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森の魔女
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アランは覚醒魔法の項目を検索してページを開くと、グルナイユの額に手をたてた。するとまた魔法陣が展開し効果を発生させた。グルナイユの目がゆっくりと開く。
「おおっ! ヤモリが目を覚ましたぞ」
そうきたか、とヴァンは心の中で思った。
「貴様の目は節穴か!」
サクラの膝に抱かれたままの姿勢で目をカッと見開いてグルナイユが叫ぶ。
「あ? ヤモリじゃねーのかよ?」
「貴様には緑宝石のように輝くこの美しい肌が見えんのか!?」
「皮膚の色でいうならやっぱりカエルじゃねーか」
「カエルではないわ!」
怒りにままに炎がグルナイユを包む。
「ちょっ、グルちゃん熱い……」
グルナイユはハッとして炎を引っ込める。
「もももっももも申し訳ない!」
「おっ! 恩人を傷つけるとはカエルの風上にもおけないやつだな!」
ぐぬぅっとグルナイユが唸る。ハナは二人のやりとりを見て苦笑した。
「兄さん! グルちゃんをイジメないで!」
「へいへい。ま、冗談はさておき次はこっちだな」
アランが大虎に歩み寄る。
「アラン? どうするの?」
ハナが心配そうに尋ねる。
「そこのカエルと一緒さ。いいだろ? ヴァン?」
「うん。頼むよ」
ハナが襲ってきたらどうするのかと不安そうな顔をしている。
「ハナ、大丈夫。もう襲ってこないはずだよ」
「そういうこと。ほおっておいて死なれても目覚め悪いだろ」
アランはそう言うとグルナイユにしたように大虎の額に手をかざした。大虎は目覚めると、勢いよく飛び退いた。しばらく低い姿勢でアランを見つめていたが、やがて踵を返し走り去っていった。
「達者でなー」
アランはそう言ってヒラヒラと手を振った。
「本当に襲ってこなかったね。でもどうして?」
「野生の生き物は基本的に格上の相手だとわかったら襲わないんだよ。知能が高いなら尚更ね」
ハナは納得したようだった。さておきヴァンはまた次の行動を決めなくてはならなかった。ここまで行き当たりばったりで来てしまったことを少なからず反省していた。だが今更後悔しても仕方なく、改めて仕切り直すほかない。というわけで、
「さて、休憩にしよう。サクラお茶淹れてくれる?」
「うん」
サクラはザックから携帯コンロとケトルを取り出してお湯を沸かし始めた。ハナはサクラを手伝い、グルナイユは携帯コンロが珍しいのかジーッと見つめていた。ヴァンとアランは図書館と思われる建物を観察することにした。
「入り口はここだけみたいだね」
頑丈そうな木造の扉の前でヴァンが言う。一見なんの変哲もない扉だが、
「こりゃダメだな」
レンズで扉を見たアランが言う。
「やっぱり?」
ヴァンも予想はしていた。もしもこの建物に価値あるものが貯蔵されているならば、何の防犯もされていないわけがなかった。盗難を防ぐための何らかの方法がとられていることは当然だと思われた。
「ああ、しかも金色だ。Sクラスの魔法がかけられてやがる。これは誰にも解けんぜ」
これにはヴァンも驚く。さすがにそれほどの魔法がかけられているとは思わなかった。レンズをアランから借りて見てみると、扉は神々しい程の光を放っていた。
「凄いな……まっ金々だね。これは触れるのもよした方が良さそうだ」
まっ金々という言葉があるのかわからなかったが、触らない方が良いというのにはアランも同意だった。
「ま、良いんじゃね? 今回はトレジャーハントが目的じゃないんだからな」
「おおっ! ヤモリが目を覚ましたぞ」
そうきたか、とヴァンは心の中で思った。
「貴様の目は節穴か!」
サクラの膝に抱かれたままの姿勢で目をカッと見開いてグルナイユが叫ぶ。
「あ? ヤモリじゃねーのかよ?」
「貴様には緑宝石のように輝くこの美しい肌が見えんのか!?」
「皮膚の色でいうならやっぱりカエルじゃねーか」
「カエルではないわ!」
怒りにままに炎がグルナイユを包む。
「ちょっ、グルちゃん熱い……」
グルナイユはハッとして炎を引っ込める。
「もももっももも申し訳ない!」
「おっ! 恩人を傷つけるとはカエルの風上にもおけないやつだな!」
ぐぬぅっとグルナイユが唸る。ハナは二人のやりとりを見て苦笑した。
「兄さん! グルちゃんをイジメないで!」
「へいへい。ま、冗談はさておき次はこっちだな」
アランが大虎に歩み寄る。
「アラン? どうするの?」
ハナが心配そうに尋ねる。
「そこのカエルと一緒さ。いいだろ? ヴァン?」
「うん。頼むよ」
ハナが襲ってきたらどうするのかと不安そうな顔をしている。
「ハナ、大丈夫。もう襲ってこないはずだよ」
「そういうこと。ほおっておいて死なれても目覚め悪いだろ」
アランはそう言うとグルナイユにしたように大虎の額に手をかざした。大虎は目覚めると、勢いよく飛び退いた。しばらく低い姿勢でアランを見つめていたが、やがて踵を返し走り去っていった。
「達者でなー」
アランはそう言ってヒラヒラと手を振った。
「本当に襲ってこなかったね。でもどうして?」
「野生の生き物は基本的に格上の相手だとわかったら襲わないんだよ。知能が高いなら尚更ね」
ハナは納得したようだった。さておきヴァンはまた次の行動を決めなくてはならなかった。ここまで行き当たりばったりで来てしまったことを少なからず反省していた。だが今更後悔しても仕方なく、改めて仕切り直すほかない。というわけで、
「さて、休憩にしよう。サクラお茶淹れてくれる?」
「うん」
サクラはザックから携帯コンロとケトルを取り出してお湯を沸かし始めた。ハナはサクラを手伝い、グルナイユは携帯コンロが珍しいのかジーッと見つめていた。ヴァンとアランは図書館と思われる建物を観察することにした。
「入り口はここだけみたいだね」
頑丈そうな木造の扉の前でヴァンが言う。一見なんの変哲もない扉だが、
「こりゃダメだな」
レンズで扉を見たアランが言う。
「やっぱり?」
ヴァンも予想はしていた。もしもこの建物に価値あるものが貯蔵されているならば、何の防犯もされていないわけがなかった。盗難を防ぐための何らかの方法がとられていることは当然だと思われた。
「ああ、しかも金色だ。Sクラスの魔法がかけられてやがる。これは誰にも解けんぜ」
これにはヴァンも驚く。さすがにそれほどの魔法がかけられているとは思わなかった。レンズをアランから借りて見てみると、扉は神々しい程の光を放っていた。
「凄いな……まっ金々だね。これは触れるのもよした方が良さそうだ」
まっ金々という言葉があるのかわからなかったが、触らない方が良いというのにはアランも同意だった。
「ま、良いんじゃね? 今回はトレジャーハントが目的じゃないんだからな」
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