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11話 婚約破棄宣言
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2人とも化け物を見るような目でこちらを見て怯えている。よく見ると、2人の指にはしっかりと結婚指輪がはまっていた。
――私がレアード様と結婚するはずだったのに……。
何で結婚指輪をはめているのが、私じゃなくてアイラなの……?
「結婚指輪までしっかり用意していたのね」
自分の声とは思えないほど、低い声が出た。
「私がいなくなって3日経つけど、そんな短期間で用意できるものじゃないわよね? 教会は偶然空いてたら、当日でも結婚式ができるわ。でも、その指輪は違う……。どうしたの? 何か言いなさいよ」
私がそう問いかけると、レアード様が慌てた様子で喋り出した。
「ち、違うんだ……! こんなもの……」
そう言いながら、証拠を隠滅するかのように目の前の男は結婚指輪を外そうとし始めた。それに倣うように、アイラも慌てた様子で、自身の指に嵌った結婚指輪へと手を伸ばした。
しかし、今更そんなことをしたところでもう遅い。
――いいわ、あなたたちの夢を叶えてあげましょう。
「クロノス」
小さい声で呟いた。
「お姉様話を聞いて! 指輪は外すからっ……! って、外れない? 何で!? どうして!?」
「僕の方も外れない! まさかっ……」
やっと気づいたのだろう。レアード様がこちらを見てきた。
「へ? どういうこと?」
そんな間抜けな声を出しながら、アイラはレアード様の視線を追い私に目を向けた。
「一生2人でお幸せにね! そして、3人とも私の人生に二度と関わって来ないでちょうだいっ……!」
3人とも口をあうあうとさせているが、何も言葉を発さない。いや、発せないのかもしれない。
だが、そんなの私が知ったことでは無い。そのため、レアードに対し追い打ちをかけるようにはっきりと宣言した。
「レアード・カーチェス。あなたとは婚約破棄いたします。私の人生に二度と踏み込んで来ないで」
「い、嫌だ! 考え直してくれ! 僕が本当に好きなのは、クリスタなんだ……! こ、この指輪も外してくれっ……! 婚約破棄なんて認めない!」
必死に指輪をのけようとしながら私へと左手を掲げてくるが、外すなんて考えは毛頭ない。
「私との婚約破棄と、アイラとの結婚を象徴するのがその指輪よ。あなたが認めようが認めまいが、その指輪が何よりも証拠になる。そんな指輪、外すわけないでしょう?」
そう告げると、目の前の男は絶望的な顔をして項垂れた。
――やっと黙ったわ。
誰が今更あなたの戯言を信じるって言うのよ。
人の妹と結婚式をしていたくせに、婚約破棄を認めないなんて笑わせる。
こんなにも愚かで馬鹿な人だったのかと思いながら、私は次にガタガタと震えているアイラと継母に視線を向けた。すると、アイラは今にも人を殺してしまいそうな目でレアードを睨めつけていた。
しかし、私はそんなアイラのことを気にすることなく、アイラとカトリーヌの2人に言葉を放った。
「あなたたち2人は家には帰って来ないでね。元々あなたたちには住む権利はないもの。絶対に入れないから。それと、あなた達は今日から子爵夫人でも、子爵令嬢でもなくただの平民になったから。目の前から消えてちょうだい」
そう言って、私はその場から立ち去った。保護魔法をかけていたため、濡れていない状態の私はそのまま馬車を拾い、急いで邸宅に帰った。
◇ ◇ ◇
家に帰りつくと、皆死人が突然現れたというような反応をした。
「ク、クリスタ様? クリスタ様ですよね……? 帰ってこられたのですか?」
「ええ、その通りよ。ところで、執事長とメイド長はいるかしら?」
その2人の名前を出すと、目の前のメイドはビクッとした後、恐る恐ると話し出した。
「今日は……あの御二方はお休みです」
――どちらかが休むならまだしも、どっちもが同じ日に休むだなんて、余程のことが無い限り有り得ない。
きっとこの2人は何も知らないのね。
ということは、逆にここにいるのは……。
すべてが頭の中で繋がった。
――この子はここに来てまだ10日も経っていないから、勝手も分からなかったはず……。
そう判断し、入ってきたばかりの近くに立っていた使用人である青年に声をかけた。
