97 / 165
26・公爵、愛がゆえに。
02逃れる術。
しおりを挟む
グロリアの友人で狙撃から僕の命を救い、騎士からの追求に対して決闘を行ってまで跳ね除けた。あのアビィ嬢だ。
確かに協力に関しては断られたが、敵に回るような人間ではないはずだ。
そもそも敵に回るのなら、狙撃から守る必要もなければ、騎士に僕を売ればいい。
何故こんなことを……?
いや、目的は僕を国家転覆から手を引かせようってことなんだろうけど。
頭の中はパニックだけど。
僕は引けない、僕は僕でこれが正しいと思っている。
この国の為、グロリアの為に、正しい方向に導かなくてはならない。
アビィ嬢が犯人というのには驚いたけど、これはチャンスだ。
彼女は理知的で話の通じる人だ、ちゃんと話して理解をしてもらえれば。
「あ、私が知り合いだから話が通じるとかは考えない方がいいですよ。私は今から貴方が『イエス』としか言えなくなるまで痛めつけますから。言ったでしょう、一方的に突きつけると。私はグロリアが幸せになってほしいと思うので貴方を殺めたりする気はありませんが、手足の一本二本なくなっても公爵の地位があればグロリアを幸せにすることは叶うでしょうし」
アビィ嬢は僕の考えに反して全く表情を変えずに恐ろしいことを宣う。
前言撤回、これは話が通じる相手じゃあない。
嘘だろ、アビィ嬢ってこんなにぶっ飛んだ思考の持ち主だったのか。
「銃火器の大量生産やナインを引き入れての武力行使なんて野蛮なことをせずともこの国は変わりますし変えられます。物事の解決に暴力を用いる限り、本質的な向上は得られないでしょう。まあ私は今から解決に暴力を用いるわけですけど、それは気にしないでください。私は別に正しくあろうとも思ってなければ善性を示したいとも思いませんので、私は悪で間違っていて私利私欲の為に人を傷つける愚か者です。そうですね反面教師くらいに思ってください」
なんの感情の起伏もなく、アビィ嬢はそう語り。
「じゃナイン、左から」
さらりと、そう言うと。
闇の中から突然、ぬるりとアビィ嬢の執事ナイン・ウィーバーが姿を現し。
「かしこまりました。お嬢様」
そう言って、椅子の手すりに縛られた僕の左腕を踏みつけるように踵で打ちつけた。
「ぐ……ッ‼」
あまりの激痛に、封じられた口から声が漏れて、縛られながらも身をよじり痛みから逃げようとする。
が、裏拳で頬を打たれて黙らさせられ。
続けてさらに踵で左腕を打たれる。
その際に左腕から、脳天に骨が折れる音が突き抜けて遅れてさらに激痛が走る。
そこから、何度も何度も、左腕を打ちつけられる。
痛みに涙が止まらない、身をよじると頬を打たれ、痛みから逃れることは絶対に許されない。
数秒が永遠に感じるほどの苦痛。
逃れる術はなく、ただただ執拗に痛めつけられる。
――いや。
逃れる術は一つあるのか。
「ナイン、一回止めて」
「かしこまりました。お嬢様」
アビィ嬢は僕を観察するようにじっと見つめて、僕の心が折れるギリギリのラインでナイン君に静止を命ずる。
「……さて、マーク様。今一度お伝え致します。この国家転覆から手を引いて、まだ間に合うから王族との交渉の席に着いてくださいますか? お返事を」
僕の目を見つめながらアビィ嬢は淡々とそう言って、ナイン君に目線を向ける。
アビィ嬢の意を汲んだナイン君は、僕がその答えを発せられるように口の拘束を解く。
確かに協力に関しては断られたが、敵に回るような人間ではないはずだ。
そもそも敵に回るのなら、狙撃から守る必要もなければ、騎士に僕を売ればいい。
何故こんなことを……?
いや、目的は僕を国家転覆から手を引かせようってことなんだろうけど。
頭の中はパニックだけど。
僕は引けない、僕は僕でこれが正しいと思っている。
この国の為、グロリアの為に、正しい方向に導かなくてはならない。
アビィ嬢が犯人というのには驚いたけど、これはチャンスだ。
彼女は理知的で話の通じる人だ、ちゃんと話して理解をしてもらえれば。
「あ、私が知り合いだから話が通じるとかは考えない方がいいですよ。私は今から貴方が『イエス』としか言えなくなるまで痛めつけますから。言ったでしょう、一方的に突きつけると。私はグロリアが幸せになってほしいと思うので貴方を殺めたりする気はありませんが、手足の一本二本なくなっても公爵の地位があればグロリアを幸せにすることは叶うでしょうし」
アビィ嬢は僕の考えに反して全く表情を変えずに恐ろしいことを宣う。
前言撤回、これは話が通じる相手じゃあない。
嘘だろ、アビィ嬢ってこんなにぶっ飛んだ思考の持ち主だったのか。
「銃火器の大量生産やナインを引き入れての武力行使なんて野蛮なことをせずともこの国は変わりますし変えられます。物事の解決に暴力を用いる限り、本質的な向上は得られないでしょう。まあ私は今から解決に暴力を用いるわけですけど、それは気にしないでください。私は別に正しくあろうとも思ってなければ善性を示したいとも思いませんので、私は悪で間違っていて私利私欲の為に人を傷つける愚か者です。そうですね反面教師くらいに思ってください」
なんの感情の起伏もなく、アビィ嬢はそう語り。
「じゃナイン、左から」
さらりと、そう言うと。
闇の中から突然、ぬるりとアビィ嬢の執事ナイン・ウィーバーが姿を現し。
「かしこまりました。お嬢様」
そう言って、椅子の手すりに縛られた僕の左腕を踏みつけるように踵で打ちつけた。
「ぐ……ッ‼」
あまりの激痛に、封じられた口から声が漏れて、縛られながらも身をよじり痛みから逃げようとする。
が、裏拳で頬を打たれて黙らさせられ。
続けてさらに踵で左腕を打たれる。
その際に左腕から、脳天に骨が折れる音が突き抜けて遅れてさらに激痛が走る。
そこから、何度も何度も、左腕を打ちつけられる。
痛みに涙が止まらない、身をよじると頬を打たれ、痛みから逃れることは絶対に許されない。
数秒が永遠に感じるほどの苦痛。
逃れる術はなく、ただただ執拗に痛めつけられる。
――いや。
逃れる術は一つあるのか。
「ナイン、一回止めて」
「かしこまりました。お嬢様」
アビィ嬢は僕を観察するようにじっと見つめて、僕の心が折れるギリギリのラインでナイン君に静止を命ずる。
「……さて、マーク様。今一度お伝え致します。この国家転覆から手を引いて、まだ間に合うから王族との交渉の席に着いてくださいますか? お返事を」
僕の目を見つめながらアビィ嬢は淡々とそう言って、ナイン君に目線を向ける。
アビィ嬢の意を汲んだナイン君は、僕がその答えを発せられるように口の拘束を解く。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,553
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる