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2部 二刀流の魔剣士編

女神の居城

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 中央の大陸セレン。この世界を創った女神メルレールの居城、天空城と四つの塔のみがあった地。それを発展させたのは、すべてクレド・シュトラウスの采配と言えよう。

 問題がある中、これほどの発展をさせたことに関しては、彼の評価を上げることだったと当時言われていた。

「すごいな。ここには船で来るのも大変だと聞いたが」

 白い建物が多い街並みを見ながら、どうすればこの街並みを作れたのかとシュレは思う。

「手段がないわけじゃないんだ。やるのが大変だし、暮らす上にはそれを毎回やるわけにもいかない手がな」

 魔物との戦いを終え、シュレの回復に少しばかり時間を要したのだが、ハーフエルフの集落で他の三人へ話をする時間として使うことにしたグレン。

 アイカへ話す約束をしていたこともあり、いまさら何人増えようがといったところだ。

 カルヴィブだけはセレンまで同行していかないことから、後半は報告しろと悔しそうに言っていた。

 気になって仕方ないらしく、仕事にならないとぼやいたときなどは、エシェルの説教が入ったのは言うまでもない。

 本当に行きたかったのだろう。いつか機会があれば連れてきてあげようかと、グレンが本気で考えたほどだったカルヴィブ。

 ある意味、世界の始まりの地であるセレン。興味がある者には、行けるなら行きたいと思われているのかもしれない。

(どうにかできないか、真剣に考えてみるか)

 いつまでもこの状態というわけにはいかないと、グレン達も思ってはいるのだ。

「この街はセイレーンの協力を得て出来たところだ」

 設計はすべてクレドがやったと言えば、すごいエルフだなとシュレは苦笑い。

「その方の絵もあるのかしら」

 話を聞いていたエシェルも気になると言えば、ここにはないとグレンは答える。

「クレドの絵はあるんだが、ここに飾ってはいない。シュトラウス家の屋敷にあったはずだ」

 聞いた話ということは忘れない。今もあるかどうかはわからないと。

 これは友人であるシオンが精霊から聞いて知った情報。彼自身は見たことがないのだ。バルスデ王国には立ち入らないようにしているから。

「どうして、ここにないのさ。仲間なんだろ」

 てっきり仲間の絵はすべてあるのだと思っていた、とアイカは周囲を見ながら言う。

「ここは普通に来れる場所になると思ってたんだ。だから、最初は天空城をそのまま展示場にしようとした。美術館のようにな」

 七英雄の物語に合わせた展示場。その予定でやっていたことから、絵もそれらをメインに持ち込んでいた。

 その後の出来事も絵に残しているのだが、中央の大陸へ船を出すことが困難とわかり中途半端になってしまったのだ。

「なるほど。それでこの状態なのか」

 街はきれいだが、どことなく中途半端な気もする。原因はそこだったのだとシュレは納得した。

「これ、完成の目途はないのかしら」

「もったいないよね」

 言いたいことはわかるだけに、グレンは苦笑いを浮かべて聞くことしかできない。

『リオンが戻れば、なんとかなるかもな。シオン一人でなら、たぶんまだかかる』

 まったくなにもしていないわけではないとヴェガが言えば、グレンも同意するように頷く。

 この大陸へは、船で行ける場所が一ヶ所だけ存在した。それが南の大陸アーリアス。

「この一ヶ所だけもかなり時間かけたよな」

 実際にやっていたのはシオンなだけに、正確にどれだけかけたかはグレンも知らない。

『たぶんな、この海自体がセレンを守るようになってるんだ。女神の居城がある場所だから』

 なるほどとシュレが頷く。女神の力によってそうなっているということなのだろう。

 そう考えれば、時間がかかるということも意味が分かる。いくら太陽神といえども、簡単にできることではないだろう。

「なるほどねぇ。神様の力は神様でも、簡単にどうにかできるわけじゃないと」

 それは考えなかったよ、とアイカが言えば、シュレとエシェルも確かにと頷く。

 神の力はとてつもないもの、そんな印象しかなかったからかもしれない。

「優劣はあるみたいだぞ」

 実際は神の力にも優劣はある。ということを三千年前に知ったのだ。

 それまではグレンも気にしていなかったこと。神の力は神の力としか思っていなかった。

「その辺りは、後半を話したらわかる。今は言えない」

 外や女神と戦うことになった一件。その話をすれば自然とわかることなのだ。二度手間してもいいが、今は他にも考えたいことがある。

「街を案内してやりたいが、とりあえず城へ行く」

 おそらく誰も帰ってきてはいないだろうが、と内心で呟きながら歩き出す。

 それでも帰ってきているかもしれないと思いたかったのだ。一番知識を持っているだろうシオンが、何事もないように。

(無理だよな。セレンに戻っても感じないなら)

 いないだろう。自分が感じとれないということは、確実に言いきれた。

「白しかないのか。きれいだが、なんとも言えないな」

 色味がなさ過ぎて居心地が悪いと言われば、セイレーンを知らないとそうだよなと笑う。

 これも種族の違いによることなのだ。説明が必要かなと笑いながら考える。

「造りはエルフのものですね。これもクレド・シュトラウスが?」

 けれど次の瞬間、エシェルに言われた言葉には驚いた。エルフの文明など残っていないに等しいからだ。

 よくわかったなと言いながらグレンは説明する。

 建物の設計もすべてクレドが行っていた。セレンは四つの地区に分けられていて、それぞれが微妙に造りは違う。

 ただし、セイレーンが造ったことから色味は白になってしまったのだが、メルレールに一番近いのもセイレーンだから指示が出ているのかもと思っている。

 確認しようにも、既にクレド・シュトラウスは死んでいるので出来ないこと。

「ちなみにここはセレンティア地区だな。今出てきたところの近くにあったのが炎の塔だ」

 そこは一番相性がいいから、いつも出入りに使っているのだとグレンは言う。

 太陽神の力を持つことから、自然と引き寄せられてしまうらしい。

「なるほどな」

 このセレンは神の力で成り立っているのかもしれないと思った。それによって世界が支えられているのかもしれないと。

 その考えはあながち間違いでもない。それをその後の話で知ることとなる。

「街はすべて動いてるわけではない、といった感じかな」

 口数少なくしていたアイカは、この中では話しづらいというのもあって黙っていたのだ。





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