168 / 276
4部 女神の末裔編
シュスト国2
しおりを挟む
「なんだ、ぞろぞろと……ヴェンか」
困惑したように見る人達を尻目に歩いていれば、この辺りをまとめている老人が現れた。
突然消えた青年に、驚いたように見てくるから頷く。見間違いでも別人でもないと告げるように。
「どこへ行っていたんだ」
「砂漠越えをしててな。なにがあって、こうなったのか教えてくれねぇ」
今の状況を教えてくれと言えば、どうしたものかと悩む老人。彼を疑うわけではないが、話していいかは別問題だ。
なにせ、老人達からすればヴェルトはどこの者かわからない子供だ。突然現れて、ここを遊び場にしていた子供。そして突然いなくなった。
自分達の害となる存在ではないと思っていたから、ここへ立ち入ることを許していただけ。
「爺様、それ以上はダメだ。こいつが俺達にとって害がなかったのは、いなくなる前までだ。別地区に住んでるに決まってる」
「そうだ!」
別地区、という言葉に眉を顰めるヴェルト。城下が地区分けされているなど聞いたこともなかったのだ。
つまり、民の間で地区分けされているということ。なぜそうなっているのかはわからないが、地区ごとで争いになっているのかもしれない。
別地区で暮らしていて、密偵とでも思われている。状況がわかれば、どうするかなと考え始めた。身分を明かすのは避けたいところ。
(信頼が得られなければ、そのときはやるが……)
彼らしか深い交流がないだけに、ここを拠点にして動きたいと思っている。
「……おじいさん、私達は別地区に暮らしてなどいません。砂漠を越えていたのも事実です。ですが、これ以上のことを伝えることはできません。あなた方がこちらを完全に信じてくれないのであれば、当然話すことなどできません」
口調は穏やかだが、彼が静かに話すことほど恐ろしいことはないとヴェルトは知っていた。
威圧を与えているわけでもないのに、なぜか威圧を感じる。老人は年の功だろうか、察していた。目の前にいる人物は、今とてつもなく機嫌が悪いと。
「なんなんだよ、てめぇ!」
「やめるんだ!」
若者が一人、トレセスへ掴みかかる。慌てたように老人は呼びかけたが、すでに遅い忠告だ。
トレセスは腕を掴み、軽々と捻り上げていた。
「やめろ、トレセス。お前が本気でやれば、腕が折れる」
さすがに手を抜いているだろうが、これ以上は止めておかないと本気で折る。
彼は任を解いたとはいえ、護衛騎士という肩書きを持つ騎士だ。自分を守るために動くことを当然とする。
「……わかりました」
渋々という表情を浮かべると、トレセスは若者の腕を離す。けれど、穏やかに見せていた表面的な姿は完全に消えてしまった。
「お前、意外とキレやすいか?」
思わぬ行動に、アシルが驚いたように見ている。彼がこのようなことをするとは、さすがに想定外なこと。もっと落ち着いたタイプだと思っていたのだ。
「時と場合によります」
言われた言葉に苦笑いを浮かべるのはヴェルトだった。今はその時ではないと思っているのだが、彼の行動は大体わかっているのでなにも言わない。
どうしようかと考えていたが、トレセスのこれによって考えるのも面倒になった。
「長老、連れが悪かったな」
「いや、こちらも悪かった。まさか、お前さんが王子だったとはな」
衝撃的な言葉に、それまで敵意を見せていた若者が真っ青になる。
ヴェルトが王子となれば、掴みかかった相手は護衛となるからだ。やり返されて当然どころか、命があるのは奇跡だとすら思う。
「……なんでバレてんだよ」
「先程の言葉でわかった。第二王子、でよいのかな」
トレセスへの一言でそうではないかと思った。言われてしまえば、これは仕方ないと笑う。
間違いなく、あの瞬間だけ王子として言葉を発してしまったとわかっている。若者ぐらいなら誤魔化せるだろうが、この老人に見抜かれても不思議ではない。
「間違いない。ヴェルト・ベルニュカス・スヴァルナだ。任を解いたはずの護衛騎士と、傭兵組合の者達」
連れている仲間の紹介をすれば、老人は一通り見たあとに頷く。
「さて、今まで表に立つことのなかった第二王子が、この時期に何用だろうか」
「あぁ、王位なんて継がねぇからな。俺を縛れるのは精霊の巫女だけだ」
さすがに惚れた女と言うことはできなかった。女のために王位を捨てたとこの場で言えば、彼らからの情報協力は得られなくなる。
惚れている女が精霊の巫女なのだから、嘘は言っていないとヴェルトは長老を見る。
