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52話 揺れる想い
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レアードがこの場から立ち去ったのを確認し、私はそのままエンディミオン様を見上げた。すると、耳まで真っ赤に染めあげた彼と目が合い、今の状況を理解した私は猛スピードで彼の腕から離れた。
――必死だったとはいえ、こんな……。
突発的に取った自身の行動に、信じられない気持ちになる。だが、とりあえず謝らなければならない。
「ご、ごめんなさい! エンディミオン様をこんなことに巻き込んでしまって……! しかも、当事者じゃないのに矢面に立たせて……」
私は恥ずかしさと申し訳なさに包まれながら、彼に向って全力で頭を下げた。そのとき、頭を下げている私の視界に、跪いたエンディミオン様の姿が映った。
――えっ……。
予想していない光景過ぎて、驚きのあまり思わず顔を上げてしまう。すると、エンディミオン様はそんな私の両手を、跪いた体勢のまま掴んだ。
「クリスタ様……先ほど彼に言った言葉は本心ですか? それも、彼を拒絶するために大袈裟に言った言葉なのでしょうか?」
――言葉……?
どの発言のこと……?
私が困惑していることに気付いたのだろう。エンディミオン様は私の表情を見て、補足のように言葉を続けた。
「私に関する先ほどのクリスタ様の発言です」
そう言われた途端、レアードに放った自身の言葉が脳内を渦巻き始めた。そして、言葉が指摘と結び付くたび恥ずかしい気持ちが込み上がってくる。だが、どれもこれも本心であることには違いなかった。
「先ほどの発言は……本当に思ったことを、言いました……。本心ですっ……」
夕日が照り始め、彼の首元から少し覗くペンダントのチェーンに光が反射している。いつもと違い、エンディミオン様もすぐに言葉を返してこない。そのいつもと違う間により、今までにないほど鼓動が脈打っているのが分かる。
握られている手からは、彼の熱が伝わってくる。そのせいか、私も全身がどんどん熱くなってきた。それに、このドキドキと高鳴る鼓動が手を通して彼に伝わりそうで、もっと身体の熱が高まるのを感じる。
こうして、妙な緊張感が走る中、エンディミオン様がついに口を開いた。
「クリスタ様……私はあなたをお慕いしております。絶対にあなたを幸せにしてみせます。私と結婚してください」
彼の言葉が胸に刺さった。今までとはまったく違うのだ。彼のひたむきな眼差しが、私に注がれる。
――どうしよう……。
もう二度と傷つきたくなくて、端から拒絶して優しい彼から逃げようとしてた。
だけど私……エンディミオン様のこと……。
答えが出かかった。そのタイミングで、エンディミオン様が言葉を続けた。
「勢いに任せた今すぐの返事は不要です。どうかあなたのその口から、いつでも良いので、日を改めて返事を聞かせて欲しいです」
――エンディミオン様は、私の想いに気付いているのかしら……。
そろそろ、ちゃんと彼の返事に答えないといけないわね。
「はい……必ずお伝え――」
「話しは終わったか?」
言いかけた言葉に被せ、ギル様が話しかけてきた。ギル様には申し訳ないが、本当に今の今まで完全に存在を忘れていた。
すると、エンディミオン様もそうだったのだろう。パッチリと目を見開きながらギル様を見つめて固まった。かと思えば、笑みを零してスクっと立ち上がった。そして、そのままエンディミオン様はギル様に話しかけた。
「伝えたいことは伝えられました。帰りが遅くなりましたね。馬車に行きましょう」
そう言うと、エンディミオン様は再びギル様と手を繋ぎ、馬車に向かって歩き始めた。私はというと、歩きながらも私を振り返っているエンディミオン様の隣に駆け寄り、一緒に馬車に向かって足を進めた。
そして家門の馬車に到着すると、エンディミオン様はギル様を馬車に乗せた後、私にもエスコートしてくれた。
「では、お気をつけて」
そう微笑みながら、彼は私たちを馬車に乗せドアを閉めようとした。だが、私は彼にまだ返事をしきれていない。そのため、私はドアを閉めようとしたエンディミオン様に咄嗟に話しかけた。
「必ず返事をします。その日まで、待っていてくださいますか?」
彼は勢いに任せた返事はするなと言っていた。だからこそ、この気持ちについて真剣に考えてみようと思ったのだ。そのため、近々伝えるという言葉は敢えて言わないでおくことにした。
すると、私の言葉を聞いた彼は先ほどの上品な微笑みを一転させ、感極まったような切なげな表情をした。
――こんな表情初めて見たわ……。
ずっと大丈夫そうに振る舞っていただけだったのね……。
ふと、カイルに言われた言葉を思い出した。私は本当に彼に酷いことをしていたようだ。それも、自身が思っているよりもずっと……。
私と彼が重なって見える時があったのに、どうして彼は私みたいにそこまで傷付いていないと錯覚してしまっていたのだろう。そう申し訳なく思いながら彼を見ると、彼は返事を返してくれた。
「……っもちろんです。いつまでも待ちます」
私がもし断ったらどうするつもりなのだろうか。いつまでも待つだなんて、軽い気分で言えるような言葉じゃない。エンディミオン様だからこそ、尚更だ。
そう思うからこそ、彼のこの言葉の重みが増した。そして、私はそのまま彼に返事をすると言う約束をしたまま、エンディミオン様と別れた。
――必死だったとはいえ、こんな……。
突発的に取った自身の行動に、信じられない気持ちになる。だが、とりあえず謝らなければならない。
「ご、ごめんなさい! エンディミオン様をこんなことに巻き込んでしまって……! しかも、当事者じゃないのに矢面に立たせて……」
私は恥ずかしさと申し訳なさに包まれながら、彼に向って全力で頭を下げた。そのとき、頭を下げている私の視界に、跪いたエンディミオン様の姿が映った。
――えっ……。
予想していない光景過ぎて、驚きのあまり思わず顔を上げてしまう。すると、エンディミオン様はそんな私の両手を、跪いた体勢のまま掴んだ。
「クリスタ様……先ほど彼に言った言葉は本心ですか? それも、彼を拒絶するために大袈裟に言った言葉なのでしょうか?」
――言葉……?
