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6部 星の女神編
光との対話
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誰もが寝静まっている時間、クオンは一人で天空城の中心にいた。
ここで呼ばれている気がしたのだ。誰がと思い、彼の記憶は息子だと告げている。リオン・アルヴァースの息子が自分を呼んでいるのだと。
一応、そのことをリーナに伝えたのだが、今回は一人で行くべきだと言われた。相棒であるヴェガにも同じことを言われれば、クオンも了承するしかない。
暗闇の中に明かりが二つ。これが自分を呼んでいる者だと、クオンは理解している。
「どんな用件だ?」
呼びかけてみれば、光の輝きが強くなり人影に変わっていく。
目の前に二人の青年が現れるまで、そう時間はかからなかった。
「お前らが呼んだわけか」
『まぁ、そうなるか。スレイ・アルヴァースだ』
『レイン・アルヴァースだ。初めまして、新しい月神』
雰囲気が違う二人。これすらリオン・アルヴァースとシオン・アルヴァースのようで、どことなく面白いと思ってしまう。
息子も親に似ているのだと、見ただけでわかったのだ。
一体、どのような用があって呼び出されたのか。気になるところだが、それよりも気になることがある。
「お前らは、力に残る思念体だと思えばいいのか?」
彼らはどのような存在なのかということ。本人はすでに死んでいるはずで、実在するとは思えない。
『俺達は、俺達の意思で残した思念体だと思えばいいさ。いつか、戻ってくる親父を待つために』
『いつか、外から攻撃が来ると思ったから。だから父さん達を少しでも助けられるように、残したんだ』
だからといって、なにかができるわけではないとも二人は言う。
結局のところ、残された思念体ではあるが力はない。すべての力を解き放ち、散らしてしまったからだ。
『俺達の力は、すべてここで解き放ったから。だから、まったく残されてないんだ。父さんを助けるために動くことはできない』
けれど、できることもある。
『叔父さんさ、俺達がここにいるってわかってたんだぜ。だから、情報をここに残していきやがった』
一度も接触したことはなかったのだが、なぜか確信しているように話していったのだとスレイが言う。なぜ確信していたのかはわからないが、あの人ならあり得ると笑った。
『外の世界に関しては、守護者がいるから問題ないと思うんだけど』
一応ある程度の情報はあるというが、守護者がいるなら問題がないだろうとレインは思っていた。
なにかあれば、エリアスから聞けばいいだけのこと。むしろ、あちらの守護者に聞いた方がいいとすら思っていた。
「いや、太陽神が残したものはすべて話せ。あちらに行ってなにもないとは言い切れねぇだろ」
不測の事態を考えるべきだと言われれば、それもそうだと二人とも頷く。
あちらへ行った際、なにが起きるかわからない。むしろ妨害が起きる可能性もある。そのとき、分断でもされてしまえば、どうすることもできない。
『わかった。じゃあ、父さんが残した情報を全部伝えるよ』
『外の世界に関して、シオン・アルヴァースが関わってきた事柄だな』
口頭で伝えられることを覚悟していたクオンは、小さな光という形で渡されたそれに戸惑う。
手にした瞬間、一瞬で頭の中に入り込む知識の山。すべての情報が勝手に入ってくる感覚に違和感を覚えたのは数秒のこと。
(二度目だと慣れだな)
リオン・アルヴァースの記憶という経験があるだけに、今更この程度では動じなくなっていた。
その様子を見ていたスレイが、二ヤリと笑う。
『さすが親父だ』
「いや、お前の親父じゃねぇし。俺にはまだ子供はいねぇからな」
なにを言ってるんだと睨めば、スレイはさらに笑いだす。
『いやぁ、俺も親父に似てるって言われるんだけど、あんたも親父によく似てるわ。面白れぇぐらいに』
魂が同じだからかな、と笑いながら言うが、その瞳の奥には孤独がちらつく。
リオン・アルヴァースの記憶を持つからこそ、クオンには原因がわかっていた。記憶の中に息子といた期間は少ない。つまり、目の前にいる彼は親との記憶がほとんどないということだ。
「しょうがねぇな。好きに呼べよ」
こんな子供を持った覚えはねぇけど、とぶつぶつ言うからレインも笑う。
こういったところも、なんとなく同じだと気付いてしまったのだ。
