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42話 ギル様の紹介
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再会できた喜びで泣いてしまったが、ギル様の宥めにより何とかその涙を引っ込めることに成功した。
――この歳になって人前でこんなに泣くなんて恥ずかしすぎるわっ……。
いくら嬉しかったからって、何でこうも向こう見ずなことを……。
そう思うが、もう後の祭りだ。気にしたって仕方ない。そう気持ちを切り替えることにした。
「それにしてもギル様、どうしてここが分かったんですか?」
そう尋ねると、ギル様は子どもを見守るような笑顔で私の質問に答えた。
「クリスタの中に我のエネルギーがあるだろう? そのエネルギーを辿ってクリスタを探していたら、クリスタのエネルギーを帯びた人の子がここに居たんだ」
そう言うと、ギル様はカイルにチラッと視線をやった。
――ここは受付だから、治癒魔法をかけた騎士よりも受付の職員が多いし、カイルはたまに微電流を流すから分かりやすかったのかも……。
というか、魔法をかけられた人からかけた人のエネルギーを辿るなんて、すごすぎるわ!
「そうだったんですね。ギル様が会ったのがカイルで良かったです! あと、その姿ですが……」
そう言いかけると、ギル様は得意げに答えた。
「これこそが我の完全なる姿だ! そうクリスタと約束しただろう?」
――翼が見えない状態が完全なる姿と思ってたけど、大人の姿ってことだったの!?
そんな風に驚いていると、完全に蚊帳の外状態になっていたカイルが話しかけてきた。
「おい、クリスタ! 黙って見てたけどよ……この超絶美貌男は誰なんだよ! 一体どういう関係なんだ!?」
感動でつい存在を忘れかけていた。悪い事をした、そう思いカイルに説明しようとしたところ、ギル様の方が先にカイルに話しかけた。
「人の子よ。我とクリスタの関係が知りたいのか? クリスタと我は大親友なのだ。なあ、クリスタ?」
そう言いながら、ギル様は私の肩の上から手を回すようにして、後ろから抱き着いてきた。そして更に、私の頭の上に頬か顎を乗せた。
まるで、私たちの関係性をカイルに見せつけようとしているみたいだ。
――懐かしい、この大親友発言。
でも、これじゃカイルも訳が分からないはずよ。
ギル様はドラゴンゆえに、人間的な羞恥心や、その行動がどう捉えられるかということを、恐らく分かっていない。
そのため、予想不可能な動きをするギル様とここでは話しを続けることは悪手だ。そう判断を下すことにした。
「カイル、医務室で説明するわ。ギル様、ここから少し別の場所に移動しましょう」
そう声をかけ、私はギル様とカイルの3人で医務室へと移動を開始した。医務室内に入ると、中にいたアルバート先生とすぐに目が合った。
「クリスタさん、おかえり。楽しかったかい?」
そう声をかけてくれたが、私の背後にいるギル様に気付いた瞬間、少し声音を変えて先生は再び私に訊ねてきた。
「そちらの方は……?」
少し不穏感が漂った声だった。すると、その声を聞きギル様が口を開こうとした気配を察知したため、私はギル様よりも先に先生に言葉を返した。
「ちょっとそれについて、カイルに説明をしようと思って来たんです。ここで話しても大丈夫ですか?」
「患者さんもいないし良いですよ。そこのソファでどうぞ。私も一緒に聞いても良いですか?」
「もちろん! 先生なら大丈夫です」
そう伝えると先生はホッとしたように微笑み、私たちは医務室の奥にある2つの向かい合ったソファに座った。
私の隣にはギル様、私の正面には先生と同じソファに座れて嬉しそうなカイルがいる。
「では、改めて紹介します。彼は、私が生贄の試練で出会ったドラゴンのギル様です。他の人には秘密ですよ」
ドラゴンということに驚いたのだろう。カイルは、口をパクパクさせながら驚きのあまり時より声を漏らしている。
逆に、先生は好奇心旺盛と言った様子で、少年のように目をキラキラと輝かせながらギル様に話しかけた。
「本当にドラゴンなのですか?」
「うむ。我は高潔なる優しいドラゴンだ。そして、クリスタの大親友でもある。覚えておくが良い」
「そうなのですね。ですが、クリスタさんから聞いていた話とはずいぶん見た目が違うような……」
そう先生が声を漏らした。先生がそういった疑問を抱くのも無理はない。
というのも、私はアルバート先生に試練の話しを聞かれたとき、ギル様の話しをチラッとしていたのだ。この人なら良いだろうと思ってだ。