「精霊の巫女か……あの美しい女性のことか?」
「いや、それは先代だ。すでに亡くなっている」
長老が先代の巫女を知っていたことに驚きながらも、ヴェルトは巫女が代わっていることを伝えた。
なぜと聞こうかと思ったが、聞くことはしない。自分が抜け出して出会ったとき、精霊の巫女が通っていた道は裏道だった。
つまり、そういうことなのだろう。
「そうか。亡くなられたのか……。儂は一度だけお会いした。言っておったよ、救いの星は風の加護と共に戻ってくるとな」
意味はわからなかったが、いつの日か救いが来ると言われていることは理解したと言う。
「今が、そのときなのだろうな」
真っ直ぐに見てくる長老に、どうだろうなとヴェルトは濁す。自分がそうだとは思っていないのだ。
「長老、一歩引き下がってこいつが王子だと認めて、救いの星とは思えない。王族だぞ」
王族が自分達を助けてくれるわけない。若者が言えば、聞いていた者達がそうだと声を上げる。
それだけでわかるのは、民の暮らしを苦しめているのが兄だということ。
若者の言葉に、再びトレセスが苛ついていること察しながらも、ヴェルトは聞き流すことにした。言われている言葉の意味はわかるからだ。
今まで王族がしてきたことを考えれば、こう言われることこそ当然のこと。
「別に、お前らがその態度でいくなら放置してもいい。ここを遊び場にさせてもらったから、どうにかしようと思ったが」
王族だとわかったら態度が変わるなら、リーシュの元へ戻る。本来、ヴェルトはリーシュのためになること以外するつもりがない。
協力することを拒まれたら帰るつもりでいたのだ。
「愚か者が王になって滅ぶか、それとも精霊達に滅ばされるか……。足掻く気がないならそれまでだ」
精霊達も限界が近い。本気で南を滅ぼすかもしれないと、ヴェルトは思っていた。
基本的には従っているが、独断で動かないわけではないということを、ヴェルトは聞いて知っている。契約した精霊が言っていたのだ。
「精霊達はお怒りってわけか」
「精霊がお怒りだなんて、お前にわかるわけねぇだろ!」
アシルがニヤッと笑う。王族が王族なら、民も民なのかもしれない。だから精霊達は南が嫌いなのだろうと、なんとなく理解したのだ。
・
困惑したように見る人達を尻目に歩いていれば、この辺りをまとめている老人が現れた。
突然消えた青年に、驚いたように見てくるから頷く。見間違いでも別人でもないと告げるように。
「どこへ行っていたんだ」
「砂漠越えをしててな。なにがあって、こうなったのか教えてくれねぇ」
今の状況を教えてくれと言えば、どうしたものかと悩む老人。彼を疑うわけではないが、話していいかは別問題だ。
なにせ、老人達からすればヴェルトはどこの者かわからない子供だ。突然現れて、ここを遊び場にしていた子供。そして突然いなくなった。
自分達の害となる存在ではないと思っていたから、ここへ立ち入ることを許していただけ。
「爺様、それ以上はダメだ。こいつが俺達にとって害がなかったのは、いなくなる前までだ。別地区に住んでるに決まってる」
「そうだ!」
別地区、という言葉に眉を顰めるヴェルト。城下が地区分けされているなど聞いたこともなかったのだ。
つまり、民の間で地区分けされているということ。なぜそうなっているのかはわからないが、地区ごとで争いになっているのかもしれない。
別地区で暮らしていて、密偵とでも思われている。状況がわかれば、どうするかなと考え始めた。身分を明かすのは避けたいところ。
(信頼が得られなければ、そのときはやるが……)
彼らしか深い交流がないだけに、ここを拠点にして動きたいと思っている。
「……おじいさん、私達は別地区に暮らしてなどいません。砂漠を越えていたのも事実です。ですが、これ以上のことを伝えることはできません。あなた方がこちらを完全に信じてくれないのであれば、当然話すことなどできません」
口調は穏やかだが、彼が静かに話すことほど恐ろしいことはないとヴェルトは知っていた。
威圧を与えているわけでもないのに、なぜか威圧を感じる。老人は年の功だろうか、察していた。目の前にいる人物は、今とてつもなく機嫌が悪いと。
「なんなんだよ、てめぇ!」
「やめるんだ!」
若者が一人、トレセスへ掴みかかる。慌てたように老人は呼びかけたが、すでに遅い忠告だ。
トレセスは腕を掴み、軽々と捻り上げていた。
「やめろ、トレセス。お前が本気でやれば、腕が折れる」
