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18話 衝撃の真実
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魔塔主様に帰還したとの報告が終わり帰宅してから約2時間後、ドアをノックする音が聞こえた。
「はい、どうぞ。どうしたのかしら?」
そう声をかけると、メイド長が入ってきて口を開いた。
「失礼いたします。クリスタ様にお会いしたいという方がいらしております」
――あら、魔塔からの遣いの人が来たのかしら?
「誰かしら? 魔塔の遣いの人?」
「いえ、カーチェス侯爵夫妻がお越しになっております」
――はあ?
今まで会いもしてくれなかったのに?
こういう時になったら会いに来るだなんてっ……。
どの面下げて来たんだと思ってしまう。今回こうして来たのは、私が出した手紙がきっかけだろう。
最後にどんな顔かだけ見てやろう。そう思い、メイド長に告げた。
「客間に夫妻を通してちょうだい」
「はい、かしこまりました」
こうして、私はレアードの父母であるカーチェス侯爵夫妻と初めて会うことになった。
実は私は夫妻の顔をちゃんと知らない。多分この人たちだろうという見当はついているが、確信が無いのだ。
私自身の仕事が忙しすぎて、最低限のパーティーにしか出られなかった。それも確信が無い原因の1つだが、圧倒的な原因はレアードだった。
パーティーに出席したときレアードにご両親を尋ねたところ、今日は出席していないと言ったり、クリスタのことを嫌がってると言ったりして、結局レアードはこの人だ! とは教えてくれなかった。
それに、他の人に訊こうとしても、挨拶をしないから顔だけ教えてと言っても、レアードは不機嫌になった。そのため、私はそれ以上の詮索はできなかった。
――レアードはご両親が私を嫌っていると言っていたわ。
一体どんな態度で来るのかしら。
そう身構えながら、夫妻が待つ客間へ入った。するとそこにいたのは、憔悴しきった状態で怯えている男女2人組だった。
――見たことある顔だわ。
やっぱりこの人たちがレアードのご両親だったのね……。
そう思っていると、2人は椅子から立ち上がると同時に口を開いた。
「聖女様!」
まさか、いきなり聖女様なんて呼ばれるとは思っていなかった。
今まで私は、子爵家だから侯爵家の息子には相応しくないとこの2人に言われている話を、散々聞かされていたのだ。それなのに、人を聖女様と呼ぶ、手のひらを返したようなその言動に、もう怒りすら湧かなかった。
この2人は私が生贄の試練から帰ってきたことを知っているから、私のことをオフィーリア様と同等と思って、聖女様と呼んでいるのだろう。
まあ、今日の測定の結果的に間違ってはいないが、あまりにも変わり身が早すぎて気持ち悪いとすら思える。しかし、そんな私に侯爵が言葉を続けた。
「話しを聞いてください。私たちと聖女様には誤解がありまして――」
「誤解ですか……。この期に及んで、そのようなことが本当に有るのでしょうか?」
遮るように尋ねたが、侯爵夫妻たちの真っ直ぐとこちらを見る目の色は変わらなかった。そのため、私は違和感を覚えた。そして、そんな私に侯爵はとんでも無い発言をしてきた。
「聖女様、我々夫婦は聖女様の話をレアードから聞いたことはありませんでした……! アイラ嬢とは1年ほど前から交流がありますが、本当に聖女様のことは話に聞いたことが無かったのです!」
まさに、青天の霹靂だった。私には今の侯爵の発言が上手く呑み込めないし、理解も出来ない。
――まさか……っそんなわけ!
「私はあなた方のご令息からずっと、お2人は私の家格を理由に結婚に反対なさっていると聞いておりましたよ?」
あまりにも信じられない発言をするものだから、2人にそのままレアードの発言をぶつけた。すると、今度は侯爵夫人が口を開いた。
「神に誓って言えます。私たちはそのようなことを理由に結婚に反対はしておりませんわ! 仮にそうだとしたら、なぜ直系ではないアイラ嬢との結婚を認めたのかという話にならないでしょうか?」
確かにその通りだ。私はお父様とお母様の血を継いでいるがアイラは違う。アイラはお母様の前の夫の子どもで、ウィルキンス家の血は一切引き継いでいない。それは貴族間では周知の事実だ。
そんなアイラを受け入れる人が、私のことを受け入れないとは考えられない。そうなると、答えは1つしかなかった。
――レアード……あいつ……!
まんまとしてやられたわっ!
私はどうやら彼の言うことを信じすぎていたようだ。ずっと信頼して認めてもらえるように頑張ってきたが、問題が解決しない理由はレアード本人だったのだ。
あまりの事実に頭が沸騰しそうな感覚に陥る。怒りでどうにかなりそうだ。彼にとって私は一体どんな人間だったのだろうか。
もはや、悲しみなんて感情は無く、レアードへの未練など一切無くなってしまった。あんなに好きだったことが嘘のようだ。
「聖女様っ……息子が大変な失礼をいたしましたこと、心から謝罪申し上げます」
「知らなかったでは済まされないでしょうが、私たちもあなたに結婚式をすることは隠してほしいと言われ協力いたしました。本当に、本当に申し訳ございませんでした」
そして、2人は言葉を変えながら何度も何度も私に謝罪の意を告げてきた。しかし、いくら謝罪されたところで、もう私の気持ちは完全に決まっていた。
「お2人の謝罪の意は伝わりました。そして、あなた方お2人が、私とレアードの関係を知らなかったということも信じましょう」
そう言うと、2人ともホッとしたように少しだけ口角を上げた。
「ですが、だからと言って私は許せません。ですので、これからの私の人生においてレアード・カーチェスという男が関わらないようにしてください」
そう言うと、侯爵が心配そうに眉間に皺を寄せて話しかけてきた。
「そんなことでは申し訳が立ちません。せめて慰謝料を……」
――金で何かが変わるとでも思っているのかしら。
もうカーチェス家と関わるなんてもううんざりよ!
そう思い、私は彼らに告げた。
「私はもうあなたたちとは関わりたくないですし、あなたたちからのお金は受け取りたくないので要りません。どうしてもと言うのでしたら、アイラやカトリーヌを煮るなり焼くなりする費用として使ってみてはどうでしょうか? あと、そんなことと言ったからには、必ずその約束をお守りください」
そう言うと、カーチェス夫妻たちは項垂れるようにして黙り込んでしまった。
「もうお引き取りいただいてもよろしいでしょうか」
そう言うと、2人とも最後の最後まで謝りながら、ようやく帰って行った。
――ああ、疲れた……。
信じ難き事実に直面し、心と身体のバランスがもうめちゃくちゃだ。一旦休もう、そう思いながら自室に帰った。
するとまたすぐに部屋のドアが鳴り、指示を出すとメイド長が入ってきた。
「またクリスタ様にお会いしたいと、お客様がいらしておりまして……」
――もう……今度は誰よ!?
「はい、どうぞ。どうしたのかしら?」
そう声をかけると、メイド長が入ってきて口を開いた。
「失礼いたします。クリスタ様にお会いしたいという方がいらしております」
――あら、魔塔からの遣いの人が来たのかしら?
「誰かしら? 魔塔の遣いの人?」
「いえ、カーチェス侯爵夫妻がお越しになっております」
――はあ?
今まで会いもしてくれなかったのに?
こういう時になったら会いに来るだなんてっ……。
どの面下げて来たんだと思ってしまう。今回こうして来たのは、私が出した手紙がきっかけだろう。
最後にどんな顔かだけ見てやろう。そう思い、メイド長に告げた。
「客間に夫妻を通してちょうだい」
「はい、かしこまりました」
こうして、私はレアードの父母であるカーチェス侯爵夫妻と初めて会うことになった。
実は私は夫妻の顔をちゃんと知らない。多分この人たちだろうという見当はついているが、確信が無いのだ。
私自身の仕事が忙しすぎて、最低限のパーティーにしか出られなかった。それも確信が無い原因の1つだが、圧倒的な原因はレアードだった。
パーティーに出席したときレアードにご両親を尋ねたところ、今日は出席していないと言ったり、クリスタのことを嫌がってると言ったりして、結局レアードはこの人だ! とは教えてくれなかった。
それに、他の人に訊こうとしても、挨拶をしないから顔だけ教えてと言っても、レアードは不機嫌になった。そのため、私はそれ以上の詮索はできなかった。
――レアードはご両親が私を嫌っていると言っていたわ。
一体どんな態度で来るのかしら。
そう身構えながら、夫妻が待つ客間へ入った。するとそこにいたのは、憔悴しきった状態で怯えている男女2人組だった。
――見たことある顔だわ。
やっぱりこの人たちがレアードのご両親だったのね……。
そう思っていると、2人は椅子から立ち上がると同時に口を開いた。
「聖女様!」
まさか、いきなり聖女様なんて呼ばれるとは思っていなかった。
今まで私は、子爵家だから侯爵家の息子には相応しくないとこの2人に言われている話を、散々聞かされていたのだ。それなのに、人を聖女様と呼ぶ、手のひらを返したようなその言動に、もう怒りすら湧かなかった。
この2人は私が生贄の試練から帰ってきたことを知っているから、私のことをオフィーリア様と同等と思って、聖女様と呼んでいるのだろう。
まあ、今日の測定の結果的に間違ってはいないが、あまりにも変わり身が早すぎて気持ち悪いとすら思える。しかし、そんな私に侯爵が言葉を続けた。
「話しを聞いてください。私たちと聖女様には誤解がありまして――」
「誤解ですか……。この期に及んで、そのようなことが本当に有るのでしょうか?」
遮るように尋ねたが、侯爵夫妻たちの真っ直ぐとこちらを見る目の色は変わらなかった。そのため、私は違和感を覚えた。そして、そんな私に侯爵はとんでも無い発言をしてきた。
「聖女様、我々夫婦は聖女様の話をレアードから聞いたことはありませんでした……! アイラ嬢とは1年ほど前から交流がありますが、本当に聖女様のことは話に聞いたことが無かったのです!」
まさに、青天の霹靂だった。私には今の侯爵の発言が上手く呑み込めないし、理解も出来ない。
――まさか……っそんなわけ!
