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6部 星の女神編

顔合わせ2

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 気付いたグレンがシャルを見る。彼が話すべきと思ったのだ。

「俺は、リオン・アルヴァースの仲間であったカルノー・フィアラントの家系だ。女神との戦いの後、西へと移り渡った」

 なるほど、と呟くクオン。記憶の中を覗けば、なぜ西へ行ったのかもわかる。

 カルノー・フィアラントがあの人間と結ばれ、その結果なのだろうと。

「あとね、ソニアはバルスデの関係者じゃないんだ」

 フォーランと名乗ったことで、フィーリオナも記憶を遡るように考え込んでいた。西にいるということは、と考えてしまったのだ。

「私は、フォーラン・シリウスの家系ではなく、その妹の家系になります」

 次の瞬間、初耳だったという仲間達が驚いたように見る。

『生きてたのか……あいつ、妹はずっと死んだと思ってたぞ』

「はい。西に流れ着きました」

 再会することは叶わなかったが、兄が生きていることを信じていた妹。妹が死んでしまったと思っていた兄。

 当時ならば珍しいことではなかったな、とヴェガは呟いた。大陸間の移動が難しく、情報もまったく手に入らないからこそ、起きてしまう出来事だ。

 しんみりしたな、とヴェガが言えば切り替える。

「私ね。私はイリティス・アルヴァース。一応虹の女神ということになるのかしら。聖弓を所持しているわ。この子が相棒のシャンルーンよ」

『やかましい鳥だ』

『口悪が言うな!』

 金色の小鳥が抗議すれば、クオンが引きつった表情を浮かべた。

 記憶の中にあった賑やかなやり取り。それがこの先続くのかと思ったのだ。

「やめなさい、ルーン。今はそんなことしている場合じゃないわ」

『はーい。イリティスが言うなら、黙ってる』

 肩に乗ったままおとなしくする聖鳥に、ヴェガもこれ以上はというように引き下がる。

 さすがに騒ぐ場ではないと、理解しているのだ。

「精霊の巫女であるリーシュ・アルヴァースと、ヴェルトよ」

 どう紹介するのかと悩み、とりあえず本人に任せようとヴェルトを見るイリティス。

 彼の素性に関しては、言っても言わなくてもいいと思っていた。これからの戦いには関係のないことだから。

「……シュスト国第二王子、ヴェルト・ベルニュカス・スヴァルナだ。護衛騎士のトレセス・ブローディア」

 判断を任されたヴェルトは、どうするかと考え、素直に言うことを選んだ。隠したところでなにも言われないだろうが、隠すことでもないと思い。

 シュスト国の王子だと言われれば、さすがに四人ともが驚いたように見る。このような場で、一国の王子と会えるとは思わなかったのだ。

「ついでに言っておくと、あの国に未来はないぜ。そう遠くないうちに滅ぶだろうしな」

 あっさりと言われた言葉に、とんでもない王子だと苦笑いを浮かべたのはフィーリオナ。事実だったとしても、こうもあっさり言えるのかと思う。

「ヴェルトはフェーナ・ノヴァ・オーヴァチュアが使っていた聖剣を継いでいるし、精霊契約も行っている。普通の人間と比べれば、強さは保証できるわ」

 もっとも、共闘しているのだからわかっているだろう、とイリティスは笑った。

 クオンもヴェルトの実力は理解していた。彼は間違いなく強い。騎士団へ欲しいと思うぐらいには、気に入っていたのだ。

「こちらはこんな感じだな。そちらの自己紹介を頼もうか」

 一通り紹介はした、とグレンが言えば、確かにこちらの番だとクオンが頷く。セルティとイクティスもこちらとして話すのかは、微妙なところだなと思いながら。

「俺はクオン・メイ・シリウスだ。バルスデ王国、月光騎士団を束ねる団長で、新たな月神ということになるんだろ」

 相棒を見れば、ヴェガはニヤリと笑ってみせる。どうだろうなぁ、とでも言いたげに。

「めんどくせぇ奴だな」

『俺はそういう存在だ』

 諦めろと言えば、自分は紹介などいらないだろとチョコを食べる。

「いいコンビじゃない」

「どこがだよ」

 どことなく拗ねたようにそっぽむくクオンに笑うと、リーナは前を見た。

「私はリーナ・ノヴァ・オーヴァチュア。月光騎士団の副官で、星の女神ということになるのかな? 相棒はシャリーラン」

『リンって呼んで。よろしくなの』

 くるっと回ってみせる銀色の小鳥。そのままリーナの肩に乗るのを見ていれば、主には無条件で懐くのだろうかと思う。

 同時に、名前が違うことも気になる。イリティスが観察するように見ていると、リンは不思議そうに首を傾げた。

『あぁ……言いたいことはわかるぞ。その聖鳥は、リオンの聖鳥じゃねぇ。クオンの聖鳥だ』

 これでわかるだろ、というように言われれば、イリティスとグレンが頷く。十分に意味は通じたのだ。

 ヴェガがいたことで、聖鳥が変わることなど考えもしなかったのだ。

 しかし、実際にはリオンが死んだことで変わっていておかしくない。変わらないヴェガの方が普通ではないのだろう。

「で、お前の仲間は?」

 わかっていながら聞くグレン。自分はわかっているが、他の仲間達はわからない。

 それに、と思う。なにか知らない情報がやってくるかもしれないと。

「流星騎士団を束ねる団長、クロエ・ソレニムスだ。うちの家系に関しては、あなたの方がよくご存じだろ」

「そうだな。否定はしないが……これまた、堅物の家系になったな」

 話す姿を見ながら、誰の影響だと思う。自分が知っている二人だけでも、十分に堅物だったと言えるだけに、そういう家系になってしまったのではないかと思うほどだ。

「ソレニムス家は、ずっと堅物の集まりだったね」

 そういえば、とイクティスが言えば、アクアが笑う。

「ヴァルス君のせいかな? イェルクもヴァルス君を見てそうなったわけだし」

「かもな。やっぱ、あの鈍感堅物のせいか」

 困ったものだと呟く。死んでも、そこに存在が残っているから困るのだ。

「クロエは、騎士団内で一番の槍使いだぜ。俺も、勝ったことがねぇ……」

 未だに底が見えない奴、というのがクオンの気持ち。しかも、聖剣を使ってみせた。

(剣まで使えるなんて、どこまで完璧な奴なんだ)

 悔しくなるほどに、目の前にいる幼馴染みは完璧だ。目指す先は、この幼馴染みだと思うほどに。

「槍使わせたら、さすがに俺も苦労しそうだな」

 勝てないと言わない辺りが、セルティらしいとイクティスも笑う。

 言葉に嘘はない。セルティなら負けることはないだろうが、危ないというのも事実だ。自分でも、クロエとやるのは苦労するだろうと思っている。

 それほどまでに、彼は強い。なにを目指しているのだろうか、と思うほどに。

「ふむ……とりあえず、一度手合わせがしてみたいな」

 強いと知れば、手合わせがしたくなるのがグレン。始まったと笑うイリティスと、それは後にしろと睨むシュレ。

「グレン君がシュレを連れてきてよかったねぇ。脱線しないで済む」

 本気で思っているのかわからない言葉を言いながら、のんびりしているアクア。

 この夫婦は、とシュレの頬が引きつる。






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