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3部 永久の歌姫編
簡易星視3
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執務室まで来ると、セネシオがノックをする前に突撃するアクア。
さすがに数秒ほど固まったが、彼女はこうなのだと納得して中へ続く。気にしていたらきりがないと思ったのかもしれない。
「失礼します、陛下」
「セネシオも一緒だったのですね」
慣れたように突撃したアクアを受け止める女王に、さすがだと笑う。
「はい。ここへ来る途中で会いまして」
どう見ても年下に見えるアクアだが、彼女でも真面目な表情を浮かべることがあるのだろうか。そんなどうでもいいことが気になりながら、セネシオは女王の前まで行く。
「アクア様は星視の件ですよね。エトワール神殿からは、いつでも可能との回答がきております」
「そっかぁ、じゃあ向かおうかな。ついでに護衛一人もらっていい?」
護衛嫌いなアクアが護衛を増やしたいと言えば、なにか変なものでも食べたかというように三人ともが見た。
「なんか、あたしがどう見えてるのかわかった気がする」
今まで自分がこう見えていたんだな、とようやく理解した瞬間だ。
女王としては護衛を増やしたいという願いは、ありがたいと思っている。元々は、一人ではなくもっとつけたいところなのだ。
「シャルが引き受けてくれたら、お願いしたいんだけどいいかな?」
「シャル…シャル・フィアラントですね。それは構いませんが」
いつの間に交流をとっていたのかと思う。ハーフエルフの所属する騎士団と接点はなかったはずだ。
女王の中で護衛としてハーフエルフは選択肢になかった。お転婆アクアを護衛するには、飛べないことが問題になるかもしれないと思ってのことだ。
実際、空を逃げ回るということも過去にはあった。飛べなければどこかに逃げられてしまうわけで、一人のときに魔物と遭遇したらと思えば、飛べることが護衛の必須条件だ。
(けれど、ソニアもいるのだからハーフエルフでも構わないわね)
飛べる者と飛べない者。これは悪くない組み合わせかもしれないと思う。
地上戦には慣れさせているが、それでもセイレーンでは対応できないことも出てくるだろうから。
「セネシオも一緒に行けばいいんじゃね。こいつ、強いぞ」
それまで聞いているだけだったシルベルトが言えば、いいですねと笑いながら言うセネシオ。
「ついでに、星視を見学してもよろしいでしょうか?」
「シアがいいって言えばな」
どうするかとシルベルトの視線が問いかければ、女王はアクアを見る。まずは彼女の判断が先だと思ったのだ。
なにせ、護衛が多いのを嫌う女神様だ。嫌と言われればそこまでの話になってしまう。
「えっと……いいの?」
予言者を連れ出していいのか。アクアの言葉にはそんな意味が含まれている。
「構わねぇよ。俺がここにいる間、ずっとここにいなきゃいけないわけじゃねぇし」
強さは間違いがないから、そう簡単にやられたりもしないと彼は言う。
なによりも、予言者という能力は役立つとも言った。魔物の接近を前もって知ることが可能なのだと。
「予言は先のことを知ることができる能力だからな」
ソル神殿は予言者からの情報で魔物討伐を行っていた。さすがにアクアでも想定外のことだ。
「星視と同じですよ。簡単な星視は星があればいつでもできるでしょう。私も同じように、簡単な先視ができるのです」
予言とは結局のところ、先を読み解く能力だと彼は笑う。わかっていたのではないのかと言うように。
もちろん、アクアもなんとなくだがわかっていた。現在を見る星視と同じで、予言とは先を視る能力なのだろうと思っていたのだ。
似た能力だからこそ、感じ取ったと言えるだろう。
「ですから、ご一緒して損はないと思います。なによりも、戦えますから」
どうですかと言うように見られれば、アクアはどうしようかと考える。確かに彼を連れていけたらな、と思ったのは事実だ。
だからといって、本当に連れていいものなのか悩むところ。
「私がいると、なにかしらの影響はあるかもしれませんよ」
ニッコリと笑いながら言うと、アクアはハッとしたように見た。自分がなにを考えていたのか、彼は気付いていたのだ。
「そうだね……確かにあるかもしれない」
「決まりですね」
