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6部 星の女神編
大地の守護者
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簡単な自己紹介が終われば、全員が表情を引き締めて本題へと入る。
本題は、今この世界でなにが起きているのか、だ。のんきに話している暇などない。
「この世界は、女神メルレールが創った世界だが、現在は独立した世界だ。所謂、親離れしたということらしい」
これは女神ファラーレが言っていた言葉だ。わかりやすい例えだと、グレンも思っている。
神を必要としない世界。神が見守る世界。それがこの世界だ。女神から切り離されたことで、人間が魔力を持って生まれてくる、という変化が起きた。
他にも変化はあるのだろうが、特に気にすることもない。問題があれば対処していけばいいと、基本的には関わらずに過ごしてきたのがグレン達だ。
「神の箱庭。それが世界だ。外には女神と同じような存在がいて、世界を創って管理、観察をする」
つまり、同じような世界はいくつも存在するということだと言われれば、想像がつかないとリーナが首を傾げる。
「いきなりのことだ。困惑するのは当然だ。俺も見たわけじゃないから、外の世界と言われてもな。さすがにわからない。ただ、シオンは行き来をしてる」
だから、間違いなくあるのだということはわかっていた。
この世界の外がどうなっているのかはわからない。わかっていることは、すぐ隣に大地の女神ファラーレの世界があるということだけ。
「大地の女神?」
そんな情報はない。つまり、リオン・アルヴァースの知らない情報ということだ。
「リオンは知らなかったからな。お前の中に情報としてないのはわかってる。女神ファラーレは、先の戦いで俺達に味方した外の神だ」
女神メルレールの世界を壊せと考える神が多い中、味方してくれた神の一人。
ただし、完全に味方したわけでもない。条件として、女神メルレールを倒すことが提示されていた。
「まぁ、その方がまだ信じられるか。完全な味方とか言われたら、怪しいぜ」
無償の善意など、信じられないとクオンが言う。そもそも、なにも求めずに助けてきた女神なら、疑っていたとも言う。
「そうだな。善意の人助けよりも、怪しい女神になるところだった」
同意だとクロエが頷くと、だよなぁ、と呟くクオン。
そんな二人を見ながら、グレンは笑っていた。普通に混ざっている二人に、大物だと思っているのだ。
さすがにフィーリオナとリーナは一線引いている。英雄王や虹の女神を前にして、普通に接するなどできなかったのだ。
「外の神々には力の差があるようだ。メルレールよりファラーレの方が劣る、ということだな。力が低いと世界を創れない」
「けど、創ったんだろ」
隣に女神ファラーレの世界が存在するということは、そういうことではないのか。
「そうだ。創った。どうやら、女神メルレールには妹が二人いたようだ。一人が大地の女神ファラーレ。もう一人が海の女神だという」
情報がないことから、名前までは知らないとグレンは言う。表立ってこちらにやってきたことも、接触してきたこともない。
わかっていることは、二人の女神によって創られた世界だということ。二人でなければ世界を創ることができないほど、強くはないのだということだ。
「逆に、女神メルレールすら倒してしまったシオンは、それ以上だという認識をされている可能性はある」
事実はわからないが、思われていたとしたら、この世界が脅威に見えている可能性もある。だからこそ、外から攻撃されているのかもしれない。
すべては可能性でしかなかったが、考えられることのすべてを考える必要がある。
「シオンがいない今、考えられることはすべて考える。しかし、すべてが可能性でしかない」
だから、それを頭の中に入れておけと言われれば、クオンも真剣な表情で頷く。
リオン・アルヴァースの知識を得たとしても、結局のところ知識は足りていない。その後のことを知らないからだ。
おそらく、一番の知識を持つのは太陽神であるシオン・アルヴァースだろう。彼がすべてを話しているなら、目の前にいるグレンが憶測で動くわけがない。
「もう少し、確信を持ちたいところではあるんだがな。外に関しての情報はシオンしか持っていない」
こんなことになるなら、聞き出しておくべきだったとぼやく姿に、苦笑いを浮かべるイリティス。
無理矢理にでも聞き出さなければ、シオン・アルヴァースは話してくれない。面倒だと、グレンが放置していたことを知っているのだ。
だからといって責めることはできない。イリティスも同じ気持ちで、必要になれば聞けばいいと放置していたのだから。
