東京ラビリンス

瑞原唯子

文字の大きさ
上 下
23 / 64

22. 人質

しおりを挟む
「ん……」
 顔を掠める空気は刺すように冷たいが、背中にはほんのりと温もりを感じる。あたりに漂っているのは草木の湿った匂いだろうか。そこには僅かなカビ臭さも混じっており、無意識に顔をしかめるものの、同時にどこか懐かしいような気持ちも湧き上がる。
 澪は、ぼんやりと目を開いた。
 錆びて崩れかかったドラム缶、乱雑に積まれた藁、無造作に放置されたシャベルや布きれ、塗装が剥げて変色したトタン板、腐蝕しかけた金属製のバケツ、薄汚れたガラス窓、その高窓から降りそそぐ月明かり。どうやら、ほとんど廃屋といってもいい物置小屋か何かのようだ。そして、自分は――。
「動くな!」
 耳をつんざく鋭い声に、澪はビクリと身をすくませる。
「せっかく温まった空気が逃げる」
「あ……」
 澪と男は薄汚れた一枚の毛布にくるまっていた。その毛布以外は、おそらく二人とも何も身につけていない。澪は男の膝の上で抱きかかえられていたが、密着している部分は間違いなく双方とも素肌である。
 ただひとつ、澪には手錠が嵌められている。
 その感触と痛みで、何があったのか記憶がよみがえってきた。研究所からこの男に連れ去られる途中、澪が逃げ出そうとしたことで、二人一緒にバイクごと真冬の海へ転落したのだ。それ以降のことは何も覚えていない。
「おまえ、心中でもする気だったのかよ」
「……私は、ただ逃げようとしただけ」
「バカが、結果を考えてから行動しろ」
「そっちこそ!」
 澪はカッとして後ろに振り返った。瞬間、大きく目を見張って凍りつく。
「それが、本当の色……?」
「ああ、カラコン流れちまったのか」
 至近距離で自分に向けられていたのは、まるでサファイヤのような鮮やかな青の瞳だった。高窓からの月明かりを浴びて、神秘的に、不気味に、怖いくらいの鮮烈な輝きを放っている。碧眼などそうめずらしいわけでもないのに、なぜだか身の毛がよだつほどゾクリとさせられた。
「あなた、いったい何者なの?」
「答える義務も義理もない」
「あの女の子と同じで、人間じゃない……?」
 澪は一方的に憶測を投げかける。不思議な力を使うことから考えても、女の子を知っていたことから考えても、おそらく間違いないような気がした。しかし、男は露骨にムッとして眉根を寄せた。
「それはおまえらの言い分だ」
「えっ?」
「正確なことは俺にもわからないが、もともと同じ人間だったのは事実だ。おそらく、環境の違いにより別々の進化をたどった、というところだろう。俺らの側から言わせれば、おまえらが人間じゃないとも言える」
 澪はハッと小さく息を呑み、目を伏せた。
「……ごめんなさい」
「俺も感情的になった」
 男は気持ちを整えるように呼吸をすると、静かな口調で話を続ける。
「たとえ双方にゲノムの違いがあったとしても、本質的な部分では何ら変わるところはない。外見にも特徴的な相違はない。どちらも紛れもなく『人間』といえる。それが、この国で何年か暮らしてきた中で得た結論だ」
「でも、手から光みたいなのを出してたのは、その遺伝子の違いによるものだよね?」
 澪が尋ねると、男は急に怪訝な顔になった。
「おまえは使えないのか?」
「あんなこと出来るわけないよ」
 自分たちの中には出来る人など誰ひとりいないはずだ。何年もこちらにいながら知らなかったのだろうか、と澪は不思議に思う。それに、もし澪にあのようなことが出来るのならば、とっくにその力を使って反撃していただろう。こんなところまでむざむざと連れて来られはしなかった。
 彼の眉間に、ふと深い皺が刻まれる。
「力はあるんだがな」
「え、どういうこと?」
「ああ……」
 彼は低い声で相槌を打つと、思考を巡らせながら言葉を紡いでいく。
「あれは……俺らは魔導というような呼び方をしてたが、おそらくゲノムの違いには関係ないはずだ。俺らの中でも力のない奴は大勢いたし、こっちの世界でも力を持った奴はいる。おまえたち双子のようにな」
「私と、遥?」
 澪は困惑して眉をひそめ、首を傾げた。
「でも、本当にあんなこと出来ないんだけど……私も、遥も……」
 男が嘘をついているようには見えなかったが、澪ももちろん本当のことしか言っていない。少なくともこれまで一度もやったことはないし、やろうとしたこともない。訓練すれば出来るようになるのだろうか。まるでテレビゲームのような現実味のないことが――。
 男はふと表情を険しくして考え込むと、若干低めの声で切り出す。
「橘美咲が研究していたのは、この力だ」
「えっ……」
「知らなかったのか?」
 そう尋ねられ、澪はうつむいたまま小さく頷く。美咲が何について研究しているのかも、武蔵の不思議な力がそれであることも、自分たちがその力を持っていることも、何ひとつとして知らなかった。もしそれらが真実だとすれば、自ずと一つの推論が導き出される。
 自分たちも、母親に人体実験をされていた――。
 幼い頃から頻繁に研究所に連れて行かれ、健康診断と称して検査や点滴をされていた、という事実を併せて考えると、もはやそう確信せざるを得なかった。澪としては信じたくなかったが、遥の言ったことはやはり間違っていなかったのだ。
「橘美咲の研究は、生体エネルギーに関するものだ」
 男は耳元で語り始めた。
「俺やおまえのように魔導力を持つものであれば、体内で作り出すことができるが、橘美咲はそれを人工的に生み出そうとしている。もし自在に発動させることができれば、おそらく人類最大の兵器となるだろう。原爆と同規模のものも不可能じゃない。それもいっさい汚染のないものだ。すべてを吹き飛ばして更地にしたうえで、すぐ次の目的に利用することもできる。ただ、そのエネルギーに耐えうる器を作ることができていない。器となりうるのは、今のところ、もともとその力を持っている人間だけ――つまり、俺や、あの子や、おまえら双子だ」
 澪の鼓動がドクンと打った。
 男の顔は険しさを増す。
「実験でその原理を解明しようとしているのか、手っ取り早く人間兵器を作ろうとしているのか――どちらにしてもあの子を利用しなければ進められない。あの橘美咲が、そう簡単に手放してはくれないだろうな」

 ザッ、ザッ、ザッ――。
 ふいに、小屋に近づく鈍い足音が耳に届いた。
 背後の男は瞬時に全身を緊張させた。息をひそめながら、澪を抱きかかえる手に力を込め、もう一方の手で澪の口を塞ぐ。鼻まで一緒に覆われてしまったため、澪は次第に息苦しくなりもがき始めるが、彼の大きな手はビクともしない。
「武蔵、おるのか?」
「ああ……入ってきてくれ」
 しゃがれた声を聞くやいなや、男は大きく安堵の息をついてそう答え、ようやく澪の口を覆っていた手を外した。すると、立て付けの悪い扉がギギギと軋みながら開き、地味な作業着姿の老人が小屋に入ってくる。足腰はしっかりしてそうだが、頭髪はほとんど真っ白なうえ、顔には深い皺が刻まれており、剛三よりも幾分か年老いている印象を受けた。
「ほれ、着替えじゃ」
「サンキュ」
 男は邪気のない笑顔で答え、そそくさと一人毛布から抜け出していった。乱雑に地面に落とされたその毛布を、澪は手錠で繋がれたまま大慌てで掻き寄せ、裸の体を隠すべくあたふたと巻き付けていく。恨めしげに口をとがらせ横目を流しても、彼はまるで意に介していないようだ。前を隠すことなく堂々と立ち、老人から大きな手提げの紙袋を受け取っていた。
「ムサシ……って名前?」
「そ、宮本武蔵の武蔵」
 紙袋から取り出した衣類を身につけながら、軽い口調でそう答える。本当のことを知らないときであれば、素直に信じたかもしれないが、今となっては胡散臭いとしか思えない。
「本名じゃないよね」
「世を忍ぶ仮の名だ」
 そんなふざけた言いまわしで答えると、彼は続けてジーンズを穿き、ブルゾンに袖を通し、半乾きの黒い前髪を大きく掻き上げる。
「……髪、染めてる?」
 澪が遠慮がちに尋ねると、武蔵と名乗った男はニヤリとして振り向いた。その意味ありげな視線に耐えかねて、澪はぷいっと顔をそむける。そして、ほんのり染まった頬を膨らませながら、縋るように毛布を掴んで身をすくめた。
「さ、行くか」
「ちょっ、もういいでしょう?!」
 澪は体をよじって精一杯の抵抗を示すが、彼はものともせず、薄汚れた毛布ごとひょいと抱き上げた。
「何のためにわざわざ助けたと思ってんだ。おまえは人質だ」
「せめて服くらい着させて! 私の服はどうしたの?!」
「そうだ、忘れてた」
 武蔵の振り向いた方に、二人の着ていた衣類が無造作に積み上げられていた。まだ濡れているようだ。彼は横抱きにした澪を下ろすことなく片腕を伸ばし、その衣類の山に手のひらを突き出すと、日本語でも英語でもない理解不能な言葉を呟く。すると手のひらから強烈な光球が放たれ、一瞬ですべて燃え尽きたかのように灰と化した。
「ちょ……!」
 抗議は言葉にならなかった。驚きのあまり口を半開きにして唖然とする。武蔵はそんな澪をしっかりと横抱きにしたまま、あたりを警戒しつつ、作業着を身につけた老人とともに早足で小屋をあとにした。

