Astray

雲乃みい

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第2部

12

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カーテンを閉ざして暗くなった部屋の中。
外は雨が降っている。
毎日のように雨は降っているけど、いまは梅雨なのだからそれも当然といえば仕方のないこと。
窓に打ち付ける雨音はそんなにひどくない。
さざなみのような音が耳を澄ませばかろうじて聞こえるくらい。
だけどそれもいまの僕には届かないし、その雨音をかき消すのは僕の声だ。

「……っ……ふ、ぁ」

ベッドの上で先生が僕のものを咥内に含みながら後孔をほぐしている。
大きく脚を開かされて羞恥を感じるけどそれよりも身体の熱さと気持ちよさが上回る。
最近では午前中から先生の部屋へ来て夕方まで過ごすことが多かった。
身体を重ねて勉強してご飯を食べて身体を重ねる。

「……ん、っ」

ぴちゃぴちゃと聞こえてくる水音に身悶える。
先生の指が二本挿入されているのを感じながら、直接咥えられて絡みつく舌に与えられる刺激に吐射感がつのってくる。
先端を尖らせた舌先がくすぐって吸い上げてくる。
同時に後孔も前立腺を擦られて僕はもう声を我慢することもできずにだらしなく喘ぎながら身体を痙攣させて白濁を吐きだした。
咥えたまま、先生は僕のを全部飲み干す。
止めてくださいと言ったって先生は平然と飲むからもう最近はされるがままになっていた。
飲み干すときにたまに唇の端から白濁が伝っていることがあってそれを舐める仕草にすごく胸がざわめくことがある。

「――早かったな」

指を三本に増やしながら、ようやく僕の半身を解放して先生が僕を見た。
無表情なのに眼だけは欲色に染まってて、見つめられると逸らしたくなると同じくらい目が離せなくなってしまう。
確かに今日、先生に口に含まれてからは早かった。
だけどその前からずっと後孔を散々弄られていたし……。
でもそんなこと言える筈もなくて顔が赤くなってしまうのだけを感じる。

「っん、ぁ……」

返事など待っていない先生は三本の指をバラバラに動かしながらも前立腺を擦りあげてくる。
それに吐精したばかりだっていうのに緩く反応してしまう僕の半身。

「淫乱」

冷たい声が落とされて、僕の身体を反転させる。
うつぶせにされ腰を持ち上げられた。
そのときに先生のものが肌を掠め、勝手に身体が反応して先生の指を締めつけてしまった。

「……そんなに早く欲しいのか?」

いつも僕は先生にされるばかりで僕が先生の身体に触れることなんて揺さぶられているときしかない。
だからいつも挿れられるまで心配になる。
先生はちゃんと勃ってるのかな……って、そんなことを。

「……あ……の」

僕が触れてなくても、先生だけが僕に触れていても、先生のはちゃんと熱く硬くなっていて。
それに気づくとホッとする。

―――おかしい、ってわかっていても。

"僕は犯されているだけなのに"
「……せんせ……い」

戸惑うように出た声が甘くねだっているようなものになってるのは自分自身がよくわかってた。
僕の呼びかけに対する返事はなくて、かわりに指が引き抜かれた。
そして先生のが宛がわれる。
その硬さに背筋が震える。

「―――……っ、あ」

後孔を押し広げ進んでくる先生のものに僕はシーツを掴み、圧迫感に呼吸を浅く繰り返しながらも確かな快感に頭の中が沸騰しそうなくらい何も考えられなくなってしまう。
吐精の後、触れられていないのに僕のものはまた勃ちあがっていた。
根元まで挿入された先生のものに貫かれているだけで身体が疼いて痺れるような感覚が全身を襲う。
そして先生がゆっくりと動き出す。
先生のものが出ていこうとするのを止めるように収縮する後孔。
ギリギリまで引き抜かれ喪失感を覚え、また根元まで挿入され満たされその熱に震える。

―――3カ月前よりも、明らかに変わった僕の身体。

先生に全部開かれ曝され教えられた身体。

「ん、……っ、は……」

ゆるやかな律動だけど前立腺はかならず狙うように擦られていく。
前を弄られなくてもイキそうになってしまうようになったのはいつからだったんだろう。

「……っ」

先生の吐息が背中に落ちてくる。
僕の腰を掴んで腰を打ちつけてくる先生の顔は僕からは見ることはできない。

いま、どんな顔をしてるんだろう。
先生は僕を抱いて、気持ちいい?

気持ちいいから、こうなってるんだろうけど、それでも最近は訊きたくなってしまう。
もちろん訊けないけど。
だからかわりに―――そっと、僕は後へと手を伸ばし先生の手に触れた。
ほんの一瞬動きが止まる。
そしてすぐにその手を引かれ、

「ンっ、ぁ、っ」

起こされ、先生の脚の上に乗せられる。
背面座位の体勢はより深く先生のものが突き刺さって背中がのけぞった。
首筋にかかる荒い息と微かな呻き。
僕を追い上げるように下から突き上げながら、前に回った手が僕のものを掴んで扱きだす。

「っ……ぁ、ヤ……だ……っ、せん、せっ」

生理的な涙が目の端に滲んだ。
イヤ、じゃなくて、気持ちよすぎて意識が飛びそうで、わけがわからず首を振る。
先生は容赦なく突き上げて首筋に唇を寄せた。
汗ばんだ身体を舐めとるように舌が這う。
それされも気持ちよくて、でも、

「……せんせい」

首じゃなく、肌じゃなく、もっとほかのところに触れて欲しい。
肩越しに振り返ると先生が顔を上げて視線が絡む。
無表情なはずのその顔にはもう余裕はなく、獣のように欲にまみれた男の顔がある。
学校では見ることのない表情。
先生のことで騒ぐ女子たちも、誰も知らない。
学校では僕に触れない手は、今こうして学校の誰も知らない動きで僕を翻弄している。

―――先生、と呼んだ。

僕はなにも言えない。
僕がなにを言っていいのか、わからないから。
ただ呼んで、濡れてるだろう目で、見た。
無言で先生は僕の唇を塞いだ。
苦しい態勢だけど与えられる刺激の方が大きいし、キスをやめたくなくて僕は必死に舌を絡みつかせた。
揺さぶられ、全部を奪われるように貪られる。


それにホッとしている、僕がいた。



***
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