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六部 最終決戦編
神竜の神殿
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神竜の神殿と呼ばれる場所は、中央の大地ベル・ロードと西の大地エルゼートの間にある。
小島は七割を森に囲まれ、集落は三ヶ所。ベル・ロード側とエルゼート側、それに森と森の間。
一同はエルゼート側から小島に入り、森を北へ進み、神殿目前で夜営していた。
ただ夜営をしていたのではなく、偵察も兼ねてのこと。作戦を立てるためにも必要だと琅悸が言ったのだ。
偵察には一度だけ黒燿が行っていたが、結局結界に阻まれてしまった。それをどうにかしたのは、全面協力を申し出た過去から来た三人のお陰。
「飛狛、邪魔なのであれをどうにかしてください」
「え、俺なの?」
夜秋でもできるだろうと視線が言えば、なぜ自分がやるのかと返ってくる。
「あー……うん、俺がやるよ」
謎の圧に負けた飛狛が言えば、当然というように笑みを浮かべた。
「黒い笑みが出てるぞ」
「そのようなもの、出てませんよ」
「いや、出てる」
笑みが怖いと秋星が言えば、夜秋が変わらない笑みを浮かべたまま圧をかける。残念ながら、秋星にはその圧が効果を発しない。
「壊したけど……誰が行くんだい」
双子のやり取りを呆れながら見ている飛狛に、柊稀達もいつの間に結界を破ったのかと見る。
「うん、あれぐらいなら簡単だよね。仕組みさえ視れれば、琅悸の剣でもいけたと思うよ。その剣は、色々斬れるからね」
「じゃあ、琅悸に頼めばよかったな」
二ヤリと笑いながら秋星が言えば、引きつった表情で琅悸が見た。
「俺が行こう。華朱、李蒼を借りてもいいだろうか」
彼女は冷静で観察力もあることから、借りたいと言われれば、華朱は頷く。
「俺も同行する。偵察のついでに、俺に今までの情報をくれ」
琅悸は離れていた期間があるだけに、この中で一番情報を持っていない。なにかあった際に困ると、考えていたところだ。
「じゃあ、残りはここで待機かな」
穏やかな笑みを浮かべながら飛狛が言えば、野営の準備だと動き出す。
それらを見ながら、二人は偵察へと向かったのだ。そして、思い思いに過ごす仲間達は、旅の終わりを感じていた。
動くと決めたからか、飛狛は積極的に動いていた。偵察とは別に動く姿に、柊稀はどうするべきなのかと悩む。
「ほっといていいぜ。どうせ、俺らじゃ理解できねぇのを視に行くんだろうからさ」
のんびりと座っている秋星に、他の仲間達も納得したように座る。
双子はついていかないとなれば、本当に彼しかわからないことなのだろうし、ついていったところで役立たない。
また、琅悸と対等に戦えることから、戦力という面でも不安などなかった。
「夜もゆっくり寝てていいぜ。どうせ、飛狛が起きてるだろうからな」
「いや、それはさすがに」
虚空が任せきりにするのは、と慌てるが、夜秋も構わないと言う。
「どうせ、あれを使いますから。飛狛が野営のときに必ず使うものがあるんですよ」
魔法槍士は狙われることもあるため、野営の際の自衛は絶対だと言われれば、そうかもしれないと思う柊稀。
夜秋と秋星は基本的に二人で動いていたが、飛狛はそうではない。野営することもあるかもしれないし、その対策を考えていないわけがないのだ。
「まぁ、寝ろと言っても琅悸や黒燿辺りは無理そうだけどな」
のんびりとしている秋星は、言葉と行動はまるで違う。彼も間違いなく、寝ることはないだろうと思えたのだ。
そこまで頼りきっていいのだろうかと思うが、柊稀の考えなどお見通しだ。
「僕達のことは気にしなくていいですよ。ただの職業病ですから。黒耀も同じですね。けど、他は違うでしょう」
野営で警戒しなくてはいけない。そのような生活を送ってきたわけではないのだ。
だから、しっかりと寝た方がいいと言われてしまえば、それが女性陣を気にしてのことだとわかり頷く。自分達が遠慮してしまえば、彼女達も遠慮してしまう。
「任せていいって言ってんだ。任せちまおうぜ」
「せ、星霜様…」
オドオドと見ている莱緋に、問題ないと笑いかけるのは秋星だ。
「そんなことよりよ、陽霜どこいった?」
「え……」
気付いたら見当たらなかったと言われれば、全員がそういえばと周囲を見る。
「おー、問題ねぇよ。ちょっと離れたところにいるみたいだけど」
「一人になりたいときもあるでしょ。これだけの人数で動いてますからね」
違うとわかりつつも、双子がそう言えば星霜もいいかと頷く。
「一人でバカなことしなきゃ、なんでもいいぜ」
一人で動くことはないと思うが、ありえるのが半身だったが、秋星と夜秋が居場所を把握している。それなら安心だ。
(それにしても、恐ろしい能力だな)
自分では半身がどこにいるのかわからない。けれど、この双子はどこにいるのかわかっている。能力の違いに畏怖すら覚えた瞬間だった。
