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24話 大人な彼と子どもな彼
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このキッシュを見た瞬間、昨日ふとエンディミオン卿と馬車までの道のりで話した内容を思い出した。
「エンディミオン卿、これってもしかして……」
ピシッと背筋を伸ばし姿勢よく座っているエンディミオン卿の方へと視線を向けた。すると、彼はその姿勢のまま頬を赤くし、俯きながら言葉を紡いだ。
「昨日クリスタ様がお好きだと仰っていたので、喜んでほしくて作ってきました」
本当はこんなことを思ってはいけないと分かっている。しかし、彼のこの姿がかつての自分とあまりにも重なり、絶対に傷付けたくないと思ってしまった。
私のこんな性格は治らないのかもしれない。魔導士学校の女友達にも「あなたは自分のことを犠牲にするくせに、他人には嫌な思いをさせまいと必死過ぎだ」とよく言われた。そして、この場面においてもその性格が発動してしまった。
「あ、ありがとうございます! 美味しそうですね。では、早速いただきます」
そう声をかけると、エンディミオン卿は赤らめた顔を上げ、それは嬉しそうに私の顔を見つめてきた。
――私はあくまで食事をするためにここに来たのよ!
そう心に言い聞かせ、エンディミオン卿が持ってきてくれていたナイフとフォークを手に持った。そして、それらを用いてキッシュを口の中に入れ、数回咀嚼し飲み込んだ。
「な、何ですかこのキッシュは……。今まで食べたものの中で一番美味しいですっ……!」
あまりの美味しさに、私は絶望しそうになった。私が今まで食べていたキッシュとは一体何だったんだろうか……。
もちろん今までのキッシュも好きだ。しかし、これがキッシュと言われてしまえば、これまで食べてきたキッシュは存在が掠れてしまうほどに美味しかった。
――何なのこの味……!
これを作ったのが本当にエンディミオン卿なの!?
絶対にレシピを聞かないと!
そんなことを考えながら、私はあっという間にキッシュを完食してしまった。といっても、エンディミオン卿の方が先に食べ終わっていたが……。
「とっても美味しかったです! 本当にエンディミオン卿がこちらをお作りになったんですか……!? すごいです!」
キッシュしか見ていなかった私は、声をかけながら改めて左隣にいるエンディミオン卿を見た。
すると、右前腕を机に乗せ左手で頬杖をつき、私を見守るように見つめながら微笑むエンディミオン卿と目が合った。
その瞬間、何とも言えぬ妙な胸騒ぎがした。しかし、そんなことを知らない彼は、その姿勢のまま口を開いた。
「そこまで褒めていただけるなんて嬉しいです。クリスタ様に好きになってもらうためには、胃袋から攻めた方が良いみたいですね」
今日の私に至っては、まんまと罠に嵌められすぎている。そのため、このエンディミオン卿の発言に何とか挽回を図るべく、突っ込みを入れた。
「まだそのようなことを仰っているんですか?」
「当たり前じゃないですか。美味しそうに食べるクリスタ様も素敵です。結婚してくだされば、クリスタ様のために毎日私がご飯を作りますよ」
本来なら貴族は料理なんてしないものだ。それに騎士団という環境で忘れそうになるが、彼は公爵令息で、なおさら使用人の仕事をするような人ではないはずだ。
そんな彼が当たり前のように料理をすると言って、実際にこうして作ってきた。もし、このことが貴族男性に知られたら、彼は貴族の恥だと罵られるかもしれない。
――なんて人なの……。
何でこんなに私に尽くそうとするの……?
そう不思議に思いながらも、私は彼に告げた。
「……っお断りします!」
よし、ちゃんと言ったわ。そう思いながらエンディミオン卿を見るが、彼はずっと私に微笑みかけている。
聞こえていてその反応なら、もうメンタルお化けとしか思えない。そう思った矢先、ふと今朝カイルとした話を思い出した。
――この人朝から鍛錬してたって言っていたわよね?