そのとき、私はギル様のことを子どものような見た目していると伝えた覚えがある。ちなみに、カイルもその場で一緒に話しを聞いていた。
すると、ギル様は先生の先ほどの言葉から何かを察したのだろう。
「そなたがクリスタから聞いたのは、こちらの姿ではないか?」
そう言うと、ギル様は成人男性の姿から、あっという間に子どものような見た目へと姿を変えた。その瞬間、アワアワと驚いていたカイルが突然大きな声を出した。
「やべーーーーーー! かわいすぎだろ!? クリスタの話以上じゃねーか!」
確かにかわいい。私も久しぶりに見たが、かわいすぎて悶絶寸前だ。だが、その一方でギル様はカイルのある言葉に反応した。
「ん? 人の子よ。今、われにかわいいと言ったか?」
カイルにそう問いかけるギル様は、何やら考え事をしているような表情をしている。その顔を見て、カイルは不敬を犯したのではないかと焦った様子を見せた。
しかし、そんなカイルを気にすることは無く、カイルの答えを聞く前にギル様は私に話しかけてきた。
「クリスタよ、この人の子とはどういう関係なのだ?」
「彼は私の友人ですよ。ちなみに隣の人は私のじょうし……いや、カイルと同じ友人です!」
――上司と言っても分からないかもしれないから、友人と言っておけばカイルと同じくらいの関係性って言うことは分かるよね。
こうして少し考慮を加えた関係性をギル様に伝えると、ギル様は考え事をしている顔から一転し、それはそれはかわいらしい天使のような笑顔を見せた。
「友人であったか。クリスタの友人であれば許そう。2人ともわれにいくらでもかわいいと言っても構わないぞ。われは大親友だからな」
えっへんと聞こえてきそうなその表情に、懐かしい思い出がぶわっと蘇ってくる。そのため私は辛抱堪らず、会えて良かった! という気持ちでギル様の小さな身体を抱き締めた。
すると、ギル様は「クリスタは愛いなぁ」と言いながら、抱き締め返してくれた。そんな私たちを見て羨ましかったんだろう。
「あ! いいな! 俺もハグしたい!」
そう声に出すと、カイルはギル様に抱き着こうとしてきた。しかし、現実はそう甘くはなかった。
「それは、われとクリスタほどの仲になってからだ!」
そうギル様に拒絶されたのだ。
「え~、クリスタばっかりズルいぞ!」
そんなことを言いながら、カイルは駄々をこねだした。どこまで子どもなんだろうと思う。
急にこうやって子どもっぽくなるから、カイルは絶対に恋愛対象にはなり得ないのだ。他の女友達からも残念なイケメンと言われるのは、こういったカイルの言動にある。
そして、俺も俺もと連呼するカイルに呆れた様子で先生が話しかけた。
「まあまあ、カイル君。クリスタさんは生贄の試練に行ってここまでの関係を築いているんだから、さすがに違うんじゃないかな?」
「先生までそんなこと言うんですか!? でもそうやって、ちゃんと言ってくれる先生好き♡」
「はは、ありがとうございます」
「じゃあ先生がギル様の代わりに抱きしめてよ~」
「機会があればね」
――人のことを私が言えたのではないけれど、何を見せられているのかしら……。
先生が強く言わないからカイルも調子付いちゃうのに……。
先生はカイルのことをどうするつもりなんだろうか。そんなことを他の人の心配をしていた私は、完全に自分のことに関して気を緩め切っていた。
そのため、ギル様からの不意打ちの砲弾をもろに受けてしまった。
「そうだ、クリスタ! 来た目的を忘れてうっかり楽しんでおった……。結婚すると言っておっただろう? われはそれを祝いに来たのだ! おめでとう、クリスタ!」
この発言に、医務室の空気は一瞬にして凍り付いた。
―――――――――――――――――――――――
クリスタがギル様の話しをしているのは、魔塔主様、エンディミオン、カイル、アルバート先生です。
――この歳になって人前でこんなに泣くなんて恥ずかしすぎるわっ……。
いくら嬉しかったからって、何でこうも向こう見ずなことを……。
そう思うが、もう後の祭りだ。気にしたって仕方ない。そう気持ちを切り替えることにした。
「それにしてもギル様、どうしてここが分かったんですか?」
そう尋ねると、ギル様は子どもを見守るような笑顔で私の質問に答えた。
「クリスタの中に我のエネルギーがあるだろう? そのエネルギーを辿ってクリスタを探していたら、クリスタのエネルギーを帯びた人の子がここに居たんだ」
そう言うと、ギル様はカイルにチラッと視線をやった。
――ここは受付だから、治癒魔法をかけた騎士よりも受付の職員が多いし、カイルはたまに微電流を流すから分かりやすかったのかも……。
というか、魔法をかけられた人からかけた人のエネルギーを辿るなんて、すごすぎるわ!