「私はあなた方のご令息からずっと、お2人は私の家格を理由に結婚に反対なさっていると聞いておりましたよ?」
あまりにも信じられない発言をするものだから、2人にそのままレアードの発言をぶつけた。すると、今度は侯爵夫人が口を開いた。
「神に誓って言えます。私たちはそのようなことを理由に結婚に反対はしておりませんわ! 仮にそうだとしたら、なぜ直系ではないアイラ嬢との結婚を認めたのかという話にならないでしょうか?」
確かにその通りだ。私はお父様とお母様の血を継いでいるがアイラは違う。アイラはお母様の前の夫の子どもで、ウィルキンス家の血は一切引き継いでいない。それは貴族間では周知の事実だ。
そんなアイラを受け入れる人が、私のことを受け入れないとは考えられない。そうなると、答えは1つしかなかった。
――レアード……あいつ……!
まんまとしてやられたわっ!
私はどうやら彼の言うことを信じすぎていたようだ。ずっと信頼して認めてもらえるように頑張ってきたが、問題が解決しない理由はレアード本人だったのだ。
あまりの事実に頭が沸騰しそうな感覚に陥る。怒りでどうにかなりそうだ。彼にとって私は一体どんな人間だったのだろうか。
もはや、悲しみなんて感情は無く、レアードへの未練など一切無くなってしまった。あんなに好きだったことが嘘のようだ。
「聖女様っ……息子が大変な失礼をいたしましたこと、心から謝罪申し上げます」
「知らなかったでは済まされないでしょうが、私たちもあなたに結婚式をすることは隠してほしいと言われ協力いたしました。本当に、本当に申し訳ございませんでした」
そして、2人は言葉を変えながら何度も何度も私に謝罪の意を告げてきた。しかし、いくら謝罪されたところで、もう私の気持ちは完全に決まっていた。
「お2人の謝罪の意は伝わりました。そして、あなた方お2人が、私とレアードの関係を知らなかったということも信じましょう」
そう言うと、2人ともホッとしたように少しだけ口角を上げた。
「ですが、だからと言って私は許せません。ですので、これからの私の人生においてレアード・カーチェスという男が関わらないようにしてください」
そう言うと、侯爵が心配そうに眉間に皺を寄せて話しかけてきた。
「そんなことでは申し訳が立ちません。せめて慰謝料を……」
――金で何かが変わるとでも思っているのかしら。
もうカーチェス家と関わるなんてもううんざりよ!
そう思い、私は彼らに告げた。
「私はもうあなたたちとは関わりたくないですし、あなたたちからのお金は受け取りたくないので要りません。どうしてもと言うのでしたら、アイラやカトリーヌを煮るなり焼くなりする費用として使ってみてはどうでしょうか? あと、そんなことと言ったからには、必ずその約束をお守りください」
そう言うと、カーチェス夫妻たちは項垂れるようにして黙り込んでしまった。
「もうお引き取りいただいてもよろしいでしょうか」
そう言うと、2人とも最後の最後まで謝りながら、ようやく帰って行った。
――ああ、疲れた……。
信じ難き事実に直面し、心と身体のバランスがもうめちゃくちゃだ。一旦休もう、そう思いながら自室に帰った。
するとまたすぐに部屋のドアが鳴り、指示を出すとメイド長が入ってきた。
「またクリスタ様にお会いしたいと、お客様がいらしておりまして……」
――もう……今度は誰よ!?
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