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31話 姉さん爆誕
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――本当に助かって良かったわ……!
そう思いながら、私は感謝を告げてくれたライオネル団長や、彼の周りに集まった団員たちに声をかけた。
「これからもライオネル団長にはもっともっと活躍してもらわないと! そうですよね、皆さん!」
そう言うと、周りにいた第5騎士団の団員たちは団長につられる形で泣き始めた。そしてそうかと思うと、彼らは一斉に団長に抱きつき、次々と声をかけ始めた。
「団長が団長じゃないと俺、嫌です!」
「ううっ……団長が無事でよかっだよぉ……!」
「団長は最高の騎士ですよぉ……グスっ……俺のヒーローなんですよぉ……ううっ……」
皆口々に団長へ言葉をかける。そのたびに、ライオネル団長がいかに第5騎士団の団員たちに慕われ愛されているのかが伝わってきた。
――本当に良かったわ……。
そんな感動に浸り、ついもらい泣きしそうになる。しかし、突然肩を叩かれる感覚がした。
振り返ると、そこにはアルバート先生がいた。そして背後に立っていた先生は、私が振り返るなり話しかけてきた。
「感動してるところ悪いんだけど、決勝始まってるみたいだよ?」
そう言われた瞬間、意識が一気に現実へと引き戻された。医務室に聞こえてくる歓声を聞くと、「エンディミオンさま~」と叫んでいる女性たちの声がよく聞こえる。
――も、もう始まってたの!?
どうしましょう!
他に怪我人はっ……。
そう思いながら医務室を見回すと、今すぐ治療が必要だという状態の怪我人はいなかった。その現状を理解した私に、先生からの視線が突き刺さる。
「……先生、すぐに戻ります。行ってきても良いですか?」
ドキドキしながら先生に訊ねた。すると、先生は私の言葉を聞き優しく目を細めた。
「うん、行っておいで」
そう言いながら微笑み、先生は試合を見に行く許可をくれた。その直後、私は急いで試合に間に合うようにと願いながら走り、ようやく会場へと辿り着いた。
決勝戦ということも影響しているのか、医務室とは比較にならないほどの熱狂が一瞬にして伝わってくる。
――もう試合終わっちゃった!?
歓声に包まれた会場内をキョロキョロと見渡すと、ワイアット団長とエンディミオン卿が対峙しているところだった。すると、私の後ろから付いてきた第5騎士団の団員が声をかけてきた。
「ここからじゃ遠すぎるよ。こっちから見た方が良い、こっちおいで!」
そう言ってくれたため、私は言われるがまま彼らに付いて行った。そして、第5騎士団員用のスペースがある最前列へと到着し、言われた席に座った。
場所を変えると最前列ということもあり、先程は分からなかったエンディミオン卿の表情がよく見える。だからこそ、私はエンディミオン卿の顔を見て驚いた。
凛々しく毅然とした彼の姿は、いつもの彼とは違いまさに騎士そのものであった。いつもの優しい笑顔なんて一切無く、その鋭い眼光には猛獣の王のような威厳すら感じる。真剣勝負ということもあって、まさに真剣そのものだ。
それと同時に、今のエンディミオン卿を見てデジャヴを感じた。魔力が枯渇し、意識が朦朧とする中最後に見た騎士と同じオーラを纏っていたからだ。
――あのときの騎士、本当にエンディミオン卿だったんだわ……。
そんなことを思ったが、それよりも今はエンディミオン卿の勝敗の行方を見届けなければならない。そう頭を切り替えて、私は試合に集中することにした。
相手は第1騎士団長ということもあり、なかなか手強い。お互いすぐに勝敗が着くような相手では無い。そのため、なかなか試合の決着がつかない。
だが、第1騎士団というオールマイティー軍団の長を務めているワイアット団長はやはりレベルが高かった。徐々にエンディミオン卿を押し始めたのだ。
――このままじゃ負けちゃうわ。
ダメ……!
