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第1部
第2話 屋上へ行こう。
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『大丈夫?』
『はい』
『そっか、ならいいけど。じゃあ、俺帰るね』
『あ、あの先輩っ』
俺にとって初めての男相手のセックスが終わったあと、ベッドに沈んだままだった奏くんは身繕いを終えた俺を目を潤ませて見上げた。
綿毛のように細い髪を乱し、華奢で色白の肌はむき出しのままだ。まだ幼いともいえる成長過程の身体は改めてみると本当に細い。
『なに?』
『あの……っ』
一度だけ、でいいなんてまるでドラマみたいなことを言ったのは奏くん。
だけどセックスすればもっとと欲求が増したとしても仕方ない。俺たちまだ子供だしね。
ヤる前よりもすがるように向けられた目が切なそうに揺れてる。
わりと好き、から、結構好き、にランクアップしてもらえたんだろうか。
そんなにヨカッタ?
そう訊くかわりに俺は手を伸ばして奏くんの頭を撫でた。
頬を染める様子は素直に可愛いと思える。
だけど――、それだけ。
『またね』
俺がそう告げると一瞬泣きそうに顔を歪めたけど、ポジティブらしい奏くんは小さく頷いて
『……また、誘いますね』
と、微笑んだ。
俺もそれに微笑み返し――
「はい、もしもし」
『先輩。お昼にお電話すみません』
電話がかかってきたのは昼休みに入って30分ほど経ったときだ。
ひとり生徒会室で昼食をのんびりとっていたから周りに気をつかうことなく携帯を取り出し出た。
かけてきたのは奏くん。
男相手の初体験から三カ月経った今も奏くんとはごくたまーにセックスをしている。
まぁいわゆるセックスフレンドってやつだな。
俺の声が聴きたかった、らしい奏くんからの誘いをその時の気分次第で受ける。
奏でくんからのお誘いは明日か明後日会ってくれませんか、ということだった。
建前としては「一緒に勉強しませんか」だけど。それはイコールでセックスになる。
「いいよ。明後日の金曜日でどう?」
最近断ってばかりだったから素直に頷けば弾んだ声が響いてくる。その声は可愛いし、幼さを感じる。
奏くんは自分の方が金曜は早く終わるから俺の学校まで来る、と言ってきた。
「了解。じゃあ、明後日」
智紀先輩に会えるのすごく楽しみにしてます、なんていう健気な言葉を聞いて電話を切った。
――明後日かー。
奏くんに会うのは久しぶりだ。
一応向こうも遠慮してるんだろう、頻繁に電話はかかってこない。
メールは毎日あるけど。
つい先週まで文化祭の準備、本番と忙しく会っていなかった。明後日スるとすれば奏くんにとっては一か月ぶりだろう。
「奏くん、結構激しいの好きだからな」
俺以外とはしてないだろうし。
溜まってるんだろうなー、なんてことを弁当箱を片付けながら考える。
俺はまぁ先週連絡をくれたお姉様にお世話になったから事足りてるけど。
さて明後日はどんなプレイをしようかな――って、いや普通にノーマルだけどさ、と自分で内心ツッコミながら生徒会室をあとにした。
そしてなんとなく、屋上に向かった。
晄人やその彼女と昼食をとったりする屋上じゃなくて、また別の。
極秘入手の一般生徒は出入りできない屋上へ。
一般生徒は出入りできない、はずだったんだけど。
「あれ」
そこには先客がいた。
明るく染め上げ無造作にセットされた髪。両耳にはいくつかのピアス。着崩された制服。
わりと長身で顔立ちは整っている。
そして屋上のフェンスに背中を預け、その手には煙草。
校内はもちろん禁煙。
もとより生徒が吸っていいはずもない。
煙草とお酒は二十歳になってから――、と思っていると眼光鋭い彼と目が合った。
眉間にしわを寄せる彼の名前は確か藤代夾。
わりと穏やかな校風のうちの学校で、素行が悪いと評判のいわゆる不良くん。
喫煙現場を俺は見てしまったわけだけど藤代は気にする様子もなくそのまま吸い続けている。
一瞬あった目もすぐに逸らされ俺の存在は空気にされたらしい。
俺も気にせずそのまま歩いていく。
と、また目が合う。
その目がどこかに行け、と言ってるのはわかる。
でもこんな機会滅多にないし俺は気にせず藤代からほんの1メートルほど距離をあけフェンスにもたれた。
屋上に来てみるもんだなぁ。
11月も中旬になって肌寒さがましていく空気の中に立ち上る紫煙。
この屋上は職員室や準備室などがある一角からは死角になっている。
もとより校舎は広いし、出入り禁止のはずのここで煙草を吸っていても見咎められることはないだろう。
誰も気づかない。
「煙草」
呟いて藤代を見れば、俺の言葉にさらに眉間のしわを強く寄せる。
にらみつけてくる藤代に営業スマイルで笑いかけた。
「俺にもくれない?」
貰うわけだから、の笑顔。
手を差し出せば眉を寄せたまま藤代は眼光を強めた。
『はい』
『そっか、ならいいけど。じゃあ、俺帰るね』
『あ、あの先輩っ』
俺にとって初めての男相手のセックスが終わったあと、ベッドに沈んだままだった奏くんは身繕いを終えた俺を目を潤ませて見上げた。
綿毛のように細い髪を乱し、華奢で色白の肌はむき出しのままだ。まだ幼いともいえる成長過程の身体は改めてみると本当に細い。
『なに?』
『あの……っ』
一度だけ、でいいなんてまるでドラマみたいなことを言ったのは奏くん。
だけどセックスすればもっとと欲求が増したとしても仕方ない。俺たちまだ子供だしね。
ヤる前よりもすがるように向けられた目が切なそうに揺れてる。
わりと好き、から、結構好き、にランクアップしてもらえたんだろうか。
そんなにヨカッタ?