『笑ってんじゃねぇよ』
「笑うなよ」
二人が同時に言えば、レインは声を上げて笑った。これはこれで、自分の父親に見せたいとすら思ったほどだ。
きっと、嬉しそうに見てくれたことだろうと。
『外の情報に関しては、新たな月神にすべて任せるよ。知らせた方がいいと思えば、知らせればいいしね』
守護者がいるのだから、情報を無理に渡す必要はない。渡しても問題はないと、レインは思っていた。
「お前、母親には会わなくていいのか?」
自分だけが呼ばれて来たが、実際的にレイン・アルヴァースとの関りはない。母親であるイリティス・アルヴァースと対話した方がいいのではないか。
素朴な疑問をぶつけたクオンは、愚問だったかと思い直す。
『会いたくないかと問われたら、会いたいけどね。でも、俺はレインであってレインじゃないから……』
ならば、いっそのこと会わない方がいいのではないか、と思ったのだと言われてしまえば、その辺りは複雑な問題だと思えた。
本人ではない。けれど彼は本人と変わらない。
「……俺が言っていいのかわかんねぇけど、会いたいなら会えよ。お前の気持ちを大切にしていいと思うけどな」
彼は間違いなくレイン・アルヴァースとしての感情を持つ。ならば、思う通りに動いてもいいはずだと思ったのだ。
聞いたレインは、驚いたようにクオンを見る。
このようなことを言われるとは、思わなかったのだろう。
「聞くんだけどよ。俺はリオン・アルヴァースじゃねぇ。けど、お前から見たら父親に見えるんだろ」
『俺には、親父と変わらなく見えてんな』
転生している。だから別人とわかっているのだが、それでもスレイには父親と同じに見えると断言できた。
おそらく、本質が同じなのだろう。
『あぁ……言いたいことがよくわかったぜ。つまり、それと同じだってことだな』
魂が同じである以上、どこか似ている部分があることは否定できない。記憶を持ってしまったからこそ、リオン・アルヴァースに近づいた部分もあるだろう。
だから、クオンは自分がリオン・アルヴァースに見えると言われても、違うと言うことができなかった。
目の前にいるレイン・アルヴァースも、根本的な部分が同じであるなら、同じだと言いたかったのだ。
(親を想う気持ちも、同じようだしな。結局は、本人と変わらねぇんだよ)
自分は本当のレインではないから、会わない方がいいと親を気遣う部分を見れば、だからこそ会えばいいのにと思わずにはいられない。
決めるのは本人なだけに、さすがに言うこともできないが。
「話は終わったのか?」
戻ったクオンを待ち構えるように、クロエは立っていた。
「あぁ、終わった」
想定内だったのか、クオンは驚くこともなく近づく。彼ならこうするだろうと、初めから思っていたのかもしれない。
「なら、こちらにも話せよ。お前は、聞かないと言わないだろ」
リーナにはなんでも言うが、クロエには必要がないと言わないのがクオンだ。
特に意味があるわけではなく、リーナには言わないと面倒だと思ってのこと。
それを彼女へ言えば、クロエも同じだろうと返されるのは間違いないのだが、なぜかクオンはそこを学習しない。
「わかってる。さすがに今回は話すさ」
彼は外の世界へ行っても頼りになる幼馴染み。
そう、慕っていた兄ではなく、頼りになる幼馴染みとして連れていくのだ。黙っているという選択肢が、元々なかった。
「長くなるぞ」
「構わない。陛下もそのつもりで待っているし」
セルティも残っていると聞けば、これは寝られないなと苦笑いを浮かべる。彼が簡単に終わらせてくれるわけがないと、二人ともわかっているのだ。
向かった室内には、当然というようにセルティが待ち構えており、リーナとフィーリオナもいる。
「帰らなくていいんですか?」
さすがにイクティスはいない。帰ったのだろうとわかるだけに、彼はいいのかと問いかけてみる。答えなどわかりきっているのに。
「問題ない。なにせ、明日は休日だからな」
セルティは休日を固定している。これは、固定しないと休まないから、と強制的に行われたことだと騎士団では有名な話。
そのため、よほどのことがない限り休みが変動することはない。
「知ってるだろ。俺の休みは強制で変わらないと」
「知ってるけどよ」
今はフィーリオナがいないのだから、少しは変わっていると思っていた。思いたかった、というのが本音だ。
「早く帰したいなら、早く話せ」
それが一番だぞ、と言われれば、それもそうだとクオンは納得する。早く帰すために、すべて話して終わらせようと席につく。