 外はまだ暗く、夜は明けていなかった。
 澪たちのいた小屋は、枯れ木に覆われた小山を少し登ったところにあったようだ。他に建物は見当たらない。不気味なくらいの静寂があたりを包んでいる。草や小枝を踏みしめる音がやけに大きく響いた。
「ねえ、おじいさま」
 隣を歩く老人に、澪はあからさまに媚びるような声をかけた。
「私、橘財閥会長の孫なの」
「ほう」
 興味をひかれたように大きくなる目。脈ありとばかりに、老人の方に首を伸ばして畳みかける。
「ね、どうにかして私を逃がしてくださらない?  無事に逃げられたらきちんとお礼をするわ。私個人でも一千万くらいなら出せるし、祖父に頼めば三億くらいは用意してくれると思うの。孫娘の命の恩人にならそのくらい惜しくないはずよ」
 老人はフッと鼻先で小さく笑った。澪を一瞥し、ゆったりと後ろで手を組み合わせる。
「お嬢ちゃん、ワシは友人を売ったりはせんよ」
「友人? だったら悪事に手を染めるの止めなきゃ!」
「武蔵は何も間違ったことをしておらんだろう」
「うら若き乙女を拐かそうとしてるじゃない!!」
「おまえ、いいかげん黙れ」
 黙って二人の会話を聞いていた武蔵が、うんざりした口調で割り込んできた。呆れたような目つきで、腕に抱く澪をじとりと見下ろしている。確かに、犯人の目の前でこんな交渉をするなど、馬鹿げた行動としか言いようがないだろう。それでもほんの僅かでも可能性があるのなら、どんな無謀なことでも試さずにはいられなかった。
 こうなったら――。
「大声で助けを呼ぼうとか考えるなよ」
 まるで思考を見透かしたかのようなタイミングで、武蔵がそう牽制する。澪はグッと言葉を詰まらせたが、すぐに気持ちを立て直し、まっすぐ強気な視線を送って挑発する。
「私はあなたにとって大切な人質なんでしょう?」
「ああ、おまえには生きててもらわないと困る。だが――」
 武蔵はいったんそこで言葉を切ると、足を止め、凄みのある低音で静かに威嚇する。
「おまえを助けに来た奴は、全員殺す」
「なっ……」
 澪は口を半開きにして固まった。
「悲鳴を上げたら、無関係な人も含めてまわりは皆殺しだ。俺にはそれが可能だということも、今のおまえならわかるだろう。無駄な死人を出したくなければ大人しくしてろ。いいな?」
「…………」
 理性的に諭すような口調であるが、実質は脅迫以外の何物でもない。そのようなことに素直に頷く気にはなれない。だからといって逆らうことも出来はしない。不条理に耐えつつ、キュッと小さな唇を噛み締めるのが精一杯だった。

 しばらく林道を下ったところに、小型トラックが駐めてあった。
 荷物の積載部分がアルミの箱になっている、宅配業者が配達で使っていそうな車だ。それなりに手入れはされているが、かなり古びているように見える。しかし、それがかえって本物らしさを醸し出していた。
「検問はあったか?」
「いや、一度も見かけんかったな」
「念のため大通りは避けてくれ」
「わかっておる」
 二人はそんな会話を交わしながら、トラックの後方へと向かう。
 老人が荷台の扉を開くと、武蔵は澪を抱えたまま軽々と飛び乗った。そして、荷台の中ほどでそっと澪を下ろし、積まれた段ボール箱をいくつかどけて、意図的に隠していたと思われる奥の扉を開いた。その向こう側は、人ひとりが何とか立てるくらいの狭い空間になっている。いわゆる隠し部屋のようなものだろう。
「入れ」
 この状況では従うより他にない。
 澪は長い毛布を内側からつまみ上げて中に進んだ。すぐあとから彼も入って扉を閉める。微かな光さえ届かない暗闇の中、武蔵は手探りで澪を両腕に閉じ込める。薄いアルミの向こうからは、段ボール箱を引きずるような音が聞こえた。
「武蔵、良いか?」
「ああ、行ってくれ」
 老人は了解を得るとすぐに荷台から降り、運転席に乗り込んでエンジンをかける。もう取り返しの付かないところまで来てしまったのではないか、という澪の不安をよそに、トラックは小刻みに振動しつつ軽快に林道を走り出した。

「おい、起きろ」
 鼓膜を震わせたその無愛想な声で、澪は目を覚ました。
 いつのまにか、立ったまま武蔵に身を預けて眠っていたようだ。トラックはすでにエンジンを切って停車している。一時間か、二時間か、どのくらい走ったのかわからない。ここがどこなのかもわからない。最初のうちは外部の音に耳を澄ませていたが、夜明け前という時間もあり、これといって手がかりらしきものは得られなかった。
「おいっ!」
「起きてるよ」
 澪はムッとしてぶっきらぼうに言い返す。彼から離れようとするが、たくましい両腕に拘束されて身じろぎもできない。文句を言おうとしたそのとき、ギィ、と音を立てて外から扉が開かれた。
「サンキュ、じいさん」
 武蔵はそう言いながら、澪を抱きすくめたまま二人一緒に荷台へ出た。
 そこには、半開きになった外扉から光が射し込んでいた。老人の顔も武蔵の顔も判別できる。が、トラック外の様子はその扉が邪魔してよく見えない。全体的に明るそうに見えるし、鳥のさえずりも聞こえるので、もう夜は明けているようだ。
「わっ……」
 ぼんやりと考えごとをしていると、いきなり武蔵の着ていたブルゾンを頭に巻き付けられた。視界が遮られて何も見えなくなる。あたふたしていると、トラックに乗せられたときと同じように、毛布にくるまれた体を武蔵に抱え上げられた。
「息苦しいかもしれないが、しばらく我慢してくれ」
 そう言って、彼はそのまま軽やかに荷台から飛び降り、坂道らしきところを大股で歩いて上っていく。足音は一つだけだ。トラックの走り去る音が聞こえたので、あの老人は武蔵を下ろして帰ったのだろう。
 数分ほど歩き、どこかの建物に入った。
 座らされるような格好で下ろされ、頭に巻き付けたブルゾンを外される。はぁっと大きく口を開けて酸素を吸い込むと、鎖で繋がれた両手を握り合わせながら、おずおずと周囲を見まわしていった。
 そこは、ただっ広い部屋だった。
 調度品はほとんど置かれておらずガランとしている。ただ、左奥にはダイニングテーブルと片付けられた台所があり、その一角だけは多少の生活感を窺うことができた。正面奥はガラス窓になっているようだが、厚手のカーテンが引かれていて外は見えない。
 武蔵はどこからかもう一つの手錠を持ってくると、細いポールに澪の左手を繋いだ。
「なっ……」
 右手と左手、左手とポールがそれぞれ手錠で繋がれている状態だ。両腕を引っ張り出されたことで、体に巻き付けてあった毛布が滑り落ちたが、武蔵はすぐにそれを拾い上げて巻き付け直した。ぞんざいではあるが、とりあえず見られたくない部分は隠されている。
「俺、シャワー浴びてくるからな」
「あっ、自分だけずるい!」
「じゃあ、おまえも一緒に入るか?」
「誰がっっ!」
 澪は噛みつかんばかりの勢いで言い返した。
 しかし、武蔵はふっと軽く笑っただけで、思い出したようにエアコンをつけると、何も言わずに部屋をあとにした。耳に届くのは静かな運転音だけである。ガシャリ――身を捩ると手錠が無機質な音を立てた。澪は現実を思い知らされたように感じ、ポールに頭をつけてぐったりとうなだれ、大きく溜息をついた。

 ――あれ、もしかして今ってチャンス?
 部屋が暖まってきた頃、澪はふとその考えに至った。
 落ち込んでいる場合ではない。外に見張りがいるわけでもなさそうなので、手錠さえなんとかすれば逃げられるはずだ。慌てて顔を上げ、左手が繋がれているポールを観察する。見たところ手首ほどの太さしかないが、金属製で継ぎ目もなく、ちょっとやそっとでは壊れそうもない。床から天井まで通っているため、壊さずに抜くことも不可能である。手錠の鎖を引きちぎることも上手くいかなかった。とはいえ、可能性としてはそれがいちばん高いだろうと思う。
 澪は決意を固め、ひとり真剣な顔で頷いた。
 ガシャガシャ、ガシャン――歯を食いしばって痛みに耐えながら、何度も全力で引きちぎろうとする。すでに痛々しく変色していた手首に、新たな傷がいくつも重ねられていく。毛布が落ちて上半身が露わになったが、そんなことに構っている余裕はない。あまりの痛さに脂汗が滲んでも、傷口から赤い血が滲んでも、手を止めようとはしなかった。

「ったく、無駄なことはやめろ」
 呆れたようにそう言いながら、武蔵が部屋に戻ってきた。半袖Tシャツにジーンズという冬らしからぬ格好だが、エアコンのきいたこの部屋ではちょうどいいくらいかもしれない。首にかけたバスタオルで無造作に髪を拭きながら、拘束されている澪の方へと足を進める。
「……っ!」
 そのとき、澪は自分の上半身が露わになっていることに気付いて息を呑んだ。しかし、手錠で拘束されたこの状態では、毛布をかけ直すことも体を隠すこともできない。昨晩からすでにさんざん見られているので、今さらではあるが、それでもやはり恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。
「む……無駄かどうか、やってみないとわからないじゃない……」
「その手錠はおもちゃじゃない。おまえよりよっぽど頑丈だ」
「…………」
 言われるまでもなく、本当はもう身をもって気付かされていた。ただ認めたくなかっただけである。絶望的な現実を突きつけられて沈む横顔を、武蔵はしゃがみ込んでじっと見つめた。
「シャワー浴びてこい」
「えっ、いいの?」
「悪臭を放たれても困るからな」
「悪臭って……」
 澪は微妙な面持ちで口をとがらせるが、武蔵は無表情のまま鍵を取り出し、ポールに繋がれていた左手の手錠を外した。ただし、両手を繋ぐ手錠はそのままである。
「下手なことは考えるなよ」
「ちょっと、毛布っ!!」
 澪は武蔵に抱き上げられた。かろうじて下半身に掛かっていた毛布は、無情にも彼に払いのけられ、今は何ひとつ身につけていない状態だ。慌てて落ちた毛布を示しながら声を上げたものの、彼は醒めた目で澪を見下ろすだけである。
「シャワーはすぐそこだからいいだろ」
「そういう問題じゃなくてっ!」
 必死の抗議も虚しく、結局、澪は素っ裸のままバスルームへ連れて行かれた。

「……ずっと見張ってるつもり?」
「おまえは油断ならないからな」
 バスルームの扉を大きく開け放ったまま、武蔵はその入り口を塞ぐように座り込んでいた。狭いバスルームなので必然的に距離は近くなる。そんなところからじっと見張られていては落ち着かない。何より、逃げるのが格段に難しくなってしまう――。
 それでも、この機会を逃すつもりはない。
 澪は不自然にならない程度に自分の体で隠しながら、シャワーの温度設定をさりげなく最高値までまわす。残酷だとは思うものの躊躇してはいられない。シャワーヘッドを手にとって堅く握りしめると、目一杯カランを捻り、武蔵の顔面に思いきり熱湯シャワーを浴びせかけた。つもりだったが――。
「えっ?!」
 彼の前にガラスでも置かれているかのように、熱湯シャワーはその手前できれいに阻まれた。アイボリーの床へ垂直に流れ落ち、もわもわと白い湯気が立ち上る。その向こうから現れたのは、凄まじい怒気を放つ青の双眸――。
 ゴトン。
 澪はシャワーヘッドを滑り落とした。立ち上がった彼に気圧されて後ずさるが、たったの二歩で壁にぶつかる。背筋にぞくりと冷たいものが走り、膝は今にも崩れそうなくらいガクガクと震え出した。
「本当に油断も隙もねぇな」
 武蔵は低く唸るようにそう言うと、ズイッと間合いを詰め、大きな手で乱暴に顎を掴み上げた。
「ぐ……」
 澪の顔は苦痛と恐怖で大きく歪み、喉の詰まるような声が漏れた。それでも彼の手は緩まない。鮮やかな青の瞳が、視界に映るすべてが、次第にぼんやりとその輪郭を失っていく。
 意識が途切れかかったそのとき、手が離された。
 澪はぐったりと壁に寄りかかり荒く呼吸をする。足もとで身を屈めた武蔵に目を落とすと、彼は温度設定を適正値に戻しながら、床に投げ出されたシャワーヘッドを拾い上げていた。自分の手で水温を確認したあと、そのシャワーを澪の頭上から浴びせかける。
「んっ?!」
 澪は思わず目をつむって下を向くが、武蔵は容赦なく強い水流で浴びせ続けた。そして、ありえないくらい大量のシャンプーをかけると、乱暴な手つきで髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜていく。みるみるうちに、澪は頭から体まで泡だらけになった。

 髪も、体も、すべて武蔵の手で洗われた。
 初めのうちは怒りまかせの乱暴な手つきだったが、その荒々しさは徐々に消えていき、体を拭かれるときにはすっかり落ち着いたものになっていた。その手で服も着せられる。用意されていたのは、武蔵のものと思われる黒のTシャツ一枚きりである。しかしながら太腿くらいまで丈があり、見られたくない部分を隠す役割は、ひとまず果たしているといえるだろう。
 部屋に戻ると、再びポールに繋がれる。
 手首は広範囲にわたって傷ついており、内出血もひどく、もはや暴れる気力はなくなっていた。手錠を外されたのはTシャツに袖を通すときだけで、あとはずっと嵌められっぱなしである。バスルームでは湯が沁みてさんざんな思いをした。今となっては、おとなしく繋がれているだけでも痛みを感じる。
 武蔵は台所で食べるものを作っていた。
 炊飯と煮物の匂いに食欲が刺激され、堪え性のないおなかが、ぎゅるぎゅるとけたたましく音を立てた。澪は顔を赤らめてうつむく。武蔵には聞こえていないことを祈った。だが――。
「待ってろ、もう少しだから」
 彼はニッと唇に笑みをのせて振り返る。
 その見透かしたような態度が無性に腹立たしい。普通、気付いても気付かないふりをするものだ。放っておいてくれればいいのに――澪は頬を染めたまま口をとがらせ、上目遣いで睨みつけた。

 野菜の煮物と白飯、お茶、箸などが、ダイニングテーブルの上に並べられている。
 それを挟んで、澪と武蔵は向かい合わせに座っていた。まるで家族の食卓のようである。ただ、澪の両手を繋ぐ銀色の手錠が、その家庭的な雰囲気を台無しにしていた。
「材料がなくてたいしたものが作れなかったが、今日はこれで我慢してくれ。あしたからはもう少しまともなものを食わせてやる。まあ、財閥のお嬢様が満足するような豪勢な料理じゃないけどな」
 武蔵は箸を手に取りながら淡々とした口調で言う。
 しかし、澪は膝に両手を置いたままうつむいていた。
「手錠のままじゃ食えないなんて言うなよ」
「そうじゃなくて……」
 武蔵から向けられる追及の視線に思わず身をすくませ、さらに深く顔をうつむける。言うべきかどうか少し迷っていたが、答えを待たれる沈黙に耐えかねて、そろりと戸惑いがちに口を開く。
「何か……毒とか、変なもの入ってないかなって……」
「はぁ?」
 武蔵は裏返った声を上げると、これでもかというくらい盛大に溜息をついた。
「おまえ、本っ当にどうしようもないバカだろ。わざわざ毒なんか仕込まなくても、その気になれば、おまえくらい簡単に殺せるんだよ。そんな七面倒くさいことをやる必要がどこにあるっていうんだ」
「殺すのが目的じゃなくて……自白剤とか、惚れ薬とか……」
 澪としては真面目に考えたつもりだったが、武蔵は心底呆れたような顔をしていた。溜息をつきながら澪の皿に箸をのばすと、じゃがいもを取って自分の口に放り込む。そして、見せつけるようにモグモグと口を動かして飲み込んだ。
「これで信用したか?」
「でも……」
 ぎゅるるる、と再びおなかが高らかに鳴り響いた。よりによってこのタイミングで。あまりの恥ずかしさに、澪は顔を紅潮させて小さく身を縮こまらせる。今にも頭から蒸気が噴き出しそうになっていた。
「食え、命令だ」
 武蔵は面倒くさそうに言いつける。
 不安に思う気持ちは残っていたが、そこまで言われては仕方がない――と内心でもっともらしい言い訳をしつつ、澪は両手を繋がれたまま箸を持ち上げ、危なっかしい手つきでじゃがいもを口に運んだ。
「……おいしい」
「だろ?」
 思わず呟いてしまった一言に、武蔵は嬉しそうに目を輝かせた。その屈託のない表情が、澪の警戒心を和らげる。両手を繋がれているという慣れない状態で、何度も箸を往復させ、時間は掛かったがすべてきれいに平らげた。

 窓には遮光カーテンが引かれているので、外の様子はわからないが、だいぶ日が高くなっているように感じた。隙間から漏れ入る光が、ここへ来たときよりかなり眩しさを増している。そろそろ昼になる頃かもしれない。

 澪は再び繋がれたポールの横に座り込んだまま、せわしなく動く武蔵を眺めていた。
 彼は食事の後片付けを慣れた手つきで済ませると、押し入れから一組の布団を取り出し、ポールに一端をくっつけるように敷き始めた。見るからに薄っぺらい煎餅布団で、あまり寝心地は良くなさそうである。それでも、昨晩からまともに休めていない体には、十分すぎるほどありがたいものだ。しかし、澪のために敷いてくれたのかと思いきや、彼自身が真っ先にその布団で横になった。
「俺はしばらく寝る。おまえも寝た方がいい」
「えっと……一緒に、ってこと……?」
「布団は一組しかない」
 その愛想のかけらもない返答にムッとしながらも、澪はガシャガシャと手錠の音をさせて頼み込む。
「じゃあ、せめてこれ外してくれない?」
「そのままでも寝られるだろう」
 考えてみれば、これから寝ようというときに、人質の拘束を解く犯人などいない。いっそ座ったまま眠ろうかとも思ったが、布団の引力には抗えず、彼の隣へそろりと足から潜り込む。両手はポールに拘束されたままなので、バンザイのような格好になっているが、座っているより随分と体が楽に感じた。
 隣の武蔵は、すでに目を閉じていた。
 その無防備な横顔を見ていると、次第に胸がざわついてくる。澪はまだ逃げることを諦めていない。手錠を外すことができたとしても、逃げるのは難しいかもしれないが、油断をさせられれば勝機はあるだろう。やるなら彼が疲れている今しかないのでは――少しの逡巡の後、若干の緊張を覚えながら隣に身を捩った。
「……ねぇ」
「何だ」
 目を閉じたまま返事をする彼に、なけなしの艶をのせて問いかける。
「このまま寝ちゃうのもつまらなくない?」
「はぁっ?」
「ほら、男と女が一つ布団の中にいるんだし……」
「面倒くさいこと言うな。俺は疲れてんだ」
 武蔵はぶっきらぼうに言い捨てて背中を向けた。微塵も興味がないと言わんばかりのその態度に、澪は本来の目的そっちのけでカチンときた。私にだって少しくらい色気はあるんだから――半ば意地になりながら、自分にできるありったけの甘い声で囁く。
「そんなこといわずに、ねぇ……しよ?」
「ったく……」
 武蔵はうんざりしたようにそう言うと、布団を跳ね上げて体を起こし、溜息をつきながら前髪を掻き上げた。そして、おもむろに澪の足首を掴んで引き寄せると、それをグイッと持ち上げて大きく左右に広げる。
「ひゃっ! ちょっ、まっ……!!」
 完全に予想外だったその展開に、澪は顔を真っ赤にしてパニックを起こした。着ているのはTシャツ一枚きりで下着はつけていない。彼の前に自分の秘所が晒されているのだ。抵抗しようと足をばたつかせるがびくともしない。ますます焦る澪を、武蔵は脚の間からじっと無表情で見下ろしていた。
「やるんだろ?」
「ま、まずこれとってよ!」
 澪はポールに繋がれた手錠をガチャガチャ動かし、大慌てで訴えかけた。
 しかし、武蔵の表情はまるで変わらない。
「別にこのままでも出来る」
「やっ、そんなのダメ!!」
「なんで?」
 澪はすでに頭が真っ白になりかけていた。それでも、彼を納得させる答えを捻り出すべく、死にもの狂いで思考を巡らせる。額にはじわじわと汗が滲んだ。やがて、彼の冷ややかな視線に追いつめられ、考えがまとまらないまま口を開く。
「わ……たし……ノーマル至上主義なの!!」
「…………くっ」
 武蔵は掴んでいた澪の足を下ろしてうつむくと、小刻みに体を震わせ始めた。
「えっ……あ、の……」
「おまえ、本当にどうしようもないバカだな」
 その声は明らかに笑いを含んでいた。頭の後ろで手を組み、澪の隣にごろんと仰向けになる。
「おまえの考えてることなんて丸わかりなんだよ。それに、手錠を外したって俺から逃げられはしない。やられ損になるだけだぞ。結果を考えてから行動しろって言っただろう」
「だって……帰りたいんだもん……」
 率直な言葉を口に上すと、堰を切ったように気持ちがあふれ出す。
「誰だってそうでしょう? 得体の知れない人に監禁されたら、どうにかして逃げ出したいって思うじゃない。逃げる方法があるなら試してみたいじゃない。バカかもしれないけど必死なんだもん。遥や師匠のところに帰りたい、学校に行きたい、遊びに行きたい……ずっと続いていた幸せな日常に戻りたい……ただそれだけなのに、こんな……」
 最後の方はほとんど涙声になっていた。鼻の奥がつんとして目頭が熱くなる。それでも、まっすぐに白い天井を見つめ、涙がこぼれないよう懸命に堪えていた。

 暫しの間、沈黙が続いた。
 耳に届くのは、鳥のさえずりと木々のざわめきくらいである。
 二人とも身じろぎ一つせず、ただじっと息をひそめている。
 そこには、呼吸さえ許されないような、張り詰めた空気が流れていた。

「研究所に監禁されていた女の子は、俺の姪だ」
 思慮深い声が、沈黙に落とされる。
 澪は小さく息を呑んで隣に振り向いた。先ほどと同じく、武蔵は仰向けのまま頭の後ろで手を組んでいる。その声からも横顔からも感情は窺えない。ただ、青い瞳だけは、思いを馳せるように遠いところへ向けられていた。
「俺の故郷では、小さな子供が行方不明になる事件が続いていた。わかっているだけで十人は下らない。いずれも犯人からの接触は皆無だった。巷では神隠しだの何だのと言われていたが、俺たちは、外部からの侵入者の仕業だとあたりをつけていた。そんなとき……姪のメルローズも、忽然と姿を消してしまった」
 穏やかな口調だが、そこにはやるかたない思いが滲んでいた。
「俺はメルローズを捜すために故郷を出た。けれど手がかりが掴めないまま何年も過ぎ、諦めかけていたとき、ようやく掴んだ糸口が橘美咲の研究だった。残念ながら今回は救出に失敗したが、橘美咲に監禁されていたという確証は得られた」
 地下室のベッドで手枷を嵌められていた、白いワンピースを身につけた赤い瞳の少女――忘れようとしても忘れられない鮮烈な光景だ。もっとも、それを目にしたのは澪だけであり、武蔵はまだ対面も果たしていない。
「俺は必ずメルローズを救う……といっても、故郷に帰る手立てを失った俺には、あの子を両親のもとに帰してやれないかもしれない。けれど、せめて人並みの幸せくらいは与えてやりたいと思っている。実験体として一生を終えさせたくはないんだ」
 ドクン、ドクン、と澪の鼓動は大きく打ち始めた。次第に息をするのも苦しくなってくる。
 武蔵は青い双眸をゆっくりと澪に振り向け、真摯に見据えた。
「だから……ここにいてくれ。人質になってくれ」
 切実な声が深く突き刺さる。
 彼の姪である小さな少女は、一方的に日常を奪われ、人生を台無しにされ、未来さえ望めなくなっている。そして、その犯人はおそらく自分の母親であり、今もどこかで少女の監禁を続けている。なのに、自分は自分のことしか頭になくて――考えているうちに、いつしか涙が溢れて止まらなくなった。顔をそむけても嗚咽までは隠しようがない。
「泣きたいのはこっちなんだがな」
「ごめんなさい……わた、し……お母さまのせいでこんな……」
「悪いのはおまえじゃないし、連帯責任だとか言うつもりもない」
「でも……」
 武蔵は煩わしげに溜息をつき、上半身を起こした。
「罪悪感や同情で泣くのは勝手だが、俺からしたらただ鬱陶しいだけだ。おまえに泣かれても謝られても、問題は何ひとつ解決しないし、所詮はおまえの自己満足でしかない」
 返す言葉がなかった。それでも涙を止めることは出来ず、背を向けてすすり上げていると、ふと覆い被さるように上から覗き込まれた。思わずビクリと身をすくませる。自分を見下ろす武蔵は無表情で、怒っているのかどうかさえわからない。しかし――。
「悪かった」
 彼はそれだけ言うと、おもむろにTシャツの裾で澪の涙を拭い、宥めるようにぽんぽんと軽く頭を叩いた。そして、再び布団を掛けて仰向けになる。目を閉じた横顔からは何の感情も読み取れない。澪は戸惑いを感じながら、濡れた漆黒の瞳を細めてそっと彼を見つめた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】お世話になりました

こな
恋愛
わたしがいなくなっても、きっとあなたは気付きもしないでしょう。 ✴︎書き上げ済み。 お話が合わない場合は静かに閉じてください。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ★9/3『完全別居〜』発売
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前

地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。 あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。 私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。 アリシア・ブルームの復讐が始まる。

『別れても好きな人』 

設樂理沙
ライト文芸
 大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。  夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。  ほんとうは別れたくなどなかった。  この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には  どうしようもないことがあるのだ。  自分で選択できないことがある。  悲しいけれど……。   ―――――――――――――――――――――――――――――――――  登場人物紹介 戸田貴理子   40才 戸田正義    44才 青木誠二    28才 嘉島優子    33才  小田聖也    35才 2024.4.11 ―― プロット作成日 💛イラストはAI生成自作画像

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...