one night

雲乃みい

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contact3.そして、その手を掴むのは

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静かな玄関に俺の荒い呼吸だけが響いてる。
全部を絞り出すように力をなくしていく俺のを最後まで扱いていた手が離れていくのを視界にいれながら、吐精したのにまだ燻る熱に智紀さんの肩に額を預けた。
「足りるかなぁ」
腰をなぞる手と呟きにそっと見上げれば俺が吐き出した白濁をぺろりと舐める智紀さん。
「なにしてるんですか」
なに舐めてんだ、この人は。
呆れながらも、さっきの言葉の意味を悟って目を泳がせる。
その間にも白濁を塗りこめるように俺の後孔に指が触れてきた。
「んっ」
ゆっくりと指先が入り込んでくる。
立ったままの態勢のせいかそれだけでも圧迫感がいつもよりあって、それを逃すように息を長く吐き出す。
「ちーくん」
目元にキスが落ちてきて視線をあわせると、智紀さんが「俺につかまって」って言ってきて、えっと思った瞬間には「よいしょ」と横抱きにされた。
慌てて首に手をまわしたけど身動ぎする。
「たいして力ないから暴れたらだめだよ」
落としたら大変、と、服はちゃんと後で綺麗に洗うから、と白濁がきっと服に付いたんだろう、この状況で細かい気配りを見せながら智紀さんはいわゆる御姫様だっこで俺を寝室に運んだ。
「―――っわ」
でもベッドへは無遠慮に放り投げられて、スプリングに小さく身体をバウンドさせているとすぐに智紀さんが俺の脚を大きく開かせて間に入ってくる。
そして一気にズボンと下着を脱がせると、いつの間に取り出したのかローションを垂らしてきた。
それを指にまとわせながらさっきよりも容赦なく後孔に指を突き立てられた。
ローションのお陰で痛みはないし―――圧迫感はさっきよりも薄れ、それに、内壁をひろげるように動く指にぞくぞくと腰が震えた。
俺の身体はいつの間にこんな風になったんだろ。
ぐちゅぐちゅと水音をたたせながら、智紀さんは早々に二本目の指を追加しながら後孔を侵していく。
「……ん、っ、は」
指は的確に前立腺を狙って動いている。
さっきイったばっかりなのに、俺のは再び勃ちあがっていた。
「千裕」
だらしなくのけぞりながら与えられる快感に震えてればぐっと腰を浮かされ、指が三本になり激しく後孔を掻きまぜた。
「……な、ん……ですかっ」
半身を弄るのとはまた違う快楽。
半年前までは知らなかったのに、いまはもう十分というほどに身体に染み付いてしまってる。
「もう挿れていい?」
俺、限界なんだけど―――。
口元を歪める智紀さんに、俺は小さく頷く。
同時に後孔にぬるりとしたぬめりと硬い感触が宛がわれた。
ぐち、と孔に先端がめりこんで、圧迫感に呼吸が浅くなる。
だけど、もう知ってるから、後孔は喜んで受け入れるようにひくつくのを感じた。
限界っていったのにゆっくりと侵入してくるソレにむずがゆさを覚えて身をよじれば、脚をつかむ腕に力がこめられた。
視線が絡まって、目を眇め俺を見つめる智紀さんに、一瞬イヤな予感がして。
あ、っと思った瞬間には一気に深く突き刺された。
「う、っ、あ」
衝撃に頭の中が真っ白になった。
びくびくと痙攣する身体。
なのに、そんな状態の俺を気にするでもなく最初から容赦なく激しく腰を打ちつけてくる。
「っ、ちょ……っ、あっ、んっ」
何も考えられないまま揺さぶられながら強すぎる快感に智紀さんの腕を掴む。
ぐりっ、と前立腺を狙って擦りあげながら深く穿ち、智紀さんが覆いかぶさるように俺の身体の両端に手をつく。
上から俺を見下ろす目を見返そうとしたけど、視界が揺れてのけぞることしかできなかった。
「ごめんね、千裕。俺もさんざん焦らしプレイされて一カ月我慢してたから、今日は手加減できないかも」
焦らしプレイって、なんだよ。
と、思うのは一瞬で、すぐに思考は快感の渦に飲み込まれた。
ペースを落とすことなく、ただひたすら揺さぶられ、背中に回ってきた手に抱きかかえられるようにして起こされた。
智紀さんの膝の上で下から突き上げられる。
「千裕」
少しだけ緩くなった動き。
頬を撫でてくる手が額から伝い落ちる汗を拭って、そのまま髪に触れて後頭部を引き寄せる。
唇が動くたびに触れそうになるけど、触れない。
視線だけは絡みとられてしまったようにぶれることなく重なっているけど。
「ちーひろ」
と、甘やかす声音に眉が寄ってしまう。
でもすぐに、緩んでしまう。
「好き」
悪戯気に、そのくせ熱を孕んだ目で言われたら、もうダメだ。
背中をなぞる指とガンガンと突き上げられるたびに声が乱れて息が飛んで。
それでも必死にしがみついて、
「―――……俺も……っ」
そう言って。
俺からキスした。
触れるだけじゃない、大人のキス。
やり方はこの人に教えられたキス。
「んっ……は、っん」
智紀さんの咥内で舌を動かす。下から送られる快感にキスが途切れそうになったら促すように舌を絡められて夢中になって返した。
「……やばいね、マジで」
酸欠になってしまいそうなくらいにキスしあって、また俺はベッドに沈められた。
千裕キスうまくなりすぎ、と唇を舐めながら妖艶に笑う智紀さんは俺の脚を抱え直してまた律動をはじめる。
もう限界は近く俺のものはいつ爆発してもおかしくないくらいに張りつめてるし、後孔からわきあがる快感も目の前をチカチカさせるくらいに強くなってた。
「ッ、ぁ……っ、もっ……」
イク、と漏らせばさらに肉同士がぶつかり合う音が激しさを増して。
「……っあ、っん……ッ」
身体が激しく痙攣し、視界がスパークした。
ぎゅうっと収縮する後孔で智紀さんのものが一際膨張するのを、呻く艶のある声が落ちてきたのを絶頂の端で感じた。





