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14・お嬢様、試される。
02キャロライン・エンデスヘルツ。
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「ごきげんよう。お待ちしておりましたアビゲイル・バセット嬢。私はキャロライン・エンデスヘルツです。どうぞ、よしなに」
扉を開けると凄まじく美人で気品の漂う淑女が、綺麗な所作でスカートの端をつまんで軽く目を伏せて出迎えた。
キャロライン・エンデスヘルツ。
発展派のトップであるエンデスヘルツ公爵家の令嬢。五爵の中で最上位であるこの国の三大公爵家の一つ、つまりとんでもない大物である。
それに加えて、キャロライン嬢には未だに学園で語り継がれる伝説がある。
数年前の学園で行われたパーティーにて。
キャロライン嬢は当時婚約者であった、この国の第一王子プライデル・メルバリアに冤罪をかけられ婚約破棄を言い渡され追放されそうになったのを。
八極拳という異国の武術を用いて、その場に居た王子を含む自分を陥れようとした人々を次々と殴る蹴るの暴力で壁や天井に埋め込んでいったという。
公爵家を陥れようとしたことから正当防衛は認められたものの、王族の……しかも王子に再起不能の怪我を負わせたということで国外追放された。
人呼んで、八極令嬢である。
確かにエンデスヘルツ公爵家とグロリアのクーロフォード家は親交が深く、グロリアもキャロライン嬢のことはお姉様と慕うほどに親しいと聞いた。
そんな学園の伝説である超大物公爵令嬢が、いったい私なんかに何の用があるというんだろう……?
「はじめまして。キャロライン・エンデスヘルツ公爵令嬢、私がアビゲイル・バセットでございます。こちらこそよろしくお願いいたします」
私はそんな疑問を頭に巡らせながら、丁寧に挨拶をする。
「ええ、お呼び立てして申し訳ございません。グロリアから聞いて少しお話をしたいと思っていたのです。さあ、お座りになって少しお話をしましょう」
キャロライン嬢は柔らかな笑顔で私をソファへと誘導する。
思っていたより友好的な様子で安心した。
噂の八極令嬢からの呼び出しに警戒しすぎていたのかもしれない。
その時、私は背筋を冷たい刃物でなぞられたような感覚が走る。
同時に。
「っ下がれ‼ 俺の後ろから出るな‼」
と、ナインが叫びながら私の首根っこを引っ張り、私とキャロライン嬢の間に割って入る。
こんなに声を荒らげるナインを初めて見た。
ナインはナイフを抜いて、構える。
背中からも緊迫感が伝わってくるが、私には何が何だかわからない。
「落ち着いてください、戯れですよ。グロリアから聞いていた通り優秀な方のようですね」
先程と同じく柔らかな笑顔でそう言ってソファへと座る。
なんなんだ? 私にはよくわからないけど、多分キャロライン嬢が何かをしたんだと思うけど、格闘技とかそういう武術みたいなものに全く明るくないのでよくわからない。
ただ、ナインの反応やアーチさんの様子から察するしかないけど。
もしかして、なんかとんでもない窮地に立たされてるんじゃないの私。
なんて考えながら、促されるままソファに座る。
「驚かせて申し訳ございませんねアビゲイル嬢、私はお話をしたいだけなのです。ご安心くださいませ」
「は、はあ……」
何をどう安心すれば良いのかわからずに変な返事をしてしまう。
ちらりとナインを見ると、額から汗をかいて緊張感を保ったままキャロライン嬢をじっと見つめていた。
いや本当に怖いんだけど、なにこれどんな状況なの?
