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1部 転生する月神編

討伐前日2

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 戦力が均等になるよう分ければ、その場は解散した。魔物討伐は夜から始まるため、それぞれ準備をするためだ。

 当然、クオンも町へと出ていた。リーナが新しいレイピアを取りに行くと言ったから、ついでにとついていったのだ。

「ふーん。新しくするのか」

「そうよ」

 オーヴァチュア家は決まった武器職人を使っており、自分にあった武器を特注で作る。リーナも当然、特注で作っていた。

「こないだ、訓練でヒビがね」

 間に合ってよかったと言うから、何本目だと言いたくなってやめる。

 レイピアが何本も折れるほど、彼女が腕を磨いている証だ。見えないところでも鍛練をこなしているのだろう。

「シリウス家の坊やも、作ってみるかい」

 リーナの持つ予備を見ながら、職人がニヤリと笑った。

 武器にこだわりはない。腕を磨くことは好きだったが、そのための道具はなんでもいいと思うのがクオン。

「相変わらずだな」

 知っているからこそ、職人も笑って見るだけ。

「クオンってさ、騎士団から配布された剣だけあればいいって感じだよね」

 さすがに団長という肩書きを得たわけで、それはまずいだろうと思う。四大騎士族の家柄でもあるのだし。

「めんどくせぇじゃん。これなら、折れても次がすぐもらえるし」

 騎士に配布される剣は、決して悪い物ではない。しかし剣しか配布されないのが問題で、他の武器を求めるなら作るしかなかった。

 自分の戦い方を見つけ出した者ほど、ローランで武器を作る傾向がある。

「一本ぐらい作ってみないか。お代は取らない」

 作ってみたいと言われれば、少し驚いたように見た。

 武器職人からそんなことを言われるとは、さすがに思っていなかった。言われて悪い気もしない。

「取りに来る暇はねぇから、一ヶ月以内に作るか、自宅まで送り届けてくれんならいいけどよ」

 今も仕事で来ているだけなのだ。終われば通常の仕事が待っている。

 馬を全力で飛ばしたとしても、往復一日で来られる距離ではない。

 彼が特注で武器を作らないのは、めんどくさいという理由だけではなく、作るために行く時間もなければ取りに行く時間もないからだ。

 シリウス家は四大騎士族と言われながらも、専属の武器職人はいない。専属がいればわざわざローランまで来なくても頼めるのだが、ないものへ文句を言っても仕方ないこと。

「なるほど。なら、リーナお嬢ちゃんの元へ届けるさ」

 それでいいかいと武器職人が言えば、クオンは頷いた。

 おそらく、オーヴァチュア家との独自なやり取りがあるのだろう。それなら安心していいと。

 話が決まれば少し見せてくれと言われた。なにをと困惑するクオンに、武器職人はぶつぶつと言いながら腕や足を触ってくる。

「筋肉の付き方とかで、癖を見抜くんだよ。すごいんだから」

「へぇ」

 そんなんでわかるのかと思ったが、リーナのレイピアを知るからわかるんだよなと納得した。

「お前さん、その剣じゃ物足りないだろ」

「あー、まぁ、な…」

 確かに物足りないと感じている。それがなぜかわからないが、これではないという気持ちになるのだ。

「ふむ。中々に作りがいがありそうだ」

 少し時間がかかるかもしれんと付け足されたのだが、送り届けるから問題ないだろとも言われて苦笑い。

「任せるさ。好きに作れよ」

 よくわからないが、作る側が満足したものならいい剣ができるだろう。自分が動かなくていいなら、勝手にしてくれと思った。

「見つけたぞ、クオン」

 リーナの用件も終わり甘いものを求めて動き出した瞬間、背後から聞こえてきた声に表情がひ引きつる。

「まったく。私に挨拶ぐらい、来てくれてもいいじゃないか」

「それは申し訳ないです、陛下」

 振り向いた先、そこには女王フィーリオナが立っていた。お供がいない辺り、抜け出してきたのだろう。

 困った女王だとため息を吐く。

「また甘いものを買いに行くのだろ。私も連れていけ」

「はぁ!?」

 なにを言いだすのかとクオンが見れば、気にせずに歩いていくフィーリオナ。

「まったく…リーナ、行くぞ」

「…はい」

 面倒なのに捕まったとぼやくクオンと、少しばかりムッとした表情を浮かべるリーナ。

 それぞれ思うところはありつつも、女王を一人で放り出すわけにも行かずついていくことに。





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