***





一戦を終えたあとしばらくして風呂に入った。
くたくたな俺を甲斐甲斐しく洗ってくれる智紀さんに、いつもなら拒否するけど今日くらいはと身を任せた。
「―――幸せだね~」
湯船につかりながら、そんなのんびりとした声で言いながら―――も、智紀さんの手は虐めるように俺の後孔に入り込み前立腺を刺激していたけど。
結局流されるようにそのまま風呂でもヤって、またベッドに戻ってからもヤって。
最後は抱き合ったままどちらともなく眠りに落ちてしまっていた。




そして―――。
意識が浮上して瞼をあげれば目の前に智紀さんの寝顔があった。
こうして寝顔を見るのはもちろん初めてじゃないし、何度もあった。
最初に見たのは……正月、京都へ拉致されたときだったっけ。
眠ってるときは普段よりも少し幼く見えるのは変わらずだ。
その寝顔をじっと見つめて、この人が俺の恋人になったんだ……っていまさらだけど考えて、不思議な気持ちになった。
一度きり、あの夜だけで終わると思っていた関係。
接点なんてなにもなかったはずの俺たちが出会ったあの夜は今日という日から見れば始まりだったんだな。
それもこの人が強引に俺の手を掴んだから、だけど。
引きずられるままに流されるままに智紀さんの奔放さに振り回されたけど。
でも。
あの夜、この人が言ったとおりに俺は一つの恋を忘れさせられた。
悪い意味じゃなく、いつのまにかすとんと鈴への想いは、大事だという気持ちはそのままに熱情だけを消化させて落ちついた。
そのことに本当はもっと早く気づいていたんだと思う、俺自身。
だけど鈴を見守ると従兄妹という切れない絆を選んだ過去がある俺が早々と同性とのそれも智紀さんに恋に落ちるなんて、ましてやそんな自分の感情を認めるなんてできなくて。
ヘタレかって笑える。
そっと手を伸ばして智紀さんの髪に触れた。
いつもされるように撫でるように髪の毛を梳く。
一歩踏み出す勇気なんてなかった。
でも―――。
「……智紀さん、好き、です」
過去彼女はいたけど上辺だけの言葉じゃないそれを声にするのは初めての経験だ。
鈴には一生言うことはない言葉だった。
鈴以外を好きになるなんてあるのかって漠然と思ってたのに。
だから、言ったはいいけどあり得ないくらいに顔が熱くなるのがわかった。
バカなのか、バカだったのか、俺は。
と、きっとゆでダコのように赤くなってるだろう顔を隠すように俺は智紀さんに背を向けてまるくなる。
同時にぎゅーっと抱きしめられる。
「俺も、大好き」
「……知ってます」
髪に触れたとき瞼が少しだけ痙攣して―――きっと目覚めたんだろうってことはわかっていた。
首筋に唇が押しあてられて、むずがゆさに口元を緩めながら目を閉じた。
そしてまた俺たちはゆっくりとまどろみに落ちていった。





――one night END――
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感想 1

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みんなの感想(1件)

Bardot
2019.03.13 Bardot

BLINDFOLDが大好きで更新を楽しみにしていましたが
片瀬が主人公のストーリーまで始まっているのに気づいて
大喜びでお気に入り登録しました。
こちらの更新も楽しみにしています。

雲乃みい
2019.03.13 雲乃みい

こちらのお話気づいてもらえて嬉しいですー😊
智紀の別の恋の話楽しんでもらえたら嬉しいです!
コメントありがとうございます( ´͈ ᗨ `͈ )◞♡⃛

解除

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