダリオにしてみれば認めるも何もない。
青年に案内されたのは、シティのビルとビルとの間、少し坂を上ると、めまいがし、気づけば洋館の中にいた。
しまった、と内心舌打ちしたのは、子供のころの忌まわしい記憶を思い出したからである。妖精たちに『お願いごと』を叶えてあげたから、あれを寄越せこれを寄越せと殺されかけた一件だ。寄越せと言われたのは、目玉だったり耳だったり、口にするのもおぞましいような部分だったりした。取られたら普通に死ぬ。キャッキャと楽しげに要求され、応えられないと泣いて逃げ回った。どうして助かったもんだか、思い出したくもない。
なんとかうまく逃れられないものかとダリオは考えたが、
「ダリオさんから何かを奪おうという気は一切ないので、そう警戒なさらず、安心していただきたいのですが」
「お前、俺の心を読むの止めてくれない?」
「ああ、心を読むのはマナー違反でしたか。以後気をつけます」
「本当に読めるのかよ。止めろ止めろ。今度読んだら、兄弟の縁とやらを切るからな」
「認知していただけたようで何よりです」
心を読まれるよりマシである。
ダリオは、どさり、とソファに腰を下ろした。大変座り心地が良過ぎて、どういう代物なのか考えないことにする。背後の壁にかかった無数の絵画たちも、中の人物が動いているように見えるが、見なかったことに決めた。
「ダリオさん」
青年は毎回何故か距離をつめてくる。ソファに座るダリオの上にまたがるようにして、両頬に触れ、額を合わせる形に顔をぐっと近づけてきた。
ダリオはそのまま押し返した。
「ダリオさんはあまり僕と接触するのはお好きではないようですね」
「一般的に、赤の他人と距離近づけるのを好ましく思うやつは少ないと思うぞ」
「僕とダリオさんは浅からぬ関係ですが……承服しかねます」
「もうどこから突っ込んだらいいのかわからないな……とりあえず四六時中他人と一緒にいると息がつまる。呼ぶまで出てこないとかお前できないのか?」
「残念ですが、僕の勉強不足のようです。学習してまいりますので、次にお会いする時は、ダリオさんに喜んでいただけるよう精進いたします」
それまでに、僕の名前について考えておいてください。
青年はそう言って、真顔のまま姿を消した。
ふうー、とダリオは息を吐く。
怪異である。
あと名づけろと来た。冗談じゃあねえ、とダリオは思った。縁が強固になってしまう。もう手遅れかもしれなかったが。
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