さすがに手を抜いているだろうが、これ以上は止めておかないと本気で折る。
彼は任を解いたとはいえ、護衛騎士という肩書きを持つ騎士だ。自分を守るために動くことを当然とする。
「……わかりました」
渋々という表情を浮かべると、トレセスは若者の腕を離す。けれど、穏やかに見せていた表面的な姿は完全に消えてしまった。
「お前、意外とキレやすいか?」
思わぬ行動に、アシルが驚いたように見ている。彼がこのようなことをするとは、さすがに想定外なこと。もっと落ち着いたタイプだと思っていたのだ。
「時と場合によります」
言われた言葉に苦笑いを浮かべるのはヴェルトだった。今はその時ではないと思っているのだが、彼の行動は大体わかっているのでなにも言わない。
どうしようかと考えていたが、トレセスのこれによって考えるのも面倒になった。
「長老、連れが悪かったな」
「いや、こちらも悪かった。まさか、お前さんが王子だったとはな」
衝撃的な言葉に、それまで敵意を見せていた若者が真っ青になる。
ヴェルトが王子となれば、掴みかかった相手は護衛となるからだ。やり返されて当然どころか、命があるのは奇跡だとすら思う。
「……なんでバレてんだよ」
「先程の言葉でわかった。第二王子、でよいのかな」
トレセスへの一言でそうではないかと思った。言われてしまえば、これは仕方ないと笑う。
間違いなく、あの瞬間だけ王子として言葉を発してしまったとわかっている。若者ぐらいなら誤魔化せるだろうが、この老人に見抜かれても不思議ではない。
「間違いない。ヴェルト・ベルニュカス・スヴァルナだ。任を解いたはずの護衛騎士と、傭兵組合の者達」
連れている仲間の紹介をすれば、老人は一通り見たあとに頷く。
「さて、今まで表に立つことのなかった第二王子が、この時期に何用だろうか」
「あぁ、王位なんて継がねぇからな。俺を縛れるのは精霊の巫女だけだ」
さすがに惚れた女と言うことはできなかった。女のために王位を捨てたとこの場で言えば、彼らからの情報協力は得られなくなる。
惚れている女が精霊の巫女なのだから、嘘は言っていないとヴェルトは長老を見る。
「精霊の巫女か……あの美しい女性のことか?」
「いや、それは先代だ。すでに亡くなっている」
長老が先代の巫女を知っていたことに驚きながらも、ヴェルトは巫女が代わっていることを伝えた。
なぜと聞こうかと思ったが、聞くことはしない。自分が抜け出して出会ったとき、精霊の巫女が通っていた道は裏道だった。
つまり、そういうことなのだろう。
「そうか。亡くなられたのか……。儂は一度だけお会いした。言っておったよ、救いの星は風の加護と共に戻ってくるとな」
意味はわからなかったが、いつの日か救いが来ると言われていることは理解したと言う。
「今が、そのときなのだろうな」
真っ直ぐに見てくる長老に、どうだろうなとヴェルトは濁す。自分がそうだとは思っていないのだ。
「長老、一歩引き下がってこいつが王子だと認めて、救いの星とは思えない。王族だぞ」
王族が自分達を助けてくれるわけない。若者が言えば、聞いていた者達がそうだと声を上げる。
それだけでわかるのは、民の暮らしを苦しめているのが兄だということ。
若者の言葉に、再びトレセスが苛ついていること察しながらも、ヴェルトは聞き流すことにした。言われている言葉の意味はわかるからだ。
今まで王族がしてきたことを考えれば、こう言われることこそ当然のこと。
「別に、お前らがその態度でいくなら放置してもいい。ここを遊び場にさせてもらったから、どうにかしようと思ったが」
王族だとわかったら態度が変わるなら、リーシュの元へ戻る。本来、ヴェルトはリーシュのためになること以外するつもりがない。
協力することを拒まれたら帰るつもりでいたのだ。
「愚か者が王になって滅ぶか、それとも精霊達に滅ばされるか……。足掻く気がないならそれまでだ」
精霊達も限界が近い。本気で南を滅ぼすかもしれないと、ヴェルトは思っていた。
基本的には従っているが、独断で動かないわけではないということを、ヴェルトは聞いて知っている。契約した精霊が言っていたのだ。
「精霊達はお怒りってわけか」
「精霊がお怒りだなんて、お前にわかるわけねぇだろ!」
アシルがニヤッと笑う。王族が王族なら、民も民なのかもしれない。だから精霊達は南が嫌いなのだろうと、なんとなく理解したのだ。
・
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる