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2部 二刀流の魔剣士編

北の港街2

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 魔力装置による街灯が輝く夜の港街。ここからは酒場が盛り上がる時間。

 アイカにみつかると面倒だと、こっそり宿を出たグレンとシュレは一軒の店へ入る。

「酒場に来て、頼むのが果実酒か…」

「そう思うだろ。これが、かなり強い酒なんだ」

 ハーフエルフが増えた頃、傭兵上がりばかりだったこともあって物足りないと、強い酒を求めた結果だと笑う。

「北では、果実酒が一番強い。もっとも、薄くするのも可能だから広がったんだが」

「…なるほど」

 飲んでみろと渡されたのを飲み、あまりの強さにシュレの表情が歪む。

「まさかと思うが、これを朝まで飲まないと酔わないのか?」

「そうだな……昼まで飲めば酔うかもな」

 もしくは、かなりのペースで飲むしかないと笑いながら言う。

 どれだけ酒に強いんだと突っ込みたくなったが、酔わせてどうにかしようと企むのは無駄だとも思った。

 アイカがそのつもりで誘っているのを知っているだけに、そこだけホッとしたのだ。

 軽く食事をしながらお酒を飲むと、席に一人のハーフエルフがやって来た。

 酒場にいる情報屋である。食事や酒をそれなりに頼むと、見返りとして情報をくれたりするのだが、この店にはそれがあったのかとシュレは驚く。

(わかってて来たんだよな)

 間違いなくわかっていてグレンは店を選んだ。だから酒を頼んだのだと。

「兄ちゃん達、なにが知りたいんだ」

「そうだな…最年少団長なんてどうだ」

 ニヤリと笑って言えば、情報屋のハーフエルフも笑う。それならいいだろうというように。

「十六で最年少記録を作った奴だな。騎士族のシリウス家だ。クオン・メイ・シリウスという名だな」

「所属は」

「月光騎士団さ。不満で荒れたようだが、気に入らない奴は誰でも相手してやる、と片っ端からやりあったようだ」

 聞いた瞬間に呆れたのはシュレで、笑ったのはグレンだった。

 リオンの性格に似ているのかもしれないが、面白いと思う。自分がいたら間違いなく挑んだだろうと。

 さすが北だとグレンは思いながら聞く。東より情報としては濃い。

「ずいぶんと優等生だったんだな」

 騎士学校から見習い、正規の騎士となるまでの経緯を聞いていれば、シュレでも最年少団長に納得してしまった。

 騎士に詳しいわけではないが、それがすごいことだということはわかる。

「甘党団長とも言われているようだな。シリトルという有名な店があるが、そこによく現れる」

「甘党な…」

 そこは生まれ変わっても直らないのか、と思わずぼやきたくなった。

「交流関係は狭いな。ソレニムス家とオーヴァチュア家か…」

「人付き合いが苦手なのか、それともだな」

 これだけの早さで騎士団を昇れば、周りからはよく思われないだろう。その辺りが関係しているのかもしれない。

 こればかりは仕方ないというもの。実力があるなら、時間はかかっても認められるだろう。

 若くても問題ないと本人が証明するしかないのだ。

 情報屋はとにかく詳しい。些細なことも把握しており、誰に勝てないなども知っていた。

「他はどうだ? あんた、飲みっぷりがいいからな」

「ん? とりあえず酒を追加で」

 情報の前に酒を頼む姿に、彼が強くなった原因はこれじゃないかとシュレは引きつった笑みを浮かべている。

 酒場は酔っぱらいばかりだし、少し薄暗いから入りやすい。喧嘩なども多いが、それを除けば最高の探り場所ということだ。

「ダメもとで聞くんだが、騎士団最強の男はわかるか? 東じゃダメだった」

 その次に気になるのはそこだと言えば、情報屋は苦笑いを浮かべる。これが答えだと言うように。

「騎士団最強の男はセルティ・シーゼルというハーフエルフだ。聖虹騎士団の団長で、女王の幼馴染み」

 おそらく東に流れている情報はこのような感じだろう、と言われれば頷く。

「やっぱりな。あれは難しいんだ」

 情報屋泣かせの騎士だとため息を吐けば、周囲を気にしたように見る。

 誰もこちらを気にしていないと知れば、情報屋は特別だと話し出す。

「噂レベルだが、魔力装置を使った武器を持っていると聞いた。それが魔力装置なのかは、確証がないことだが」

 使っているものが正確にわからないのもあるが、どうやら属性がついているとのこと。

 魔力装置に属性はついておらず、どういうことなのかと仲間内では話していたのだ。

「属性はわかってるのか?」

「火と雷だ」

 属性を聞いた瞬間、グレンの表情は微かに変わった。まかさ、と思ったのだ。

 もしもそうなら、それは魔力装置ではないが魔力装置に近いかもしれない。

 わかったところで教えることはできないことだ。

「魔剣の類いじゃないのか?」

 属性がついている武器なら、基本的に考えればそれしかないだろとシュレはいう。

「そうなんだが、あの騎士団長が持っていた魔剣は今女王が使ってるはずなんだ」

 だから魔剣ではないだろうと情報屋は結論付けていた。

 騎士団に入った直後は魔剣を持っていたのだが、今の女王が即位したときには女王が持っていたと言う。

「幼馴染みだし、常に三人でいたようだからあげたんだろうさ」

 よくわからない魔力装置を使うようになったのは、それからだった。

 使うと言っても、大規模な魔物討伐でたまに使うぐらいだ。だから確認できたとも言えるのだが。

「小遣い稼ぎで情報を売る奴がいるんだな」

 情報は基本的に情報屋が自分から得るものだが、集めにくい人物に関しては買い取ることがある。

 それは小遣い稼ぎとしてよくやる手でもあるのだが、バレたらやばいのではないかとも思う。

「まぁ、あまり信憑性がないものは買わないし、この人物に関して言えば漏れても困らないことなんだろうと思ってる」

 売られてくる情報は同じことばかりだからと言われれば、グレンもそうかもしれないと思えた。

 外に漏れる情報を操作しているのだろうと。

「そういや、最近知られたのが双剣使いのハーフエルフがいる、だったかな」

 グレンは強いのが知りたいと思ったのか、情報屋は思わぬ人物の名を挙げた。

 そう、フィフィリス・ペドランの名前だ。

「最年少団長と一緒にいる副団長が師匠と呼ぶ人物でな。かなり強いらしい」

 そこも繋がるのかと苦笑いを浮かべるグレンに、とにかく冷静を保とうとするシュレ。

 さすがに想定外の情報がやってきて、シュレはこの場から出たかったほどだ。

「騎士団に所属していたと、所属するつもりだという情報はない」

 ただ、ひっそりといるだけでもったいないと情報屋は言う。

「本人に突撃したりしてないのか」

「ないな。近づけないというのが正確だ」

 ある程度の距離近づくと追い出されてしまうのだと。

 周囲で交流をもっているわけでもなく、なぜなのか探ろうとしている情報屋が後を絶たないのが現状だ。




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