「状況は外からの攻撃。これだけは間違いがない。そのためだけに、シオンは外へおびき出されたと思う」
「そして、身動きがとれなくなっている、ということか」
納得したというようにセルティが頷く。
グレンの言葉で、この先をどうしたいのか予測することができるというもの。外へ行くという手段へ出る気なのだ。
「グレン殿は外へ行くこと、もしくは外へ行けということを望むか」
「なっ」
二ヤリと笑うセルティに、驚くフィーリオナ。外などという場所へどうやって行くのか。それすらわからないというのに、なにを言っているのかと視線を向ける。
「その通りだな。シオンが戻らないなら、なんらかの事態が起きているということだ。それを解決するのに、今なら戦力的な意味でも問題がないだろ」
この世界を空けることはできない。その隙に攻められる可能性が高いからだ。
だからこそ、身動きが取れなかったのだが、今なら動くことができる。
「で、グレン君は外へ行ってみたいんだよね」
「よくわかってるな」
「わかるだろ。お前の性格を考えれば」
なにを言っているのかとシュレが見れば、グレンの表情が苦笑いに変わった。彼を自分側につけてよかったと思う。
自分をしっかりと見ていてくれるからこそ、任せることができるとも思った。だからこそ、外へ行くということもできるのだ。
問題であった外への行き方も、今回どうにかなりそうだとわかれば、動かずにはいられない。
この世界にとってシオンが大事というのもあるが、それ以上に彼は大切な友なのだ。助けが必要ならば、すぐにでも助けたいと思うのは当然のことだろう。
「外へはどう行くんだ? さすがに、あんたじゃ行けないんだろ」
行けたなら、もっと早くに動くこともできたかもしれない。
戦力的な意味でなら、自分を待たなくてもよかったはずだとクオンは問いかける。
「星の女神がいれば、外へ行ける。……入ってこい」
外へ向けて声をかけると、一人の少年が姿を現す。一体誰だと誰もが思う中、イリティスだけがまさかと言うようにグレンを見た。
「そのまさかだな。ここへ連れてきて二日でここまで成長した。場所的にも力が溢れているから、成長を促したのかもしれない」
精霊達から預かった、外から来た何者か。彼がそうだとグレンは頷く。
急激に成長したときは驚いたが、時がきただけだと思えた。彼が自分の本来いるべき世界へ戻る時が、今このときなだけだと。
・
本題は、今この世界でなにが起きているのか、だ。のんきに話している暇などない。
「この世界は、女神メルレールが創った世界だが、現在は独立した世界だ。所謂、親離れしたということらしい」
これは女神ファラーレが言っていた言葉だ。わかりやすい例えだと、グレンも思っている。
神を必要としない世界。神が見守る世界。それがこの世界だ。女神から切り離されたことで、人間が魔力を持って生まれてくる、という変化が起きた。
他にも変化はあるのだろうが、特に気にすることもない。問題があれば対処していけばいいと、基本的には関わらずに過ごしてきたのがグレン達だ。
「神の箱庭。それが世界だ。外には女神と同じような存在がいて、世界を創って管理、観察をする」
つまり、同じような世界はいくつも存在するということだと言われれば、想像がつかないとリーナが首を傾げる。
「いきなりのことだ。困惑するのは当然だ。俺も見たわけじゃないから、外の世界と言われてもな。さすがにわからない。ただ、シオンは行き来をしてる」
だから、間違いなくあるのだということはわかっていた。
この世界の外がどうなっているのかはわからない。わかっていることは、すぐ隣に大地の女神ファラーレの世界があるということだけ。
「大地の女神?」
そんな情報はない。つまり、リオン・アルヴァースの知らない情報ということだ。
「リオンは知らなかったからな。お前の中に情報としてないのはわかってる。女神ファラーレは、先の戦いで俺達に味方した外の神だ」
女神メルレールの世界を壊せと考える神が多い中、味方してくれた神の一人。
ただし、完全に味方したわけでもない。条件として、女神メルレールを倒すことが提示されていた。
「まぁ、その方がまだ信じられるか。完全な味方とか言われたら、怪しいぜ」
無償の善意など、信じられないとクオンが言う。そもそも、なにも求めずに助けてきた女神なら、疑っていたとも言う。
「そうだな。善意の人助けよりも、怪しい女神になるところだった」
同意だとクロエが頷くと、だよなぁ、と呟くクオン。
そんな二人を見ながら、グレンは笑っていた。普通に混ざっている二人に、大物だと思っているのだ。
