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6部 星の女神編

話し合いの前に2

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 嘘から始まった旅ではあったが、絆を築き上げた。リオン・アルヴァースの記憶を持つからこそ、クオンは知っている。

 素直ではない彼が、ヴェガをどう思っていたのかを。

『この嘘を、シオンはリオンとの戦いが終わってしばらくしてから知った。ティアはなんでも話しちまうからな』

 必要があったというのもあるが、すべてを話してしまった。それによって、しばらくは荒れていたらしいとは、ヴェガも聞いて知ったことだ。

『まぁ、今はどうでもいいことだな』

「光の英雄と称される物語は、リオン・アルヴァースが死んでしまったことで起こった出来事です」

 続きを話せと言われ、リーシュは頷くと話し出す。

 シオン・アルヴァースとリオン・アルヴァース。二人の存在によって、辛うじて存続していた世界。その均衡が、崩れ落ちてしまったのだ。

「外の世界では異変を感じ、この世界を調べられていたようです。結果、女神の罪が明らかになり、壊そうという判断が下されました」

「勝手な話だな」

 不快だというようにクロエが言えば、リーナも同意する。自分達をおもちゃのように見られているようで、不快だった。

「それで、外が攻撃でもしてきたってことか?」

 ようやく外という意味を理解してきたクオン。この世界には外の世界がある。今回の敵はそれだと。

 理解すると同時に、そんなものに自分達の生活が脅かされているのかと憤りを覚える。

「外の者はこの世界を支える存在を排除しようとしました。太陽神はもちろん、その子供達。女神が残した力の欠片でもあった、一人の少女。すべてを排除し、この世界を壊すつもりだったのです」

 けれど失敗した。太陽神の攻撃は外から来た魔物には通じなかったが、子供達が持っていた力は絶大な力を発揮したのだ。

「待って、通じなかったの? それなら、クオンの力も通じないということになるじゃない」

 矛盾だと思えた。あの強い魔物は外から来たものではないのか、ともリーナは思う。

『あの当時は、シオンの力はまったく通じなかった。だから、正直グレンもまともに戦えてなかったらしい。だけど、今はこの世界が太陽神と月神の世界として成り立っている』

 外とからの魔物に対しても、この世界で戦う分には問題がないとヴェガは言った。外へ行ってしまうとわからないが、とも付け足す。

 太陽神が戻らない理由は、この辺りだと思っているのだ。

 さすがに、外へ出てしまえば力が下がる可能性はある。わかっていて、それでもヴェガは外へ行くことを提案するつもりだった。

 太陽神と共にいる聖獣を助けるために。

「それに、おそらくなのですが、太陽神の力はあの戦いで進化していると思われます。聖剣や聖獣の変化が、証明しているかと」

 母親である女神を倒すために戦った一戦。太陽神は力を変化させていた。聖剣はもちろん、聖獣の姿も変化していることから、外と戦える力へ変わったと考えられているのだ。

 それに伴う月神の変化もあるかもしれない。

『クオンの場合は、スレイの血族というのも大きいとは思う。スレイの力は通じてたらしいしな』

 自分が見てきたものではないだけに、その辺りは聞いた話で断言できない。見ていたらもっと違ったのかもしれないが、とヴェガは渋い表情を浮かべる。

「あー……思いだした。魂だけで戦ってたな」

『そうだ。リオンは魂だけの状態で女神と戦った』

 よく覚えていたなと言われれば、靄がかかっていた記憶だとクオンも返す。話を聞いて、急に靄が取れたと。

 歴史の裏で、決して語られることのない戦いがあった。この世界を創った女神との戦いだ。

「この世界を守るために、太陽神は女神メルレールを倒す戦いに向かいました。その際、女神がいた死者の魂だけが住まう地で、リオン・アルヴァースと再会しているということです」

 これを再会と言うべきなのかと思うが、本人であったことから間違いでもない、というのがリーシュの考えだった。

 魂だけの存在ではあったが、それでもリオン・アルヴァースに変わりはない。彼は彼の意思で、兄と共に戦った。

「言われると、ハッキリと思いだせるな。あぁ……あれが女神か」

 今までハッキリと見ることができなかった記憶の一部。それが明確に見えるようになり、クオンは真剣な表情で記憶を見る。

 女神との戦いと思われる風景。そこにはグレンもいれば、見知らぬ誰かもいた。

「なぁ……もしかして、この戦いってさ」

『いたぞ』

 なにが言いたいのか察したヴェガが言えば、クオンは無謀な先祖だとぼやくように言う。まさか、女神との戦いに参加していようとは思わない。

「女神との戦いに参加していたのは、グレン殿とヴァルス・ソレニムス、ジューリオ・ノヴァ・オーヴァチュア、ルフ・ペドラン、カルノー・フィアラントです」

 太陽神と月神の仲間達だと言われれば、納得できるような、呆れたような複雑な気分となる。

「このうち、詳細が語られていないのはソレニムス家とオーヴァチュア家です。おそらくですが、シュトラウス家と決めた結果ではないかと思います」

 他は語り継がれていることから、当時なんらかの話し合いをしているのではないか。わざと語り継いでいないのだろうと、リーシュは言う。

 それは間違いないだろうと、クロエも頷く。もしかしたら、家を完全に継ぐと知ることができるのかもしれない。

 自分の家系には、当主だけが知るなにかがあると、ずっと思っていたのだ。

「十分に考えられるな。シュトラウス家が情報のすべてを操作しているし」

 女王であっても、シュトラウス家の操作した情報しか知らないのが現状。どこまでもシュトラウス家が力を振るっているが、なぜか彼らが敵に回ることはないと言い切れる。

 国としては、シュトラウス家ほど信頼できる一族はいないのだ。

 シュトラウス家が厄介というよりは、クレド・シュトラウスが厄介なのかもしれない。フィーリオナはそんな風に考えていた。

 これらはすべて彼が行ったこと。カロル・シュトラウスも功績は多く残しているのだが、クレド・シュトラウスに比べれば普通ともいえる。

「とんでもないのを育てたものだな。お前の先祖は」

「どういう意味でしょうか」

 突然の言葉に、クロエがなにを言っているのかとフィーリオナを見た。

「そうか、知られていないのか。クレド・シュトラウスはシュトラウス家に養子入りする前、ヴァルス・ソレニムスが面倒を見ていたのだぞ」

 シュトラウス家としての功績が強いからか、今ではほとんど知られていない情報。それが養子入りする前の彼だ。

 ヴァルス・ソレニムスが拾った孤児で、現在はソレニムス家が援助している孤児院に預けられていた。

「その後、自らの意思で騎士となるためにバルスデにやってきたんだ」

 以降は、ヴァルス・ソレニムスの世話係りとして太陽神と月神の戦いに参加している。

「知らなかった。いや、父上なら知っている可能性があるか……」

 このような関りがあるとは思わなかったと、クロエは考え込む。







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