探検の書

ぶちゃ丸/火取閃光

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第1章 転生直後は罠だらけ

1-18 冒険者アラン

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 アルバイト10日目のヘビのツキ・17日・ドウギのヒの昼少し過ぎ。この時間は婆ちゃん達職人の休憩時間なので客入りが少ない。

 稀に緊急の修理で来る事も有るそうだが、今の所会った事はない。また、流石に10日目になってくると挨拶と掃き掃除に緊張はなく大分慣れてきたと実感する。

 しかし、そんな中これまで来たどの冒険者よりも圧倒的な存在感や威圧感の様なプレッシャーを放つ短髪で白髪、蒼い瞳で筋肉質のおじさん男性が俺に近づいてきた。

「こんにちは! いらっしゃいませ!」

 俺はジレンを思い出し、見た目で勝手に怯えて相手を傷つけても仕方ないと思い、目の前の人物に負けない位の大声で挨拶をする。

「おう! こんにちは! はっはっは! いや~元気が良いな~お前さんが俺の孫のフィデリオか! ガキの頃のアモンに面影がしっかりあるな」

 目の前の人物の正体は、どうやら俺の祖父だったようだった。祖父は笑いながら、大きくゴツゴツした右手で俺の頭を少し乱暴に撫でた。

「うわっ! えーっと? っと言うことは、貴方は俺の爺ちゃんなの?」

 俺は困惑しながら首を傾げて尋ねた。

「おうとも! 俺の名前はアランだ! よろしくなフィデリオ」

 祖父は右手の拳で親指だけ立て、それを自身に指差しながら挨拶をする。

「よろしくね、爺ちゃん! 俺はみんなから"リオ"って呼ばれてあるから、良かったら爺ちゃんもそう呼んでよ!」

 俺も祖父に習い同じポーズで挨拶をする。

「"リオ"な。んじゃ、俺はジジイでも爺ちゃんでも好きに呼ぶと良いさ。よろしくな、リオ」

 その後爺ちゃんは背負っていた袋や武具を地面に下ろし立ち話をした。

「そう言えばアラン爺ちゃんは、今まで何処に行っていたの?」

「あれ? みっちゃんから聞いてないのか? 鍛治に使う魔鉱石をDランク鉱土の門から採掘しに行ったんだ。みっちゃんが作る為の鉱石は、基本的に市場に回らないから、こうして定期的に俺が採掘しに行くんだ」

「ん? みっちゃん? 爺ちゃん"みっちゃん"って婆ちゃんの事?」

 俺は祖父の突然の"みっちゃん"呼びに誰だと思ったが、話の流れ的に祖母だと気が付いた。

「おう! なんつうか俺ら夫婦間での呼び名でな。夫婦やる前の冒険者パーティ時代からずっとこの呼び名なのさ」

「へぇー! 仲良しだね!」

「おう! んで、夫婦になってから互いに名前呼びしたんだが、違和感拭えなくてなぁ。もう、今まで通りで良いやってなったんだよ」

 爺ちゃんは何処か恥ずかしそうに照れながら右手で頭をかいた。

「そう言えば、アラン爺ちゃんは大金槌を背負って居たけど……採掘の為に持って行ったの? それとも爺ちゃんの武器が大槌なの?」

 俺も仲良し夫婦な爺ちゃんをみて何となくこそばゆい感じがしながらも祖父のハンマーを見て一気に興奮に火がついた。

「どっちもだな。俺の主力武器はハンマーだ。但しこれは冒険用のハンマーでは無く、採掘兼自衛用ハンマーだ。昔良く使った"ミスリク"と"オリハルク"って言う鉱石の合金で出来ているんだ」

「ミスリク!? オリハルク!? なんか凄そう!」

「おうよ! どっちも見た目よりも軽くて、魔力を流しやすい特徴で便利なんだ。だけど俺が普段冒険している迷宮だとイマイチ硬さが足らなくてな……だからこうして再利用しているんだ」

 祖父は右手一本で軽々と持ち上げると少しだけ残念そうに言う。

「(爺ちゃんの大金槌と言うのか……この世界でも"槌"は"ハンマー"って呼ぶみたいだし、これからはハンマーで統一しよう……大金槌って言いにくいし)」

 改めて祖父のハンマーを見ると全体的に青白い見た目で、頭の部分が三角柱になっている特徴的なハンマーだった。

「ヘェ~あっ! そのミスリク? オリハルク? ってどんな特徴の鉱石なの? あと、そのハンマーには名前とかってあるの?」

 俺は新しい物に興奮して祖父に詰め寄る。

「まてまて! ミスリクって言うのはな、軽くて魔力伝導率が高い鉱石でな。その分、耐久値が低くい鉱石なのさ」

「えっ? 低いの? それって黒魔鋼よりも?」

 俺が現在知っている中でも硬い金属を例に取り出し質問する。

「そんな事はねぇ。低いって言っても青魔鉄や黒魔鋼よりも硬い。だがな、ランクが上の迷宮には足らなすぎるんだ……まぁ、だから合金に向いている金属なんだ」

「そうなんだ」

「おう。次は、オリハルクについてなんだが……ミスリクよりも硬くミスリクの次くらいに魔力伝導率が高い金属なんだ」

「えっ? それじゃあ、なんでミスリクと合金にしたの? オリハルクだけにした方が良かったんじゃないの?」

「そうなんだけどな……オリハルクは採掘場所や量が少なくてあまり採掘出来ない鉱石でな。このハンマー"青牛の角"って言うんだが、作った当時ハンマー1本も作れないほど少なかったから合金にしたんだよ。」

 どうやらオリハルクは希少性が高い金属のようだった。

「そうなんだ~それにしても"青牛の角"って名前の由来ってあるの?」

「なんだ、リオ、やけにこのハンマーに興味があるじゃねえか」

 祖父はニヤッっと笑う。

「そうだよ! 俺さ、将来は父ちゃんや母ちゃん、爺ちゃん達みたいな冒険者になりたいんだ! この前婆ちゃんから貰ったこの祝福もハンマーだから結構好きなんだ! 適性とか分かんねぇけど、上手く使えたら武器をハンマーにしようと思っているんだ!」

「はっはっは! そいつは嬉しいな~。俺の時代はハンマー使いはそこそこいたんだが……今の時代の冒険者はハンマーに興味が薄くてな……少し寂しさを感じていたんだ」

 祖父は笑うが少し力がなさそうな苦笑した。

「そこで爺ちゃん! 俺にハンマーの使い方を教えて欲しいんだ! それと冒険中に武器の整備とかしたいから婆ちゃんにも鍛治を教えてもらおうと思うんだ! どうかな?」

「おう、いいと思うぜ! だが、武器修練と言うか冒険者の訓練は両親に、鍛治はみっちゃんにしっかり許可をもらう事が条件だ。それなら俺が冒険者になるまでにハンマーの使い方を叩き込んでやるよ」

「ありがとう! 爺ちゃん! 今度、父ちゃんや母ちゃん、婆ちゃんに聞いてみるよ!」

 俺は戦闘の師匠になるかも知れない爺ちゃんと約束した。
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