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終・お嬢様、全てを踏み台に。

04リンゴのパイが食べたい。

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 そして、この私アビゲイル・バセットは。

「アトキンス侯爵家、グライムス侯爵家、この二つから連なるバセット伯爵家をふくめた中立派貴族は軒並のきなみ不正の対象になりますね。今のところ資料にせた二十三の貴族家、多分洗えば他にも出てくると思います。武装決起ぶそうけっきに参加した中にも思想というより勝ち馬に乗りに行った貴族もいるはずですし、教会派にも信仰ではなく献金けんきん目的のところも調査中です」

 つらつらと、アーマード・バルカード侯爵やマーク・リングストン公爵やキャロライン・エンデスヘルツ公爵やジャレッド・メルバリア王子に資料を広げて説明を行う。

 バセット家を始めとする中立派たちに対する処遇しょぐうに関しては水面下で計画中で、私とナインはその計画に協力中なのだ。

 使途不明金しとふめいきんや犯罪などを法の下でしっかりと糾弾きゅうだんできるように裏付け捜査中。
 ジャレッド王子が王位を継承けいしょうした後にすぐに実行できるように進めている。
 武力的な解決をのぞんできた場合はアンナ夫人が全力で相手すると約束してくれて、ナインもひかえている。
 結託けったくして様々な裏工作を仕掛けてきた場合は女神の実在が証明された今、信仰を盾にして安寧と幸福をさまたげようとする者はいないと聖女も太鼓判たいこばんを押してくれた。

 そして、私はこの度。
 この計画への協力と会談での立ち回りと女神様へ黄金のロザリオを突き刺したりってとこから。

 たまわる運びになった。

 キャロライン・エンデスヘルツ公爵とマーク・リングストン公爵からの推薦すいせんを、現国王のピーター・メルバリア様が認めた。

 つまり私はアビゲイル・バセット男爵…………いや、アビゲイル・ウィーバー男爵になる。

 なんだかんだ色々とあったけど、私の思惑通りになった。

 腐敗ふはいした貴族、王家の策略、武装決起ぶそうけっき、魔王襲来しゅうらい、女神降臨こうりん、様々な出来事による傷跡きずあとは深く残り全てが解決して聖女がかかげる安寧と幸福とやらにはお世辞せじにもたどり着けたとはいえない。

 それでも私は、それら全てを踏み台に幸せになれたと思う。

「あ、ナイン。リンゴのパイが食べたい」

 私は報告の帰り道に買い物をしながら、荷物で両手がいっぱいのナインにリクエストをげる。

「リンゴはもうしゅんじゃないぞ。今なら柑橘系かんきつけいとかの方が美味しいんじゃないか?」

 荷物を器用にかかえながら、果物屋さんの前でナインは返す。

「へー、なんか作れるの?」

「ママレードジャムとかなら……つーか爵位得て貴族になるのなら屋敷住みになるんだろ? 料理人は料理人でやとった方がいいんじゃないか?」

 オレンジとレモンをいくつか購入しながら、ナインは私の問いに淡々と答えつつ提案ていあんをする。

「あーそっか、爵位を得たら一応お屋敷に住まなきゃならないんだっけ。二人なら3LDKもあれば書斎しょさいも作れるし十分なんだけど、来賓らいひん対応とか来賓らいひんに対応出来る人員が働ける広さを確保するとなると……なんだかんだで広い家が必要になるのよね」

 私は歩みを進めながら屋敷に関しての思いをべる。

「そのうち財政管理とか福祉関連にもたずさわるんなら部下もできるんだろ? 屋敷内で仕事が回るようにした方がいいだろうし、結構広めにしといた方がいいな」

 ナインは荷物を抱えて私の後ろを歩きながら淡々と屋敷に関して返す。
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