さすがにフィーリオナとリーナは一線引いている。英雄王や虹の女神を前にして、普通に接するなどできなかったのだ。
「外の神々には力の差があるようだ。メルレールよりファラーレの方が劣る、ということだな。力が低いと世界を創れない」
「けど、創ったんだろ」
隣に女神ファラーレの世界が存在するということは、そういうことではないのか。
「そうだ。創った。どうやら、女神メルレールには妹が二人いたようだ。一人が大地の女神ファラーレ。もう一人が海の女神だという」
情報がないことから、名前までは知らないとグレンは言う。表立ってこちらにやってきたことも、接触してきたこともない。
わかっていることは、二人の女神によって創られた世界だということ。二人でなければ世界を創ることができないほど、強くはないのだということだ。
「逆に、女神メルレールすら倒してしまったシオンは、それ以上だという認識をされている可能性はある」
事実はわからないが、思われていたとしたら、この世界が脅威に見えている可能性もある。だからこそ、外から攻撃されているのかもしれない。
すべては可能性でしかなかったが、考えられることのすべてを考える必要がある。
「シオンがいない今、考えられることはすべて考える。しかし、すべてが可能性でしかない」
だから、それを頭の中に入れておけと言われれば、クオンも真剣な表情で頷く。
リオン・アルヴァースの知識を得たとしても、結局のところ知識は足りていない。その後のことを知らないからだ。
おそらく、一番の知識を持つのは太陽神であるシオン・アルヴァースだろう。彼がすべてを話しているなら、目の前にいるグレンが憶測で動くわけがない。
「もう少し、確信を持ちたいところではあるんだがな。外に関しての情報はシオンしか持っていない」
こんなことになるなら、聞き出しておくべきだったとぼやく姿に、苦笑いを浮かべるイリティス。
無理矢理にでも聞き出さなければ、シオン・アルヴァースは話してくれない。面倒だと、グレンが放置していたことを知っているのだ。
だからといって責めることはできない。イリティスも同じ気持ちで、必要になれば聞けばいいと放置していたのだから。
「状況は外からの攻撃。これだけは間違いがない。そのためだけに、シオンは外へおびき出されたと思う」
「そして、身動きがとれなくなっている、ということか」
納得したというようにセルティが頷く。
グレンの言葉で、この先をどうしたいのか予測することができるというもの。外へ行くという手段へ出る気なのだ。
「グレン殿は外へ行くこと、もしくは外へ行けということを望むか」
「なっ」
二ヤリと笑うセルティに、驚くフィーリオナ。外などという場所へどうやって行くのか。それすらわからないというのに、なにを言っているのかと視線を向ける。
「その通りだな。シオンが戻らないなら、なんらかの事態が起きているということだ。それを解決するのに、今なら戦力的な意味でも問題がないだろ」
この世界を空けることはできない。その隙に攻められる可能性が高いからだ。
だからこそ、身動きが取れなかったのだが、今なら動くことができる。
「で、グレン君は外へ行ってみたいんだよね」
「よくわかってるな」
「わかるだろ。お前の性格を考えれば」
なにを言っているのかとシュレが見れば、グレンの表情が苦笑いに変わった。彼を自分側につけてよかったと思う。
自分をしっかりと見ていてくれるからこそ、任せることができるとも思った。だからこそ、外へ行くということもできるのだ。
問題であった外への行き方も、今回どうにかなりそうだとわかれば、動かずにはいられない。
この世界にとってシオンが大事というのもあるが、それ以上に彼は大切な友なのだ。助けが必要ならば、すぐにでも助けたいと思うのは当然のことだろう。
「外へはどう行くんだ? さすがに、あんたじゃ行けないんだろ」
行けたなら、もっと早くに動くこともできたかもしれない。
戦力的な意味でなら、自分を待たなくてもよかったはずだとクオンは問いかける。
「星の女神がいれば、外へ行ける。……入ってこい」
外へ向けて声をかけると、一人の少年が姿を現す。一体誰だと誰もが思う中、イリティスだけがまさかと言うようにグレンを見た。
「そのまさかだな。ここへ連れてきて二日でここまで成長した。場所的にも力が溢れているから、成長を促したのかもしれない」
精霊達から預かった、外から来た何者か。彼がそうだとグレンは頷く。
急激に成長したときは驚いたが、時がきただけだと思えた。彼が自分の本来いるべき世界へ戻る時が、今このときなだけだと。
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