それなのに、キッシュを作ったなんて相当無理したんじゃ……。
ふと不安になり、エンディミオン卿に切り出した。
「昨日私と別れた後、夜遅くまで鍛錬をして、今朝も早くから鍛錬をしていたと聞きましたよ。過度な運動はかえって怪我の元です。時間的にキッシュも無理して作ったんじゃないですか?」
そう問うと、エンディミオン卿はなんてことないような表情を続けようとした。しかし、私は彼の一瞬ギクッとした表情を見逃さなかった。
だが、彼は気付かれていると思っていないようで、澄ました笑顔を見せた。
「そんなこと誰から聞いたんですか? 無理なんてしていませんよ」
そう言うが、彼は多少本音を誤魔化している。
私は彼から本当のことを聞くべく、ジーっと彼の目を見つめた。すると、とうとうエンディミオン卿は観念したように口を割った。
「……無理という程ではないですが、確かに鍛錬を少しだけハードにしました。ですが、キッシュは無理に時間を割いて作ったわけではありません。好きな人のために作っていたのでむしろ休憩です!」
一部の変な発言はスルーすることにし、私は新たに質問を投げかけた。
「……どうして急に鍛錬をきつくしたんですか?」
そう尋ねると、エンディミオン卿は射貫くような視線を向けてきた。
「クリスタ様を守るために、怪我なんてしていられない。怪我をしなくなるくらい強くなろう。そう気付かされたんです……」
――私の昨日の発言のせいだったのね……。
なら、カイルの予想は当たってたんだわ。
目の前の彼はやることなすことすべて極端だ。どことなく色気がある見た目で、1歳とはいえ自分よりも年下とは思えない雰囲気を彼は持っている。
しかも仕事中に知ったが、彼は冗談半分、本気半分で鬼の団長や悪魔の団長、氷の団長とあだ名が付けられている。
それほどまでに、騎士の間では自他ともに厳しい人と思われているらしい。
なのに、こうして接していると唐突に彼の子どものような性格が垣間見えてくる。とても鬼や悪魔や氷といった、そんな彼は想像できない。
「エンディミオン卿」
「はい……」
「怪我をしないための鍛錬で怪我をしたら元も子も無いです」
「その通りです。私が浅はかでした……」
そう返す彼は、私よりもずっと背月高いはずなのに、少し小さく見えた。何だか背伸びをしていない、等身大の彼を見たような気持ちになる。
「ふふっ、エンディミオン卿は見た目の割になんだか子どもみたいですね」
何気なく思ったことを告げた。すると、エンディミオン卿はガーンと効果音が付きそうなほどにショックを受けた表情になり、慌てた様子で問いただしてきた。
「こんな私は嫌ですか? もっと大人な男性が好みですか……!?」
大人の男性、この言葉を聞き最悪なことにレアードを思い出してしまった。ちょっと背伸びした大人な彼との恋愛なんて思って、のぼせ上っていた自身に嫌気が差す。
そんな気持ちがあったからだろう。勝手に言葉が口を突いて出た。
「子どもみたいな人……私は別に嫌いではありませんよ」
あくまで冷静に淡々と思ったまでを述べた。しかし、そんな私とは相反し、エンディミオン卿は中庭に差し込む陽光のように輝く笑顔で喜んだ。
「クリスタ様……! っどれだけ私を惚れさせれば気が済むのですか……。心からお慕いしております。結婚してください!」
「お断りいたします。それより、回復魔法をかけますね」
バッサリと切り捨てるように告げても、彼はニコニコと私を見つめながら微笑んでいる。
そんな彼に回復魔法をかけながら、私は様々なことを考えていた。
ここまでのレベルではなかったと思う。だけど、エンディミオン卿を見ていると、レアードに一生懸命アピールしていた自分と本当によく重なって見えてしまうのだ。
ただ、エンディミオン卿から向けられる嬉しそうな顔に、決して嫌な気はしない。これは彼の美しさがそうさせるのか、誠実さが伝わってくるからなのかは分からない。
とにかく、私は彼の一挙手一投足によって、何とも言えない不思議な感覚に陥ってしまう。そんな自分に気付いた。
「エンディミオン卿、これってもしかして……」
ピシッと背筋を伸ばし姿勢よく座っているエンディミオン卿の方へと視線を向けた。すると、彼はその姿勢のまま頬を赤くし、俯きながら言葉を紡いだ。
「昨日クリスタ様がお好きだと仰っていたので、喜んでほしくて作ってきました」
本当はこんなことを思ってはいけないと分かっている。しかし、彼のこの姿がかつての自分とあまりにも重なり、絶対に傷付けたくないと思ってしまった。
私のこんな性格は治らないのかもしれない。魔導士学校の女友達にも「あなたは自分のことを犠牲にするくせに、他人には嫌な思いをさせまいと必死過ぎだ」とよく言われた。そして、この場面においてもその性格が発動してしまった。
「あ、ありがとうございます! 美味しそうですね。では、早速いただきます」
そう声をかけると、エンディミオン卿は赤らめた顔を上げ、それは嬉しそうに私の顔を見つめてきた。
――私はあくまで食事をするためにここに来たのよ!