「執事長とメイド長を今すぐ呼んできて。緊急事態と伝えてちょうだい」
「はっはい! 承知いたしました」
重大任務を任されたという様子で、使用人は慌てて2人を呼び出しに行った。
――こんな日に、よりにもよってこの2人が休暇を取るだなんておかしい。
絶対に知らなかったはずよ。
どうやら、あの2人と私にバレないように、かなり緻密に計画を練って実行したみたいね。
そう考えを巡らせながら、目の前のメイドにも指示を出した。
「今すぐ邸宅中の使用人を大広間に集めてちょうだい。先に行って待っているから」
そう言い残して、私は先に大広間へと移動をした。そして、全使用人が集まったと同時に、執事長とメイド長もやって来た。
「揃ったわね。では、あなたたちに聞くわ。……執事長とメイド長以外、みんな知っているわね?」
訊ねてみれば、皆ビクビクと震え出した。一方で執事長とメイド長たちは混乱している。
「お嬢様、ご帰還なされたのですか……!? なんとっ……おめでとうございます! ですか緊急事態だと! 一体どうされたのですか……!? それに――」
執事長が質問をしてきたが、その言葉に被せるように使用人たちが次々と叫び出した。
「申し訳ございませんでした!」
「クリスタ様、大変、大変申し訳ございませんでした! 口止めされておりまして」
「本当に申し訳ございません……!」
皆が口々に謝罪を始めた。すると、メイド長が一喝した。
「皆、一旦静まりなさい。何があったのか、あなたが説明しなさい」
メイド長のその声に皆が静まり返り、指名された代表のメイドが話し出した。
「クリスタ様が生贄の試練に行くとのことで、クリスタ様と執事長とメイド長には極秘で本日アイラ様の結婚式があったのです」
その言葉を聞き、執事長とメイド長は信じられないというような表情になった。そして、執事長がすかさず質問した。
「そんな馬鹿げた話があるものか。結婚なんて話は一言も私は聞き及んでいないぞ。そもそも誰との結婚式だ?」
この執事長の質問に答える前、メイドがチラッと私の顔を見た。
「私は相手を知っているから、遠慮なく教えてあげてちょうだい」
そう言うと、メイドはガタガタと震えながら絞り出すような声で、その名を口にした。
「レ、レアード様ですっ……」
その瞬間、大広間がどよめいた。
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――私がレアード様と結婚するはずだったのに……。
何で結婚指輪をはめているのが、私じゃなくてアイラなの……?
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私がそう問いかけると、レアード様が慌てた様子で喋り出した。
「ち、違うんだ……! こんなもの……」
そう言いながら、証拠を隠滅するかのように目の前の男は結婚指輪を外そうとし始めた。それに倣うように、アイラも慌てた様子で、自身の指に嵌った結婚指輪へと手を伸ばした。
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「僕の方も外れない! まさかっ……」
やっと気づいたのだろう。レアード様がこちらを見てきた。
「へ? どういうこと?」
そんな間抜けな声を出しながら、アイラはレアード様の視線を追い私に目を向けた。
「一生2人でお幸せにね! そして、3人とも私の人生に二度と関わって来ないでちょうだいっ……!」
3人とも口をあうあうとさせているが、何も言葉を発さない。いや、発せないのかもしれない。
だが、そんなの私が知ったことでは無い。そのため、レアードに対し追い打ちをかけるようにはっきりと宣言した。
「レアード・カーチェス。あなたとは婚約破棄いたします。私の人生に二度と踏み込んで来ないで」
「い、嫌だ! 考え直してくれ! 僕が本当に好きなのは、クリスタなんだ……! こ、この指輪も外してくれっ……! 婚約破棄なんて認めない!」
必死に指輪をのけようとしながら私へと左手を掲げてくるが、外すなんて考えは毛頭ない。
「私との婚約破棄と、アイラとの結婚を象徴するのがその指輪よ。あなたが認めようが認めまいが、その指輪が何よりも証拠になる。そんな指輪、外すわけないでしょう?」
そう告げると、目の前の男は絶望的な顔をして項垂れた。
――やっと黙ったわ。