「そうだったんですね。ギル様が会ったのがカイルで良かったです! あと、その姿ですが……」
そう言いかけると、ギル様は得意げに答えた。
「これこそが我の完全なる姿だ! そうクリスタと約束しただろう?」
――翼が見えない状態が完全なる姿と思ってたけど、大人の姿ってことだったの!?
そんな風に驚いていると、完全に蚊帳の外状態になっていたカイルが話しかけてきた。
「おい、クリスタ! 黙って見てたけどよ……この超絶美貌男は誰なんだよ! 一体どういう関係なんだ!?」
感動でつい存在を忘れかけていた。悪い事をした、そう思いカイルに説明しようとしたところ、ギル様の方が先にカイルに話しかけた。
「人の子よ。我とクリスタの関係が知りたいのか? クリスタと我は大親友なのだ。なあ、クリスタ?」
そう言いながら、ギル様は私の肩の上から手を回すようにして、後ろから抱き着いてきた。そして更に、私の頭の上に頬か顎を乗せた。
まるで、私たちの関係性をカイルに見せつけようとしているみたいだ。
――懐かしい、この大親友発言。
でも、これじゃカイルも訳が分からないはずよ。
ギル様はドラゴンゆえに、人間的な羞恥心や、その行動がどう捉えられるかということを、恐らく分かっていない。
そのため、予想不可能な動きをするギル様とここでは話しを続けることは悪手だ。そう判断を下すことにした。
「カイル、医務室で説明するわ。ギル様、ここから少し別の場所に移動しましょう」
そう声をかけ、私はギル様とカイルの3人で医務室へと移動を開始した。医務室内に入ると、中にいたアルバート先生とすぐに目が合った。
「クリスタさん、おかえり。楽しかったかい?」
そう声をかけてくれたが、私の背後にいるギル様に気付いた瞬間、少し声音を変えて先生は再び私に訊ねてきた。
「そちらの方は……?」
少し不穏感が漂った声だった。すると、その声を聞きギル様が口を開こうとした気配を察知したため、私はギル様よりも先に先生に言葉を返した。
「ちょっとそれについて、カイルに説明をしようと思って来たんです。ここで話しても大丈夫ですか?」
「患者さんもいないし良いですよ。そこのソファでどうぞ。私も一緒に聞いても良いですか?」
「もちろん! 先生なら大丈夫です」
そう伝えると先生はホッとしたように微笑み、私たちは医務室の奥にある2つの向かい合ったソファに座った。
私の隣にはギル様、私の正面には先生と同じソファに座れて嬉しそうなカイルがいる。
「では、改めて紹介します。彼は、私が生贄の試練で出会ったドラゴンのギル様です。他の人には秘密ですよ」
ドラゴンということに驚いたのだろう。カイルは、口をパクパクさせながら驚きのあまり時より声を漏らしている。
逆に、先生は好奇心旺盛と言った様子で、少年のように目をキラキラと輝かせながらギル様に話しかけた。
「本当にドラゴンなのですか?」
「うむ。我は高潔なる優しいドラゴンだ。そして、クリスタの大親友でもある。覚えておくが良い」
「そうなのですね。ですが、クリスタさんから聞いていた話とはずいぶん見た目が違うような……」
そう先生が声を漏らした。先生がそういった疑問を抱くのも無理はない。
というのも、私はアルバート先生に試練の話しを聞かれたとき、ギル様の話しをチラッとしていたのだ。この人なら良いだろうと思ってだ。
そのとき、私はギル様のことを子どものような見た目していると伝えた覚えがある。ちなみに、カイルもその場で一緒に話しを聞いていた。
すると、ギル様は先生の先ほどの言葉から何かを察したのだろう。
「そなたがクリスタから聞いたのは、こちらの姿ではないか?」
