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14・お嬢様、試される。
01グロリアの家。
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私、アビィことアビゲイル・バセットは異世界での人生の記憶を持つ異世界転生者だ。
前世では生まれつきの難病により、殆どの時間を病院のベッドに管を通され身動きひとつ取れずに確率通りに死に。
今の人生も前世の記憶を取り戻し、ナイン・ウィーバーが私の前に現れるまではなかなかに凄惨な劣悪な環境で虐げられてきた。
そんな私は前世の記憶と執事ナインを得て、幸せになることに決めた。
最初は前世の高田まりえの感覚で自由を体感してそう決めたのかと思っていたのだが、どうにも虐げられていたアビィ自身の思いも大きく影響している。
私は混ざっているのだ。
この感覚は生まれた時から前世の記憶を持つナインや、生きたままこの世界にやってきたワタナベ男爵とは共感できない感覚だろう。
まあそれはともかく。
私は私の幸せのためにバセット家を踏み台に学園に通うことに成功し、友達が出来た。
今日はそんな友達の家に招待をされている。
「ここね、グロリアの家。やっぱり貴族様のお家は大きいわねー」
私は友達のグロリアのお家の前でそんな感想を漏らす。
「なんか建物に対してそれしか言ってなくないか」
当然一緒に来ているナインが私の感想への感想を漏らす。
確かに最近これしか言ってない。まあ大きな建物にそれ以外の感想がないので仕方ないでしょ。
「……アビィ様、お待ちしておりました。ご案内致します」
そんな私たちに、グロリアの執事アーチボルト・エドワードさんが声をかける。
「ごきげんよう、アーチさん。本日はよろしくお願いいたします」
私はアーチさんへと笑顔でそう返す。
今日はグロリアに勉強を教えるという名目の元、みんなでグロリアの家で遊ぼうという会なのだ。
「グロリア様も楽しみにしております。ではこちらへどうぞ」
そう言ってアーチさんは私たちを先導する。
「グロリアのお部屋に行くのかしら、それとも別室?」
先を歩くアーチさんに問う。
「……まずは別室です。と、言いますか実はまだ本来の集合時間より早いのです」
アーチさんはやや気まずそうに答える。
「あら、時間間違えちゃったかしら……」
「いや間違いはない、約束の五分前のはずだ」
私の懸念をすぐにナインが否定する。
「はい、大変申し訳ございませんが、お二人には少し早めのお時間を伝えました」
と、少し目を伏せてアーチさんは言う。
「あ? おまえ何が目的なんだ、殺すぞ」
「は? つーか、僕がいつテメーに話しかけたんだよ。頭割るぞコラ」
「はいはい、やめなさい! でもどうして? 何か私たちに用事があるの?」
お互いのネクタイを掴み合って、睨み合う執事を諌めて質問をする。
「……申し訳ございませんアビィ様、その通りです。ある方が少しお話をされたいということで早めにお呼びした次第でございます」
襟を正してアーチさんは答える。
ある方……? 誰だろうか。
グロリアの両親であれば後でいくらでもお話する機会はあるし……。
「とにかく、ご案内致します。こちらです」
アーチさんは少し急かすように、私たちを先導しておそらく応接間らしき扉の前で止まる。
なんだろう、グロリアやアーチさんは信用しているけど突然過ぎるし説明も無さすぎる。
「……大丈夫です。危険はない……はずです。多分」
私の不安な表情を見て、アーチさんはさらに不安はを呼ぶフォローする。
え、怖いんだけど。
そんな私をよそに、アーチさんは扉の前から足早にその場から去る。
その際、すれ違いざまに。
「…………怒らせんなよ」
と、囁くように残して去って行った。
いやいやいや怖い怖い、ナインと目を合わせるとナインも少し眉間に皺を寄せていたが、力強い目線で小さく頷く。