本能的にそう思った。そんな私はもう止められなかった。
「エンディミオン卿! あなたなら勝てるって信じてますよ!」
思わず声援をかけてしまったのだ。結構頑張って声を出した。しかし、大きな歓声と混ざり、自分ですら自分の声がよく聞こえない。
それにさっきのライオネル団長の治療もあり、やはり聖女と言えど疲労は溜っていた。だからか、もうこれ以上叫ぶ気力は残っていなかった。
しかし、私が1度叫んでからすぐに戦況が変わった。さっきまで押されていたはずなのに、突然エンディミオン卿がとんでもない反撃を始めたのだ。
もしかしたらエンディミオン卿がワイアット団長に勝てるかもしれない。そんな可能性が見えてきた。そのため、つい祈る手に力が篭もる。
――お願い、勝って……!
そう願った瞬間だった。
カキーンという音が聞こえ、ワイアット団長の手から剣が消えた。そして、クルクルクルクルと剣が宙を舞い、その直後宙を舞っていた剣が見事と言えるほど、それは綺麗に地面に突き刺さった。
「「「「「キャーーーーーーーーーーーー!!!!!」」」」」
会場中に耳が張り裂けそうな程の歓声が響き渡った。
「エンディミオン卿が勝ったわ!」
そんな声が、四方八方から聞こえてくる。エンディミオン卿が勝った。その事実に、自分のことではないが嬉しさが込み上げてくる。
すると、すぐそばにいた第5騎士団員達が声をかけてきた。
「姉さん、エンディミオン団長が勝って良かったな」
「良かったですね! 姉さん!」
ーー嬉しいけど、ちょっと待って。
姉さんって何!?
「待って、なんで姉さんなんですか!?」
「俺らの大事な団長を救ってくれたんです。姉さんと呼ばせてください!」
「あなたはまだしも、この人は私よりも年上でしょう!?」
「歳なんてただの数字だぜ。団長を助けてくれた。その時点で、クリスタちゃんはもう俺らの姉さんだ」
何て暴論だ……。そう思うものの、別に悪いあだ名をつけられたわけではない。だから、私は彼に条件を架した。
「まあ、別に姉さんと呼んでも構いませんが……身内だけですよ! 外ではクリスタかウィルキンスのどっちかにしてください! 分かりましたか!?」
「「「はい/おう! 姉さん!」」」
息の揃ったとてもいい返事だった。だからこそ、本当に分かったのかどうか怪しい。
――まあ何にしろ、エンディミオン卿が勝って良かったわ。
そんなことを思っていると、表彰式が始まった。上位3人が表彰されていたが、皆団長だった。やっぱり団長はすごいんだなと改めて思い知った。
表彰される3人は会場の真ん中に集められ、1人ずつ名前を呼ばれた。そして、色々な物をもらっていた。
そのなかで一際私の目を惹くものがあった。
――あっ! オフィーリアの花束だわ!
綺麗ね。今度花屋にでも行こうかしら。
そんなことを思っていると、あっという間に表彰式が終わった。
――エンディミオン卿が優勝したことも見届けたし、もう医務室に帰らないと。
そう思い席から立ち上がったが、会場中の女性も騎士たちも動かない。表彰式が終わりみんな動き出すだろうと思った。それなのに、周辺で立ち上がったのは私だけだった。
そのため、驚きながらも急いで座り直し、隣の席の第5騎士団の団員に話しかけた。
「な、何でみんな動かないんです? 今って動いても良いんですよね? 私医務室に戻りたいんですけど……」
焦る気持ちでそう声をかけると、その団員は笑いながら言葉を返して来た。
「何言ってるんですか姉さん、これからじゃないですか!」
「え? これからって何があるの?」
「はあ? 姉さんほんとに言ってるんですか?」
そう言った彼の私を見る顔は、まさに怪訝そのものだ。すると、私たちの会話を聞いていたのか、ある1人の団員が話しかけてきた。
「姉さんってば、結構うっかりなところがあるんですね。女性たちにとって得に一大イベントのアレがあるじゃないですか!」
――なにそれ……。
初めて聞いたんだけど……。
あまりにも何の話をしているのかが分からなかった。だが、彼らや会場の空気感から、この場においてそのイベント内容とやらを知らないのは自身だけだということを瞬時に察した。
そう思いながら、私は感謝を告げてくれたライオネル団長や、彼の周りに集まった団員たちに声をかけた。
「これからもライオネル団長にはもっともっと活躍してもらわないと! そうですよね、皆さん!」
そう言うと、周りにいた第5騎士団の団員たちは団長につられる形で泣き始めた。そしてそうかと思うと、彼らは一斉に団長に抱きつき、次々と声をかけ始めた。
「団長が団長じゃないと俺、嫌です!」
「ううっ……団長が無事でよかっだよぉ……!」
「団長は最高の騎士ですよぉ……グスっ……俺のヒーローなんですよぉ……ううっ……」
皆口々に団長へ言葉をかける。そのたびに、ライオネル団長がいかに第5騎士団の団員たちに慕われ愛されているのかが伝わってきた。
――本当に良かったわ……。
そんな感動に浸り、ついもらい泣きしそうになる。しかし、突然肩を叩かれる感覚がした。
振り返ると、そこにはアルバート先生がいた。そして背後に立っていた先生は、私が振り返るなり話しかけてきた。
「感動してるところ悪いんだけど、決勝始まってるみたいだよ?」
そう言われた瞬間、意識が一気に現実へと引き戻された。医務室に聞こえてくる歓声を聞くと、「エンディミオンさま~」と叫んでいる女性たちの声がよく聞こえる。
――も、もう始まってたの!?
どうしましょう!
他に怪我人はっ……。
そう思いながら医務室を見回すと、今すぐ治療が必要だという状態の怪我人はいなかった。その現状を理解した私に、先生からの視線が突き刺さる。
「……先生、すぐに戻ります。行ってきても良いですか?」
ドキドキしながら先生に訊ねた。すると、先生は私の言葉を聞き優しく目を細めた。
「うん、行っておいで」
そう言いながら微笑み、先生は試合を見に行く許可をくれた。その直後、私は急いで試合に間に合うようにと願いながら走り、ようやく会場へと辿り着いた。
決勝戦ということも影響しているのか、医務室とは比較にならないほどの熱狂が一瞬にして伝わってくる。
――もう試合終わっちゃった!?
歓声に包まれた会場内をキョロキョロと見渡すと、ワイアット団長とエンディミオン卿が対峙しているところだった。すると、私の後ろから付いてきた第5騎士団の団員が声をかけてきた。
「ここからじゃ遠すぎるよ。こっちから見た方が良い、こっちおいで!」
そう言ってくれたため、私は言われるがまま彼らに付いて行った。そして、第5騎士団員用のスペースがある最前列へと到着し、言われた席に座った。
場所を変えると最前列ということもあり、先程は分からなかったエンディミオン卿の表情がよく見える。だからこそ、私はエンディミオン卿の顔を見て驚いた。
凛々しく毅然とした彼の姿は、いつもの彼とは違いまさに騎士そのものであった。いつもの優しい笑顔なんて一切無く、その鋭い眼光には猛獣の王のような威厳すら感じる。真剣勝負ということもあって、まさに真剣そのものだ。
それと同時に、今のエンディミオン卿を見てデジャヴを感じた。魔力が枯渇し、意識が朦朧とする中最後に見た騎士と同じオーラを纏っていたからだ。
――あのときの騎士、本当にエンディミオン卿だったんだわ……。
そんなことを思ったが、それよりも今はエンディミオン卿の勝敗の行方を見届けなければならない。そう頭を切り替えて、私は試合に集中することにした。
相手は第1騎士団長ということもあり、なかなか手強い。お互いすぐに勝敗が着くような相手では無い。そのため、なかなか試合の決着がつかない。
だが、第1騎士団というオールマイティー軍団の長を務めているワイアット団長はやはりレベルが高かった。徐々にエンディミオン卿を押し始めたのだ。
――このままじゃ負けちゃうわ。
ダメ……!
