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29・居候、再会する。
04お姉ちゃんと一緒に。
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「痛ってえ……っ、避けきれなかった……」
苦い顔をしながら、左手で右腕を強く掴み血を止めながら呟く。
「待ってマリシュカ!」
間髪入れずに動こうとしていたマリシュカと男の間に入ってマリシュカを止める。
マリシュカは自分を可愛いと言う人間を、見境なく殺します。
マリシュカ・ネビルは幼き頃より、その容姿や物腰から可愛いと言われ続けて育ちました。
マリシュカが何をしても、可愛い可愛いと愛され、注目を集めてきました。
全てのことが許され、同時に可愛いから外れる行動は許されませんでした。
自身ですら許せないことを許され、当たり前のことが許されない。
誰一人、自分が自分で思う本質を見ずに、ただただ可愛いがわれる。
そんな風にマリシュカは可愛いに矯正され強制されてきました。
そして私も。
妹であるマリシュカだけが愛され、許される。
私がどれだけ優秀な学業成績を収めても、ピアノで賞をとっても、話題はマリシュカの話。
私と話していても、目の焦点は私を通り抜けていつだってマリシュカに合っていた。
学友ですら、家族ですら、婚約者ですら。
誰一人、私の本質を見て認めてくれる人はいませんでした。
私たち姉妹は、可愛いに縛られて生きてきた。
そんなマリシュカがある日、男のいうところの勇者の剣を手にして自身を可愛いと言う人間を皆殺しにしたのです。
狂って壊れて、環境を打破した。破壊した。
でもマリシュカは私だけを殺さなかった、それは私だけがマリシュカを嫌いだったからです。
認めたくなくて、可愛いとだけは口にしたことがなかった。
露骨な否定はしていませんでしたが、やはり認めたくなかったのでしょう。
しかし、私たちを縛る環境を斬り刻んだマリシュカを私はここにきて。
好きになってしまったのです。
「マリシュカ、この人を斬る必要はない。この人が私たちの環境に影響を及ぼすことはないでしょ」
私はマリシュカを優しく諭す。
「……んんん……、じゃあ誰なら斬っていいの? 私は誰を殺せばいいのー?」
大きい瞳をぱちくりさせながら、覗き込むようにマリシュカは私に問い返す。
私は大きくて過剰な程に煌めき輝く瞳を真摯に見つめ返しながら即答する。
「王族と中立派貴族を殺しましょう」
「はぁ⁉」
「サンディ⁉」
私の回答に謎の男とキャロライン様が驚愕するが無視して続ける。
「エンデスヘルツ公爵は私を認めてくれた、人を本質で見てくれる人なの。そのエンデスヘルツ公爵がこの国を民主主義にして、貴族や平民関係なく人が人の能力で評価される世の中になればあなたが縛られることはないのよ」
私はさらに訴えかける。
「だから私と、お姉ちゃんと一緒に行こう、マリシュカ」
そう言って、微笑みかける。
「んんん…………、んーっ!」
マリシュカは無邪気に、飛びつくように私へ抱きつき。
「わかんないけど、わかった! 行こうか、姉さん!」
私はやたら体温の高いマリシュカを抱き返す。
「待ちなさいサンディ! 貴女がそこまで父上の考えにのめり込む必要はありません! 貴女なら、私のように何処に行っても幸せになれる! 貴女は自分が思っている以上に、強い人なのですよ!」
キャロライン様が慌てた様子で私に語りかける。
「……いいえ、キャロライン様。私は貴女のように強くありません、自分を変えられるほど強くなれないので、だから私たちはこれからこの国を変えます」
私はそう返して、マリシュカの耳元で「行こう」と呟くと。
「うん! バイバイ!」
マリシュカはそう言い終わるか終わらないかくらいで私を抱いたまま思い切り飛び跳ねて、信じられない速さでその場を離れた。
その去り際にキャロライン様が何か叫んでいたようですが、聞こえませんでした。
私たち姉妹は壊れているけど、まだ幸せになれる。
そう信じているのです。
苦い顔をしながら、左手で右腕を強く掴み血を止めながら呟く。
「待ってマリシュカ!」
間髪入れずに動こうとしていたマリシュカと男の間に入ってマリシュカを止める。
マリシュカは自分を可愛いと言う人間を、見境なく殺します。
マリシュカ・ネビルは幼き頃より、その容姿や物腰から可愛いと言われ続けて育ちました。
マリシュカが何をしても、可愛い可愛いと愛され、注目を集めてきました。
全てのことが許され、同時に可愛いから外れる行動は許されませんでした。
自身ですら許せないことを許され、当たり前のことが許されない。
誰一人、自分が自分で思う本質を見ずに、ただただ可愛いがわれる。
そんな風にマリシュカは可愛いに矯正され強制されてきました。
そして私も。
妹であるマリシュカだけが愛され、許される。
私がどれだけ優秀な学業成績を収めても、ピアノで賞をとっても、話題はマリシュカの話。
私と話していても、目の焦点は私を通り抜けていつだってマリシュカに合っていた。
学友ですら、家族ですら、婚約者ですら。
誰一人、私の本質を見て認めてくれる人はいませんでした。
私たち姉妹は、可愛いに縛られて生きてきた。
そんなマリシュカがある日、男のいうところの勇者の剣を手にして自身を可愛いと言う人間を皆殺しにしたのです。
狂って壊れて、環境を打破した。破壊した。
でもマリシュカは私だけを殺さなかった、それは私だけがマリシュカを嫌いだったからです。
認めたくなくて、可愛いとだけは口にしたことがなかった。
露骨な否定はしていませんでしたが、やはり認めたくなかったのでしょう。
しかし、私たちを縛る環境を斬り刻んだマリシュカを私はここにきて。
好きになってしまったのです。
「マリシュカ、この人を斬る必要はない。この人が私たちの環境に影響を及ぼすことはないでしょ」
私はマリシュカを優しく諭す。
「……んんん……、じゃあ誰なら斬っていいの? 私は誰を殺せばいいのー?」
大きい瞳をぱちくりさせながら、覗き込むようにマリシュカは私に問い返す。
私は大きくて過剰な程に煌めき輝く瞳を真摯に見つめ返しながら即答する。
「王族と中立派貴族を殺しましょう」
「はぁ⁉」
「サンディ⁉」
私の回答に謎の男とキャロライン様が驚愕するが無視して続ける。
「エンデスヘルツ公爵は私を認めてくれた、人を本質で見てくれる人なの。そのエンデスヘルツ公爵がこの国を民主主義にして、貴族や平民関係なく人が人の能力で評価される世の中になればあなたが縛られることはないのよ」
私はさらに訴えかける。
「だから私と、お姉ちゃんと一緒に行こう、マリシュカ」
そう言って、微笑みかける。
「んんん…………、んーっ!」
マリシュカは無邪気に、飛びつくように私へ抱きつき。
「わかんないけど、わかった! 行こうか、姉さん!」
私はやたら体温の高いマリシュカを抱き返す。
「待ちなさいサンディ! 貴女がそこまで父上の考えにのめり込む必要はありません! 貴女なら、私のように何処に行っても幸せになれる! 貴女は自分が思っている以上に、強い人なのですよ!」
キャロライン様が慌てた様子で私に語りかける。
「……いいえ、キャロライン様。私は貴女のように強くありません、自分を変えられるほど強くなれないので、だから私たちはこれからこの国を変えます」
私はそう返して、マリシュカの耳元で「行こう」と呟くと。
「うん! バイバイ!」
マリシュカはそう言い終わるか終わらないかくらいで私を抱いたまま思い切り飛び跳ねて、信じられない速さでその場を離れた。
その去り際にキャロライン様が何か叫んでいたようですが、聞こえませんでした。
私たち姉妹は壊れているけど、まだ幸せになれる。
そう信じているのです。
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