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6部 星の女神編

魔物との戦い

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 大量に現れた魔物達。これだけなら問題はどこにもない、と剣を抜くシャル・フィアラントは、真っ直ぐに前だけを見ている。

 後ろなど気にする必要はない。相棒は天空騎士団の副団長ソニア・フォーランなのだから、ただの魔物などに後れを取ることなどありえないこと。

 この程度の魔物で苦戦するなら、副団長などになることはできない。騎士団は実力主義なのだから。

「これで終わりではないわよね」

「だろうな。これは準備運動だろう。肩慣らしに足りるかどうか、わからないがな!」

 踏み込むと同時に、剣を一振りする。剣圧が目の前に迫る魔物を斬り裂くと、次には銀色の閃光と魔物の血が舞い上がった。

 好戦的になっているシャルは、そのまま魔物を屠っていく。

 それは見たことがない一面で、ソニアは彼でもあんな風に戦うのかと思ったほどだ。新しいことを知ったな、と思えば、負けるものかと剣を握り締める。

 たとえ彼であっても、騎士としては負けたくないと思う。自分にとって大切な、女神様を守るために強く在らねばならない。

 セイレーンとしては珍しく、剣を扱うソニア。これも、アクアを意識してのことだと知るのは限られる。天空騎士団長ルアナと女王ぐらいだ。

 夫となる英雄王は二刀流の魔剣士。あれほどの強さを得られなかったとしても、少しでも近づければと思ってのこと。

 セレンへ来てすぐ、英雄王との手合わせは有意義だったと思う。学ぶことが多く、自分への糧となる。

「ここを任された以上、守り切ってみせる」

 神官であるセネシオから教わった魔法を翼へ施す。戦闘中には便利だと教わったもので、弱点に成りえる翼を保護するものだ。

 神官騎士には、最低限の武力とサポート用魔法が必須。魔法の中には寒さ対策と翼の保護が含まれている。

 彼が知っていたのは謎であるような、当然であるような気分になったのは言うまでもない。どこまでも騎士を目指した神官なのだから。

「数が増えている気がする」

「そうね。無尽蔵なのかしら」

「だとすると、さすがに厄介だな」

 魔物はさほど強くないが、無尽蔵だとなれば話が違ってくる。体力的な問題がやってくるのだ。

 二人とも騎士として訓練を受けているため、ある程度は問題なく戦うことができるだろう。

 しかし、だからといって無尽蔵に戦うことができるわけではない。いつか限界はやってくるし、そのときまでこのままという保証はないのだ。

(他が先に終わることは期待できない。おそらく状況は似たようなものだ。そうなると、どこがどのような状況になっているかという問題だが)

 状況に合わせてグレンが動くことは知っているが、シャルは自分達の元へ来る可能性は低いと思っていた。

 正確に言えば、優先度は高い方ではないと思っていたのだ。

(やはり、ヴェルトとトレセスが一番か)

 自分達と同じで仮定すれば、戦力的な部分では人間二人であるあちらが低い。精霊契約と聖剣の力を合わせても、我流で鍛えた剣術が傭兵や騎士よりは劣ってしまうのだ。

 こればかりは、経験などもあるだけに今は仕方ないと思っている。

(その次がここだろうな。あの傭兵組は問題がない)

 さすがだと言わざる終えない傭兵組。グレンと組んでいるだけあるな、と思ってしまったほどだ。

 それでも、と視界の片隅に中心部を捉えながら渋い表情を浮かべる。

 すべてはグレンが動ける状態であることが前提だ。あちらにも魔物が現れていれば、動ける可能性は低くなる。街には戦えない住民が多くいるのだから。

(やれやれ……長い夜になりそうだ)

 まずは、この魔物が無尽蔵に出てくる原因を突き詰めなくてはいけないな、と鋭く見る。

「ソニア…」

「わかってる。無尽蔵に出てくるからくりね」

 まずは魔物が増えていくのを止めなければいけない。物体なのか、物体ではないのか。魔法の類なら、自分達でどうにかできるかという問題も出てくる。

 止めることができなかったとして、それでも原因がわかっているのとわかっていないのでは、まったく違うのだ。

「誰かしら援軍が来るとして、すぐではないと頭に入れておけよ」

「えぇ」

 それもわかっているとソニアが言えば、あとは言葉などいらないと剣を振るう。

 彼の強さを知ってしまった今、この場を切り開けると信じているのだ。シャルさえいれば、問題ないという揺るぎない信頼があった。

 状況に変化が起こったのは、天空城から白銀の光が立ち上ったときだ。急に黒い球体が現れ、無数の魔物が出てくるようになった。

 これが、無尽蔵に現れるからくりかと二人が見るも、目の前には魔物が溢れている。単体として弱くても、ここまで数がいると近づけない。

 そして、嫌なことに魔物は尽きることなく現れる。

「これは……魔物が住居区に行かないようにするしかないわね」

「……そうだな」

 聖槍を使えば突破できるだろうが、その後なにが起きるかわからない以上は使えない。通常より強い魔物が現れる可能性があるからだ。

 今のままでは防ぐことに徹するしかないか、と思った辺りで考えを改めることにする。

「ご足労かけて申し訳ない」

「気にするな」

 金色の炎が魔物を燃やすのを見て、こちらを助っ人先と決めたグレンに感謝した。これであの球体をどうにかすることができる。

 魔物が増えることだけは防ぐことができるだろう。気がかりは、他が大丈夫なのかということぐらい。特に、ヴェルトとトレセスが。

 同じような現象が起きていれば、対処不可なのではないかと思うのだ。

「安心しろ。お前が一番気にしているところは、月神がいる。シュレのとこはバルスデの騎士。つまり、手薄はここだけだ」

 考えを察したグレンが言えば、なるほどとシャルは頷く。知らないうちに状況が変わっていたようだ。

 想定外な戦力がいたのかと思えば、ありがたいことだと思う。バルスデの騎士なら、戦力としては問題がない。月神もだ。

(つまり、さっきのあれはヴェガか……)

 聖獣が主の元へ向かった証だろう。グレンが動いたということは、今のところ街も問題がないということ。

「街中はどうしているのですか」

 神出鬼没な魔物である。グレンがこちらに来たら、もしものときに困るのではないのか。

 ソニアが問いかければ、大丈夫と笑ったのはアクアだ。

「よくわかんないんだけどね、助っ人が来たんだよ。あれ、リーシュが頼んだみたい」

 笑いながら言えば、ソニアは意味がわからないと言いたげにしていたが、シャルには通じていた。

「あの人が来ているなら問題ないでしょう」

 誰が来ているかわかるだけに、後方を気にしなくていいとシャルの一言が、ソニアを納得させる。






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