本能的にそう思った。そんな私はもう止められなかった。
「エンディミオン卿! あなたなら勝てるって信じてますよ!」
思わず声援をかけてしまったのだ。結構頑張って声を出した。しかし、大きな歓声と混ざり、自分ですら自分の声がよく聞こえない。
それにさっきのライオネル団長の治療もあり、やはり聖女と言えど疲労は溜っていた。だからか、もうこれ以上叫ぶ気力は残っていなかった。
しかし、私が1度叫んでからすぐに戦況が変わった。さっきまで押されていたはずなのに、突然エンディミオン卿がとんでもない反撃を始めたのだ。
もしかしたらエンディミオン卿がワイアット団長に勝てるかもしれない。そんな可能性が見えてきた。そのため、つい祈る手に力が篭もる。
――お願い、勝って……!
そう願った瞬間だった。
カキーンという音が聞こえ、ワイアット団長の手から剣が消えた。そして、クルクルクルクルと剣が宙を舞い、その直後宙を舞っていた剣が見事と言えるほど、それは綺麗に地面に突き刺さった。
「「「「「キャーーーーーーーーーーーー!!!!!」」」」」
会場中に耳が張り裂けそうな程の歓声が響き渡った。
「エンディミオン卿が勝ったわ!」
そんな声が、四方八方から聞こえてくる。エンディミオン卿が勝った。その事実に、自分のことではないが嬉しさが込み上げてくる。
すると、すぐそばにいた第5騎士団員達が声をかけてきた。
「姉さん、エンディミオン団長が勝って良かったな」
「良かったですね! 姉さん!」
ーー嬉しいけど、ちょっと待って。
姉さんって何!?
「待って、なんで姉さんなんですか!?」
「俺らの大事な団長を救ってくれたんです。姉さんと呼ばせてください!」
「あなたはまだしも、この人は私よりも年上でしょう!?」
「歳なんてただの数字だぜ。団長を助けてくれた。その時点で、クリスタちゃんはもう俺らの姉さんだ」
何て暴論だ……。そう思うものの、別に悪いあだ名をつけられたわけではない。だから、私は彼に条件を架した。
「まあ、別に姉さんと呼んでも構いませんが……身内だけですよ! 外ではクリスタかウィルキンスのどっちかにしてください! 分かりましたか!?」
「「「はい/おう! 姉さん!」」」
息の揃ったとてもいい返事だった。だからこそ、本当に分かったのかどうか怪しい。
――まあ何にしろ、エンディミオン卿が勝って良かったわ。
そんなことを思っていると、表彰式が始まった。上位3人が表彰されていたが、皆団長だった。やっぱり団長はすごいんだなと改めて思い知った。
表彰される3人は会場の真ん中に集められ、1人ずつ名前を呼ばれた。そして、色々な物をもらっていた。
そのなかで一際私の目を惹くものがあった。
――あっ! オフィーリアの花束だわ!
綺麗ね。今度花屋にでも行こうかしら。
そんなことを思っていると、あっという間に表彰式が終わった。
――エンディミオン卿が優勝したことも見届けたし、もう医務室に帰らないと。
そう思い席から立ち上がったが、会場中の女性も騎士たちも動かない。表彰式が終わりみんな動き出すだろうと思った。それなのに、周辺で立ち上がったのは私だけだった。
そのため、驚きながらも急いで座り直し、隣の席の第5騎士団の団員に話しかけた。
「な、何でみんな動かないんです? 今って動いても良いんですよね? 私医務室に戻りたいんですけど……」
焦る気持ちでそう声をかけると、その団員は笑いながら言葉を返して来た。
「何言ってるんですか姉さん、これからじゃないですか!」
「え? これからって何があるの?」
「はあ? 姉さんほんとに言ってるんですか?」
そう言った彼の私を見る顔は、まさに怪訝そのものだ。すると、私たちの会話を聞いていたのか、ある1人の団員が話しかけてきた。
「姉さんってば、結構うっかりなところがあるんですね。女性たちにとって得に一大イベントのアレがあるじゃないですか!」
――なにそれ……。
初めて聞いたんだけど……。
あまりにも何の話をしているのかが分からなかった。だが、彼らや会場の空気感から、この場においてそのイベント内容とやらを知らないのは自身だけだということを瞬時に察した。
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