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三部 神具編
仲間達との再会2
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研究者の中でも特に詳しい者がクリエーサ区にいる。問題がなければ、聞きにいくかと魔竜族の長、虚空が言う。
「行ってみよう。ちょうど近くに、目的地がある」
場所を聞いた黒耀が、参考になるかもしれないと了承した。
「わかった」
その件はそれから考えよう、と意見は一致した。
――邪教集団は、まず始祖竜の秘密を知るため精霊眼を求めました。文字が精霊の古代文字だったためです――
ここは事実の話。そのために先代のフェンデの巫女を狙い、火竜族の族長を狙った。
柊稀と黒耀はすでに聞いていた、朱華と華朱の話をする黒欧。
「過去を襲うなんて真似、出来るものか? いや、柊稀が行ったのを見ていたから、行けるのはわかるが」
それは始祖竜がいたから。柏羅の力で過去へ行ったのだ。普通なら行けるはずがない。
――それもお話します。始祖竜と同じことをできる者が、いると思われます――
これも仮定だと黒欧は告げた。証明することは厳しいと。
竜族を生み出したのは始祖竜。己の属性を分け、それらを今の竜族にした。
竜族の始まりとして伝えられている内容はこうだ。始祖竜は竜だけを生み出した。だからこそ、始まりの竜。竜族の祖、始祖竜と呼ばれているのだ。
――鳥獣族の祖は神鳥だと思われます。精霊はわかりませんが、獣族の祖だと思われるのが、華朱殿といる獣です――
過去を襲った襲撃者といた獣。柊稀は、彼女がいなくなったときのことを思い返す。
(あのとき、確か二匹の獣が現れた……)
一匹は水色の毛色をした獣。真っ赤な瞳が印象的で、口調からも冷静なのが読み取れた。もう一匹は黒い獣だ。その獣が現れ、強制的に未来へ連れ帰ったように見えた。
「待て、そんな力を持つのがまだいるというのか」
驚いたように声をあげたのは虚空。声さえ出さなかったが、琅悸と氷穂も驚いたように見ている。
「……黒欧、あのときの獣だよね」
――はい。あなたは見ていましたね。あれは、この時代では一般的に召喚魔法と称されています――
「召喚魔法……」
黒い獣も青い獣も、突然現れた。不思議に思っていたが、魔法と言われれば納得もいく。
召喚魔法――現代では偉大なる魔法の使い手と名を残す、火竜族の一人が作り上げた魔法である。上級魔法とされ、使いこなせたものはほとんどいないとも言われている。
「さすがに、魔法槍士の家系でも使えた者はいない。チャレンジした者はいるようだがな」
それほど難しいと言われている魔法は、近年チャレンジする者も減っていた。作った本人が意図的に難しくしているのではないか、と思うほどだ。
「過去へ行った柊稀は、その人物に会っている。白秋という名の火竜だ」
「白秋さん?」
確かにすごい人だったとは思う。一緒にいるだけで、彼の強さは肌で感じることができたほどに。
――魔道生物。私のように造られ、行き場を無くした者達へ、召喚魔法として行き場を与えました――
召喚魔法は形式を整え、魔道生物達へ行き場を与えたもの。
一方的に魔道生物を虐げないよう、編み出されたと言っても過言ではない。
――そして、あの方が召喚魔法の魔道生物として連れていた中に、九兎という獣がいました。私は初代黒竜王の元でも一緒でしたが――
その獣が獣族の祖だと推測されている。黒欧の言葉に、一同言葉を失う。
現在の段階で敵か味方かもわからない女性。華朱の元に、獣族の祖がいる。その力で彼女は過去へ遡った。
彼らからしたら、敵となれば強敵になることは間違いない。
さらに驚くようなことを黒欧は言う。
――彼女は、利用されている可能性が高いです。あの憎悪を利用し、九兎を使っているのです――
「どんな効果になる?」
黒耀の声が一段と低くなる。魔法槍士として、彼はこの事態を見逃すわけにはいかない。
「破壊だな。九兎は、確か絶対なる破壊の力を持つんじゃなかったか?」
重い空気の中、一人だけいつもと変わらない明るい口調なのは、精霊のユフィ。
「俺も一回見ただけだけどよ」
あれはそうだったはず、と言う。
「……て、ユフィ知って……」
口をパクパクしながら柊稀は指指す。
「過去じゃ会わなかったけどな。俺、あの時代からこいつと交流ある」
――はい。ユフィ殿は定期的に情報をくれますので――
違う意味で言葉を失った瞬間でもあった。まさか長年に渡り、この二人が交流を持っていたとは思わなかったのだ。
それは琅悸と黒耀も想定外な出来事だった。だがしかし、言われてみればありえなくもない。先祖を思い返せば繋がっていたはずだ。
驚く一同をニコニコ笑いながら見るユフィは、とても無邪気な少年に見える。
獣族の祖は破壊の力。始祖竜には世界を支える力。
――それがあると推測されています。神具は始祖竜が作りだし、世界を支える力。世界を支える柱のようなものです。そして、それを管理するために神竜は存在する。この推定をしたうえで、すべての推測がされています――
邪教集団はまず、神竜を手の内に入れているはずだと彼は言う。
過去では居場所を知られていなかったが、現代では知られている。民に公開がされていないだけで。
「それは、フェンデの巫女にも伝わっています。現在、神竜のいるとされている神殿は、封鎖されているはずですが……」
話しながら、なにか嫌な予感がしたのか、氷穂の言葉は力を失っていく。
まさかと言いたげに黒耀を見れば、彼は頷いて答えた。
「柊稀を迎えに行く前、立ち寄ってみた。中へ入れないよう強力な結界が張られていた」