そう心に言い聞かせ、エンディミオン卿が持ってきてくれていたナイフとフォークを手に持った。そして、それらを用いてキッシュを口の中に入れ、数回咀嚼し飲み込んだ。
「な、何ですかこのキッシュは……。今まで食べたものの中で一番美味しいですっ……!」
あまりの美味しさに、私は絶望しそうになった。私が今まで食べていたキッシュとは一体何だったんだろうか……。
もちろん今までのキッシュも好きだ。しかし、これがキッシュと言われてしまえば、これまで食べてきたキッシュは存在が掠れてしまうほどに美味しかった。
――何なのこの味……!
これを作ったのが本当にエンディミオン卿なの!?
絶対にレシピを聞かないと!
そんなことを考えながら、私はあっという間にキッシュを完食してしまった。といっても、エンディミオン卿の方が先に食べ終わっていたが……。
「とっても美味しかったです! 本当にエンディミオン卿がこちらをお作りになったんですか……!? すごいです!」
キッシュしか見ていなかった私は、声をかけながら改めて左隣にいるエンディミオン卿を見た。
すると、右前腕を机に乗せ左手で頬杖をつき、私を見守るように見つめながら微笑むエンディミオン卿と目が合った。
その瞬間、何とも言えぬ妙な胸騒ぎがした。しかし、そんなことを知らない彼は、その姿勢のまま口を開いた。
「そこまで褒めていただけるなんて嬉しいです。クリスタ様に好きになってもらうためには、胃袋から攻めた方が良いみたいですね」
今日の私に至っては、まんまと罠に嵌められすぎている。そのため、このエンディミオン卿の発言に何とか挽回を図るべく、突っ込みを入れた。
「まだそのようなことを仰っているんですか?」
「当たり前じゃないですか。美味しそうに食べるクリスタ様も素敵です。結婚してくだされば、クリスタ様のために毎日私がご飯を作りますよ」
本来なら貴族は料理なんてしないものだ。それに騎士団という環境で忘れそうになるが、彼は公爵令息で、なおさら使用人の仕事をするような人ではないはずだ。
そんな彼が当たり前のように料理をすると言って、実際にこうして作ってきた。もし、このことが貴族男性に知られたら、彼は貴族の恥だと罵られるかもしれない。
――なんて人なの……。
何でこんなに私に尽くそうとするの……?
そう不思議に思いながらも、私は彼に告げた。
「……っお断りします!」
よし、ちゃんと言ったわ。そう思いながらエンディミオン卿を見るが、彼はずっと私に微笑みかけている。
聞こえていてその反応なら、もうメンタルお化けとしか思えない。そう思った矢先、ふと今朝カイルとした話を思い出した。
――この人朝から鍛錬してたって言っていたわよね?
