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第29話 あ無理ですぅ!
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「お妃様の顔が見たいという声が届いています」
おわった。そんな要望答えられないよ。普通に話しているときに、そういえば思い出したとでも言わんばかりにそう告げた樟石さんに、私は絶望した。顔なんて見せられないわ。だって私、みんなが思っているような美女じゃないし。
「ですがお妃様は世間が思う絶世の美姫とはいえません。よって顔出しは禁止です」
ですよねー。知ってました。
「言い訳候補を持ってきたのでどれがいいか選んでください」
おおっとこれはまさかの展開だ! 好きな言い訳選べるってどういうことよ! そんな私に特に構うこともなく、樟石さんは候補を話し出す。
「まずは一つ目。一番ありえそうかつ予想しやすいいいわけです。陛下が溺愛してお妃様の顔を誰にも見せたくない」
いつも思うけど完全にそれ私への風評被害よね。何よ、陛下に溺愛されているっって。なんでそんな嘘ついたのよ。すべてが面倒くさすぎでしょ。でも陛下はぜひにって私のこと望んだことになってるんだから、仲良し……どっちかって言うと傾国の美女に溺れてるって感じな気もするけどに見せないといけないのかもね。
「二つ目は?」
「二つ目は絶世の美女なお妃様が自分の美を安売りしたくないので顔を出したくないという言い訳です」
「却下です」
これこそ私への嫌がらせの真骨頂だわ! なに? 言わないわよ私の美を安売りしたくないなんて! お話の中の登場人物じゃあないんだから。
「危険度がまして後宮から追放しろって声が高まる気がしてならないんですけど……」
「まあそうでしょうね。これだけ聞いているとものすごく高慢な妃ですから」
じゃあだめだよなんで行けると思ったの!?
「どちらの言い訳がよろしいですか?」
その二つしか候補ないんかい。おもわず突っ込んでしまった。でもよく考えればそうよね……顔を言い訳に顔を見せないなんて無理だもの。どっちにしたって私への風あたりが強くなることは確定だけど、陛下のせいにしたほうがまだマシだわ。そっち以外ありえない!
「陛下の溺愛の方でお願いします」
「まあそう言うとは思っていました」
じゃあ私に聞く必要なかったわよね。
「ここからが本題です」
あ、ここからだったの。
「いまのを言い訳にしますが、なんとかしてお妃様の顔を見ようとしたり傷つけようとしたりしてくる輩が増えることでしょう。玉蘭に話はしてありますが、もし万が一のため妃としてこの部屋から出る際には必ず顔を隠した状態でいてください。今までもそうでしたが今後はもっと徹底するように」
「わかりました」
樟石さんの顔がいつになく真剣だったので、私はこれは絶対忘れちゃいけないな、と心に刻んだ。そう、私に今ある価値は、この偽りの顔。私の武器は世間の、邑鈴華姫は鳥も見惚れて空から落ちるほどの絶世の美女である、という噂なのだ。それを決して損ねるわけにはいかない。陛下のためにも、自分のためにも。白蓮花のためにも、薄紅蘭のためにも。
「まあでもあれですよね。豪勢な服着てなかったら女官と思われてバレませんよね」
「それはそうですね……」
やらないけど。やらないけど! どうせ私はやることもなくて一日中部屋にこもってごろごろしてるだけだから部屋に刺客が入ってこなきゃ大丈夫だと思うわ。こう思うと私何を糧に毎日生きてるんだろう……本読んで調度品掃除して刺繍してってしてるだけよね……
「ごほん。まあとにかく、今後は厳重に注意してください。それだけです」
「わかりました。気を引き締めてがんばります!」
ぐっと拳を握る。何が何でもバレるもんですか! そう心に刻んで。
「鈴華? いるか?」
うわ、突然仕事中のはずの陛下が来た! おかしい!
「……陛下? どうしてここに?」
ほら、樟石さんが笑顔で怒ってるじゃない! でも陛下がそんなこと気にするはずがなかった。陛下子供っぽいよね……いがいと……お母さん仮の言うこと全然聞かないもの。
「な、どうしてここに? 樟石……なるほど、さては私と同じくサボったな?」
「そうですかそうですか、そういうことをおっしゃられますか」
「いや、なんでもない今のはなしだ」
すぐ余計なこと言うなこの人大丈夫か? すごい、私陛下に会うたびに陛下像が壊れていってる気がする!
「全く良くはないですがまあいいでしょう。とりあえず陛下、この間話していたことですが」
「ああ、妃の顔が見たいという要望に関するアレだな」
それはどうやら知っていたようだ。こんなんで王様できるのかなって思うけど意外と手腕はすごいのよね。ますます整体が謎だわ。
「やはり陛下がお妃様の顔を誰にも見せたくないと思っている方の言い訳に決まりました。なにか言ってくる輩がいれば事ある事にそういってやるようにお願いします」
「ふっ、……それはどちらかというと若手の方になにか言われそうだな……まあそちらの選択肢のほうが被害が少ないか」
若手の方? どうしてかわからなくて、私は思わず首を傾げる。陛下はいつも古くから使えてる人たちが頑固で嫌だって言ってなかったかしら?
「まあ古狸どもは先代から仕えているからな……父は妃も多くいたし、私が”美女”に入れ込んでいると知っても影で嘲るだけだろう。若手はそうはいかない」
「なるほど、そういう……」
……影で笑われる方が嫌じゃない? 見えるところで言われたり面と向かて言われたほうが対処がめんどくさいってこと? よくわかんないわ、もう放っておこう……
おわった。そんな要望答えられないよ。普通に話しているときに、そういえば思い出したとでも言わんばかりにそう告げた樟石さんに、私は絶望した。顔なんて見せられないわ。だって私、みんなが思っているような美女じゃないし。
「ですがお妃様は世間が思う絶世の美姫とはいえません。よって顔出しは禁止です」
ですよねー。知ってました。
「言い訳候補を持ってきたのでどれがいいか選んでください」
おおっとこれはまさかの展開だ! 好きな言い訳選べるってどういうことよ! そんな私に特に構うこともなく、樟石さんは候補を話し出す。
「まずは一つ目。一番ありえそうかつ予想しやすいいいわけです。陛下が溺愛してお妃様の顔を誰にも見せたくない」
いつも思うけど完全にそれ私への風評被害よね。何よ、陛下に溺愛されているっって。なんでそんな嘘ついたのよ。すべてが面倒くさすぎでしょ。でも陛下はぜひにって私のこと望んだことになってるんだから、仲良し……どっちかって言うと傾国の美女に溺れてるって感じな気もするけどに見せないといけないのかもね。
「二つ目は?」
「二つ目は絶世の美女なお妃様が自分の美を安売りしたくないので顔を出したくないという言い訳です」
「却下です」
これこそ私への嫌がらせの真骨頂だわ! なに? 言わないわよ私の美を安売りしたくないなんて! お話の中の登場人物じゃあないんだから。
「危険度がまして後宮から追放しろって声が高まる気がしてならないんですけど……」
「まあそうでしょうね。これだけ聞いているとものすごく高慢な妃ですから」
じゃあだめだよなんで行けると思ったの!?
「どちらの言い訳がよろしいですか?」
その二つしか候補ないんかい。おもわず突っ込んでしまった。でもよく考えればそうよね……顔を言い訳に顔を見せないなんて無理だもの。どっちにしたって私への風あたりが強くなることは確定だけど、陛下のせいにしたほうがまだマシだわ。そっち以外ありえない!
「陛下の溺愛の方でお願いします」
「まあそう言うとは思っていました」
じゃあ私に聞く必要なかったわよね。
「ここからが本題です」
あ、ここからだったの。
「いまのを言い訳にしますが、なんとかしてお妃様の顔を見ようとしたり傷つけようとしたりしてくる輩が増えることでしょう。玉蘭に話はしてありますが、もし万が一のため妃としてこの部屋から出る際には必ず顔を隠した状態でいてください。今までもそうでしたが今後はもっと徹底するように」
「わかりました」
樟石さんの顔がいつになく真剣だったので、私はこれは絶対忘れちゃいけないな、と心に刻んだ。そう、私に今ある価値は、この偽りの顔。私の武器は世間の、邑鈴華姫は鳥も見惚れて空から落ちるほどの絶世の美女である、という噂なのだ。それを決して損ねるわけにはいかない。陛下のためにも、自分のためにも。白蓮花のためにも、薄紅蘭のためにも。
「まあでもあれですよね。豪勢な服着てなかったら女官と思われてバレませんよね」
「それはそうですね……」
やらないけど。やらないけど! どうせ私はやることもなくて一日中部屋にこもってごろごろしてるだけだから部屋に刺客が入ってこなきゃ大丈夫だと思うわ。こう思うと私何を糧に毎日生きてるんだろう……本読んで調度品掃除して刺繍してってしてるだけよね……
「ごほん。まあとにかく、今後は厳重に注意してください。それだけです」
「わかりました。気を引き締めてがんばります!」
ぐっと拳を握る。何が何でもバレるもんですか! そう心に刻んで。
「鈴華? いるか?」
うわ、突然仕事中のはずの陛下が来た! おかしい!
「……陛下? どうしてここに?」
ほら、樟石さんが笑顔で怒ってるじゃない! でも陛下がそんなこと気にするはずがなかった。陛下子供っぽいよね……いがいと……お母さん仮の言うこと全然聞かないもの。
「な、どうしてここに? 樟石……なるほど、さては私と同じくサボったな?」
「そうですかそうですか、そういうことをおっしゃられますか」
「いや、なんでもない今のはなしだ」
すぐ余計なこと言うなこの人大丈夫か? すごい、私陛下に会うたびに陛下像が壊れていってる気がする!
「全く良くはないですがまあいいでしょう。とりあえず陛下、この間話していたことですが」
「ああ、妃の顔が見たいという要望に関するアレだな」
それはどうやら知っていたようだ。こんなんで王様できるのかなって思うけど意外と手腕はすごいのよね。ますます整体が謎だわ。
「やはり陛下がお妃様の顔を誰にも見せたくないと思っている方の言い訳に決まりました。なにか言ってくる輩がいれば事ある事にそういってやるようにお願いします」
「ふっ、……それはどちらかというと若手の方になにか言われそうだな……まあそちらの選択肢のほうが被害が少ないか」
若手の方? どうしてかわからなくて、私は思わず首を傾げる。陛下はいつも古くから使えてる人たちが頑固で嫌だって言ってなかったかしら?
「まあ古狸どもは先代から仕えているからな……父は妃も多くいたし、私が”美女”に入れ込んでいると知っても影で嘲るだけだろう。若手はそうはいかない」
「なるほど、そういう……」
……影で笑われる方が嫌じゃない? 見えるところで言われたり面と向かて言われたほうが対処がめんどくさいってこと? よくわかんないわ、もう放っておこう……
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