どの発言のこと……?
私が困惑していることに気付いたのだろう。エンディミオン様は私の表情を見て、補足のように言葉を続けた。
「私に関する先ほどのクリスタ様の発言です」
そう言われた途端、レアードに放った自身の言葉が脳内を渦巻き始めた。そして、言葉が指摘と結び付くたび恥ずかしい気持ちが込み上がってくる。だが、どれもこれも本心であることには違いなかった。
「先ほどの発言は……本当に思ったことを、言いました……。本心ですっ……」
夕日が照り始め、彼の首元から少し覗くペンダントのチェーンに光が反射している。いつもと違い、エンディミオン様もすぐに言葉を返してこない。そのいつもと違う間により、今までにないほど鼓動が脈打っているのが分かる。
握られている手からは、彼の熱が伝わってくる。そのせいか、私も全身がどんどん熱くなってきた。それに、このドキドキと高鳴る鼓動が手を通して彼に伝わりそうで、もっと身体の熱が高まるのを感じる。
こうして、妙な緊張感が走る中、エンディミオン様がついに口を開いた。
「クリスタ様……私はあなたをお慕いしております。絶対にあなたを幸せにしてみせます。私と結婚してください」
彼の言葉が胸に刺さった。今までとはまったく違うのだ。彼のひたむきな眼差しが、私に注がれる。
――どうしよう……。
もう二度と傷つきたくなくて、端から拒絶して優しい彼から逃げようとしてた。
だけど私……エンディミオン様のこと……。
答えが出かかった。そのタイミングで、エンディミオン様が言葉を続けた。
「勢いに任せた今すぐの返事は不要です。どうかあなたのその口から、いつでも良いので、日を改めて返事を聞かせて欲しいです」
――エンディミオン様は、私の想いに気付いているのかしら……。
そろそろ、ちゃんと彼の返事に答えないといけないわね。
「はい……必ずお伝え――」
「話しは終わったか?」
言いかけた言葉に被せ、ギル様が話しかけてきた。ギル様には申し訳ないが、本当に今の今まで完全に存在を忘れていた。
すると、エンディミオン様もそうだったのだろう。パッチリと目を見開きながらギル様を見つめて固まった。かと思えば、笑みを零してスクっと立ち上がった。そして、そのままエンディミオン様はギル様に話しかけた。
「伝えたいことは伝えられました。帰りが遅くなりましたね。馬車に行きましょう」
そう言うと、エンディミオン様は再びギル様と手を繋ぎ、馬車に向かって歩き始めた。私はというと、歩きながらも私を振り返っているエンディミオン様の隣に駆け寄り、一緒に馬車に向かって足を進めた。
そして家門の馬車に到着すると、エンディミオン様はギル様を馬車に乗せた後、私にもエスコートしてくれた。
「では、お気をつけて」
そう微笑みながら、彼は私たちを馬車に乗せドアを閉めようとした。だが、私は彼にまだ返事をしきれていない。そのため、私はドアを閉めようとしたエンディミオン様に咄嗟に話しかけた。
「必ず返事をします。その日まで、待っていてくださいますか?」
彼は勢いに任せた返事はするなと言っていた。だからこそ、この気持ちについて真剣に考えてみようと思ったのだ。そのため、近々伝えるという言葉は敢えて言わないでおくことにした。
すると、私の言葉を聞いた彼は先ほどの上品な微笑みを一転させ、感極まったような切なげな表情をした。
――こんな表情初めて見たわ……。
ずっと大丈夫そうに振る舞っていただけだったのね……。
ふと、カイルに言われた言葉を思い出した。私は本当に彼に酷いことをしていたようだ。それも、自身が思っているよりもずっと……。
私と彼が重なって見える時があったのに、どうして彼は私みたいにそこまで傷付いていないと錯覚してしまっていたのだろう。そう申し訳なく思いながら彼を見ると、彼は返事を返してくれた。
「……っもちろんです。いつまでも待ちます」
私がもし断ったらどうするつもりなのだろうか。いつまでも待つだなんて、軽い気分で言えるような言葉じゃない。エンディミオン様だからこそ、尚更だ。
そう思うからこそ、彼のこの言葉の重みが増した。そして、私はそのまま彼に返事をすると言う約束をしたまま、エンディミオン様と別れた。
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