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23・お嬢様、墓前に花を添える。

02心配をかけないように。

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「今回の件は、迷惑をかけて済まなかった。こんなことになってしまって……本当に申し訳ない。僕が巻き込んでしまった、君たちは命の恩人でもある。ありがとう」

 開幕からマーク様は神妙しんみょう面持おももちで頭を下げる。

「いえいえ、頭を上げてください。誰も予想が出来ることではなかったと思います。私の判断ミスでもあるのですから」

 私はそう言って、マーク様に頭をあげるようにうながす。

 こんなことに意味はない。
 頭を下げて取り戻せる失敗ではないのだから。

「……ただ、この前のお話の返事は、ノーと答えさせて頂きます。こうなった以上ご協力はできません」

 続けて私は、この間の密談に対する答えをべる。

 この一週間で私なりに調べたりもして、それなりに考えてもみたけど。
 こうなった以上、マーク様の活動は私の幸せにつながることだとは思えなかった。

「それは……、そうだね。わかった、だけどこれは公爵としてではなくグロリアの婚約者からのお願いなんだけど、ここから何が起きてもグロリアと友達で居てくれるかな?」

 マーク様は私の答えを飲み込み、さらに優しい笑顔でそう問う。

「ええ、もちろんです」

 私は笑顔で即答する。

 そこからマーク様は仕事があると、護衛と共にここで別れた。

 残ったみんなで、モーラの案内でケーキ屋さんへと足を向けた。

「美味しい! このクリームが……、こう、あの、……美味しいのですわ!」

「いやいやグロリアは語彙力ごいりょくつけなさいよ、表現力はあるのに語彙力ごいりょくないのはもったいないわよ?」

「いーやモーラ、美味いもんは美味いでいいだろ、時に良さってのは語る方が野暮やぼになるだろ? このアーチさんの茶のように、いやーうめーこれ」

「ルーシィ、もしかするとモーラのロックな表現力の秘密はその辺にあるのかもしれないわよ」

 なんて、ケーキと執事たちのれたお茶を飲みながらガールズトークに花を咲かせる。

 みんな私を気遣きづかって楽しい話題を提供ていきょうしてくれる。

 私も心配をかけないように、全力で楽しむことでこたえる。

「そういやモーラって卒業したら、あのぽよんぽよんでまん丸の婚約者と結婚すんの?」

「ええ、特に問題もないから卒業したらザックと結婚するわね。急にせたらわからないけど、まあそれはないから十中八九結婚するわね」

 ルーシィの問いに、モーラはあっけらかんとそう答える。
 相変わらずモーラと婚約者ザックは上手くいっているようだ。

 まあ特に必要もなかったから今まで語ったことはなかったけど、モーラは私とグロリアより一つ上でマーク様と同い年だ。

 ルーシィは私とグロリアより一つ年下だが、私は今年学園に入ったのでルーシィと同学年ではある。

「ルーシィはどうなの? 片恋相手との進展はないの?」

「もう本当に、ぜーんぜんない。こないだのパーティーでも逃げられたし、本当に何者なんだよ暴力マスクの怪人」

 モーラからの返しにルーシィは椅子の背もたれにけ反りながら答える。

「んー、怪人さんは怖いですが私もその怪人さんのせいで変な噂が立って困っていますの。いっそのことみんなでその怪人さんをつかまえましょうよ!」

 グロリアは口の端にクリームをたっぷりつけてルーシィに提案ていあんする。

「…………グロリア様、危険なことはお止め下さい」

 暴力マスクの怪人である執事アーチさんは即座にグロリアの口元をきながら止めにかかる。
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