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6部 星の女神編

セレンの情報2

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 カロル・シュトラウスとは、三千年前にシュトラウス家当主だったハーフエルフ。貴族制度であった当時、貴族としても、騎士としても頂点に立つ人物だった。

 前当主は子供を授かることができず、ハーフエルフの子供を養子として引き取ったと言われている。さすがになぜだったのか、などは知られていない。

 長きに渡って国へ忠誠を誓っていたが、個人的に英雄王へ忠誠を誓い、同行していったのだ。

「そうだったのか。シュトラウス家は情報が一般的なことしか出ないから、知らなかったぜ」

 お前は、とクオンが視線を向ければ、クロエも同意するように頷く。

「シュトラウス家は、歴代の当主の名は出ているけれど、奥方は知られていない。だから、奥方がエルフの血を引くのかと思っていた。当時なら、養子が有名だったかもしれないがな」

 そのあと、さらに養子として引き取られた人物がいる。すべて彼が情報操作をしていることから、その辺りも操作されている可能性は高い。

 貴族制度から騎士制度に変わったのも大きいだろう。これによって、騎士になれなかった貴族は一般市民まで落ちている。

「なるほど。私は王家としての知識を教わるから、気にしていなかった」

 教育係として入ってくる者は、シュトラウス家が手配しているのだ。これも意味があったのかと思う。

「たまには、外の者と話してみるか。イクティスやセルティと話していると、それが当たり前だと思ってしまう。だが、あの二人だからな」

 自分にも嘘を言っている可能性があるな、と苦笑いを浮かべるフィーリオナ。

「でしょうね。ほんと、昔から知っているけど嫌な二人だ」

「……」

「……」

 クロエの言葉に、クオンとリーナは本音が駄々洩れだぞと言いたげに視線を向ける。

 どうにも、国から離れているからか素が出るようになってきた。本音を誤魔化すことなく投げつけてくるから、さすの二人もいいのかと思う。

 一緒に女王が同行しているということを忘れていないか、少しばかり心配になってくるというもの。

「クロエ……素が出てきてないか?」

「それは失礼しました」

 絶対に思っていない。クオンとリーナが同時に思うと、話を戻そうとクロエを見る。このままだと、彼はなにを言いだすかわからないと思ったのだ。

 どれだけ気さくに話せたとしても、女王に失礼なことをするわけにはいかない。

(あいつが一番わかってるはずなんだけどな)

 らしくないな、とクロエを見ながら思うクオン。

 とりあえず、傭兵組合にいるシュトラウス家だと話を戻す。知っているのかとフィーリオナを見れば、知らないと首を振る。

「さすがに、私は知らない。イクティスなら知っていただろうけどな。やり取りをしているかはわからないが、東にもシュトラウス家の者がいるならば、イクティスが調べているはずだ」

 それもそうだな、とまたもや三人が納得して頷く。イクティスが知らないなど、あり得ないと思えたのだ。
 
 イクティス・シュトラウスとセルティ・シーゼルは、自分達の常識で考えてはいけない。そういった存在なのだ。

「情報操作がされているからこそ、南からセレンへ行けるのも知られていなかったのか。クロエでも調べられないことがあるんだな、と思ってたが」

「シュトラウス家じゃ当然ね」

 あの家を出し抜くのは難しい。長く生きればできるかもしれないが、クロエは人間である以上、イクティスのように長く生きることもできないのだ。

「なにかひとつでも出し抜ければいいだろ」

 出し抜きたいのか、とリーナが呆れる。そことは張り合っても仕方ない、と思っているほどだ。

 商人の情報は期待できないと、クロエは話しだす。リザの家も商人だが、リザ本人は後継ぎではないことから、あまり知らないと言っていたからだ。

「小さい頃から、ここには出入りしていたようだが」

 だからこそ、知っていることもあるし、移住もできたと言える。

「跡目だけに伝えることがある、というわけだな。裏に傭兵組合とシュトラウス家がいるなら、商人もただの商人ではないか、傭兵組合となんらかの契約をしているかだろうが」

 その辺りを聞き出すことは無理かと空を見上げるフィーリオナ。

 気になっていたのだ。セレンに来たのは二度目だが、あのときは一日中青空だった。夜空など見たことはない。

「昼間に見た通り、この地で作られた魔力装置を売って、それで手にしたお金で買う、ということらしいな。三日間だけだが、たまに伸びることもあるらしい」

 伸びるときは、大体が太陽神と英雄王の手合わせが広場で行われるから。

 そのときは夜がくるから、という意味不明な理由だとクロエが言えば、クオンとリーナが同時に首を傾げた。なにを言っているのかというように。

「私が即位前に来たとき、セレンは一日中青空だった。そうか、この星空もクオンの影響か」

 空を見上げたままフィーリオナが言えば、三人も星が輝く空を見た。

 当たり前のように見ていた夜空が見られない地。それが見られるようになった。クオンの影響ということは、この地は神の力に影響されるということだろうか、と思わず考えてしまう。

「月神が戻ってきたことで、この地に夜がくるようになったということだろ。深く気にする必要はないのではないか」

 ひとまず、この件はなにも問題がない。少なくとも自分達はだと。

「この地に暮らす者達は、パニックだろうがな」

 夜がこないことが当たり前であったなら、突然暗くなった空に住民がパニックになったはずだ。

 見回りをしていたのも、もしかしたら住民のためなのかもしれない。

 太陽神と英雄王さえいれば、セレンはどこよりも安全だ。魔物などの脅威に晒されたことはないはずだと言い切れた。そもそも、ここに魔物がいるのかもわからない。

「パニックはどうやって収めたのかな」

「英雄王の妻だろうな。西の歌姫だった方だ」

 その歌声はすべてを癒し、動物を魅了すると言われていた。間違いないだろうとフィーリオナが言う。

 夜が来ない理由は、元からの住民にでも聞かないとわからない。聞いたところで答えてもらえないだろうと思えば、最終的には虹の女神と会うのだから、そのときでいいと後回しにする。

 リザは天空城にいる客を知っていた。月終わりの商人以外は誰も来ない地。見慣れない人がいればすぐにわかることから、まとめ役から情報が流れてくるのだと言う。

「それ、商人の情報は?」

 つまり、自分達が情報外となるのでは、とリーナが不安げに問いかける。

「商人の情報は正確ではないそうだ。特に護衛はな。情報はある程度伝わっているが、伝わっていない者がやってくることは珍しくないということだ」

 それって、とリーナがなんとも言えない表情を浮かべた。密航している者がいるのではないか、という考えが思い浮かんだのだ。

「俺も思った。今のところ、問題は起きていないらしいから、英雄王が対応しているのかもしれないが」

 情報にない人物を見かけることもある。だからこそ、自分達は今救われているのだが、いいことばかりではないということもわかった。

 問題が起きていないから、とリザは気楽にしていたが、裏で対応している者がいるということだ。それは英雄王ではないのか、とクロエも思うところ。






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