そう言うと、ギル様は成人男性の姿から、あっという間に子どものような見た目へと姿を変えた。その瞬間、アワアワと驚いていたカイルが突然大きな声を出した。
「やべーーーーーー! かわいすぎだろ!? クリスタの話以上じゃねーか!」
確かにかわいい。私も久しぶりに見たが、かわいすぎて悶絶寸前だ。だが、その一方でギル様はカイルのある言葉に反応した。
「ん? 人の子よ。今、われにかわいいと言ったか?」
カイルにそう問いかけるギル様は、何やら考え事をしているような表情をしている。その顔を見て、カイルは不敬を犯したのではないかと焦った様子を見せた。
しかし、そんなカイルを気にすることは無く、カイルの答えを聞く前にギル様は私に話しかけてきた。
「クリスタよ、この人の子とはどういう関係なのだ?」
「彼は私の友人ですよ。ちなみに隣の人は私のじょうし……いや、カイルと同じ友人です!」
――上司と言っても分からないかもしれないから、友人と言っておけばカイルと同じくらいの関係性って言うことは分かるよね。
こうして少し考慮を加えた関係性をギル様に伝えると、ギル様は考え事をしている顔から一転し、それはそれはかわいらしい天使のような笑顔を見せた。
「友人であったか。クリスタの友人であれば許そう。2人ともわれにいくらでもかわいいと言っても構わないぞ。われは大親友だからな」
えっへんと聞こえてきそうなその表情に、懐かしい思い出がぶわっと蘇ってくる。そのため私は辛抱堪らず、会えて良かった! という気持ちでギル様の小さな身体を抱き締めた。
すると、ギル様は「クリスタは愛いなぁ」と言いながら、抱き締め返してくれた。そんな私たちを見て羨ましかったんだろう。
「あ! いいな! 俺もハグしたい!」
そう声に出すと、カイルはギル様に抱き着こうとしてきた。しかし、現実はそう甘くはなかった。
「それは、われとクリスタほどの仲になってからだ!」
そうギル様に拒絶されたのだ。
「え~、クリスタばっかりズルいぞ!」
そんなことを言いながら、カイルは駄々をこねだした。どこまで子どもなんだろうと思う。
急にこうやって子どもっぽくなるから、カイルは絶対に恋愛対象にはなり得ないのだ。他の女友達からも残念なイケメンと言われるのは、こういったカイルの言動にある。
そして、俺も俺もと連呼するカイルに呆れた様子で先生が話しかけた。
「まあまあ、カイル君。クリスタさんは生贄の試練に行ってここまでの関係を築いているんだから、さすがに違うんじゃないかな?」
「先生までそんなこと言うんですか!? でもそうやって、ちゃんと言ってくれる先生好き♡」
「はは、ありがとうございます」
「じゃあ先生がギル様の代わりに抱きしめてよ~」
「機会があればね」
――人のことを私が言えたのではないけれど、何を見せられているのかしら……。
先生が強く言わないからカイルも調子付いちゃうのに……。
先生はカイルのことをどうするつもりなんだろうか。そんなことを他の人の心配をしていた私は、完全に自分のことに関して気を緩め切っていた。
そのため、ギル様からの不意打ちの砲弾をもろに受けてしまった。
「そうだ、クリスタ! 来た目的を忘れてうっかり楽しんでおった……。結婚すると言っておっただろう? われはそれを祝いに来たのだ! おめでとう、クリスタ!」
この発言に、医務室の空気は一瞬にして凍り付いた。
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クリスタがギル様の話しをしているのは、魔塔主様、エンディミオン、カイル、アルバート先生です。
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