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六部 最終決戦編
それぞれの道
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邪教集団と戦い、始祖竜の戦いを見届けた若者達。それぞれが本来いるべき場所へと帰り、日常へと戻っていった。
水竜王の末裔にして、魔道技師の瑚蝶。ドリーナの町へと帰り、仕事に没頭する日々。
「なるほどね。医療面は疎いから、とても助かるわ」
「いや、こちらこそ助かる。陽霜殿から話を聞いたときは驚いたが、確かにこの技術はすごい」
医療用の魔道器具を作る。双子の天竜王から受けた仕事は、彼女にとってやりがいのあるものだった。
誰もやったことがない技術。先祖ですら手を出して諦めたのだと、文献を調べていて知った。
だからこそ彼女は成功させたい。先祖すら越えてみせるため。誰よりも腕のいい魔道技師となるために。
そのために、医療を知ることから始めた。そうでなければ、最適な魔道器具は作れない。
「この器具があれば、医療はさらに発展する。あの双子には敵わないな」
試作を見ながら青年は笑った。このようなことを考えるとは、思ってもみなかったのだ。
医療用魔道器具の協力をしていたのは、天使族の長でもある莱輝。
真面目な性格もあり、誰かに頼めばいいものを王からの頼みだからと、自ら足を運んでいた。
「ちなみに、魔力制御の魔道器具はないのかな?」
「莱緋のことね」
未だに魔法の扱いが苦手な妹に、兄は苦笑いを浮かべる。
「ないわよ。そういったのは私じゃなくて、琅悸の専門ね。それにあの子の場合、身体で覚えるしかないわよ」
あれだけの力、魔具で制御できるような力ではないと、瑚蝶は言う。
「連れてくれば、見てあげるけど」
「あ―、頼もうかな」
いつまでもあれでは困る、と莱輝は頼む。目の前にいる女性は、魔法の腕は天才的だ。彼女に任せれば、必ず叩き直してくれるだろう。
「あのまま、王に嫁がせるわけにはいかないし」
「あら、認めたの」
認めるしかない、と力なく笑う青年。あれだけ必死になる妹を見て、妹を護る星霜を見て、反対などできない。
たとえどのような噂がある人物であれ、彼は紛れもなく天竜王。相手としては悪くないだろう。
「じゃあ、嫁ぐまでに完璧にさせないといけないわね」
クスリと笑いながら瑚蝶は再び作業へ戻る。
医療器具を作り上げ、魔道技師という職業を広げるのは目前まで来ていた。
のちに、天使族と協力して数々の魔道器具を作り上げる瑚蝶。その生涯をすべて魔道技師という職業に費やす。
風竜王の末裔にして、教師をしていた蒼翔。街へ帰るなり、辞めると一騒動起こしたのは言うまでもない。
「なんでだめなのさぁ!」
「街長でもあるあなたがいなくなったら、どうするのですか?」
学校の校長という立場であり、街長という立場。ただの教師ならいいが、簡単に捨てられる立場ではなかった。
神具が絡むからこそ、旅が許してもらえたのだ。
「やだやだやだ! 僕、虚空のとこ行くんだから!」
「駄々をこねないでください」
とにかく周りを困らせ続けていたのだが、そこはさすがというべきだろう。
彼女がやらかすだろう騒動を想定し、虚空が動いていた。
「と、いうわけです。いかがでしょうか?」
魔竜族の長を補佐する楓斗が訪ね、学校の経営から街の管理まで行うと提案。
教師はさすがに様子見とされたが、彼女よりいいと思ったのだろう。学校側も街側もこの提案を受け入れた。
楓斗はあくまでも、後継者探しが目的である。完全に移動はしない。彼は長の補佐として手放せない存在だからだ。
一時的とはいえ回す決断をしたのは、琅悸の手助けを得たから。
「まったく。琅悸さんが了承しなかったら、どうなっていたことやら」
「まぁまぁ。いいじゃん!」
無事に話が決まり、蒼翔の機嫌は上々だ。
これが彼女のいいところではあるのだが、厄介なところでもある。
長の傍で見てきた楓斗は、虚空と同じように理解していた。
(虚空には、いい相手かもしれませんね)
だからこそ、長年傍で見てきた長との関係を考えれば、悪くないのかもしれないと思う。
虚空は頑固な一面があるのだが、彼女にたいしては少し変わる。蒼翔も彼にたいしては違う反応を見せる。
一緒にいることでいい効果になるはずだと、楓斗は思っていた。
「初恋が実ってよかったですね」
「うん!」
彼女が好きな相手の役に立ちたくて必死だった姿を見ていただけに、自分のことのように嬉しい。
「楓斗もさぁ、こそこそ付き合うのやめたらぁ」
「なっ……」
祝福の気持ちが一気に消えた瞬間だった。なぜ、彼女が知っているのかという気持ちと、余計なお世話だ、と思う気持ちで絶句する。
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水竜王の末裔にして、魔道技師の瑚蝶。ドリーナの町へと帰り、仕事に没頭する日々。
「なるほどね。医療面は疎いから、とても助かるわ」
「いや、こちらこそ助かる。陽霜殿から話を聞いたときは驚いたが、確かにこの技術はすごい」
医療用の魔道器具を作る。双子の天竜王から受けた仕事は、彼女にとってやりがいのあるものだった。
誰もやったことがない技術。先祖ですら手を出して諦めたのだと、文献を調べていて知った。
だからこそ彼女は成功させたい。先祖すら越えてみせるため。誰よりも腕のいい魔道技師となるために。
そのために、医療を知ることから始めた。そうでなければ、最適な魔道器具は作れない。
「この器具があれば、医療はさらに発展する。あの双子には敵わないな」
試作を見ながら青年は笑った。このようなことを考えるとは、思ってもみなかったのだ。
医療用魔道器具の協力をしていたのは、天使族の長でもある莱輝。
真面目な性格もあり、誰かに頼めばいいものを王からの頼みだからと、自ら足を運んでいた。
「ちなみに、魔力制御の魔道器具はないのかな?」
「莱緋のことね」
未だに魔法の扱いが苦手な妹に、兄は苦笑いを浮かべる。
「ないわよ。そういったのは私じゃなくて、琅悸の専門ね。それにあの子の場合、身体で覚えるしかないわよ」
あれだけの力、魔具で制御できるような力ではないと、瑚蝶は言う。
「連れてくれば、見てあげるけど」
「あ―、頼もうかな」
いつまでもあれでは困る、と莱輝は頼む。目の前にいる女性は、魔法の腕は天才的だ。彼女に任せれば、必ず叩き直してくれるだろう。
「あのまま、王に嫁がせるわけにはいかないし」
「あら、認めたの」
認めるしかない、と力なく笑う青年。あれだけ必死になる妹を見て、妹を護る星霜を見て、反対などできない。
たとえどのような噂がある人物であれ、彼は紛れもなく天竜王。相手としては悪くないだろう。
「じゃあ、嫁ぐまでに完璧にさせないといけないわね」
クスリと笑いながら瑚蝶は再び作業へ戻る。
医療器具を作り上げ、魔道技師という職業を広げるのは目前まで来ていた。
のちに、天使族と協力して数々の魔道器具を作り上げる瑚蝶。その生涯をすべて魔道技師という職業に費やす。
風竜王の末裔にして、教師をしていた蒼翔。街へ帰るなり、辞めると一騒動起こしたのは言うまでもない。
「なんでだめなのさぁ!」
「街長でもあるあなたがいなくなったら、どうするのですか?」
学校の校長という立場であり、街長という立場。ただの教師ならいいが、簡単に捨てられる立場ではなかった。
神具が絡むからこそ、旅が許してもらえたのだ。
「やだやだやだ! 僕、虚空のとこ行くんだから!」
「駄々をこねないでください」
とにかく周りを困らせ続けていたのだが、そこはさすがというべきだろう。
彼女がやらかすだろう騒動を想定し、虚空が動いていた。
「と、いうわけです。いかがでしょうか?」
魔竜族の長を補佐する楓斗が訪ね、学校の経営から街の管理まで行うと提案。
教師はさすがに様子見とされたが、彼女よりいいと思ったのだろう。学校側も街側もこの提案を受け入れた。
楓斗はあくまでも、後継者探しが目的である。完全に移動はしない。彼は長の補佐として手放せない存在だからだ。
一時的とはいえ回す決断をしたのは、琅悸の手助けを得たから。
「まったく。琅悸さんが了承しなかったら、どうなっていたことやら」
「まぁまぁ。いいじゃん!」
無事に話が決まり、蒼翔の機嫌は上々だ。
これが彼女のいいところではあるのだが、厄介なところでもある。
長の傍で見てきた楓斗は、虚空と同じように理解していた。
(虚空には、いい相手かもしれませんね)
だからこそ、長年傍で見てきた長との関係を考えれば、悪くないのかもしれないと思う。
虚空は頑固な一面があるのだが、彼女にたいしては少し変わる。蒼翔も彼にたいしては違う反応を見せる。
一緒にいることでいい効果になるはずだと、楓斗は思っていた。
「初恋が実ってよかったですね」
「うん!」
彼女が好きな相手の役に立ちたくて必死だった姿を見ていただけに、自分のことのように嬉しい。
「楓斗もさぁ、こそこそ付き合うのやめたらぁ」
「なっ……」
祝福の気持ちが一気に消えた瞬間だった。なぜ、彼女が知っているのかという気持ちと、余計なお世話だ、と思う気持ちで絶句する。
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