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第25話 溺愛?されてませんよ☆
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国王の妃、宴の花と言ってもやることは女官と大してないらしい。私は今、綺麗な桃の木の下で優雅にお茶を飲んでいる。
「顔が見えないのは残念ですが、振る舞いはさすが王家の者ですなあ」
……じゃ、ないんだよっ! こっちは必死なんだが!? この宴は、国王に複数人妃がいる前提で作られたものだ。なのに今、陛下には妃が私しかいない。するとどうなるかというと、やることがないのだ。
「かの有名な絶世の美姫とあらば、所作が美しいのも当たり前でしょう」
それは嫌味かね?? 心の底から言ってんのかうちの娘を妃にしようと思っていたのに的なことを思って言ってんのかは知らないけど、気まずい。ここで別の妃がいれば一緒に舞でも踊ったし、お気に入りの女官がいればきゃいきゃいできたのに、あいにく私にはそんなのいない。やはり玉蘭。私には玉蘭しかいないのよっ!
「しかし陛下もつれないことを仰る。あの妃がいるから別の妃は考えられないなど……美人なのはわかるがそれ以外がね。陛下が外にも出そうとなさらないから何も分からないよ。君もそうは思うだろう?」
「ええ、全くです。陛下がお気に召したのはどこなのやら……私の妹もどうすれば陛下に気に入っていただけるのかまるで見当がつかないと嘆いておりました」
黙りなさいよ。顔も見た事ないのになんで美人なのは確定してんのよ。噂で聞いたこと事実だって思うの、流行ってるの?? やめた方がいいと思うけど。にしても彼らは娘や妹を後宮に入れたい勢らしい。陛下ったら私がいるから別の人は無理とか言ってるの? そんなことするから噂がどんどん独り歩きしてっちゃうのよ。
「困った溺愛ぶりですな」
むしろ面白がられてるけど?
「しかもいくら美姫とはいえ所詮は薄紅蘭の姫。花は増えても我が国にはなんの利益もないですからね」
なにさらっとうちの国を侮辱してくれてんのよ。たしかに白蓮花に利益はないけどさあ。あと私がいたところで花は増えないよ。
「お妃様、陛下がお呼びです」
周囲の声に心の中で文句を言っていたら、女官のひとりが私を呼びに来た。しかも会場がだんだん静かになっていく。あ、桃の花のやつね。
「ありがとう」
ゆっくりと立ち上がって、陛下の元へ歩き始める。緊張するー、みんな見てるー!! 優雅に。優雅に。失敗したらまずいし。みんなの想像する“美女”を私も思い描いて、笑顔は絶やさず。あともう少しで指定された立ち位置にたどり着く、というところで何かが空を着る音がした。
「危ない」
陛下が声を上げる。そして私は見事、何が起こったのかわからなくてよろめいたところを陛下に抱きとめてもらったのだ。びっっくりしたあ、何!? っていうかやっぱり陛下の大☆胸☆筋すごいな!?
「捕らえよ」
低い声で陛下がそう告げると、隣に控えていた兵が犯人をあっという間に縛り上げた。なんで犯人知ってたんだ? ……もしかしてあの兵、玉蘭……?
「残念だな。ただの書類泥棒かと思っていたが……」
連れてこられたその人はがたがた震えながら彼を見上げた。なんか陛下殺気すごくない? 怖いな……今すぐお家に帰りたいな……何かされかけた怖さより怒った?陛下の怖さで紅蘭国に帰りたいな……
「どうも妃を害そうとしていたようだ」
その前に誰か私が何されかけたのか説明してくれる?
「目論んだ葉家と董家の関係悪化に失敗して相当焦っていたと見える。衆目の中でこのような真似をするほどだからな。それほどまでに両家が手を組むのが困るのか?」
威圧感。二次被害もいいところだ。そろそろ離してほしいなあ~
「わ、私は、ただ……!!」
「月華と青鋭が優遇されるのが気に入らなかった、か? 残念ながら私は家柄でなく実力を見ている。大きな仕事を任せてもらいたければそれなりの実力を身に着けるべきだろう」
陛下が相手を見て薄笑いを浮かべる。
「だからと言って妃に手を出すとはな。……しばらく牢の中で反省するがいい」
あ、つかまった。連行されていく彼を見届け、私はそっと自分を害そうとした何かを確認する。……簪じゃん……これ飛んできて刺さったら絶対痛いやつじゃん……
「そなたから目を離したのがいけなかった。はじめから手元に置いていれば危険な目に合わせることもなかったというのに」
想像してぞっとしていたところに突然陛下が割り込んでくる。どうしたんですか陛下、なんで私はそんなに陛下に顔を近づけられてるんだ。両手で頬を包まれて上を向かされているので首が痛い。ただでさえ髪飾りが重いのよ、これ以上わたしの首を痛めつけないでもらえる??
「邪魔が入ってしまったが……どうだ妃よ、今年の桃は美しいだろう?」
そう言って彼は私の髪飾りに今手折ったばかりの桃の枝を挿した。はいうつくしいですね。出来れば早く話してもらえるとありがたいですね。
「よく似合っている……」
あ、はい。なんて返したらいいのかわからなくてとりあえず笑って誤魔化していたら、いつの間にか席についた陛下の膝の上に座らされていた。どうして。
「これで安心だな」
ただでさえ美形なのに笑顔とか浮かべないでほしい。あんまり顔がいいから目を合わせられないわ。帰らせて。切実に。
「顔が見えないのは残念ですが、振る舞いはさすが王家の者ですなあ」
……じゃ、ないんだよっ! こっちは必死なんだが!? この宴は、国王に複数人妃がいる前提で作られたものだ。なのに今、陛下には妃が私しかいない。するとどうなるかというと、やることがないのだ。
「かの有名な絶世の美姫とあらば、所作が美しいのも当たり前でしょう」
それは嫌味かね?? 心の底から言ってんのかうちの娘を妃にしようと思っていたのに的なことを思って言ってんのかは知らないけど、気まずい。ここで別の妃がいれば一緒に舞でも踊ったし、お気に入りの女官がいればきゃいきゃいできたのに、あいにく私にはそんなのいない。やはり玉蘭。私には玉蘭しかいないのよっ!
「しかし陛下もつれないことを仰る。あの妃がいるから別の妃は考えられないなど……美人なのはわかるがそれ以外がね。陛下が外にも出そうとなさらないから何も分からないよ。君もそうは思うだろう?」
「ええ、全くです。陛下がお気に召したのはどこなのやら……私の妹もどうすれば陛下に気に入っていただけるのかまるで見当がつかないと嘆いておりました」
黙りなさいよ。顔も見た事ないのになんで美人なのは確定してんのよ。噂で聞いたこと事実だって思うの、流行ってるの?? やめた方がいいと思うけど。にしても彼らは娘や妹を後宮に入れたい勢らしい。陛下ったら私がいるから別の人は無理とか言ってるの? そんなことするから噂がどんどん独り歩きしてっちゃうのよ。
「困った溺愛ぶりですな」
むしろ面白がられてるけど?
「しかもいくら美姫とはいえ所詮は薄紅蘭の姫。花は増えても我が国にはなんの利益もないですからね」
なにさらっとうちの国を侮辱してくれてんのよ。たしかに白蓮花に利益はないけどさあ。あと私がいたところで花は増えないよ。
「お妃様、陛下がお呼びです」
周囲の声に心の中で文句を言っていたら、女官のひとりが私を呼びに来た。しかも会場がだんだん静かになっていく。あ、桃の花のやつね。
「ありがとう」
ゆっくりと立ち上がって、陛下の元へ歩き始める。緊張するー、みんな見てるー!! 優雅に。優雅に。失敗したらまずいし。みんなの想像する“美女”を私も思い描いて、笑顔は絶やさず。あともう少しで指定された立ち位置にたどり着く、というところで何かが空を着る音がした。
「危ない」
陛下が声を上げる。そして私は見事、何が起こったのかわからなくてよろめいたところを陛下に抱きとめてもらったのだ。びっっくりしたあ、何!? っていうかやっぱり陛下の大☆胸☆筋すごいな!?
「捕らえよ」
低い声で陛下がそう告げると、隣に控えていた兵が犯人をあっという間に縛り上げた。なんで犯人知ってたんだ? ……もしかしてあの兵、玉蘭……?
「残念だな。ただの書類泥棒かと思っていたが……」
連れてこられたその人はがたがた震えながら彼を見上げた。なんか陛下殺気すごくない? 怖いな……今すぐお家に帰りたいな……何かされかけた怖さより怒った?陛下の怖さで紅蘭国に帰りたいな……
「どうも妃を害そうとしていたようだ」
その前に誰か私が何されかけたのか説明してくれる?
「目論んだ葉家と董家の関係悪化に失敗して相当焦っていたと見える。衆目の中でこのような真似をするほどだからな。それほどまでに両家が手を組むのが困るのか?」
威圧感。二次被害もいいところだ。そろそろ離してほしいなあ~
「わ、私は、ただ……!!」
「月華と青鋭が優遇されるのが気に入らなかった、か? 残念ながら私は家柄でなく実力を見ている。大きな仕事を任せてもらいたければそれなりの実力を身に着けるべきだろう」
陛下が相手を見て薄笑いを浮かべる。
「だからと言って妃に手を出すとはな。……しばらく牢の中で反省するがいい」
あ、つかまった。連行されていく彼を見届け、私はそっと自分を害そうとした何かを確認する。……簪じゃん……これ飛んできて刺さったら絶対痛いやつじゃん……
「そなたから目を離したのがいけなかった。はじめから手元に置いていれば危険な目に合わせることもなかったというのに」
想像してぞっとしていたところに突然陛下が割り込んでくる。どうしたんですか陛下、なんで私はそんなに陛下に顔を近づけられてるんだ。両手で頬を包まれて上を向かされているので首が痛い。ただでさえ髪飾りが重いのよ、これ以上わたしの首を痛めつけないでもらえる??
「邪魔が入ってしまったが……どうだ妃よ、今年の桃は美しいだろう?」
そう言って彼は私の髪飾りに今手折ったばかりの桃の枝を挿した。はいうつくしいですね。出来れば早く話してもらえるとありがたいですね。
「よく似合っている……」
あ、はい。なんて返したらいいのかわからなくてとりあえず笑って誤魔化していたら、いつの間にか席についた陛下の膝の上に座らされていた。どうして。
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ただでさえ美形なのに笑顔とか浮かべないでほしい。あんまり顔がいいから目を合わせられないわ。帰らせて。切実に。
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