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2部 二刀流の魔剣士編

英雄の息子達2

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 流れ星の正体。それは外から送り込まれた魔物であることだけは間違いがない。

「大量に送り込まれた、という解釈だ」

 東では一匹が送り込まれてきたが、あれと同等の魔物が少なくとも二匹は送り込まれている。

 下手したら、一度外へ戻って再度やってきたのもいるかもしれないとすら、すべてが終わったあとに思ったほどだ。

「流れ星を見たあとから、アクアは魔物の影響を受けて体調を崩したしな」

 当時はそれが魔物だと思っていなかったことから、原因不明の体調不良として判断されていたこと。

「翌日、リオが私を訪ねてきたわ」

 南の大陸で暮らしていたイリティス。そこへ二年に一回、グレンとアクアの代わりとして二人の騎士が交互に通っていた。

 このときもいつものことで、数日の滞在で終わると思っていたのだ。

 しかし終わらなかった。深夜に魔物が襲ってきたのだ。

「魔物が村を襲ったのは初めてのことだった。聞いたときは、さすがに驚いた」

 今では珍しいことではないが、昔は魔物が出始めたばかり。どこもかしこも警備が薄かった。襲われてしまえば、戦う術を持たないほどに。

 行方のわからなかったシオン。その力が家族を守ったのを見て、リオが息子であるレインを連れ出すことを決めた。

「釣るための餌ってわけか。考えたものだな」

 彼女を餌として連れ出すことは無理だろうが、息子ならということかと呟くシュレに、イリティスが目を丸くして見ている。

「気にするな。ある程度は勝手に理解してくれるんだ」

 その前のときもこうだったと言えば、イリティスは納得したように頷く。

「俺も含めて……誰もがあの戦いに関してのすべてを教えていなかった。言えなかったというのが正確なところだが」

「うちの場合、わざと無知にしていたのだけどね」

 そうした理由があったのだが、最終的にそれがよかったのかは悩むところだった。

「これが、イリティスとシオンの息子だ」

 魔力装置が作動すれば、そこに一人のハーフエルフが映し出される。

 目の前にいるイリティスと似ているが、絵でみたシオンとも似ている青年。

「お前らが言う光の英雄と呼ばれる一人。レイン・アルヴァース」

 英雄の息子が英雄となった。不思議なものだとシュレは映し出された姿を見ている。

「レインがバルスデに来てしばらくしてからだ、魔物が襲ってきた。例の喋る魔物がな」

 次に映し出された魔物を見て、ハッとしたようにイリティスがグレンを見た。これが襲ってきたのかと言うように。

「これは……レインが思いだすはずね」

 魔物に襲われたとしか聞いておらず、どのような魔物だったかまでは聞いていなかったのだ。特に聞く必要もないと思っていたのもあるが。

「このとき、レインは甘やかさていたのもあったが、幼い頃にこれと同じ魔物に襲われて記憶喪失になっていたことで、戦うことは一切できなかった」

 映し出された風景には、魔物と戦うグレンをはじめとした騎士二人。見ている騎士などがいる。

「光の英雄として名を残した一人、ハーフエルフのディアンシ・ノヴァ・オーヴァチュア」

 レインの傍にいるハーフエルフ。当時は月光騎士団に所属していた騎士であり、王子の護衛をしていた人物。

 その傍らに現れた二人組。一人は聖剣を持っていることから、あれが息子かとシュレの視線が向けられる。

 アイカとエシェルも聖剣に気付くと、同じようにグレンを見た。

「俺の息子だ。ヴェストリア・バルスデ・フォーラン。隣にいるのがクレド・シュトラウス」

 淡々と話す姿からはなにも感じ取れない。思い入れのある騎士とは違う反応だなと、シュレが内心思っていると、金色の炎が辺りに現れた。

「これは……まさか魔物も息子を餌に呼び出そうとしたということですか」

 魔物がそのようなことをするのか。さすがにエシェルも驚いたように見ている。

 喋る魔物は確かに見たが、思考もあるなんて思わなかったのだ。

「どうやら、そうらしいな。シオンを誘き出すためにレインを狙って、襲ってきたというところ」

 その結果わかったのが、レインに秘められた力だった。

 白い光が周囲へ広がるのは、記憶を映し出しているだけとわかっていても異常だと感じる。

 光を見ていたとき、シュレは自分が得た力が疼くのを感じた。

(あれの片鱗なのか、この聖弓は)

 自分の手を見ながら考えていれば、察したのかグレンが見ている。

「シリンの力は元をたどればレインのものだ。反応したか?」

「あぁ。少しざわついたぐらいだが」

 実物を見たわけでもないのに、力が反応するとは想定外だと笑う。

「自分から手にする物好きなだけあるわね」

 そんなシュレを見て、イリティスが言えばヴェガもそうだなと笑った。

「ここでシオンが問題を抱えてると知った。知ったと言っても、結局は原因不明で俺どころかシオンもわかっていなかったんだけどな」

『いやぁ、これがリオンだったとしてもわかんねぇよ』

 仕方ないと笑いながら言うヴェガに、グレンとイリティスが笑いながら顔を見合わせる。

 わかっているが、ヴェガはいい性格だなと思う。さすがリオンの聖獣だと。付き合いが長くなるほどに思うのだ。

 こうでもないと、あの主とはやっていけないのだろうとも。

「シオンの頼みで人探しをすることになった。それが終わればすべてをレインに話すとあいつは言った」

 探し人はリオン・アルヴァースの子供。それを聞いて、どんな気持ちで探していたのかとシュレが思う。

 シュレだけではない。他の二人ですら思っていた。

 すべてを聞いていたからこそ、自分が殺した弟の子供を探すとはどう感じていたのかと、思わずにはいられないのだ。

「気にしてくれてありがとう。でもね、シオンは内面が弱いところもあるけど、決めたことをやり遂げる強さもあるの」

 だから、どのように思われていても、恨み言を言われることも覚悟して探していたはずだとイリティスが言う。

 そこに関して触れたことはないが、罵られた方が楽だぐらいは思っていただろう、と思っていた。

 実際にはなにもいわれなかったのだが、言われたとしても気にしたりはしないと。

「ほんと、内面が弱い。弱いくせに頼らないから厄介だ」

 ふてぶてしくグレンが言えば、イリティスから力のない笑い声が漏れた。





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