先を視る予言者を同席させて星視をしたら、なんらかの影響が出るかもしれない。これならソル神殿へ行く必要もないだろう。
二人の間で話が決まったのを確認すると、女王は星視の同席許可を出した。会話の流れからしても、必要と思われたからだ。
「問題は武器かな」
持って来てないんだよね、とアクアが言えば、セネシオは頷く。さすがに外へ出るとは思っていなかっただけに、今回は持っていないのだ。
「取りに行ってやるよ。今日中に出るわけじゃないだろ」
道を使わないことはわかりきっている。ならば旅支度が必要となってくるのだ。
支度をする時間を必要とすれば、早くて明日の朝だろうとシルベルトが言った。だから、夜中にこっそり取りに行けばいいと。
「そうですね。その間に旅装の服を買いに行きましょう。神官の服装は動きずらいですから」
「あたしはシャルのとこ行ってくるよ。明日は五時に裏門でいいかな」
表から堂々と行ってもいいが、さすがにセネシオを連れていくなら裏がいいかと思った。姿を見せてしまっているだけに、武器を持つ姿を見せるのはよくないと思ったのだ。
それにたいしてシルベルトが頷く。神官が武器を持つところなど見せられないと。
すべて決まると、ソニアの案内でシャルの元へと向かうアクア。彼から了承がもらえなければ、ルアナと相談する必要がある。
セネシオが行くとなるなら、やはりもう一人は護衛が必要だ。ソニアだけで行くことはできない。
「こちらが…」
「アクア様? どうされたんですか」
ハーフエルフで構成されている魔騎士団。ここにセイレーンが来ることは珍しく、二人が姿を現すとざわつきだすハーフエルフ達。
騒ぎになれば、シャルが慌てたように寄って来た。
「あっ、よかったー。シャルに用があったんだ」
この騒ぎが気にならないのか。内心突っ込みつつも、冷静になれと言い聞かせる。自分があたふたするわけにはいかない。
「護衛としてついてきてほしいんだけど」
「俺をですか?」
「うん」
即答されると、彼女に選ばれたことは嬉しくなる。同時に、自分でいいのかとも思う。セイレーンの方がいいのではないかと。
己の実力に関して、天空騎士に劣るとは思っていない。けれど飛べないという点では、自分ではどうにもできないことだ。
迷ったように考える姿を見て、アクアも不安そうにシャルを見た。なにか問題があるのかもしれないと思ったのだ。
「これは、歌の女神様かな。私は団長のイジャーク・ウルムと申します」
団長が姿を現したのを見て、アクアは騒ぎになっているとようやく気付いた。
これはさすがに困らせすぎたかもしれない。珍しくも反省してみたが、イジャークは気にするなと言う。アクアが来たから騒いでいるわけではないと。
「セイレーンが来ること自体が珍しいですからな」
それで用件はと問われれば、シャルを借りたいと素直に言う。エトワール神殿へ行くために、護衛を増やしたいのだと。
「いいではないか。行ってこい、シャル。シャルがいいのですよね」
「うん。ソニアとも知り合いだし」
知っている人の方がいいとアクアが言えば、シャルもわかったと同意した。求められていることに、ソニアを休ませたい、が含まれると気付いたのだ。
(俺にくるはずだ……)
付き合いが長いだけに、ソニアの性格は理解している。職務中だと休まないのだろう。
「これは強いですぞ。必ずお役に立ちますから、安心してください」
イジャークが言えば、ハードルを上げるなとシャルが睨む。どうやら、肩書きは違うが仲良しらしい。
旅は長いし、その辺りも聞いてみたいかもとアクアは思うと、必要最低限の連絡事項だけしてその場を後にした。
さすがにずっと見られているのは居心地が悪い。
「そんなに交流ないの?」
「合同訓練はしていますが、天空騎士の訓練場でやりますからね。あちらで見ることはないのと、たぶん騎士じゃないからですよ」
騎士団に所属しているだけあって、騎士の女性は気が強い者が多い。アクアは見た目からして、そんな騎士達とはまったく違うことから、注目されてしまったのだろうということだ。
「なるほどねぇ」
神官に会うこともあまりないのかと呟けば、それもそうかと一人で納得する。
おそらく、遠征は天空騎士のみで行くのだろう。ここには馬があまりいないから、移動が不便なのが原因で。そうなれば、騎士のセイレーンばかり見ていることになる。
(あたしから見ても、騎士団の人達は怖いかな……)
性格がきついのばかりだと知っているだけに、苦笑いを浮かべながら戻った。明日には出るのだから、すぐにでも旅支度をしなくてはいけないのだ。
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さすがに数秒ほど固まったが、彼女はこうなのだと納得して中へ続く。気にしていたらきりがないと思ったのかもしれない。
「失礼します、陛下」
「セネシオも一緒だったのですね」
慣れたように突撃したアクアを受け止める女王に、さすがだと笑う。
「はい。ここへ来る途中で会いまして」
どう見ても年下に見えるアクアだが、彼女でも真面目な表情を浮かべることがあるのだろうか。そんなどうでもいいことが気になりながら、セネシオは女王の前まで行く。
「アクア様は星視の件ですよね。エトワール神殿からは、いつでも可能との回答がきております」
「そっかぁ、じゃあ向かおうかな。ついでに護衛一人もらっていい?」
護衛嫌いなアクアが護衛を増やしたいと言えば、なにか変なものでも食べたかというように三人ともが見た。
「なんか、あたしがどう見えてるのかわかった気がする」
今まで自分がこう見えていたんだな、とようやく理解した瞬間だ。
女王としては護衛を増やしたいという願いは、ありがたいと思っている。元々は、一人ではなくもっとつけたいところなのだ。
「シャルが引き受けてくれたら、お願いしたいんだけどいいかな?」
「シャル…シャル・フィアラントですね。それは構いませんが」
いつの間に交流をとっていたのかと思う。ハーフエルフの所属する騎士団と接点はなかったはずだ。
女王の中で護衛としてハーフエルフは選択肢になかった。お転婆アクアを護衛するには、飛べないことが問題になるかもしれないと思ってのことだ。
実際、空を逃げ回るということも過去にはあった。飛べなければどこかに逃げられてしまうわけで、一人のときに魔物と遭遇したらと思えば、飛べることが護衛の必須条件だ。
(けれど、ソニアもいるのだからハーフエルフでも構わないわね)
飛べる者と飛べない者。これは悪くない組み合わせかもしれないと思う。
地上戦には慣れさせているが、それでもセイレーンでは対応できないことも出てくるだろうから。
「セネシオも一緒に行けばいいんじゃね。こいつ、強いぞ」
それまで聞いているだけだったシルベルトが言えば、いいですねと笑いながら言うセネシオ。
「ついでに、星視を見学してもよろしいでしょうか?」
「シアがいいって言えばな」
どうするかとシルベルトの視線が問いかければ、女王はアクアを見る。まずは彼女の判断が先だと思ったのだ。
なにせ、護衛が多いのを嫌う女神様だ。嫌と言われればそこまでの話になってしまう。
「えっと……いいの?」
予言者を連れ出していいのか。アクアの言葉にはそんな意味が含まれている。
「構わねぇよ。俺がここにいる間、ずっとここにいなきゃいけないわけじゃねぇし」
強さは間違いがないから、そう簡単にやられたりもしないと彼は言う。
なによりも、予言者という能力は役立つとも言った。魔物の接近を前もって知ることが可能なのだと。
「予言は先のことを知ることができる能力だからな」
ソル神殿は予言者からの情報で魔物討伐を行っていた。さすがにアクアでも想定外のことだ。
「星視と同じですよ。簡単な星視は星があればいつでもできるでしょう。私も同じように、簡単な先視ができるのです」
予言とは結局のところ、先を読み解く能力だと彼は笑う。わかっていたのではないのかと言うように。
もちろん、アクアもなんとなくだがわかっていた。現在を見る星視と同じで、予言とは先を視る能力なのだろうと思っていたのだ。
似た能力だからこそ、感じ取ったと言えるだろう。
「ですから、ご一緒して損はないと思います。なによりも、戦えますから」
どうですかと言うように見られれば、アクアはどうしようかと考える。確かに彼を連れていけたらな、と思ったのは事実だ。
だからといって、本当に連れていいものなのか悩むところ。
「私がいると、なにかしらの影響はあるかもしれませんよ」
ニッコリと笑いながら言うと、アクアはハッとしたように見た。自分がなにを考えていたのか、彼は気付いていたのだ。
「そうだね……確かにあるかもしれない」
「決まりですね」
先を視る予言者を同席させて星視をしたら、なんらかの影響が出るかもしれない。これならソル神殿へ行く必要もないだろう。
二人の間で話が決まったのを確認すると、女王は星視の同席許可を出した。会話の流れからしても、必要と思われたからだ。
「問題は武器かな」
持って来てないんだよね、とアクアが言えば、セネシオは頷く。さすがに外へ出るとは思っていなかっただけに、今回は持っていないのだ。
「取りに行ってやるよ。今日中に出るわけじゃないだろ」
道を使わないことはわかりきっている。ならば旅支度が必要となってくるのだ。
支度をする時間を必要とすれば、早くて明日の朝だろうとシルベルトが言った。だから、夜中にこっそり取りに行けばいいと。
「そうですね。その間に旅装の服を買いに行きましょう。神官の服装は動きずらいですから」
「あたしはシャルのとこ行ってくるよ。明日は五時に裏門でいいかな」
表から堂々と行ってもいいが、さすがにセネシオを連れていくなら裏がいいかと思った。姿を見せてしまっているだけに、武器を持つ姿を見せるのはよくないと思ったのだ。
それにたいしてシルベルトが頷く。神官が武器を持つところなど見せられないと。
すべて決まると、ソニアの案内でシャルの元へと向かうアクア。彼から了承がもらえなければ、ルアナと相談する必要がある。
セネシオが行くとなるなら、やはりもう一人は護衛が必要だ。ソニアだけで行くことはできない。
「こちらが…」
「アクア様? どうされたんですか」
ハーフエルフで構成されている魔騎士団。ここにセイレーンが来ることは珍しく、二人が姿を現すとざわつきだすハーフエルフ達。
騒ぎになれば、シャルが慌てたように寄って来た。
「あっ、よかったー。シャルに用があったんだ」
この騒ぎが気にならないのか。内心突っ込みつつも、冷静になれと言い聞かせる。自分があたふたするわけにはいかない。
「護衛としてついてきてほしいんだけど」
「俺をですか?」
「うん」
即答されると、彼女に選ばれたことは嬉しくなる。同時に、自分でいいのかとも思う。セイレーンの方がいいのではないかと。
己の実力に関して、天空騎士に劣るとは思っていない。けれど飛べないという点では、自分ではどうにもできないことだ。
迷ったように考える姿を見て、アクアも不安そうにシャルを見た。なにか問題があるのかもしれないと思ったのだ。
「これは、歌の女神様かな。私は団長のイジャーク・ウルムと申します」
団長が姿を現したのを見て、アクアは騒ぎになっているとようやく気付いた。
これはさすがに困らせすぎたかもしれない。珍しくも反省してみたが、イジャークは気にするなと言う。アクアが来たから騒いでいるわけではないと。
「セイレーンが来ること自体が珍しいですからな」
それで用件はと問われれば、シャルを借りたいと素直に言う。エトワール神殿へ行くために、護衛を増やしたいのだと。
「いいではないか。行ってこい、シャル。シャルがいいのですよね」
「うん。ソニアとも知り合いだし」
知っている人の方がいいとアクアが言えば、シャルもわかったと同意した。求められていることに、ソニアを休ませたい、が含まれると気付いたのだ。
(俺にくるはずだ……)
付き合いが長いだけに、ソニアの性格は理解している。職務中だと休まないのだろう。
「これは強いですぞ。必ずお役に立ちますから、安心してください」
イジャークが言えば、ハードルを上げるなとシャルが睨む。どうやら、肩書きは違うが仲良しらしい。
旅は長いし、その辺りも聞いてみたいかもとアクアは思うと、必要最低限の連絡事項だけしてその場を後にした。
さすがにずっと見られているのは居心地が悪い。
「そんなに交流ないの?」
「合同訓練はしていますが、天空騎士の訓練場でやりますからね。あちらで見ることはないのと、たぶん騎士じゃないからですよ」
騎士団に所属しているだけあって、騎士の女性は気が強い者が多い。アクアは見た目からして、そんな騎士達とはまったく違うことから、注目されてしまったのだろうということだ。
「なるほどねぇ」
神官に会うこともあまりないのかと呟けば、それもそうかと一人で納得する。
おそらく、遠征は天空騎士のみで行くのだろう。ここには馬があまりいないから、移動が不便なのが原因で。そうなれば、騎士のセイレーンばかり見ていることになる。
(あたしから見ても、騎士団の人達は怖いかな……)
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