102 / 165
27・お嬢様、魔王に会う。
03子離れ。
しおりを挟む
依然として動きを止められたままのナイン、思考が追いつかない私とマーク様。
この後の展開が、わけのわからないギリ世界観を守る魔王とわけのわからないサイエンス・フィクションの自動人形に完全に握られている。
せめてナインが動ければ、この隙にとんずらこくのだけれど……。
「待て、スペアシェリー、聞け提案がある」
臨戦態勢のスペアシェリーに対して魔王が落ち着いて語り始める。
「今回、俺の目的は世界の滅亡じゃあない。この国の現体制の破壊だ、そこにいるリングストン公爵を含めた三公爵と主要貴族、王族を殺せればそれでいい」
淡々と目的を伝え。
「だからそれが終わってからなら、無抵抗で封印されてやるってのはどうだ」
と、提案を述べた。
「……おまえは二千年も封印されて頭が悪くなったのか? 私になんの得がある、今できることを何故待つ必要がある。答えはノーだ」
スペアシェリーは無機質にその提案を却下した。
「得はあるぜ、俺は無抵抗にと言ったんだ。正直おまえとやり合っても全然勝ちの目があると思ってる。シェリー・ラスゴーランの造った人形相手に余裕とまでは言わねえが、おまえの言う通り封じられたとしてもその時おまえは確実に粉々になっている」
魔王は却下に対してさらに食い下がるように話し、続けて。
「俺が無抵抗に封印されれば、おまえは傷一つ無い状態で残り時間を有意義に過ごすことが出来る。悪くない話だと思うぜ」
メリットを提示する。
「だから、それがなんの利益があるんだ。私はシェリー・ラスゴーランではないのだぞ、そもそも自動人形の私に生存意欲は無――」
「嘘だ。良いね、実に俺好みだ」
スペアシェリーの言葉を魔王が遮り。
「おまえ、研究者の知識と知恵と記憶だけでなく感情も引き継いでいるだろ。特に娘であるサム・ラスゴーラン・ノアに対する愛情は全く色褪いろあせていない」
不敵に、そう宣う。
しかし、その言葉に自動人形は動かない。
「俺が無抵抗に封印されれば、残りの時間を最愛の娘と優雅に過ごすことが出来るんだ。おまえの可動時間はどのくらいあるんだ? 十年? 五十年? あの魔女と協力すれば百年は持つのか? 良いねえ、家族愛ってやつか。悪を統べる魔の王たるこの俺ですら美しい行動原理だと思うぜ、残務処理の為に造った自動人形にすら受け継がれる思い。いやー涙がちょちょ切れ――」
「嘘だな。白々しい、おまえに愛や道徳が理解出来るわけがないだろう」
魔王の言葉に呆れるようにスペアシェリーが遮る。
「だがその通り、私は研究者の全てを引き継いでいるが故にサムに対する母性や愛情を有しているのは事実だ、しかし」
少し柔らかい表情で続けて。
「子離れは出来ているさ、研究者はあの子に伝えられるだけ教えられるだけ全てを託した。もうあの子にしてやれることは何一つない、確かにいつまで経ってもあの子は可愛い、愛している。だが私はあの子を心配もしていなければ不安もない。だから私は私の役割をサムには魔女の役割を全うするだけなのさ」
そう言い放った。
ちなみに完全に私たちは空気である。
いやマジに何の話?
「というかおまえサムに何か言われたな? 大方、私を壊せば消し飛ばすとでも言われたか。災難だったな、おまえは終わりだ」
さらにスペアシェリーは不敵に魔王へと煽るように言い放つ。
あれ、よくわからないけどこれ魔王の負けな流れ……? ならこの場はとりあえず逃れられる感じなのかしら……?