「それじゃ、俺が預かってきた知識をそのまま話すぞ」
聞いたというよりは、完全に貰ったというものだと思うクオンは、なんて言うか悩んだ末にそう言って話し出した。
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ここで呼ばれている気がしたのだ。誰がと思い、彼の記憶は息子だと告げている。リオン・アルヴァースの息子が自分を呼んでいるのだと。
一応、そのことをリーナに伝えたのだが、今回は一人で行くべきだと言われた。相棒であるヴェガにも同じことを言われれば、クオンも了承するしかない。
暗闇の中に明かりが二つ。これが自分を呼んでいる者だと、クオンは理解している。
「どんな用件だ?」
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「お前らが呼んだわけか」
『まぁ、そうなるか。スレイ・アルヴァースだ』
『レイン・アルヴァースだ。初めまして、新しい月神』
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一体、どのような用があって呼び出されたのか。気になるところだが、それよりも気になることがある。
「お前らは、力に残る思念体だと思えばいいのか?」
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『いつか、外から攻撃が来ると思ったから。だから父さん達を少しでも助けられるように、残したんだ』
だからといって、なにかができるわけではないとも二人は言う。
結局のところ、残された思念体ではあるが力はない。すべての力を解き放ち、散らしてしまったからだ。
『俺達の力は、すべてここで解き放ったから。だから、まったく残されてないんだ。父さんを助けるために動くことはできない』
けれど、できることもある。
『叔父さんさ、俺達がここにいるってわかってたんだぜ。だから、情報をここに残していきやがった』
一度も接触したことはなかったのだが、なぜか確信しているように話していったのだとスレイが言う。なぜ確信していたのかはわからないが、あの人ならあり得ると笑った。
『外の世界に関しては、守護者がいるから問題ないと思うんだけど』
一応ある程度の情報はあるというが、守護者がいるなら問題がないだろうとレインは思っていた。
なにかあれば、エリアスから聞けばいいだけのこと。むしろ、あちらの守護者に聞いた方がいいとすら思っていた。
「いや、太陽神が残したものはすべて話せ。あちらに行ってなにもないとは言い切れねぇだろ」
不測の事態を考えるべきだと言われれば、それもそうだと二人とも頷く。
あちらへ行った際、なにが起きるかわからない。むしろ妨害が起きる可能性もある。そのとき、分断でもされてしまえば、どうすることもできない。
『わかった。じゃあ、父さんが残した情報を全部伝えるよ』
『外の世界に関して、シオン・アルヴァースが関わってきた事柄だな』
口頭で伝えられることを覚悟していたクオンは、小さな光という形で渡されたそれに戸惑う。
手にした瞬間、一瞬で頭の中に入り込む知識の山。すべての情報が勝手に入ってくる感覚に違和感を覚えたのは数秒のこと。
(二度目だと慣れだな)
リオン・アルヴァースの記憶という経験があるだけに、今更この程度では動じなくなっていた。
その様子を見ていたスレイが、二ヤリと笑う。
『さすが親父だ』
「いや、お前の親父じゃねぇし。俺にはまだ子供はいねぇからな」
なにを言ってるんだと睨めば、スレイはさらに笑いだす。
『いやぁ、俺も親父に似てるって言われるんだけど、あんたも親父によく似てるわ。面白れぇぐらいに』
魂が同じだからかな、と笑いながら言うが、その瞳の奥には孤独がちらつく。
リオン・アルヴァースの記憶を持つからこそ、クオンには原因がわかっていた。記憶の中に息子といた期間は少ない。つまり、目の前にいる彼は親との記憶がほとんどないということだ。
「しょうがねぇな。好きに呼べよ」
こんな子供を持った覚えはねぇけど、とぶつぶつ言うからレインも笑う。
こういったところも、なんとなく同じだと気付いてしまったのだ。
『笑ってんじゃねぇよ』
「笑うなよ」
二人が同時に言えば、レインは声を上げて笑った。これはこれで、自分の父親に見せたいとすら思ったほどだ。
きっと、嬉しそうに見てくれたことだろうと。
『外の情報に関しては、新たな月神にすべて任せるよ。知らせた方がいいと思えば、知らせればいいしね』
守護者がいるのだから、情報を無理に渡す必要はない。渡しても問題はないと、レインは思っていた。
「お前、母親には会わなくていいのか?」
自分だけが呼ばれて来たが、実際的にレイン・アルヴァースとの関りはない。母親であるイリティス・アルヴァースと対話した方がいいのではないか。
素朴な疑問をぶつけたクオンは、愚問だったかと思い直す。
『会いたくないかと問われたら、会いたいけどね。でも、俺はレインであってレインじゃないから……』
ならば、いっそのこと会わない方がいいのではないか、と思ったのだと言われてしまえば、その辺りは複雑な問題だと思えた。
本人ではない。けれど彼は本人と変わらない。
「……俺が言っていいのかわかんねぇけど、会いたいなら会えよ。お前の気持ちを大切にしていいと思うけどな」
彼は間違いなくレイン・アルヴァースとしての感情を持つ。ならば、思う通りに動いてもいいはずだと思ったのだ。
聞いたレインは、驚いたようにクオンを見る。
このようなことを言われるとは、思わなかったのだろう。
「聞くんだけどよ。俺はリオン・アルヴァースじゃねぇ。けど、お前から見たら父親に見えるんだろ」
『俺には、親父と変わらなく見えてんな』
転生している。だから別人とわかっているのだが、それでもスレイには父親と同じに見えると断言できた。
おそらく、本質が同じなのだろう。
『あぁ……言いたいことがよくわかったぜ。つまり、それと同じだってことだな』
魂が同じである以上、どこか似ている部分があることは否定できない。記憶を持ってしまったからこそ、リオン・アルヴァースに近づいた部分もあるだろう。
だから、クオンは自分がリオン・アルヴァースに見えると言われても、違うと言うことができなかった。
目の前にいるレイン・アルヴァースも、根本的な部分が同じであるなら、同じだと言いたかったのだ。
(親を想う気持ちも、同じようだしな。結局は、本人と変わらねぇんだよ)
自分は本当のレインではないから、会わない方がいいと親を気遣う部分を見れば、だからこそ会えばいいのにと思わずにはいられない。
決めるのは本人なだけに、さすがに言うこともできないが。
「話は終わったのか?」
戻ったクオンを待ち構えるように、クロエは立っていた。
「あぁ、終わった」
想定内だったのか、クオンは驚くこともなく近づく。彼ならこうするだろうと、初めから思っていたのかもしれない。
「なら、こちらにも話せよ。お前は、聞かないと言わないだろ」
リーナにはなんでも言うが、クロエには必要がないと言わないのがクオンだ。
特に意味があるわけではなく、リーナには言わないと面倒だと思ってのこと。
それを彼女へ言えば、クロエも同じだろうと返されるのは間違いないのだが、なぜかクオンはそこを学習しない。
「わかってる。さすがに今回は話すさ」
彼は外の世界へ行っても頼りになる幼馴染み。
そう、慕っていた兄ではなく、頼りになる幼馴染みとして連れていくのだ。黙っているという選択肢が、元々なかった。
「長くなるぞ」
「構わない。陛下もそのつもりで待っているし」
セルティも残っていると聞けば、これは寝られないなと苦笑いを浮かべる。彼が簡単に終わらせてくれるわけがないと、二人ともわかっているのだ。
向かった室内には、当然というようにセルティが待ち構えており、リーナとフィーリオナもいる。
「帰らなくていいんですか?」
さすがにイクティスはいない。帰ったのだろうとわかるだけに、彼はいいのかと問いかけてみる。答えなどわかりきっているのに。
「問題ない。なにせ、明日は休日だからな」
セルティは休日を固定している。これは、固定しないと休まないから、と強制的に行われたことだと騎士団では有名な話。
そのため、よほどのことがない限り休みが変動することはない。
「知ってるだろ。俺の休みは強制で変わらないと」
「知ってるけどよ」
今はフィーリオナがいないのだから、少しは変わっていると思っていた。思いたかった、というのが本音だ。
「早く帰したいなら、早く話せ」
それが一番だぞ、と言われれば、それもそうだとクオンは納得する。早く帰すために、すべて話して終わらせようと席につく。
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