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六部 最終決戦編
神竜の神殿3
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「見えてきた。俺達はあそこから中へ入る」
偵察を終えた黒欧と琅悸が戻るなり、報告と同時に方針を決めた。正面からではなく、左右の小さな入り口から中へ入ろうと全員で決めたのだ。
そのため戦力は二分してしまったが、飛狛、夜秋、秋星が全面的に力を貸すと言った為、この方法へ踏み切れたのだ。
三人を戦力として加算していいとなれば、分散しても問題ないだろう。なにせ、過去の魔法槍士と補佐官なのだから、これほど心強い戦力はない。
「飛狛さん、中には詳しいですか?」
こちらのメンバーは柊稀をはじめ、朱華、黒耀、華朱、柏羅、陽霜、瑚蝶、飛狛。
天竜王に過去と現在の魔法槍士がいるといった、頼もしいメンバーとなっている。
「いや、詳しくないね。あの双子の方が知ってるよ」
過去でここを見ていたのは、双子なのだと飛狛は言う。特に問題がある場所ではなかったことから、飛狛は踏み込んでいない。
世界統合の時代でもあった為、余裕がなかったということもある。
軽く聞いた程度の間取りしか知らない飛狛。黒耀も就任してから一度も来たことはない。来られなかったと言うべきなのだが、言わなくても全員わかっている。
だが、ここには一人いた。神竜の神殿に詳しい者が。
「私が知っています。ここは、私がいた場所ですから」
始祖竜である柏羅だ。神竜の神殿ということは、つまり始祖竜のものでもあったということ。
今の彼女には神竜の神殿に限らず、すべてがわかる。どこになにがあるのかが。
「少し入り組んでいますが、基本的に一本道です。こちらから入ると正面広場へでます」
「ちなみに、夜秋達の方は?」
合流する先を探すように飛狛は問いかける。二手に分かれたのはいいが、どこで合流するかが問題だったのだ。
「あちらは階段を上り二階へ行く道ですが、中庭で合流できます。私達は、正面広場から中庭へ出られます」
これなら問題ないと、一同視線を合わせ頷く。奥へ行くには、中庭を通るのが必須だとわかったからだ。
これなら合流は簡単だ。なによりも、造りが巫女殿と同じだと二人の魔法槍士は気付いた。
琅悸と氷穂もすぐに気付くはず。迷わず中庭まで来るだろう。
一本道だとわかっていても、警戒は怠るべきではない。一本道だからこそだ。待ち伏せの可能性は十分ある。十分すぎるほどに。
確実に敵が襲ってくることだろう。
緊張感漂う中、薄暗い道を歩き続けた。
「主殿、この先に敵がいる」
すると、魔道生物の特権であろう。奥底から偵察をしてくれたようで、李蒼から声がかかった。
「数は?」
「二十だな」
問題ないだろと李蒼が言うから、柊稀は苦笑いを浮かべる。どうやら少しの間で、全員の能力を把握したようだ。
華朱が頼りにするだけあり、有能な魔道生物なのだろう。
「俺行こうか? 準備運動ぐらいにはなるだろうし」
にっこり笑う飛狛が一番の有能で、頼りになる仲間だと、この瞬間全員が思った。
準備運動と言うなんて、さすがに思いもしない。いや、彼なら準備運動にもならないかもしれない。
柊稀は琅悸との出会いを思いだし、そう思った。彼は軽々と倒していたのだから、飛狛にも同じだろうと。
そして、予想通りというべき結末で待ち伏せは倒されたのだ。
「飛狛殿、足りた?」
どことなく物足りなさを感じている気がした陽霜が問いかければ、少しばかり考え込む素振りを見せる。
「そうだなぁ……」
これだけで足りていないのがわかるから、苦笑いを浮かべる柊稀。
(頼もしいけど、この人を満足させるのは大変そうだ)
どれだけの数、もしくは強さが必要なのかと思う。準備運動のレベルなら、自分でも無理かもしれない。それだけの力量差があるという自覚があった。
「安心しろ。まだ先に遊び相手はいる」
ここには、彼を理解する者がいる。彼がこれぐらいじゃ満足しないと、誰よりも理解していた李蒼。
「さすが李蒼。探っておいてくれたんだ。じゃあ、全部教えて」
どことなく嬉しそうに言うから、黒燿が呆れたように見ている。
――残念ながら、飛狛殿はこういう方です――
こちらも、誰よりも彼を理解しているといえる黒欧。飛狛の性格を理解しているからこそ、どことなく開き直っている。
「うん、結構いい数いるね。とりあえず、全部やっちゃおうかな」
聞き出した飛狛があっさりと言えば、今度こそ全員絶句したのは言うまでもなかった。
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偵察を終えた黒欧と琅悸が戻るなり、報告と同時に方針を決めた。正面からではなく、左右の小さな入り口から中へ入ろうと全員で決めたのだ。
そのため戦力は二分してしまったが、飛狛、夜秋、秋星が全面的に力を貸すと言った為、この方法へ踏み切れたのだ。
三人を戦力として加算していいとなれば、分散しても問題ないだろう。なにせ、過去の魔法槍士と補佐官なのだから、これほど心強い戦力はない。
「飛狛さん、中には詳しいですか?」
こちらのメンバーは柊稀をはじめ、朱華、黒耀、華朱、柏羅、陽霜、瑚蝶、飛狛。
天竜王に過去と現在の魔法槍士がいるといった、頼もしいメンバーとなっている。
「いや、詳しくないね。あの双子の方が知ってるよ」
過去でここを見ていたのは、双子なのだと飛狛は言う。特に問題がある場所ではなかったことから、飛狛は踏み込んでいない。
世界統合の時代でもあった為、余裕がなかったということもある。
軽く聞いた程度の間取りしか知らない飛狛。黒耀も就任してから一度も来たことはない。来られなかったと言うべきなのだが、言わなくても全員わかっている。
だが、ここには一人いた。神竜の神殿に詳しい者が。
「私が知っています。ここは、私がいた場所ですから」
始祖竜である柏羅だ。神竜の神殿ということは、つまり始祖竜のものでもあったということ。
今の彼女には神竜の神殿に限らず、すべてがわかる。どこになにがあるのかが。
「少し入り組んでいますが、基本的に一本道です。こちらから入ると正面広場へでます」
「ちなみに、夜秋達の方は?」
合流する先を探すように飛狛は問いかける。二手に分かれたのはいいが、どこで合流するかが問題だったのだ。
「あちらは階段を上り二階へ行く道ですが、中庭で合流できます。私達は、正面広場から中庭へ出られます」
これなら問題ないと、一同視線を合わせ頷く。奥へ行くには、中庭を通るのが必須だとわかったからだ。
これなら合流は簡単だ。なによりも、造りが巫女殿と同じだと二人の魔法槍士は気付いた。
琅悸と氷穂もすぐに気付くはず。迷わず中庭まで来るだろう。
一本道だとわかっていても、警戒は怠るべきではない。一本道だからこそだ。待ち伏せの可能性は十分ある。十分すぎるほどに。
確実に敵が襲ってくることだろう。
緊張感漂う中、薄暗い道を歩き続けた。
「主殿、この先に敵がいる」
すると、魔道生物の特権であろう。奥底から偵察をしてくれたようで、李蒼から声がかかった。
「数は?」
「二十だな」
問題ないだろと李蒼が言うから、柊稀は苦笑いを浮かべる。どうやら少しの間で、全員の能力を把握したようだ。
華朱が頼りにするだけあり、有能な魔道生物なのだろう。
「俺行こうか? 準備運動ぐらいにはなるだろうし」
にっこり笑う飛狛が一番の有能で、頼りになる仲間だと、この瞬間全員が思った。
準備運動と言うなんて、さすがに思いもしない。いや、彼なら準備運動にもならないかもしれない。
柊稀は琅悸との出会いを思いだし、そう思った。彼は軽々と倒していたのだから、飛狛にも同じだろうと。
そして、予想通りというべき結末で待ち伏せは倒されたのだ。
「飛狛殿、足りた?」
どことなく物足りなさを感じている気がした陽霜が問いかければ、少しばかり考え込む素振りを見せる。
「そうだなぁ……」
これだけで足りていないのがわかるから、苦笑いを浮かべる柊稀。
(頼もしいけど、この人を満足させるのは大変そうだ)
どれだけの数、もしくは強さが必要なのかと思う。準備運動のレベルなら、自分でも無理かもしれない。それだけの力量差があるという自覚があった。
「安心しろ。まだ先に遊び相手はいる」
ここには、彼を理解する者がいる。彼がこれぐらいじゃ満足しないと、誰よりも理解していた李蒼。
「さすが李蒼。探っておいてくれたんだ。じゃあ、全部教えて」
どことなく嬉しそうに言うから、黒燿が呆れたように見ている。
――残念ながら、飛狛殿はこういう方です――
こちらも、誰よりも彼を理解しているといえる黒欧。飛狛の性格を理解しているからこそ、どことなく開き直っている。
「うん、結構いい数いるね。とりあえず、全部やっちゃおうかな」
聞き出した飛狛があっさりと言えば、今度こそ全員絶句したのは言うまでもなかった。
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