「アビゲイル嬢、私はグロリアが大好きなのですよ」
と、突然キャロライン嬢は告白する。
今のところ一個も着いていけてないのに新たな情報の介入で私の頭の中はさらに混迷を極める。
「グロリアは本当に愛らしい、子供の頃から変わることなく本当に純心で純粋で良い子です」
その言葉に私は無言で頷く。
「それが頭の固い癖にいつもへらへらと愛想を振り向くだけの馬鹿リングストンなんかに嫁ぐなんて……、やはり一度マークは絞めておくべき…………まあそれはともかく」
一瞬不穏な空気をだしつつも、私に向き直し。
「そんなグロリアに新たにお友達が出来たというのは喜ばしいことなのですが、同時に心配でもあるのです。白くて綺麗なグロリアに黒くて闇の深い者が影響を与えてしまうことを懸念しているのですよ」
段々と声から柔らかさ消え、冷たさが尖る口調に変わり。
「アビゲイル・バセット、貴女たちは何者ですか?」
威圧感を存分に出して、キャロライン嬢は私たちに尋ねた。
扉を開けると凄まじく美人で気品の漂う淑女が、綺麗な所作でスカートの端をつまんで軽く目を伏せて出迎えた。
キャロライン・エンデスヘルツ。
発展派のトップであるエンデスヘルツ公爵家の令嬢。五爵の中で最上位であるこの国の三大公爵家の一つ、つまりとんでもない大物である。
それに加えて、キャロライン嬢には未だに学園で語り継がれる伝説がある。
数年前の学園で行われたパーティーにて。
キャロライン嬢は当時婚約者であった、この国の第一王子プライデル・メルバリアに冤罪をかけられ婚約破棄を言い渡され追放されそうになったのを。
八極拳という異国の武術を用いて、その場に居た王子を含む自分を陥れようとした人々を次々と殴る蹴るの暴力で壁や天井に埋め込んでいったという。
公爵家を陥れようとしたことから正当防衛は認められたものの、王族の……しかも王子に再起不能の怪我を負わせたということで国外追放された。
人呼んで、八極令嬢である。
確かにエンデスヘルツ公爵家とグロリアのクーロフォード家は親交が深く、グロリアもキャロライン嬢のことはお姉様と慕うほどに親しいと聞いた。
そんな学園の伝説である超大物公爵令嬢が、いったい私なんかに何の用があるというんだろう……?
「はじめまして。キャロライン・エンデスヘルツ公爵令嬢、私がアビゲイル・バセットでございます。こちらこそよろしくお願いいたします」
私はそんな疑問を頭に巡らせながら、丁寧に挨拶をする。
「ええ、お呼び立てして申し訳ございません。グロリアから聞いて少しお話をしたいと思っていたのです。さあ、お座りになって少しお話をしましょう」
キャロライン嬢は柔らかな笑顔で私をソファへと誘導する。
思っていたより友好的な様子で安心した。
噂の八極令嬢からの呼び出しに警戒しすぎていたのかもしれない。
その時、私は背筋を冷たい刃物でなぞられたような感覚が走る。
同時に。
「っ下がれ‼ 俺の後ろから出るな‼」
と、ナインが叫びながら私の首根っこを引っ張り、私とキャロライン嬢の間に割って入る。
こんなに声を荒らげるナインを初めて見た。
ナインはナイフを抜いて、構える。
背中からも緊迫感が伝わってくるが、私には何が何だかわからない。
「落ち着いてください、戯れですよ。グロリアから聞いていた通り優秀な方のようですね」
先程と同じく柔らかな笑顔でそう言ってソファへと座る。
なんなんだ? 私にはよくわからないけど、多分キャロライン嬢が何かをしたんだと思うけど、格闘技とかそういう武術みたいなものに全く明るくないのでよくわからない。
ただ、ナインの反応やアーチさんの様子から察するしかないけど。
もしかして、なんかとんでもない窮地に立たされてるんじゃないの私。
なんて考えながら、促されるままソファに座る。
「驚かせて申し訳ございませんねアビゲイル嬢、私はお話をしたいだけなのです。ご安心くださいませ」
「は、はあ……」
何をどう安心すれば良いのかわからずに変な返事をしてしまう。
ちらりとナインを見ると、額から汗をかいて緊張感を保ったままキャロライン嬢をじっと見つめていた。
いや本当に怖いんだけど、なにこれどんな状況なの?
「アビゲイル嬢、私はグロリアが大好きなのですよ」
と、突然キャロライン嬢は告白する。
今のところ一個も着いていけてないのに新たな情報の介入で私の頭の中はさらに混迷を極める。
「グロリアは本当に愛らしい、子供の頃から変わることなく本当に純心で純粋で良い子です」
その言葉に私は無言で頷く。
「それが頭の固い癖にいつもへらへらと愛想を振り向くだけの馬鹿リングストンなんかに嫁ぐなんて……、やはり一度マークは絞めておくべき…………まあそれはともかく」
一瞬不穏な空気をだしつつも、私に向き直し。
「そんなグロリアに新たにお友達が出来たというのは喜ばしいことなのですが、同時に心配でもあるのです。白くて綺麗なグロリアに黒くて闇の深い者が影響を与えてしまうことを懸念しているのですよ」
段々と声から柔らかさ消え、冷たさが尖る口調に変わり。
「アビゲイル・バセット、貴女たちは何者ですか?」
威圧感を存分に出して、キャロライン嬢は私たちに尋ねた。
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