誰が今更あなたの戯言を信じるって言うのよ。
人の妹と結婚式をしていたくせに、婚約破棄を認めないなんて笑わせる。
こんなにも愚かで馬鹿な人だったのかと思いながら、私は次にガタガタと震えているアイラと継母に視線を向けた。すると、アイラは今にも人を殺してしまいそうな目でレアードを睨めつけていた。
しかし、私はそんなアイラのことを気にすることなく、アイラとカトリーヌの2人に言葉を放った。
「あなたたち2人は家には帰って来ないでね。元々あなたたちには住む権利はないもの。絶対に入れないから。それと、あなた達は今日から子爵夫人でも、子爵令嬢でもなくただの平民になったから。目の前から消えてちょうだい」
そう言って、私はその場から立ち去った。保護魔法をかけていたため、濡れていない状態の私はそのまま馬車を拾い、急いで邸宅に帰った。
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家に帰りつくと、皆死人が突然現れたというような反応をした。
「ク、クリスタ様? クリスタ様ですよね……? 帰ってこられたのですか?」
「ええ、その通りよ。ところで、執事長とメイド長はいるかしら?」
その2人の名前を出すと、目の前のメイドはビクッとした後、恐る恐ると話し出した。
「今日は……あの御二方はお休みです」
――どちらかが休むならまだしも、どっちもが同じ日に休むだなんて、余程のことが無い限り有り得ない。
きっとこの2人は何も知らないのね。
ということは、逆にここにいるのは……。
すべてが頭の中で繋がった。
――この子はここに来てまだ10日も経っていないから、勝手も分からなかったはず……。
そう判断し、入ってきたばかりの近くに立っていた使用人である青年に声をかけた。
「執事長とメイド長を今すぐ呼んできて。緊急事態と伝えてちょうだい」
「はっはい! 承知いたしました」
重大任務を任されたという様子で、使用人は慌てて2人を呼び出しに行った。
――こんな日に、よりにもよってこの2人が休暇を取るだなんておかしい。
絶対に知らなかったはずよ。
どうやら、あの2人と私にバレないように、かなり緻密に計画を練って実行したみたいね。
そう考えを巡らせながら、目の前のメイドにも指示を出した。
「今すぐ邸宅中の使用人を大広間に集めてちょうだい。先に行って待っているから」
そう言い残して、私は先に大広間へと移動をした。そして、全使用人が集まったと同時に、執事長とメイド長もやって来た。
「揃ったわね。では、あなたたちに聞くわ。……執事長とメイド長以外、みんな知っているわね?」
訊ねてみれば、皆ビクビクと震え出した。一方で執事長とメイド長たちは混乱している。
「お嬢様、ご帰還なされたのですか……!? なんとっ……おめでとうございます! ですか緊急事態だと! 一体どうされたのですか……!? それに――」
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「申し訳ございませんでした!」
「クリスタ様、大変、大変申し訳ございませんでした! 口止めされておりまして」
「本当に申し訳ございません……!」
皆が口々に謝罪を始めた。すると、メイド長が一喝した。
「皆、一旦静まりなさい。何があったのか、あなたが説明しなさい」
メイド長のその声に皆が静まり返り、指名された代表のメイドが話し出した。
「クリスタ様が生贄の試練に行くとのことで、クリスタ様と執事長とメイド長には極秘で本日アイラ様の結婚式があったのです」
その言葉を聞き、執事長とメイド長は信じられないというような表情になった。そして、執事長がすかさず質問した。
「そんな馬鹿げた話があるものか。結婚なんて話は一言も私は聞き及んでいないぞ。そもそも誰との結婚式だ?」
この執事長の質問に答える前、メイドがチラッと私の顔を見た。
「私は相手を知っているから、遠慮なく教えてあげてちょうだい」
そう言うと、メイドはガタガタと震えながら絞り出すような声で、その名を口にした。
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その瞬間、大広間がどよめいた。
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