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33・お嬢様、疑念に悩む。
03応えること。
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いやいやまさかそんな馬鹿なことが。
いやいやいやいや。
…………え? マジ?
いやいやいやいや、まさかナインに限ってそんなことはないだろう。
バルカード夫人との戦いであんなに情熱的な告白をして、二人っきりの時は割とスキンシップをとっているのに、いやいやまさか。
………………まさか?
なんかもう、気になり出したらどうにも止まらない。
各派閥のトップが集まる会談とか、魔王軍の襲来とか、もうそれどころじゃあない。
私の幸せは今や、ナイン有りきで進行している。
それほどに私はナインに参ってしまっているのである。
まさか私が、恋をするなんて思ってもみなかった。
病院のベッドで骨と皮の状態で髪も伸ばせず管に繋がれて人生を終えて、バセット家に虐げられ育ったこの私に恋をするなんて時が訪れるなんて微塵も思わなかった。
故に私は全くわからない。
こんな状況に対してどう対応して良いのかわからない。
ああ煩わしい、恋が煩わしい。
非常に悩ましいがこれこそ考えても仕方がない、わからないことは考えるのではなく調べて学ぶべきものだ。
故に、私は今から問わなくてはならない。
今、目の前でお風呂上がりに半裸で水を飲む、まつ毛の長い執事であり恋人である彼に、直接聞かなくてはならないのだ。
ふー……。
気持ちを落ち着けて、簡潔に、問う。
「あんた、浮気してるでしょ!」
私はバスタオル一枚で左手を腰に、右手で人差し指を突き出し力強くナインに言い放った。
「………………」
ナインは私の声に表情だけで、うわまたこいつおかしな事言い出しやがったよ。と返してそのまま水を飲み干してコップを置き。
「そんな暇あるわきゃねーだろ」
呆れ顔でそう答えた。
ぐうの音も出ないほどの正答……、確かに私とナインは基本的に四六時中一緒であり今さっきもお風呂に入れてもらっていたばかりだ。
私の世話でそんな時間があるわけがない。
そして、言葉足らずのナインが言いたいのはそれだけでなく。
こんなに時間を惜しみなく弄するほど愛しているのに浮気なんかするわけがない。
みたいな意味合いも内包しているのだ。
いや流石に私がそう言うのは思い込みが過ぎる痛い感じに思われるかと思うけど、ナインはわりと言葉より行動で示したがる。
彼にとって、応えることが自身を表現する最も美しい方法なのだ。
それじゃあ伝わらない人とは噛み合わない無愛想なだけの男だけれども、それが伝わってしまう私は幸せだ。
いやいやそうじゃない、そうだけどそうじゃない。
「いやだって! 夜中にこそこそ抜け出したり、なにか私に隠してることあるでしょう!」
私はときめきには引かずにさらに追求してみる。
「いったい何を言っているのか、さっぱりわからないな」
私の言葉にナインは全く感情の起伏を見せずに答える。
やっぱり。
これは嘘というか、ナインお得意のやつだ。
ナインは何でも殺せるので表情や感情を殺すのも容易い。
だけど普段から感情を殺したままなのならまだしも、さっきまでお風呂でイチャイチャしていたやつがいきなり無表情になったのだから、そりゃあわかる。
「……いやもうそうやって本気で隠しにかかるのがマジっぽくて嫌なんだけど……、えーなに……? 私だけじゃ飽き足らずなんか夜のお店とか行ってんの? そう言う感じだと確かに私は身体付きに自信がないというか、あの魔女さんのようなグラマラスさが趣味趣向なんだとすると――っむぐっ!」
「おまえちょっと黙れ」
半泣きでまくし立てる私の口を手で塞ぎ、ナインはそう言って眉をひそめて大きなため息をつく。
「…………わかった、可能な限り説明する」
ナインは観念して、そう漏らして私をソファに座らせて語り出す。
いやいやいやいや。
…………え? マジ?
いやいやいやいや、まさかナインに限ってそんなことはないだろう。
バルカード夫人との戦いであんなに情熱的な告白をして、二人っきりの時は割とスキンシップをとっているのに、いやいやまさか。
………………まさか?
なんかもう、気になり出したらどうにも止まらない。
各派閥のトップが集まる会談とか、魔王軍の襲来とか、もうそれどころじゃあない。
私の幸せは今や、ナイン有りきで進行している。
それほどに私はナインに参ってしまっているのである。
まさか私が、恋をするなんて思ってもみなかった。
病院のベッドで骨と皮の状態で髪も伸ばせず管に繋がれて人生を終えて、バセット家に虐げられ育ったこの私に恋をするなんて時が訪れるなんて微塵も思わなかった。
故に私は全くわからない。
こんな状況に対してどう対応して良いのかわからない。
ああ煩わしい、恋が煩わしい。
非常に悩ましいがこれこそ考えても仕方がない、わからないことは考えるのではなく調べて学ぶべきものだ。
故に、私は今から問わなくてはならない。
今、目の前でお風呂上がりに半裸で水を飲む、まつ毛の長い執事であり恋人である彼に、直接聞かなくてはならないのだ。
ふー……。
気持ちを落ち着けて、簡潔に、問う。
「あんた、浮気してるでしょ!」
私はバスタオル一枚で左手を腰に、右手で人差し指を突き出し力強くナインに言い放った。
「………………」
ナインは私の声に表情だけで、うわまたこいつおかしな事言い出しやがったよ。と返してそのまま水を飲み干してコップを置き。
「そんな暇あるわきゃねーだろ」
呆れ顔でそう答えた。
ぐうの音も出ないほどの正答……、確かに私とナインは基本的に四六時中一緒であり今さっきもお風呂に入れてもらっていたばかりだ。
私の世話でそんな時間があるわけがない。
そして、言葉足らずのナインが言いたいのはそれだけでなく。
こんなに時間を惜しみなく弄するほど愛しているのに浮気なんかするわけがない。
みたいな意味合いも内包しているのだ。
いや流石に私がそう言うのは思い込みが過ぎる痛い感じに思われるかと思うけど、ナインはわりと言葉より行動で示したがる。
彼にとって、応えることが自身を表現する最も美しい方法なのだ。
それじゃあ伝わらない人とは噛み合わない無愛想なだけの男だけれども、それが伝わってしまう私は幸せだ。
いやいやそうじゃない、そうだけどそうじゃない。
「いやだって! 夜中にこそこそ抜け出したり、なにか私に隠してることあるでしょう!」
私はときめきには引かずにさらに追求してみる。
「いったい何を言っているのか、さっぱりわからないな」
私の言葉にナインは全く感情の起伏を見せずに答える。
やっぱり。
これは嘘というか、ナインお得意のやつだ。
ナインは何でも殺せるので表情や感情を殺すのも容易い。
だけど普段から感情を殺したままなのならまだしも、さっきまでお風呂でイチャイチャしていたやつがいきなり無表情になったのだから、そりゃあわかる。
「……いやもうそうやって本気で隠しにかかるのがマジっぽくて嫌なんだけど……、えーなに……? 私だけじゃ飽き足らずなんか夜のお店とか行ってんの? そう言う感じだと確かに私は身体付きに自信がないというか、あの魔女さんのようなグラマラスさが趣味趣向なんだとすると――っむぐっ!」
「おまえちょっと黙れ」
半泣きでまくし立てる私の口を手で塞ぎ、ナインはそう言って眉をひそめて大きなため息をつく。
「…………わかった、可能な限り説明する」
ナインは観念して、そう漏らして私をソファに座らせて語り出す。
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