邪教集団はそこをアジトにしている。間違いないと黒耀が言う。
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「行ってみよう。ちょうど近くに、目的地がある」
場所を聞いた黒耀が、参考になるかもしれないと了承した。
「わかった」
その件はそれから考えよう、と意見は一致した。
――邪教集団は、まず始祖竜の秘密を知るため精霊眼を求めました。文字が精霊の古代文字だったためです――
ここは事実の話。そのために先代のフェンデの巫女を狙い、火竜族の族長を狙った。
柊稀と黒耀はすでに聞いていた、朱華と華朱の話をする黒欧。
「過去を襲うなんて真似、出来るものか? いや、柊稀が行ったのを見ていたから、行けるのはわかるが」
それは始祖竜がいたから。柏羅の力で過去へ行ったのだ。普通なら行けるはずがない。
――それもお話します。始祖竜と同じことをできる者が、いると思われます――
これも仮定だと黒欧は告げた。証明することは厳しいと。
竜族を生み出したのは始祖竜。己の属性を分け、それらを今の竜族にした。
竜族の始まりとして伝えられている内容はこうだ。始祖竜は竜だけを生み出した。だからこそ、始まりの竜。竜族の祖、始祖竜と呼ばれているのだ。
――鳥獣族の祖は神鳥だと思われます。精霊はわかりませんが、獣族の祖だと思われるのが、華朱殿といる獣です――
過去を襲った襲撃者といた獣。柊稀は、彼女がいなくなったときのことを思い返す。
(あのとき、確か二匹の獣が現れた……)
一匹は水色の毛色をした獣。真っ赤な瞳が印象的で、口調からも冷静なのが読み取れた。もう一匹は黒い獣だ。その獣が現れ、強制的に未来へ連れ帰ったように見えた。
「待て、そんな力を持つのがまだいるというのか」
驚いたように声をあげたのは虚空。声さえ出さなかったが、琅悸と氷穂も驚いたように見ている。
「……黒欧、あのときの獣だよね」
――はい。あなたは見ていましたね。あれは、この時代では一般的に召喚魔法と称されています――
「召喚魔法……」
黒い獣も青い獣も、突然現れた。不思議に思っていたが、魔法と言われれば納得もいく。
召喚魔法――現代では偉大なる魔法の使い手と名を残す、火竜族の一人が作り上げた魔法である。上級魔法とされ、使いこなせたものはほとんどいないとも言われている。
「さすがに、魔法槍士の家系でも使えた者はいない。チャレンジした者はいるようだがな」
それほど難しいと言われている魔法は、近年チャレンジする者も減っていた。作った本人が意図的に難しくしているのではないか、と思うほどだ。
「過去へ行った柊稀は、その人物に会っている。白秋という名の火竜だ」
「白秋さん?」
確かにすごい人だったとは思う。一緒にいるだけで、彼の強さは肌で感じることができたほどに。
――魔道生物。私のように造られ、行き場を無くした者達へ、召喚魔法として行き場を与えました――
召喚魔法は形式を整え、魔道生物達へ行き場を与えたもの。
一方的に魔道生物を虐げないよう、編み出されたと言っても過言ではない。
――そして、あの方が召喚魔法の魔道生物として連れていた中に、九兎という獣がいました。私は初代黒竜王の元でも一緒でしたが――
その獣が獣族の祖だと推測されている。黒欧の言葉に、一同言葉を失う。
現在の段階で敵か味方かもわからない女性。華朱の元に、獣族の祖がいる。その力で彼女は過去へ遡った。
彼らからしたら、敵となれば強敵になることは間違いない。
さらに驚くようなことを黒欧は言う。
――彼女は、利用されている可能性が高いです。あの憎悪を利用し、九兎を使っているのです――
「どんな効果になる?」
黒耀の声が一段と低くなる。魔法槍士として、彼はこの事態を見逃すわけにはいかない。
「破壊だな。九兎は、確か絶対なる破壊の力を持つんじゃなかったか?」
重い空気の中、一人だけいつもと変わらない明るい口調なのは、精霊のユフィ。
「俺も一回見ただけだけどよ」
あれはそうだったはず、と言う。
「……て、ユフィ知って……」
口をパクパクしながら柊稀は指指す。
「過去じゃ会わなかったけどな。俺、あの時代からこいつと交流ある」
――はい。ユフィ殿は定期的に情報をくれますので――
違う意味で言葉を失った瞬間でもあった。まさか長年に渡り、この二人が交流を持っていたとは思わなかったのだ。
それは琅悸と黒耀も想定外な出来事だった。だがしかし、言われてみればありえなくもない。先祖を思い返せば繋がっていたはずだ。
驚く一同をニコニコ笑いながら見るユフィは、とても無邪気な少年に見える。
獣族の祖は破壊の力。始祖竜には世界を支える力。
――それがあると推測されています。神具は始祖竜が作りだし、世界を支える力。世界を支える柱のようなものです。そして、それを管理するために神竜は存在する。この推定をしたうえで、すべての推測がされています――
邪教集団はまず、神竜を手の内に入れているはずだと彼は言う。
過去では居場所を知られていなかったが、現代では知られている。民に公開がされていないだけで。
「それは、フェンデの巫女にも伝わっています。現在、神竜のいるとされている神殿は、封鎖されているはずですが……」
話しながら、なにか嫌な予感がしたのか、氷穂の言葉は力を失っていく。
まさかと言いたげに黒耀を見れば、彼は頷いて答えた。
「柊稀を迎えに行く前、立ち寄ってみた。中へ入れないよう強力な結界が張られていた」
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