そう訊くかわりに俺は手を伸ばして奏くんの頭を撫でた。
頬を染める様子は素直に可愛いと思える。
だけど――、それだけ。
『またね』
俺がそう告げると一瞬泣きそうに顔を歪めたけど、ポジティブらしい奏くんは小さく頷いて
『……また、誘いますね』
と、微笑んだ。
俺もそれに微笑み返し――
「はい、もしもし」
『先輩。お昼にお電話すみません』
電話がかかってきたのは昼休みに入って30分ほど経ったときだ。
ひとり生徒会室で昼食をのんびりとっていたから周りに気をつかうことなく携帯を取り出し出た。
かけてきたのは奏くん。
男相手の初体験から三カ月経った今も奏くんとはごくたまーにセックスをしている。
まぁいわゆるセックスフレンドってやつだな。
俺の声が聴きたかった、らしい奏くんからの誘いをその時の気分次第で受ける。
奏でくんからのお誘いは明日か明後日会ってくれませんか、ということだった。
建前としては「一緒に勉強しませんか」だけど。それはイコールでセックスになる。
「いいよ。明後日の金曜日でどう?」
最近断ってばかりだったから素直に頷けば弾んだ声が響いてくる。その声は可愛いし、幼さを感じる。
奏くんは自分の方が金曜は早く終わるから俺の学校まで来る、と言ってきた。
「了解。じゃあ、明後日」
智紀先輩に会えるのすごく楽しみにしてます、なんていう健気な言葉を聞いて電話を切った。
――明後日かー。
奏くんに会うのは久しぶりだ。
一応向こうも遠慮してるんだろう、頻繁に電話はかかってこない。
メールは毎日あるけど。
つい先週まで文化祭の準備、本番と忙しく会っていなかった。明後日スるとすれば奏くんにとっては一か月ぶりだろう。
「奏くん、結構激しいの好きだからな」
俺以外とはしてないだろうし。
溜まってるんだろうなー、なんてことを弁当箱を片付けながら考える。
俺はまぁ先週連絡をくれたお姉様にお世話になったから事足りてるけど。
さて明後日はどんなプレイをしようかな――って、いや普通にノーマルだけどさ、と自分で内心ツッコミながら生徒会室をあとにした。
そしてなんとなく、屋上に向かった。
晄人やその彼女と昼食をとったりする屋上じゃなくて、また別の。
極秘入手の一般生徒は出入りできない屋上へ。
一般生徒は出入りできない、はずだったんだけど。
「あれ」
そこには先客がいた。
明るく染め上げ無造作にセットされた髪。両耳にはいくつかのピアス。着崩された制服。
わりと長身で顔立ちは整っている。
そして屋上のフェンスに背中を預け、その手には煙草。
校内はもちろん禁煙。
もとより生徒が吸っていいはずもない。
煙草とお酒は二十歳になってから――、と思っていると眼光鋭い彼と目が合った。
眉間にしわを寄せる彼の名前は確か藤代夾。
わりと穏やかな校風のうちの学校で、素行が悪いと評判のいわゆる不良くん。
喫煙現場を俺は見てしまったわけだけど藤代は気にする様子もなくそのまま吸い続けている。
一瞬あった目もすぐに逸らされ俺の存在は空気にされたらしい。
俺も気にせずそのまま歩いていく。
と、また目が合う。
その目がどこかに行け、と言ってるのはわかる。
でもこんな機会滅多にないし俺は気にせず藤代からほんの1メートルほど距離をあけフェンスにもたれた。
屋上に来てみるもんだなぁ。
11月も中旬になって肌寒さがましていく空気の中に立ち上る紫煙。
この屋上は職員室や準備室などがある一角からは死角になっている。
もとより校舎は広いし、出入り禁止のはずのここで煙草を吸っていても見咎められることはないだろう。
誰も気づかない。
「煙草」
呟いて藤代を見れば、俺の言葉にさらに眉間のしわを強く寄せる。
にらみつけてくる藤代に営業スマイルで笑いかけた。
「俺にもくれない?」
貰うわけだから、の笑顔。
手を差し出せば眉を寄せたまま藤代は眼光を強めた。
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