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終・女神さまは、ただ誰かに愛されたいだけ。【全7話】

04それでも。

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 最初に竜がほろんだ。

 しかし、最後の最後で竜の女王ニィラが放った竜の息吹で人類のほとんどが死滅しめつしました。

 そこで力を使いたした竜の女王を、探求者と研究者は封印をしました。

 次に勇者が魔王との戦いの中で時空の壁を壊して、二千年後の未来に飛び消えてしまいました。

 勇者との戦いで消耗しょうもうしていたルカは、探求者の単純な腕力で押さえ込まれ研究者により封印された。

 こうして、魔王ルカと勇者ダグラスはこの星から消えて人類の繁栄はんえいが始まる。

 そう思っていたのですが、違いました。

 人類は私が望むような繁栄はんえいはしなかった。

 簡単にいえば、こちらの人類は皆さんの世界の人類と違って全体的に怠惰たいだで愚かだったのです。

 竜が居なくなっても根本的に愚かなこの星の人類は、文明の発展に積極的せっきょくにはならなかった。

 特異点である研究者シェリー・ラスゴーランや探求者マリク・ノアは高い知性や知恵を有していながらも人類をみちびくようなことはしませんでした。

 少なくなった人類はコミュニティを形成しましたが文化水準はむしろ下がり、竜からの危機感と知恵という恩恵おんけいを失い完全に停滞ていたいしました。

 ゆえに研究者と探求者をのぞいた現存する人類の中で最もかしこく人望のある者に、神託を与えました。

 これはダグラスに行った干渉かんしょうに近いものですが、今回は力を与える必要はなく過剰かじょうな書き換えは行わなかったのでかなり世界の減少はおさえられました。

 この神託しんたくあたえた者こそが初代メルバリア王国が国王となり長い時間をかけて文明と信仰を発展はってんさせました。

 そしてこのメルバリア王のコミュニティ形成を模倣もはんして、各地にコミュニティが作られていきました。

 人類は徐々に数を増やしていきましたが、思うように私への信仰は増えていきませんでした。

 なので私は再び、自身の存在を切り離してこの星に落とすことにしました。

 それも、ルカのように完成体ではなく赤子の状態で神の代行者として人類をみちびく聖女を降臨こうりんさせたかったのです。

 完成体ではなく赤子の状態にしたのは、人類に触れて育ち、自らの意思で能動的のうどうてきに人類をみちびくようになってもらうためです。

 ルカのように人類からの影響えいきょうにより使命から外れることを懸念けねんした対策たいさくでした。

 当初はメルバリア王の元に届ける予定でしたが、丁度その時に研究者シェリー・ラスゴーランが研究の末私の存在領域りょういきである世界の最果さいなて、私のいる外側にれられるところに辿たどり着いた。

 私はそれが、ただ嬉しくて。
 私から干渉かんしょうするのではなく、世界の中から私に手を伸ばしてくれたのが嬉しくて。

 研究者シェリーに聖女として育てるように伝えて赤子をたくしました。

 シェリーは世界のことわりから外れた特異点であり最も高い知性を有した者なので、世界のことわりから外れた個体である聖女を育て上げるには適任でもあると考えたのもあります。

 ですが研究者シェリーは探求者マリクと共に赤子を聖女ではなく、魔女として育てました。

 彼女たちはどうやらルカやダグラスという存在を生み出した私の行動に懐疑的かいぎてきだったようです。

 正直、理解は出来ます。
 私のような本来ただの現象でしかないものが思考して意思と意志をもちいて干渉かんしょうしてくるというのを快くは思えないでしょう。

 でも、私は、それでも。

 聖女ではなく魔女となった赤子、サム・ラスゴーラン・ノアは自身の幸せの為だけに行動をし続けました。

 ですが人類と共に生き続ける魔女の知恵や力は人類に影響えいきょうを与え、それが人類の繁栄はんえいつながりました。

 信仰においても少しずつ広がっていったのです。

 この星に人類を死滅しめつさせる程度ていどの隕石が丁度メルバリア王国に落下するのを魔女のサムがふせいだことにより、教会で私に祈りを続けていたスーザン・ロックハートが神に祈りを届けて民を救ったとして聖女と呼ばれることになりました。

 実際の私は時間の概念がいねんがないのでこの星が滅んだら、また新たに次の知的生命体による文明が出るまで待てば良いと思いながらながめているだけでしたが魔女のサムは私がこの星に放った個体ですので祈りが通じていたとしても良いのでしょう。私には未来も過去もないので。

 しかしそれでも、皆さんの住まう世界のような文明の発展は進みませんでした。

 これはやはり、死にづらくなったことにより生存に対する危機感がうす能動的のうどうてきな活動をしなくなったことに由来ゆらいする為です。

 私への信仰が高まったところで、私を受け入れられるほどの教養きょうようや知性が育たなければ意味がありません。

 
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