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小島は七割を森に囲まれ、集落は三ヶ所。ベル・ロード側とエルゼート側、それに森と森の間。
一同はエルゼート側から小島に入り、森を北へ進み、神殿目前で夜営していた。
ただ夜営をしていたのではなく、偵察も兼ねてのこと。作戦を立てるためにも必要だと琅悸が言ったのだ。
偵察には一度だけ黒燿が行っていたが、結局結界に阻まれてしまった。それをどうにかしたのは、全面協力を申し出た過去から来た三人のお陰。
「飛狛、邪魔なのであれをどうにかしてください」
「え、俺なの?」
夜秋でもできるだろうと視線が言えば、なぜ自分がやるのかと返ってくる。
「あー……うん、俺がやるよ」
謎の圧に負けた飛狛が言えば、当然というように笑みを浮かべた。
「黒い笑みが出てるぞ」
「そのようなもの、出てませんよ」
「いや、出てる」
笑みが怖いと秋星が言えば、夜秋が変わらない笑みを浮かべたまま圧をかける。残念ながら、秋星にはその圧が効果を発しない。
「壊したけど……誰が行くんだい」
双子のやり取りを呆れながら見ている飛狛に、柊稀達もいつの間に結界を破ったのかと見る。
「うん、あれぐらいなら簡単だよね。仕組みさえ視れれば、琅悸の剣でもいけたと思うよ。その剣は、色々斬れるからね」
「じゃあ、琅悸に頼めばよかったな」
二ヤリと笑いながら秋星が言えば、引きつった表情で琅悸が見た。
「俺が行こう。華朱、李蒼を借りてもいいだろうか」
彼女は冷静で観察力もあることから、借りたいと言われれば、華朱は頷く。
「俺も同行する。偵察のついでに、俺に今までの情報をくれ」
琅悸は離れていた期間があるだけに、この中で一番情報を持っていない。なにかあった際に困ると、考えていたところだ。
「じゃあ、残りはここで待機かな」
穏やかな笑みを浮かべながら飛狛が言えば、野営の準備だと動き出す。
それらを見ながら、二人は偵察へと向かったのだ。そして、思い思いに過ごす仲間達は、旅の終わりを感じていた。
動くと決めたからか、飛狛は積極的に動いていた。偵察とは別に動く姿に、柊稀はどうするべきなのかと悩む。
「ほっといていいぜ。どうせ、俺らじゃ理解できねぇのを視に行くんだろうからさ」
のんびりと座っている秋星に、他の仲間達も納得したように座る。
双子はついていかないとなれば、本当に彼しかわからないことなのだろうし、ついていったところで役立たない。
また、琅悸と対等に戦えることから、戦力という面でも不安などなかった。
「夜もゆっくり寝てていいぜ。どうせ、飛狛が起きてるだろうからな」
「いや、それはさすがに」
虚空が任せきりにするのは、と慌てるが、夜秋も構わないと言う。
「どうせ、あれを使いますから。飛狛が野営のときに必ず使うものがあるんですよ」
魔法槍士は狙われることもあるため、野営の際の自衛は絶対だと言われれば、そうかもしれないと思う柊稀。
夜秋と秋星は基本的に二人で動いていたが、飛狛はそうではない。野営することもあるかもしれないし、その対策を考えていないわけがないのだ。
「まぁ、寝ろと言っても琅悸や黒燿辺りは無理そうだけどな」
のんびりとしている秋星は、言葉と行動はまるで違う。彼も間違いなく、寝ることはないだろうと思えたのだ。
そこまで頼りきっていいのだろうかと思うが、柊稀の考えなどお見通しだ。
「僕達のことは気にしなくていいですよ。ただの職業病ですから。黒耀も同じですね。けど、他は違うでしょう」
野営で警戒しなくてはいけない。そのような生活を送ってきたわけではないのだ。
だから、しっかりと寝た方がいいと言われてしまえば、それが女性陣を気にしてのことだとわかり頷く。自分達が遠慮してしまえば、彼女達も遠慮してしまう。
「任せていいって言ってんだ。任せちまおうぜ」
「せ、星霜様…」
オドオドと見ている莱緋に、問題ないと笑いかけるのは秋星だ。
「そんなことよりよ、陽霜どこいった?」
「え……」
気付いたら見当たらなかったと言われれば、全員がそういえばと周囲を見る。
「おー、問題ねぇよ。ちょっと離れたところにいるみたいだけど」
「一人になりたいときもあるでしょ。これだけの人数で動いてますからね」
違うとわかりつつも、双子がそう言えば星霜もいいかと頷く。
「一人でバカなことしなきゃ、なんでもいいぜ」
一人で動くことはないと思うが、ありえるのが半身だったが、秋星と夜秋が居場所を把握している。それなら安心だ。
(それにしても、恐ろしい能力だな)
自分では半身がどこにいるのかわからない。けれど、この双子はどこにいるのかわかっている。能力の違いに畏怖すら覚えた瞬間だった。
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