「あー……、めんどくせえ。やっぱ楽ってのは出来ねえもんだな……仕方ねえ」
少しうなだれるように、魔王が呟く。
そして。
「てめえをシャカって、魔女も殺すッ‼ 魔王を本気にさせたことを、一秒で後悔させてやる」
怒鳴るようにそう言うと、魔王を中心に爆発するような突風が舞う。
飛ばされないように身構えた、瞬間。
魔王の首が飛んだ。
話の脈略を無視して、誰の意識にもない行動。
無論、ナインによるものだ。
「おおおおおおおおおおおぉおおおぉおぉぉおらああああ――――――――ッ‼」
そこから間髪を入れずに雄叫びを上げながら、魔王の身体を切断して行く。
粉々に、バラバラに刻まれた魔王は泥のように崩れて落ちた。
「逃げるぞッ‼」
そのまま凄まじい速さで、私とマーク様を抱えて走り出す。
が。
「逃がすわけねえだろ、死ね」
そう言いながらたった今崩れ落ちたはずの魔王が、何も無かったかのように五体満足で退路を塞ぎ、右の手のひらから赤い光を放つ。
「させるわけないだろう」
間髪入れずにスペアシェリーが退路を塞いだ魔王に空気の塊のようなものをぶつけて吹き飛ばしながらそう言う。
この後の展開が、わけのわからないギリ世界観を守る魔王とわけのわからないサイエンス・フィクションの自動人形に完全に握られている。
せめてナインが動ければ、この隙にとんずらこくのだけれど……。
「待て、スペアシェリー、聞け提案がある」
臨戦態勢のスペアシェリーに対して魔王が落ち着いて語り始める。
「今回、俺の目的は世界の滅亡じゃあない。この国の現体制の破壊だ、そこにいるリングストン公爵を含めた三公爵と主要貴族、王族を殺せればそれでいい」
淡々と目的を伝え。
「だからそれが終わってからなら、無抵抗で封印されてやるってのはどうだ」
と、提案を述べた。
「……おまえは二千年も封印されて頭が悪くなったのか? 私になんの得がある、今できることを何故待つ必要がある。答えはノーだ」
スペアシェリーは無機質にその提案を却下した。
「得はあるぜ、俺は無抵抗にと言ったんだ。正直おまえとやり合っても全然勝ちの目があると思ってる。シェリー・ラスゴーランの造った人形相手に余裕とまでは言わねえが、おまえの言う通り封じられたとしてもその時おまえは確実に粉々になっている」
魔王は却下に対してさらに食い下がるように話し、続けて。
「俺が無抵抗に封印されれば、おまえは傷一つ無い状態で残り時間を有意義に過ごすことが出来る。悪くない話だと思うぜ」
メリットを提示する。
「だから、それがなんの利益があるんだ。私はシェリー・ラスゴーランではないのだぞ、そもそも自動人形の私に生存意欲は無――」
「嘘だ。良いね、実に俺好みだ」
スペアシェリーの言葉を魔王が遮り。
「おまえ、研究者の知識と知恵と記憶だけでなく感情も引き継いでいるだろ。特に娘であるサム・ラスゴーラン・ノアに対する愛情は全く色褪いろあせていない」
不敵に、そう宣う。
しかし、その言葉に自動人形は動かない。
「俺が無抵抗に封印されれば、残りの時間を最愛の娘と優雅に過ごすことが出来るんだ。おまえの可動時間はどのくらいあるんだ? 十年? 五十年? あの魔女と協力すれば百年は持つのか? 良いねえ、家族愛ってやつか。悪を統べる魔の王たるこの俺ですら美しい行動原理だと思うぜ、残務処理の為に造った自動人形にすら受け継がれる思い。いやー涙がちょちょ切れ――」
「嘘だな。白々しい、おまえに愛や道徳が理解出来るわけがないだろう」
魔王の言葉に呆れるようにスペアシェリーが遮る。
「だがその通り、私は研究者の全てを引き継いでいるが故にサムに対する母性や愛情を有しているのは事実だ、しかし」
少し柔らかい表情で続けて。
「子離れは出来ているさ、研究者はあの子に伝えられるだけ教えられるだけ全てを託した。もうあの子にしてやれることは何一つない、確かにいつまで経ってもあの子は可愛い、愛している。だが私はあの子を心配もしていなければ不安もない。だから私は私の役割をサムには魔女の役割を全うするだけなのさ」
そう言い放った。
ちなみに完全に私たちは空気である。
いやマジに何の話?
「というかおまえサムに何か言われたな? 大方、私を壊せば消し飛ばすとでも言われたか。災難だったな、おまえは終わりだ」
さらにスペアシェリーは不敵に魔王へと煽るように言い放つ。
あれ、よくわからないけどこれ魔王の負けな流れ……? ならこの場はとりあえず逃れられる感じなのかしら……?
「あー……、めんどくせえ。やっぱ楽ってのは出来ねえもんだな……仕方ねえ」
少しうなだれるように、魔王が呟く。
そして。
「てめえをシャカって、魔女も殺すッ‼ 魔王を本気にさせたことを、一秒で後悔させてやる」
怒鳴るようにそう言うと、魔王を中心に爆発するような突風が舞う。
飛ばされないように身構えた、瞬間。
魔王の首が飛んだ。
話の脈略を無視して、誰の意識にもない行動。
無論、ナインによるものだ。
「おおおおおおおおおおおぉおおおぉおぉぉおらああああ――――――――ッ‼」
そこから間髪を入れずに雄叫びを上げながら、魔王の身体を切断して行く。
粉々に、バラバラに刻まれた魔王は泥のように崩れて落ちた。
「逃げるぞッ‼」
そのまま凄まじい速さで、私とマーク様を抱えて走り出す。
が。
「逃がすわけねえだろ、死ね」
そう言いながらたった今崩れ落ちたはずの魔王が、何も無かったかのように五体満足で退路を塞ぎ、右の手のひらから赤い光を放つ。
「させるわけないだろう」
間髪入れずにスペアシェリーが退路を塞いだ魔王に空気の塊のようなものをぶつけて吹き飛ばしながらそう言う。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,553
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる