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10・執事、聞かされる。
04女神。
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「……め、女神?」
「そう、僕は光に包まれた時に女神と名乗る存在に、この世界を導け、なんて言われたんだ。神託ってやつだね」
困惑するアビィに、さらっと男爵は衝撃的な体験談を答えた。
「……それが事実なら男爵は、聖女を超える聖人とされる存在だということになります」
俺は前世で一ヶ月ほど修道士だったので、教会の人間的な見解を述べて。
「ですが、神なんてものはいません。聖女だってただの小娘ですし貴方も特異で優秀なだけで人間です。確かに我々に起こった現象は超常現象ですが、それが全て神の導きだとは思えません」
「ああ、僕もそう思う。これでも技術者として常に科学の最先端を歩んできたこの僕が、たかが超常現象に併せて神を自称した程度でそれを信じられるように脳が出来てない」
男爵は俺の言葉をすぐに肯定する。
「……その、め、女神からは何と言われたのでしょうか? 世界を導いた後はどうなるとか……」
少し、しどろもどろになりながらアビィは。
「元の世界に……、帰らされる、とか」
緊張した面持ちで、そう付け加えた。
そうだよな、アビィにとっては帰りたくないに決まってる。
いつか言っていた。せっかく手に入れた自由の身、か……、手離したくないに決まっている。
「……いや、そういう話はなかった。本当に一方的に、呆気に取られたまま質疑の余地なく気づいたらこの国の外れにいたんだ」
「そうですか……」
アビィはまだ安心は仕切らない、煮え切らない表情を浮かべる。
「まあ兎に角、転生者や転移者については僕もかなり興味のあるところだ。僕なりに色々と調べて仮説を立ててみるよ」
アビィの表情を見て、男爵は笑顔で励ます。
「そうですね、私も引き続き色々と調べたいと思います。自称女神の存在は私もかなり気になります」
気持ちを切り替え真剣な顔でアビィも同意する。
いや女神を調べるって、どうするんだ。
まさか、聖女に会いに行くとか言い出さないよな……。
「それはそうと、ワタナベ様は若返ったと仰っておられましたがどのくらいの変化があったのですか?」
そんな俺の心配をよそに、アビィは素朴な疑問を男爵へと投げかける。
「ああ、今は二十五歳ってことにしてるから……二十年以上は若返ったんじゃないかな」
「え、ええええ――っ⁉」
と、男爵の答えに驚愕したのは俺でもアビィでもなく。
「な、ワタナベ様は……、四十代なのですか⁉」
ドアを押し倒す勢いで入ってきた、タンディ嬢であった。
そんなこんなで。
ドアの外で一部始終を聞いて取り乱すタンディ嬢をみんなで宥めたところで、本日の転生者の会はお開きとなった。
「……お見苦しいところをお見せして大変申し訳ございませんでしたわ」
落ち着きを取り戻したダンディ嬢は、アビィを見送る際に門前で詫びる。
「いえいえ、とんでもございません。流石に衝撃的なお話だったと思いますし」
確かに、転生だとか異世界だとか女神だとか、とんでもない話を聞かされてしまったと思う。俺だってそう思う。
「ええ……、まさかあの飄々と余裕のある大人の態度は、本当に四十代だったからだなんて……」
いや、そこかよ。
俺とアビィは、それを口には出さずに、すんでのところで飲み込む。
「本当に、嫌いですわ……」
タンディ嬢は耳を赤らめ、口を尖らせて子供っぽく呟く。
なるほど、微笑ましい。
やはりこの二人は絶妙なバランスで、成り立っている。
こんなお熱い台詞を聞かされて。
衝撃的なことの連続だった男爵邸から俺たちは帰路についた。
「そう、僕は光に包まれた時に女神と名乗る存在に、この世界を導け、なんて言われたんだ。神託ってやつだね」
困惑するアビィに、さらっと男爵は衝撃的な体験談を答えた。
「……それが事実なら男爵は、聖女を超える聖人とされる存在だということになります」
俺は前世で一ヶ月ほど修道士だったので、教会の人間的な見解を述べて。
「ですが、神なんてものはいません。聖女だってただの小娘ですし貴方も特異で優秀なだけで人間です。確かに我々に起こった現象は超常現象ですが、それが全て神の導きだとは思えません」
「ああ、僕もそう思う。これでも技術者として常に科学の最先端を歩んできたこの僕が、たかが超常現象に併せて神を自称した程度でそれを信じられるように脳が出来てない」
男爵は俺の言葉をすぐに肯定する。
「……その、め、女神からは何と言われたのでしょうか? 世界を導いた後はどうなるとか……」
少し、しどろもどろになりながらアビィは。
「元の世界に……、帰らされる、とか」
緊張した面持ちで、そう付け加えた。
そうだよな、アビィにとっては帰りたくないに決まってる。
いつか言っていた。せっかく手に入れた自由の身、か……、手離したくないに決まっている。
「……いや、そういう話はなかった。本当に一方的に、呆気に取られたまま質疑の余地なく気づいたらこの国の外れにいたんだ」
「そうですか……」
アビィはまだ安心は仕切らない、煮え切らない表情を浮かべる。
「まあ兎に角、転生者や転移者については僕もかなり興味のあるところだ。僕なりに色々と調べて仮説を立ててみるよ」
アビィの表情を見て、男爵は笑顔で励ます。
「そうですね、私も引き続き色々と調べたいと思います。自称女神の存在は私もかなり気になります」
気持ちを切り替え真剣な顔でアビィも同意する。
いや女神を調べるって、どうするんだ。
まさか、聖女に会いに行くとか言い出さないよな……。
「それはそうと、ワタナベ様は若返ったと仰っておられましたがどのくらいの変化があったのですか?」
そんな俺の心配をよそに、アビィは素朴な疑問を男爵へと投げかける。
「ああ、今は二十五歳ってことにしてるから……二十年以上は若返ったんじゃないかな」
「え、ええええ――っ⁉」
と、男爵の答えに驚愕したのは俺でもアビィでもなく。
「な、ワタナベ様は……、四十代なのですか⁉」
ドアを押し倒す勢いで入ってきた、タンディ嬢であった。
そんなこんなで。
ドアの外で一部始終を聞いて取り乱すタンディ嬢をみんなで宥めたところで、本日の転生者の会はお開きとなった。
「……お見苦しいところをお見せして大変申し訳ございませんでしたわ」
落ち着きを取り戻したダンディ嬢は、アビィを見送る際に門前で詫びる。
「いえいえ、とんでもございません。流石に衝撃的なお話だったと思いますし」
確かに、転生だとか異世界だとか女神だとか、とんでもない話を聞かされてしまったと思う。俺だってそう思う。
「ええ……、まさかあの飄々と余裕のある大人の態度は、本当に四十代だったからだなんて……」
いや、そこかよ。
俺とアビィは、それを口には出さずに、すんでのところで飲み込む。
「本当に、嫌いですわ……」
タンディ嬢は耳を赤らめ、口を尖らせて子供っぽく呟く。
なるほど、微笑ましい。
やはりこの二人は絶妙なバランスで、成り立っている。
こんなお熱い台詞を聞かされて。
衝撃的なことの連続だった男爵邸から俺たちは帰路についた。
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