上 下
72 / 74
↓- - - 差替え後削除します- - -↓

第79話 鑑定は便利なスキルです。

しおりを挟む
今私が居るこの世界は魔法にしろ、スキルにしろ、使えば使うほど熟練度というか、レベルというか、が上がっていく。

で、私の鑑定スキルは自分で言うのもなんだけど、変な方向に熟練度が上がっている様な気がしてならない。

そう、本来なら武器や装飾品なんかを鑑定するんだろうけど、私が鑑定するのはほぼほぼ食品だ。なので最近よく知っているモノを鑑定すると簡単なレシピが一緒に表示される事がある。後で見返すことも出来て案外便利だ。

そんな私の鑑定スキルでフリーズドライスライムを鑑定したときに表示していたレシピは。

”ゼリー”だった。

手のひらサイズまで縮んでいるビニールの様なスライムを水につけ、柔らかくなるまで水戻しする。

「これは…なんですか…」

記憶に間違いがなければソレ、スライムに見えるのですが、と眉間に若干シワを寄せアレクが覗き込んできた。

「んー副産物?盗み食いしようとして一緒に干されたと言うか。」

イチゴの処理が終わったらコヤツも同じく処理されていて、意図してやった訳じゃないからね。

最もポピュラーな魔物、スライム。某ゲームの様に可愛らしくはないけど、いくつか種類はあるらしい。ま、この銀狼の森に生息しているのは一番無害で弱い奴。大きくてもボウリングの玉くらいだし、下手に刺激すると分裂するからほっとくのが一番。

そんなそもそも食べようとか思いもしない魔物がフリーズドライになったらゼリーの素になるって言う。なんとも不思議。

水戻ししたからと言ってスライムが生き返ることもなく一安心して。適当に千切って温めて蜂蜜を加えたベリーのジュースに放り込む。そしてそのまま加熱するとスライムはジュースにスーッ、と溶けた。

「溶けて無くなりましたね…」

アレクは嫌そうな表情を見せつつも興味はある様で。まぁ、無毒で無害だと分かっているけど、普通は食用にしない魔物だもんね。

「ん…これで鑑定スキル通りなら冷やせば目的の”ゼリー”ができるハズなんだけど。」

粗熱が取れたスライムゼリー液をガラスの器に流してゆっくり氷魔法で冷やしてゆく。

魔法って便利。

やや暫くすると冷えてプルン、と固まった。器を揺するとプルンプルンと揺れる。表面を指で少し押してみると向こうのゼリーとは少し違う感じがした。

「出来たみたい。後は食感がどうかは食べてみないと分からないな。」

早速食べる前に一応鑑定してみた。

・スライムゼリー
・ベリー味
・凍らせても良い

うん、大丈夫そうだ。スプーンですくいパクリ。

ベリーの爽やかな酸味と蜂蜜の甘味が口の中に広がる。舌の上で蕩ける、と言うよりはサラリと崩れる様な不思議な食感だった。

見た感じはプルンプルンしているのに口に入れるとサラリと崩れ形を無くす。試しに掬ったゼリーを掌に乗せてみたけど溶けもせず、崩れることなくプルンプルンしていたけど、パクリ、と口に放り込むとサラリと崩れた。

ナニコレ。食感がめちゃくちゃ楽しいんですけど!

「アレクも食べてみて!」

ちょっとスライムを食べるのは、と遠慮気味に見ていたアレクにも面白いから、と強引に食べさせる。

若干引きつつもアリヤが薦めるなら一口だけ、と食べてくれた。その後はアレだけ渋っていたのに食感が気に入ったらしく。

私がアレだけ苦労して習得したフリーズドライを難なく習得し、フルーツを餌に寄ってくるスライムもろともフリーズドライ作成に精を出し。

スライムがこんな風に化けるとは思いませんでした、と私よりもスライムゼリー研究に余念がなく。

「さ、食べてみてください。」

なんの変哲もない無色透明のスライムゼリーを給餌されパクリと食べれば。サラリと崩れて広がる爽やかな柑橘の風味と香り。さ、こっちも、とさらにもう一口食べれば今度はベリーの風味と香りが広がる。

「えー!ナニコレ!不思議!」

びっくりしてどうやって作ったのかアレクに聞けば。

「それは秘密です。アリヤのために丹精込めて作っている、とだけ言っておきましょうか。」

それ以上はいくら食い下がってもアリヤが美味しい、と食べてくれる物を作るのは私の悦びでもありますからね、これの秘密は教えられませんね、と答えてはくれなかった。







「ねー、最近アイツ不思議なこと始めたよね!」

「うん、綺麗な水を用意して欲しいって言われて協力したよ。」

「植物がよく育つ土壌が欲しいって言われて協力した」

「健やかに育つ様に明るさ、暗さを調節して欲しい、って頼まれた」

「温度管理と空調頼まれたし。」

「まぁ、アリヤの為だからみんな協力するけどさ。」

「番を驚かせたい、喜ばせたい、って言う理由であそこまでできるって凄いよね…」

そう言った彼らが何とも言えない表情で見つめる先には様々な果物を育て、それを餌に養スライムしているアレクの姿があった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

竜王陛下の番……の妹様は、隣国で溺愛される

夕立悠理
恋愛
誰か。誰でもいいの。──わたしを、愛して。 物心着いた時から、アオリに与えられるもの全てが姉のお下がりだった。それでも良かった。家族はアオリを愛していると信じていたから。 けれど姉のスカーレットがこの国の竜王陛下である、レナルドに見初められて全てが変わる。誰も、アオリの名前を呼ぶものがいなくなったのだ。みんな、妹様、とアオリを呼ぶ。孤独に耐えかねたアオリは、隣国へと旅にでることにした。──そこで、自分の本当の運命が待っているとも、知らずに。 ※小説家になろう様にも投稿しています

ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ~皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます!~

南田 此仁
恋愛
 突然異世界へと転移し、状況もわからぬままに拐われ愛玩奴隷としてオークションにかけられたマヤ。  険しい顔つきをした大柄な男に落札され、訪れる未来を思って絶望しかけたものの……。  跪いて手足の枷を外してくれたかと思えば、膝に抱き上げられ、体調を気遣われ、美味しい食事をお腹いっぱい与えられて風呂に入れられる。  温かい腕に囲われ毎日ただひたすらに甘やかされて……あれ? 奴隷生活って、こういうものだっけ———?? 奴隷感なし。悲壮感なし。悲しい気持ちにはなりませんので安心してお読みいただけます☆ シリアス風な出だしですが、中身はノーシリアス?のほのぼの溺愛ものです。 ■R18シーンは ※ マーク付きです。 ■一話500文字程度でサラッと読めます。 ■第14回 アルファポリス恋愛小説大賞《17位》 ■第3回 ジュリアンパブリッシング恋愛小説大賞《最終選考》 ■小説家になろう(ムーンライトノベルズ)にて30000ポイント突破

「白い結婚最高!」と喜んでいたのに、花の香りを纏った美形旦那様がなぜか私を溺愛してくる【完結】

清澄 セイ
恋愛
フィリア・マグシフォンは子爵令嬢らしからぬのんびりやの自由人。自然の中でぐうたらすることと、美味しいものを食べることが大好きな恋を知らないお子様。 そんな彼女も18歳となり、強烈な母親に婚約相手を選べと毎日のようにせっつかれるが、選び方など分からない。 「どちらにしようかな、天の神様の言う通り。はい、決めた!」 こんな具合に決めた相手が、なんと偶然にもフィリアより先に結婚の申し込みをしてきたのだ。相手は王都から遠く離れた場所に膨大な領地を有する辺境伯の一人息子で、顔を合わせる前からフィリアに「これは白い結婚だ」と失礼な手紙を送りつけてくる癖者。 けれど、彼女にとってはこの上ない条件の相手だった。 「白い結婚?王都から離れた田舎?全部全部、最高だわ!」 夫となるオズベルトにはある秘密があり、それゆえ女性不信で態度も酷い。しかも彼は「結婚相手はサイコロで適当に決めただけ」と、面と向かってフィリアに言い放つが。 「まぁ、偶然!私も、そんな感じで選びました!」 彼女には、まったく通用しなかった。 「なぁ、フィリア。僕は君をもっと知りたいと……」 「好きなお肉の種類ですか?やっぱり牛でしょうか!」 「い、いや。そうではなく……」 呆気なくフィリアに初恋(?)をしてしまった拗らせ男は、鈍感な妻に不器用ながらも愛を伝えるが、彼女はそんなことは夢にも思わず。 ──旦那様が真実の愛を見つけたらさくっと離婚すればいい。それまでは田舎ライフをエンジョイするのよ! と、呑気に蟻の巣をつついて暮らしているのだった。 ※他サイトにも掲載中。

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

転生したら冷徹公爵様と子作りの真っ最中だった。

シェルビビ
恋愛
 明晰夢が趣味の普通の会社員だったのに目を覚ましたらセックスの真っ最中だった。好みのイケメンが目の前にいて、男は自分の事を妻だと言っている。夢だと思い男女の触れ合いを楽しんだ。  いつまで経っても現実に戻る事が出来ず、アルフレッド・ウィンリスタ公爵の妻の妻エルヴィラに転生していたのだ。  監視するための首輪が着けられ、まるでペットのような扱いをされるエルヴィラ。転生前はお金持ちの奥さんになって悠々自適なニートライフを過ごしてたいと思っていたので、理想の生活を手に入れる事に成功する。  元のエルヴィラも喋らない事から黙っていても問題がなく、セックスと贅沢三昧な日々を過ごす。  しかし、エルヴィラの両親と再会し正直に話したところアルフレッドは激高してしまう。 「お前なんか好きにならない」と言われたが、前世から不憫な男キャラが大好きだったため絶対に惚れさせることを決意する。

獣人の彼はつがいの彼女を逃がさない

たま
恋愛
気が付いたら異世界、深魔の森でした。 何にも思い出せないパニック中、恐ろしい生き物に襲われていた所を、年齢不詳な美人薬師の師匠に助けられた。そんな優しい師匠の側でのんびりこ生きて、いつか、い つ か、この世界を見て回れたらと思っていたのに。運命のつがいだと言う狼獣人に、強制的に広い世界に連れ出されちゃう話

【R-18】喪女ですが、魔王の息子×2の花嫁になるため異世界に召喚されました

indi子/金色魚々子
恋愛
――優しげな王子と強引な王子、世継ぎを残すために、今宵も二人の王子に淫らに愛されます。 逢坂美咲(おうさか みさき)は、恋愛経験が一切ないもてない女=喪女。 一人で過ごす事が決定しているクリスマスの夜、バイト先の本屋で万引き犯を追いかけている時に階段で足を滑らせて落ちていってしまう。 しかし、気が付いた時……美咲がいたのは、なんと異世界の魔王城!? そこで、魔王の息子である二人の王子の『花嫁』として召喚されたと告げられて……? 元の世界に帰るためには、その二人の王子、ミハイルとアレクセイどちらかの子どもを産むことが交換条件に! もてない女ミサキの、甘くとろける淫らな魔王城ライフ、無事?開幕! 

処理中です...