探検の書

ぶちゃ丸/火取閃光

文字の大きさ
上 下
12 / 138
第1章 転生直後は罠だらけ

1-12 パーソナルボックス

しおりを挟む
「リオ~! そろそろ出発するわ。準備は出来良い?」

 俺が思考に耽っていると後ろから両親にそろそろ出発する旨を言われる。

「えっ? あっ! ごめん、母ちゃん! 今、行く!」

「うふふ、父ちゃんが荷物を持って外で待っているからだ早くおいで」

 母は俺に手を出し声掛けを行い、一緒に手を繋ぎながら玄関を出た。

「ごめん! 父ちゃん、母ちゃん、お待たせ!」

 俺は待っていた父に謝ると父は気にしていないと言い、家の戸締りを行なった後に空いている手で俺のもう一つの手を繋いだ。

「気にすんな、リオ。そんなに待ってねぇし、日課と違ったお出かけだからな、何かと考えちまうのは無理ねぇよ。よし……戸締りをしたからそろそろ行こうぜ。婆ちゃん家は店裏手にあるから人混みが多く迷子になるかも知れねぇから、最初は俺たちと手を繋いで行こうぜ。な?」

「それじゃぁ、リオ、アンタ、行きましょう」

「おう! 行こうぜ」

「うん! 行こう、行こう」

 俺たちは、祖父母宅歩き出した。俺は祖父母宅に向かう最中、周りをキョロキョロしながら初めて見る街の景色、人、店などにとても興奮していた。

「(うぉ~! スゲー、スゲー。人、多い…っ!?)」

 興奮しきっている俺を横目にみて両親は微笑えんでいる事に俺はびっくりした。

「(うぉぉ……俺は、まるで子供かよ……。あ、いや、まぁ、子供か、俺は。なら、若干恥ずかしいけど楽しむしか無いか)」

 あまりの恥ずかしさで俺は下を向き、子供である事を再度認識した俺は子供の様にはしゃぐ事を心に決めた。俺は祖父母宅に着くまでの間、両親にアローゼンやイシュテリアの事、冒険者ギルドの事について色々話を聞いてみた。

「父ちゃん、母ちゃん! そう言えばさぁ、アローゼンやイシュテリア、冒険者についてもっと教えてよ!」

「うん? そ~だなぁ。まぁ、リオなら賢いし多分理解出来んだろ。よし、まずはアローゼンについてだ! アローゼンは迷宮王国って言ってな。その名の通り他国よりも迷宮の保持数がとても多いんだ!」

「おおっ! すごく……多い?」

「おう! 合っているぞ! 他国では大体3~5箇所くらい迷宮を保持しているが、アローゼンは確認できている限りで18箇所の迷宮を保持しているんだ」

「えっ! そんなに違うの!? ん? 確認している限りではってどう言う事?」

 俺は意外とって話ではなく迷宮が多過ぎる事に驚愕し、父の言葉に引っ掛かりを覚える。

「良いところに気が付くな~リオ! 実はな、アローゼンの迷宮ってまだ全部かどうか分からないんだよ。

「えっ? 分かっていないの?」

「おう! 元々はアローゼンも保持数が8箇所で他国よりも多いが、"まぁ迷宮王国だし?"って事で納得されていたんだ。」

「うん、うん」

「でも、100年くらい前から新たな迷宮が4箇所出現したり元々保持していた迷宮の内6箇所に隠し迷宮が発見されたりしてなぁ。後の2箇所にも隠し迷宮があるんじゃないかって言われているんだよ」

 父はオレの頭を撫でながら説明の続きを言う。途中迷宮が多過ぎる理由を説明するときは肩をすくめて言った。

「へぇーそんなんだ~。じゃあ、王都イシュテリアには何箇所くらい迷宮があるの?」

「元々保持していた4箇所と新たに発見された隠し迷宮3箇所の7箇所だよ。その為に多くの人がイシュテリアで店を構えるから此処は常に活気があるんだ」

 父は自慢げな表情で説明する。

「ふ~ん……分かった。それじゃあ、次は冒険者について教えて!」

「任せてちょうだい! 冒険者は、まず冒険者ギルドに所属する必要があるの。そこでギルドカードを作成し初めて冒険者の仕事が出来るわ」

「おおっ! 冒険者ギルド! ギルドカード!」

「うふふ、ええ、ギルドでは依頼された内容に応じた依頼金から税金やギルド運営費が引かれた額が手持ちに入るのよ。依頼は様々で探し物から庭の手入れ、護衛、迷宮魔物の素材や魔石の納品などがあるわ」

