上 下
36 / 240
10・執事、聞かされる。

02サッポロ。

しおりを挟む
 ガレージの中はごちゃごちゃと、様々な見たことのない機械や工具が並んでいた。

 木材加工所で働いていたのでこういう作業場がごちゃつくことは理解出来るが、乱雑らんざつに置かれている機械類の精巧せいこうさに驚かされる。

 ふとアビィを見ると、目を輝かせて様々な機械を鼻が触れるんじゃないかという距離まで近づいて見ていた。

 機械や技術的なことに無関心な俺ですら驚いているのに、好奇心や探求心たんきゅうしん旺盛おうせいなアビィならそうなるだろう。

「好きに見ていて構わないよ。ただ手に取る時は一声かけてね、動くと指が飛ぶものもあるから」

 ワタナベ男爵は飄々ひょうひょうととんでもない注意事項をべる。

「ワタナベ男爵、こちらは蒸気式ピストンでの発電機構のように見受けられますが発電効率としてどのくらいなのでしょうか? せてこれらを電力をたくわえる蓄電池の容量もどのくらいなのでしょうか?」

 と、アビィは俺には一個もわからん質問を男爵に向けると。

「へえー! 勉強してきてるね! 驚いたよ。えっとそれはね……」

 男爵は驚きながらも、丁寧に俺には一個もわからない説明をしてくれる。

 その間俺は、何やらクルクルと回り続ける機械をぼんやりと見つめる。凄いな、これ止まらないのか。これに桶を付けて水と洗剤を入れたら勝手に洗濯してくれるんじゃないか?

 ……なんか凄まじい発明を思いついてしまった気がするが、そんなもの出来上がったら世の使用人やらの仕事が減り一割は解雇されそうなので黙っておこう。

「ご説明ありがとうございます。非常に勉強に成ります。大変不躾ぶしつけな質問になるのですが、ワタナベ男爵はこういった技術や知識をどちらで学ばれたのでしょうか? ご出身はどちらで?」

 説明が終わったところで、アビィはそんな質問をする。
 まあ確かに男爵の髪や目はこの辺りの出身ではないのが見て取れる、気にならないこともない。

「あー……、まあ遠い島国だよ。東の果ての果てみたいなところだから、多分知らないよ」

 ワタナベ男爵は先程さきほどとは違いかなりふわっとした答えを返す。

。おわかりになりますでしょうか?」

 と、アビィは間髪入れずにそういった。

 ホッカイドー? サッポロ? バセット家があった辺りはそんな名前の地域だっただろうか。
 この国の全ての地名を把握しているわけではないが聞いた事のない地名だ。

「……まいったな……、僕は茨城県の、つくばみらい市だ…………。少し、場所を変えようか」

「ええ、私もそれが良いかと思います」

 男爵はアビィの言葉に驚愕きょうがくして、俺たちをガレージの奥の書斎しょさいというか製図室のような部屋に案内した。

「君が僕をたずねてきたのは、それを聞く為かい?」

 と、アビィをソファに座らせ男爵は机の椅子に座りたずねる。

「そうですね、渡辺という名前を聞いた時から少なからず日本に関係する人物だと確信していました」

 アビィは落ち着いた様子で男爵に答える。

 ニホン……? 正直俺にはまだこの話どころか状況も理解が出来ていない、何の話をしているんだ。

「そりゃ渡辺だしね。日本人じゃないにしても日系外国人か、まあどちらにしても

 ワタナベ男爵は少し笑いながら、気になるワードを出す。
 向こうの世界……? 科学的な話をしているんじゃないのか。

「その前から、いわゆる異世界転生者の存在は様々な文化などから感じていました」

「そうだね、向こうの世界のヒットソングが歌われてたり、蒸気機関も発達しきってないのに写真などの技術があったり。誰かがこっちに持ち込まないと広まりようのない物が多いから僕も存在するとは思っていた」

 男爵の話に不思議なものがあるのだろうか。
 そんな風に思考をめぐらせていると。

「彼は知っているのかい? この話を」

 と、突然男爵は俺を見てアビィに問う。
 いや全然知らないです。巻き込まないでくれ。

「彼は何も知りませんが、聞いてもらいたいと思います」

 アビィはそう答えると、俺の方を向き。

「ナイン、これから話すのはかなり荒唐無稽こうとうむけいで信じられないような話になると思う。だから信じなくていい、いつものように頭のおかしな戯言ざれごとだと思ってくれてもいい。でも貴方には聞いてもらいたいの」

 そう真摯しんしに俺の目を見て強く、言った。
しおりを挟む
感想 57

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。 「だって顔に大きな傷があるんだもん!」 体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。 実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。 寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。 スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。 ※フィクションです。 ※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

処理中です...