それなのに、キッシュを作ったなんて相当無理したんじゃ……。
ふと不安になり、エンディミオン卿に切り出した。
「昨日私と別れた後、夜遅くまで鍛錬をして、今朝も早くから鍛錬をしていたと聞きましたよ。過度な運動はかえって怪我の元です。時間的にキッシュも無理して作ったんじゃないですか?」
そう問うと、エンディミオン卿はなんてことないような表情を続けようとした。しかし、私は彼の一瞬ギクッとした表情を見逃さなかった。
だが、彼は気付かれていると思っていないようで、澄ました笑顔を見せた。
「そんなこと誰から聞いたんですか? 無理なんてしていませんよ」
そう言うが、彼は多少本音を誤魔化している。
私は彼から本当のことを聞くべく、ジーっと彼の目を見つめた。すると、とうとうエンディミオン卿は観念したように口を割った。
「……無理という程ではないですが、確かに鍛錬を少しだけハードにしました。ですが、キッシュは無理に時間を割いて作ったわけではありません。好きな人のために作っていたのでむしろ休憩です!」
一部の変な発言はスルーすることにし、私は新たに質問を投げかけた。
「……どうして急に鍛錬をきつくしたんですか?」
そう尋ねると、エンディミオン卿は射貫くような視線を向けてきた。
「クリスタ様を守るために、怪我なんてしていられない。怪我をしなくなるくらい強くなろう。そう気付かされたんです……」
――私の昨日の発言のせいだったのね……。
なら、カイルの予想は当たってたんだわ。
目の前の彼はやることなすことすべて極端だ。どことなく色気がある見た目で、1歳とはいえ自分よりも年下とは思えない雰囲気を彼は持っている。
しかも仕事中に知ったが、彼は冗談半分、本気半分で鬼の団長や悪魔の団長、氷の団長とあだ名が付けられている。
それほどまでに、騎士の間では自他ともに厳しい人と思われているらしい。
なのに、こうして接していると唐突に彼の子どものような性格が垣間見えてくる。とても鬼や悪魔や氷といった、そんな彼は想像できない。
「エンディミオン卿」
「はい……」
「怪我をしないための鍛錬で怪我をしたら元も子も無いです」
「その通りです。私が浅はかでした……」
そう返す彼は、私よりもずっと背月高いはずなのに、少し小さく見えた。何だか背伸びをしていない、等身大の彼を見たような気持ちになる。
「ふふっ、エンディミオン卿は見た目の割になんだか子どもみたいですね」
何気なく思ったことを告げた。すると、エンディミオン卿はガーンと効果音が付きそうなほどにショックを受けた表情になり、慌てた様子で問いただしてきた。
「こんな私は嫌ですか? もっと大人な男性が好みですか……!?」
大人の男性、この言葉を聞き最悪なことにレアードを思い出してしまった。ちょっと背伸びした大人な彼との恋愛なんて思って、のぼせ上っていた自身に嫌気が差す。
そんな気持ちがあったからだろう。勝手に言葉が口を突いて出た。
「子どもみたいな人……私は別に嫌いではありませんよ」
あくまで冷静に淡々と思ったまでを述べた。しかし、そんな私とは相反し、エンディミオン卿は中庭に差し込む陽光のように輝く笑顔で喜んだ。
「クリスタ様……! っどれだけ私を惚れさせれば気が済むのですか……。心からお慕いしております。結婚してください!」
「お断りいたします。それより、回復魔法をかけますね」
バッサリと切り捨てるように告げても、彼はニコニコと私を見つめながら微笑んでいる。
そんな彼に回復魔法をかけながら、私は様々なことを考えていた。
ここまでのレベルではなかったと思う。だけど、エンディミオン卿を見ていると、レアードに一生懸命アピールしていた自分と本当によく重なって見えてしまうのだ。
ただ、エンディミオン卿から向けられる嬉しそうな顔に、決して嫌な気はしない。これは彼の美しさがそうさせるのか、誠実さが伝わってくるからなのかは分からない。
とにかく、私は彼の一挙手一投足によって、何とも言えない不思議な感覚に陥ってしまう。そんな自分に気付いた。
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