 今度は胸を張った母が俺に冒険者について教えてくれた。

「へぇー色々あるんだねー。依頼金は全額貰えないの?」

「ええ、そうよ。アタシたち冒険者はギルドに所属すると流民扱いになるから極論を言えば国に税金を払わなくても良いし、戦争の時には兵士になる事は無いわ」

「そうなんだ……でも、話の流れからするとそれだとダメなんだよね?」

「その通りよ。それで、税金を納めないと国の保証が受けられなくなっちゃうのよ。そうなると国が所有している迷宮も使用禁止になっちゃうわ」

「税金ってとても大切なんだね」

「そうよ。それで、アタシらって急に依頼で他国に長期間住む事や用事で引っ越しする事が割と良くあるわ。リオも分かるでしょ?」

「うん、俺達の引っ越しのことでしょ?」

「そうよ。それで、冒険者自身が国に納税すると各国で納税義務が発生する事もあって最悪、脱税扱いになり犯罪者になった時代もあったそうよ」

「うへ~めんどくせー」

 俺は納税の面倒さに顔を顰めた。

「そうなのよ。そうなると国もギルドもアタシら冒険者もお互いに良く無いから依頼金を渡す前に税金とアタシらの納税を管理する為のギルド運営費が差し引かれるのよ」

 母も同意する様に頷き説明を続ける。

「でも、冒険者一人一人の情報を管理して各ギルドに共有するのって普通に無理だ思うだけど、その辺りはどうなってんの?」

「アタシも詳しくは分からないわ。でも、ギルドカードに今までの依頼内容をリレキ?情報として読み込ませて各ギルドに共有する魔道具があるわ」

 俺は母の言葉にある確信を得て内心呟いた。

「(履歴情報って……それ作った人、絶対転生者か転移者の類だよ。便利でありがたい事だけどさ……時代と言うか世界観に合っていない性能だよ、それ)」

 そんな俺を他所に母は思い出しながら話を続けた。

「名前は"パーソナルボックス"って言ってね。ギルドカードと連動して使える不滅神の魔道具なのよ。ギルドカードも"不滅と炉心の神ヘスティルト様"が製造方法や術式を残したそうよ。」

「えっ? 神様が作ったの?」

「そうよ。でも、多くの魔工技師達がそれを元に技術発展をしようとしたけど内容が一つも理解出来ず、実験を行うがその全てが動作せずに終わったらしいわ」

「お、おう……ありがとう……母ちゃん。よく分かったよ」

 俺は確信を得たとか言った割に普通に間違えた事でとても恥ずかしくなり顔を"カァッ"っと赤くし俯いきながら、説明してくれた両親に感謝を述べた。

「それなら良かった! だが、元気が無くてどうした? 疲れたか? もうすぐ着くから頑張ろうな」

「大丈夫だよ。父ちゃん、母ちゃん。なんかさ、そのパーソナルボックスを作った人凄いなーって事を考えていたら神様だったから、なんか……こう……間違えて恥ずかしく思っただけだよ」

 俺は心配してくれた両親の顔を見て嘘はつかないと思い照れながら心情を述べだ。

「うふふ! そう言う日もあるわよ。あっ! リオ見えてきたわ! あそこよ!」

 母は口元に手を当て笑いながら俺を励ますと、ふと顔上げて祖母の店を指差した。店は売り場と生産場所ががある立派な建物だった。

 現在、俺は家から徒歩で20分くらいの距離を歩いて祖母の店に到着した。その店の裏に行くと一軒家があった。そこが祖父母の自宅である。俺は話に聞いた祖父母に会える事を楽しみに思い自然と口元が笑った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

無能烙印押された貧乏準男爵家三男は、『握手スキル』で成り上がる!~外れスキル?握手スキルこそ、最強のスキルなんです!

飼猫タマ
ファンタジー
貧乏準男爵家の三男トト・カスタネット(妾の子)は、13歳の誕生日に貴族では有り得ない『握手』スキルという、握手すると人の名前が解るだけの、全く使えないスキルを女神様から授かる。 貴族は、攻撃的なスキルを授かるものという頭が固い厳格な父親からは、それ以来、実の息子とは扱われず、自分の本当の母親ではない本妻からは、嫌がらせの井戸掘りばかりさせられる毎日。 だが、しかし、『握手』スキルには、有り得ない秘密があったのだ。 なんと、ただ、人と握手するだけで、付随スキルが無限にゲットできちゃう。 その付随スキルにより、今までトト・カスタネットの事を、無能と見下してた奴らを無意識下にザマーしまくる痛快物語。

前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!

yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。 だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。  創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。  そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。 塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。 弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。 けれども違ったのだ。 この世の中、強い奴ほど才能がなかった。 これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。 見抜いて、育てる。 育てて、恩を売って、いい暮らしをする。 誰もが知らない才能を見抜け。 そしてこの世界を生き残れ。 なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。 更新不定期

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

処理中です...