まあ、ナインが居ればどうにでもなるか。
「入りましょうか」
「かしこまりました。お嬢様」
そう言って、ナインは応接間の扉を開けた。
前世では生まれつきの難病により、殆どの時間を病院のベッドに管を通され身動きひとつ取れずに確率通りに死に。
今の人生も前世の記憶を取り戻し、ナイン・ウィーバーが私の前に現れるまではなかなかに凄惨な劣悪な環境で虐げられてきた。
そんな私は前世の記憶と執事ナインを得て、幸せになることに決めた。
最初は前世の高田まりえの感覚で自由を体感してそう決めたのかと思っていたのだが、どうにも虐げられていたアビィ自身の思いも大きく影響している。
私は混ざっているのだ。
この感覚は生まれた時から前世の記憶を持つナインや、生きたままこの世界にやってきたワタナベ男爵とは共感できない感覚だろう。
まあそれはともかく。
私は私の幸せのためにバセット家を踏み台に学園に通うことに成功し、友達が出来た。
今日はそんな友達の家に招待をされている。
「ここね、グロリアの家。やっぱり貴族様のお家は大きいわねー」
私は友達のグロリアのお家の前でそんな感想を漏らす。
「なんか建物に対してそれしか言ってなくないか」
当然一緒に来ているナインが私の感想への感想を漏らす。
確かに最近これしか言ってない。まあ大きな建物にそれ以外の感想がないので仕方ないでしょ。
「……アビィ様、お待ちしておりました。ご案内致します」
そんな私たちに、グロリアの執事アーチボルト・エドワードさんが声をかける。
「ごきげんよう、アーチさん。本日はよろしくお願いいたします」
私はアーチさんへと笑顔でそう返す。
今日はグロリアに勉強を教えるという名目の元、みんなでグロリアの家で遊ぼうという会なのだ。
「グロリア様も楽しみにしております。ではこちらへどうぞ」
そう言ってアーチさんは私たちを先導する。
「グロリアのお部屋に行くのかしら、それとも別室?」
先を歩くアーチさんに問う。
「……まずは別室です。と、言いますか実はまだ本来の集合時間より早いのです」
アーチさんはやや気まずそうに答える。
「あら、時間間違えちゃったかしら……」
「いや間違いはない、約束の五分前のはずだ」
私の懸念をすぐにナインが否定する。
「はい、大変申し訳ございませんが、お二人には少し早めのお時間を伝えました」
と、少し目を伏せてアーチさんは言う。
「あ? おまえ何が目的なんだ、殺すぞ」
「は? つーか、僕がいつテメーに話しかけたんだよ。頭割るぞコラ」
「はいはい、やめなさい! でもどうして? 何か私たちに用事があるの?」
お互いのネクタイを掴み合って、睨み合う執事を諌めて質問をする。
「……申し訳ございませんアビィ様、その通りです。ある方が少しお話をされたいということで早めにお呼びした次第でございます」
襟を正してアーチさんは答える。
ある方……? 誰だろうか。
グロリアの両親であれば後でいくらでもお話する機会はあるし……。
「とにかく、ご案内致します。こちらです」
アーチさんは少し急かすように、私たちを先導しておそらく応接間らしき扉の前で止まる。
なんだろう、グロリアやアーチさんは信用しているけど突然過ぎるし説明も無さすぎる。
「……大丈夫です。危険はない……はずです。多分」
私の不安な表情を見て、アーチさんはさらに不安はを呼ぶフォローする。
え、怖いんだけど。
そんな私をよそに、アーチさんは扉の前から足早にその場から去る。
その際、すれ違いざまに。
「…………怒らせんなよ」
と、囁くように残して去って行った。
いやいやいや怖い怖い、ナインと目を合わせるとナインも少し眉間に皺を寄せていたが、力強い目線で小さく頷く。
まあ、ナインが居ればどうにでもなるか。
「入りましょうか」
「かしこまりました。お嬢様」
そう言って、ナインは応接間の扉を開けた。
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