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32・恋人に棄てられたお嬢様は、凍える聖夜に暖かさを求める。【全6話】
02執事。
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私はパーカーにニット帽、マフラーにセーターにダウンジャケット、タイツに靴下にジャージ、まあとにかく手当り次第に着込めるだけ着込んで外に出た。
ここまで完全防備だと流石に寒さが入り込む余地はないようだ。
適当に歩いていれば暖かくなるだろう。
うーんしかし、無駄にキラキラしてやがる。
イルミネーションやら、装飾やら、街には出ずに住宅街をうろついているが、それでもこの。
クリスマスだぞ! ほら楽しめよ! みたいな、暴力的な輝きは今の私に効く。
もし街の方に出ていたら恐らく私はやられていただろう。
まあとりあえずコンビニに入ろう。
コンビニすらも店内はクリスマスムード一色だった。
店員さんも死んだ目でサンタクロースの帽子をかぶっている。彼もまたクリスマスに殺された被害者なのだろう……、南無。
とにかく適当なワインとレジ横の肉まんを買い込んで店を後にする。
帰っても寒いしやることもないので、ワインをラッパで飲みながら適当に歩く。
少し遅いがこれが私のボジョレー解禁だ。いえーい。
すると全く訪れたことのない公園に着いた。
イルミネーションの類も全くないただの公園だ。
わりと広いけど誰もいない、熱々のカップルもこの極寒の中わざわざこんな寂れた公園に来ることないか。
ボジョレーでも何でもない安いワインをラッパ飲みしながら公園のベンチに座って、肉まんを齧る。
今度はフランスと中国のマリアージュを感じる、気分は貴族令嬢。私はサリィ・ワグナー侯爵令嬢でお嬢様なのです。いえーい。
静かな公園を一人で独占しているようで気分がいい、無駄に晴れていて夜空が腹立つくらい綺麗だ。
あー、本当に。
私は何やってんだろ。
仕事も休みで、友達も予定があって、彼氏に振られて、家の中も極寒。
私の居場所は今、この公園にしかないと思うとめちゃくちゃ悲しくなってきた。
キラキラと輝く夜空が煩わしくて目線を下ろしてなんの気もなしにベンチの隣を見ると。
サンタクロースの格好をした男が座っていた。
「うわあああああっ⁉ えっ、何! ええ⁉」
私は驚きのあまり声を上げてしまう。
ビックリした、え? いつからいたの? 全く気配を感じなかった。怖っ、ええ……。
「いやあんたが後から座って来たんだが……、まあ驚かせたならすまんな」
思ったより若い声で淡白な反応を示す。
白いつけ髭とつけ眉毛で顔はよくわからないけど、多分二十代前半くらいのサンタさんみたいだ。
「ええ……、そんな浮かれた格好してるのに落ち着きすぎでしょ……あ! もしかして本当にサンタクロースなの?」
私は驚きつつも謎のサンタクロースに絡みにいく。
だって酔っ払いなのだもの、いえーい。
「格好……? ああそうか、これは仕事で着ているだけだ。サンタクロースなんているわきゃないだろ」
私の小粋なクリスマスジョークにまたも淡々と彼は返す。
「そらそうね、サンタクロースですら仕事で着てるもんね。で、何のお仕事してるんですかー?」
私は懲りずにダル絡みを続ける。
せっかく突然現れたこんな面白そうな奴を逃すほど私はシラフじゃないのだ。いえーい。
「あー? ……、まあいいか……。家事代行というか、お手伝いさんというか、まあ執事みたいなもんだ」
さらりと、めちゃくちゃ意外な答えを彼は返す。
「ええ⁉ マジで! え、なんか貴族とかに仕えて、お嬢様とか言ってお茶淹れるあの執事⁉」
私は驚愕して反応する。
何を隠そう私は執事フェチだ。
現実の恋愛観に持ち込んだことは一度たりともないけれど、心はお嬢様な私はもちろん心に執事もいる。
それが酔っ払って興味が表に出てきてしまっているのだ。いえーい。
ここまで完全防備だと流石に寒さが入り込む余地はないようだ。
適当に歩いていれば暖かくなるだろう。
うーんしかし、無駄にキラキラしてやがる。
イルミネーションやら、装飾やら、街には出ずに住宅街をうろついているが、それでもこの。
クリスマスだぞ! ほら楽しめよ! みたいな、暴力的な輝きは今の私に効く。
もし街の方に出ていたら恐らく私はやられていただろう。
まあとりあえずコンビニに入ろう。
コンビニすらも店内はクリスマスムード一色だった。
店員さんも死んだ目でサンタクロースの帽子をかぶっている。彼もまたクリスマスに殺された被害者なのだろう……、南無。
とにかく適当なワインとレジ横の肉まんを買い込んで店を後にする。
帰っても寒いしやることもないので、ワインをラッパで飲みながら適当に歩く。
少し遅いがこれが私のボジョレー解禁だ。いえーい。
すると全く訪れたことのない公園に着いた。
イルミネーションの類も全くないただの公園だ。
わりと広いけど誰もいない、熱々のカップルもこの極寒の中わざわざこんな寂れた公園に来ることないか。
ボジョレーでも何でもない安いワインをラッパ飲みしながら公園のベンチに座って、肉まんを齧る。
今度はフランスと中国のマリアージュを感じる、気分は貴族令嬢。私はサリィ・ワグナー侯爵令嬢でお嬢様なのです。いえーい。
静かな公園を一人で独占しているようで気分がいい、無駄に晴れていて夜空が腹立つくらい綺麗だ。
あー、本当に。
私は何やってんだろ。
仕事も休みで、友達も予定があって、彼氏に振られて、家の中も極寒。
私の居場所は今、この公園にしかないと思うとめちゃくちゃ悲しくなってきた。
キラキラと輝く夜空が煩わしくて目線を下ろしてなんの気もなしにベンチの隣を見ると。
サンタクロースの格好をした男が座っていた。
「うわあああああっ⁉ えっ、何! ええ⁉」
私は驚きのあまり声を上げてしまう。
ビックリした、え? いつからいたの? 全く気配を感じなかった。怖っ、ええ……。
「いやあんたが後から座って来たんだが……、まあ驚かせたならすまんな」
思ったより若い声で淡白な反応を示す。
白いつけ髭とつけ眉毛で顔はよくわからないけど、多分二十代前半くらいのサンタさんみたいだ。
「ええ……、そんな浮かれた格好してるのに落ち着きすぎでしょ……あ! もしかして本当にサンタクロースなの?」
私は驚きつつも謎のサンタクロースに絡みにいく。
だって酔っ払いなのだもの、いえーい。
「格好……? ああそうか、これは仕事で着ているだけだ。サンタクロースなんているわきゃないだろ」
私の小粋なクリスマスジョークにまたも淡々と彼は返す。
「そらそうね、サンタクロースですら仕事で着てるもんね。で、何のお仕事してるんですかー?」
私は懲りずにダル絡みを続ける。
せっかく突然現れたこんな面白そうな奴を逃すほど私はシラフじゃないのだ。いえーい。
「あー? ……、まあいいか……。家事代行というか、お手伝いさんというか、まあ執事みたいなもんだ」
さらりと、めちゃくちゃ意外な答えを彼は返す。
「ええ⁉ マジで! え、なんか貴族とかに仕えて、お嬢様とか言ってお茶淹れるあの執事⁉」
私は驚愕して反応する。
何を隠そう私は執事フェチだ。
現実の恋愛観に持ち込んだことは一度たりともないけれど、心はお嬢様な私はもちろん心に執事もいる。
それが酔っ払って興味が表に出てきてしまっているのだ。いえーい。
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