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終・お嬢様、全てを踏み台に。

02子供が出来ました。

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「……気に入らないわね、何それ全然ダメ。とりあえず殺して剥製はくせいにして送り付けてやろうかしらね。ロバート」

「かしこまりました。リリィ様すぐに手配いたします」

 邪悪じゃあく権化ごんげがそう言うと、大男はそう返す。

 あの後、悪の組織はあっという間に撤収てっしゅうして今も尚この大陸の悪事を調整し続けている。
 組織のボスであるリリィ氏は、今日も気に入らない未来を見通して、何かを叩き潰しているのだろう。
 ロバート氏は今日もそんなリリィ氏にめいじられるまま、何かをじ伏せているのだろう。

「なんか……暗いんだよおまえら! なんだ? 一回私のおっぱい揉んどくか? …………揉めよ! ふざけんな! ノリわりぃ~」

 無表情な面々に向かって胸部きょうぶを寄せながら、けらけらと笑って名無し女性がからかう。

 ちなみに、どさくさにまぎ鹵獲ろかくしたナンバーシリーズたちは組織に組み込んで名無しの殺し屋さんが面倒を見ているらしい。

「歴史のピースと超科学的な仮説が一気に増えすぎよコレ……、なんかくわしい人とかいないの?」

 頬杖ほおづえをつきながら、山ような資料に埋もれるように聖女の親友は疲れながらつぶやく。

 あの後、アンジェラ・ステイモス侯爵令嬢は恋人のシャリフ・ライオンズより別れをげられた。
 シャリフ氏は悪の組織の殺し屋だったことが判明し、貴族令嬢のアンジェラ嬢に迷惑がかかるとシャリフ氏の方から去っていったらしい。
 元暗殺者である執事を恋人にしている私からしたら関係ないという話をしたところ、アンジェラ嬢はシャリフ氏に文句を言う為に悪の組織に乗り込んだのだった。

「やべえ……、僕はなんの仕事が出来るんだ? さらってさらって吐かせて殺す以外に…………とりあえず工場か鉱山かぁ……?」

 求人募集掲示板の前で組織最強とうたわれた殺し屋が一人、悩みながらつぶやく。

 アンジェラ嬢が組織に乗り込んだ結果。
 リリィ氏はナンバーシリーズが手に入り、仕事を選びあつかいづらいシャリフ氏はいらないということで組織から足を洗わされた。
 さらにこの後にばったり出会った剣豪子爵バンフィールド氏によって騎士団の捕縛ほばく訓練教官をつとめることになる。

「シェル、話があります」

 家族で食卓しょくたくを囲む中、剣客夫人はすさまじい緊張感を持って夫へと語りかける。

「なっ……? …………い、いや、待てアンナ。身に覚えがない、僕は何もやってないはずだ。僕じゃないぞ」

 騎士の目でその緊張感を見て感じ取り、原因を頭にめぐらせておののきながら夫は返すが。

「…………子供が出来ました」

 夫の返しに緊張感から怒りをにじませて、剣客夫人は答えをべた。

「……に、兄さんって結構馬鹿だよな」

「シェル、お前が悪い。斬られてこい」

 弟と父親があきれながら食事を続ける。

 バルカード侯爵は、相変あいかわらず国防をになっていて。
 ブロック氏は勘当かんどう状態を解除され、今はバルカード家に戻り騎士の訓練に参加しているらしい。
 アンナ夫人とシェル氏の間に子供が出来て、翌年には出産予定だ。二人の子だからきっと元気な子が生まれるだろう。

「ワタナベ様! 今はプロペラではなく自動車についての設計をしてください! ここからの改革かいかくでインフラ整備が進むので物流が重要になるのですよ!」

「あらあら、今日も君は可愛いね。でも物流の究極系は空路くうろだよ、これは世界を加速させるものだ」

 ぷりぷりと怒りを見せる婚約者に対して、異世界転移男爵はスパナを片手に飛行機のエンジンをいじりながら返す。

 ジョー・ワタナベ男爵は兵器開発の罪に問われたが、復興ふっこう作業に対する重機や建築技術提供ていきょうによる協力と女神に選ばれた聖人であるということで減刑された。
 婚約者のタンディ・ドイル侯爵令嬢のドイル侯爵家も同じく減刑されたがドイル侯爵はタンディ嬢の兄へと受けがれ。
 機械工場を持つフィリップス伯爵も減刑され爵位はたもたれたが工場の権利をキャロライン嬢へと譲渡じょうとし、今は完全に管理下に置かれている。

「狙って、真っ直ぐ引く、強くは引かず反動をおさえようと不必要に力まない。緊張は心の中に留めて身体に伝わせない、銃身銃口がブレなければ弾はそこに飛びます。当たり前になるまでとにかく練習、徹底的てっていてきに練習をするだけで目の前の脅威きょういが一つ減るのです。やらない理由はないでしょう」

 射撃訓練場にて発砲令嬢は銃を構える兵士たちに、指導を行う。

 発砲令嬢ことクリスティーナ・フィリップス嬢は、その後再び収監しゅうかんされた。
 だが、その高い技量を見込まれて兵士たちへの射撃訓練の教官に任命にんめいされた。あまり退屈はしていないようだ。 
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